株式会社Alumnote 代表取締役 中沢冬芽

高等教育の質の向上を目指し、大学経営の根本的な課題に向き合っている株式会社Alumnote。大学支援者とのネットワーク作りから名簿作成、管理システムの開発、運用まで一貫してサポートしています。

 

今回は、代表の中沢氏へインタビュー。事業を始めた経緯や最大の壁、今後の目標などを詳しく伺いました。採用についても触れているので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。

 

在校生や卒業生、保護者、地域の方々からの資本が流れる仕組みを作る

事業の内容をお聞かせください。

大きく分けて3つあります。

 

1つ目は、全国の大学・学生を応援する日本最大級のチャリティーイベントGiving Campaignの開催です。

 

過去4回のイベントで、Giving Campaignに37大学が参加し、累計35万人で2億円の寄付を募った日本で最大のチャリティーイベントとなりました。

 

我々は、イベントの開催などにあたり、寄付金額も大切ですが支援してくださる方を増やすことに力を入れています。潜在的寄付者にとっての1回目の寄付体験および、中長期的な大学への支援の第一歩を踏み出す機会になることが目的であるため、まずはより多くの人と関わりを持つことにこだわっています。

 

2つ目は大学にとっての顧客管理システムの提供です。卒業生や潜在支援者層のデータベースを作り、マーケティングをするためのプラットフォームを提供しています。

 

弊社の顧客である大学は、一元管理された名簿をもっていないところも多くあります。まずは、個人情報保護法の観点から大学が名簿を利用するための基盤を整える必要があります。例えば、入学時に入手した学生名簿が卒業後に使えなくなる事態に陥っている大学もあります。そのため、将来的に名簿を活用することを見据えて、まずはデータベースを作るところから我々がサポートしています。

 

また、仮に名簿を作って運用できる基盤を整えたとしても、それらを活用する業務を担当する方がいないというのが多くの大学の現状です。集まった名簿を有効活用するためには、管理体制の構築が必要となります。そこで、在校生や卒業生、保護者などすべてのステークホルダーの名簿を一元管理し、マーケティングツールとして、メール配信などもできる仕組みが我々のシステムでできるようになっています。

 

3つ目は、大学の自主財源を確保すべく、大学経営をあらゆる角度から支援する事業です。我々は、包括連携事業と呼んでいます。

 

最新テクノロジーと大学内のリソースを使って、寄付収入の拡大や寄付の継続性の強化を実現します。今年の4月以降にいくつかの大学との取り組みをスタートしています。

 

成果を上げるためには、大学の魅力を再発見し、打ち出していくことが欠かせません。

大学の内部に入り、歴史や研究、人などのアセットを活用するまでのプロデュースもサポートします。

 

海外と日本を比較すると、海外は卒業後も学生と繋がりを持つことがより多いです。例えば、ビルゲイツが大学へ何百億も寄付したという事例もあります。日本は、アメリカや海外と比較すると卒業生や地域の人との繋がりが薄く、また寄付文化が発展途上にあると思います。

 

寄付という商品を、どのように魅力的に売っていくのか、という問題を解決していくことができれば、大学はより大きな金額を資金調達できると考えています。

 

長いスパンで行う事業になりますが、これから順を追って展開していきたいと思っています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

日本の高等教育や学ぶ環境を見直す必要性を実感したことが、現在の事業を始めようと思ったきっかけです。

 

父が大学の研究者であり、大学にはお金が足りないという話を子供の時から耳にしていました。

 

そして、実際に自分の目で海外の大学と日本の大学の両方を見てみると、両者の間にはとても差があるように感じたのです。

 

例えば、高校生の時には財務諸表を見ていましたが、海外と日本の大学の環境や設備には、やはり違いがあることを知りました。これらの経験が現在の事業に結びついています。

 

その後は、いくつかのビジネスを経験し、世の中の情勢を見て追い風となりそうなタイミングで起業を決意しました。

 若者がもっと挑戦していける、より良い社会を作りたい

仕事におけるこだわりを教えてください。

公益性です。シンプルに、日本をもっとより良い国にして、挑戦者や若者に資本を与えたいと思います。

 

また、どうせやるなら、社会や日本にインパクトを与えたいです。誰にでもできることではなく、自分にしかできないことにチャレンジしたいです。そして、公益的かどうかという軸はぶらさずに事業を展開していきます。

起業から今までの最大の壁を教えてください

学生起業として、国立大学と対等に取引することがなかなか難しく、特に最初の頃はなかなか取り合ってもらえなかったことが壁であったと感じます。

 

大学側の立場になって考えると、個人情報やお金を扱う事業であることや、学生がつくったシステムを採用することに対する怖さはあって当然だと思います。だからこそ、取引を始めるまでが、とても大変でした。

 

最初は、東大でスタートしましたが、そこまで半年近く時間を要しました。海外での先行事例を用いて、大学を鼓舞したり、出資者へ説明したりするところから始めました。

 

たとえ、わずかでも、手を上げてくれた方を見逃さずに、期待を必ず超えるということを常に意識してきました。

 

また、壁ではありませんが、ビジネスモデルの特徴として、資金を回収できるのは先になることが挙げられます。

 

先日も、人件費を賄うために資金調達をしました。我々がサポートすることで大学が豊かになって初めて、我々は収入を得ることができます。まずは成果を上げて、相手に感動してもらうことが先なので、そこまで走り続けなければビジネスとして成立しないという大変さはあるかと思っています。

 

目の前の壁は乗り越えられるものだと信じ続ける

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

課題を選定した時点で、「解けそうだと思っているから選んでいる」と考えています。だからこそ、大変な局面でも「絶対に乗り越えられる」と信じて諦めることはないため、モチベーションを維持し続けられています。

 

ロジックはすぐに思いついたとしても、実際には最後の1歩手前が、ものすごく大変であることも多いです。しかし、自分の考えの正しさを世の中に理解してもらうためには、成果が出るまでやり切るしかありません。

 

大変な時こそ初心へ戻り、自分が選んだ道を信じることで進み続けられると考えています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

2つあります。

 

1つ目は、まずはいくつかの大学において、圧倒的な資金調達を行うことです。ビジネスモデルを変えるためには、1つの大学で100億円の資金調達を実現しなければなりません。

 

もちろん、100億円の資金調達は簡単ではありません。現在は、個人や企業に向けて、どのようなサービスがあれば寄付に至るのかを聞き取りしています。

 

また、100億円をどのように大学に入れれば良いのかという具体的な方法も含めて、論点を洗い洗い出しているところです。

 

2つ目は、どの大学でも一定の自主財源をつくれるような、ビジネスモデルを構築することです。

 

例えば、東大だけがうまくいく、というように特定の大学だけが遂行できるビジネスモデルでは意味がありません。

 

将来的には、公教育の質に差が出ないように、100億円をどの大学も集めることのできるビジネスモデルを構築したく考えています。

 

長く携わっていきたいと思えるテーマを選ぶこと

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。

私は学生起業としてスタートしましたが、やはり簡単ではありません。頑張らなければならない瞬間が必ずあります。世の中の会社経営をしている方々の凄さを身をもって感じています。

 

経営はハードであるため、とにかく続けていけるものを選ぶことが大切です。経済的な観点からモチベーションを保つには、相当な運が必要です。数年費やしても良いと心から思えるようなテーマを見つけるところからスタートすると良いかと思います。

 

また、弊社では、採用を強化しています。

 

必須条件としては、教育や弊社の事業に興味や関心をもっていることです。弊社が向き合っていることに対して情熱をもって取り組めなければ、勤めてからも走り切ることは難しいと考えています。

 

弊社では、国や省庁の規則に沿って、0から事業を構築することを経験できます。また、本来20年近くかかるといわれていることを、2年程度で実現していくところに面白さがあると考えます。

 

例を出すと、官僚が国の仕組みを作っていく仕事がおもしろい、と感じているものと似た経験ができるかと思います。日本を良くしていける問題に向き合い、解決していくことにやりがいや面白さを感じることができる方にぜひご応募いただけたら有難いです。

 

ちなみに、弊社のインターン生は主にリファラル採用で増えています。学生に1つの仕事を丸ごと任せて、人が足りなくなった時には自分で補充してもらっています。その結果、自然とインターン生が増えました。また、全国さまざまな大学の学生と繋がり、オンラインで仕事を任せることも積極的に行っています。都内に限らず、弊社の事業に興味をもってくれた学生や、経験を積みたい学生とは、今後も繋がりを増やしていきたいと考えています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:中沢冬芽 氏

 

1998年生まれ、長野県松本市出身。幼少期をアメリカで過ごす。 東京大学法学部入学後、Google Japan, Apple Japan, Rapyuta Roboticsにて、全国の自治体や学校法人、大手企業との事業開発・PoC(実証実験)プロジェクトに従事した後、アルムノートを創業。起業家甲子園 総務大臣賞など複数のビジネスコンテストで受賞。

 

企業情報

 

法人名

株式会社 Alumnote

HP

https://corporate.alumnote.jp/

設立

2020年10月14日

事業内容

大学支援者の名簿構築、関連システム開発

大学支援者ネットワークの拡大・活性化支援

大学基金・寄付管理システム開発

 

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