株式会社HiOLI 代表取締役 西尾 修平 氏

全国から厳選した素材を集め、自由が丘の工房でアイスクリームを製造している株式会社HiOLI。香料・着色料は使用せず素材本来の良さを引き出し、「乳の価値をアップデートする」というパーパスのもと、副産物となる脱脂粉乳を取り入れたスイーツ作りを行っているのが特徴です。

 

そんな株式会社HiOLIの代表取締役である西尾 修平氏に、具体的な事業内容や事業を始めた経緯、今後の展望について伺いました。

 

量よりも質を優先したお菓子作り

さっそくですが、事業内容をお聞かせください。

はい。私達はクラフトスイーツ事業を展開しております。具体的には、「HiO ICE CREAM」というアイス屋や、「Butters」というクラフトバタースイーツ屋、「山ノチーズ」というチーズスイーツ屋などを日本各地で約10店舗展開しています。

「HiO ICE CREAM」の特徴を教えていただけますか?

「HiO ICE CREAM」は、創業当初から「乳の価値をアップデートする」をパーパスに掲げています。バターを作るときは牛乳を使用しますが、副産物として脱脂粉乳が生成されます。この副産物の消費がなかなか追いつかないことが社会課題となっていますが、当社ではほぼすべてのアイスクリームなどのスイーツに脱脂粉乳を使用しています。

 

お客様に召し上がっていただきながら、美味しさの追求と合わせて、副産物の消化・消費の支援をしています。支援と言ったらおこがましいですが、その一助になりたいという思いで起業をしました。

 

「HiO ICE CREAM」は、先ほどお伝えしたとおり脱脂粉乳を使用しています。その脱脂粉乳本来の良さを活かすというところで、まずはできる限り生産者さんにお会いさせていただいて、顔が見えるもの作りを大事にしてきました。

 

大手のように大量生産はできませんが、少量ずつ、その素材の特徴を生かしたアイスクリームを提供することを心がけています。

クラフトと聞くと小規模でこだわりを持って作っていることが想像できますが、御社ならではの強みはありますか?

他社も美味しいものを提供されていることはもちろんですが、当社の在り方としては選択肢を創造することを非常に大事にしています。お客様からすると、1つよりも2つ、2よりも3つという風に選択肢が多いほど豊かであると感じられます。

 

ここでの豊かとは経済的な意味ではなく、「選べること自体が豊かである」という意味です。その中で当社が提供できる価値を考えたときに、生産者さんと向き合い、気になった素材を使わせていただいて、商品を丁寧に仕上げていくことだと思いました。

 

もう1つは、素材本来の良さを活かすことです。私たちは化学合成添加物を使わない、安心安全で、素材本来の味、色をそのまま活かした商品を作っています。この取り組みが理解され、化学合成添加物を使っていないことに共感して購入してくれる方が増えているので、とても嬉しく思っています。当社の商品は大手にとっては作りにくいものだと思うので、HiO ICE CREAMらしさを大事にして商品を提供しています。

 

大手企業は大量生産によって価格を抑えている一方、HiOLIの商品は手作りであるため価格が高くなりがちです。そのため、当社は低価格路線を選択するのではなく、お客様に受け入れていただける範囲の価格帯で、品質にこだわった商品づくりを行うことが大切だと考えております。

 

自由が丘駅から徒歩約5分の立地に工房を構えている理由はありますか?

「HiO ICE CREAM」は、ブルーボトルコーヒーとコラボレーションをしています。

 

業種は違えどブルーボトルコーヒーのほうがクラフト文化が長く、リスペクトしています。実は創業者のジェームス・フリーマンさんに会いに行ったことがあり、1号店も見に行きました。

 

そこはヘイズバレーというサンフランシスコの中でも少し外れた場所にありました。お店は創業期ということもあり、限られた資金で建てられたのでしょう。客席もなく、小規模なお店でした。

 

私たちは自由が丘に工房を構えています。自由が丘の一等地の駅のほうにいけば利用者数も増えると思いますが、長く愛されるブランドの出発点になるべき場所は商売のしやすい場所ではなく、ご理解いただけるお客様と接点を持てる場所だと考えました。そのため、住宅街や遊歩道などに近い場所を探しました。そして自由が丘や鎌倉、代々木などの閑静なエリアを探していく中で、たまたま自由が丘の物件と出会えました。

 

昔からお菓子が好きだった

現在の事業を始めた経緯を教えて下さい。

私自身、昔からお菓子が好きだったことも起業したきっかけになっています。起業する前はリクルートに新卒入社し、その後、東証マザーズ上場IT企業の取締役を経験しました。

 

IT企業で働いていた当時、大切な人との別れがあり、「人生は長くない」と感じ、それであれば好きなことを仕事にしたいと思いました。

 

翌年には子どもが生まれ、親として子どもに安心して食べさせてあげられるものを選んだり、作ってあげたりしたいと感じました。そのような形で徐々に起業を意識していったのだと思います。

 

また、あるとき別の製菓会社の社長を引き受けしていた時期があります。そこではバターをたくさん仕入れる機会があり、乳業メーカーや酪農関係者の話を伺ったときに、バターの生産過程において生成される副産物が社会課題になっていることを教えてもらいました。

 

そこから「脱脂粉乳を使用したお菓子メーカーを作りたい」と明確に起業のイメージが湧いてきました。

 

乳の価値をアップデートする

仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。

当社のパーパスである「乳の価値をアップデートする」を実現したくて起業しているので、そこはブレることなく続けていきたいと考えています。

 

従業員からの提案で実際に製品化したお菓子もありますか?

私自身、お菓子作りに関して方針は出していますが、実際に商品を作ったり味を決めたりするのは従業員です。そのため、私としては従業員が作りたいものがあれば私は応援するというスタンスでいます。

 

逆にいうと創業してから私が作った味はもう1個しか残っていません。HiO ICE CREAMのシグネチャーフレーバーである「美瑛シングルオリジンミルク」です。私が私の師匠にあたる方と一緒にアイディアを出しながら磨いていったフレーバーです。そのフレーバーも創業当初からすると何度かアップデートしています。

 

お客様に喜んでもらえる商品提供が大事

進み続けるモチベーションはありますか?

 

「乳の価値をアップデートする」という思いが根底にあって起業しており、今でもその気持ちを大切にしています。それをモチベーションと捉えることもできますが、私自身、モチベーションで一喜一憂したくない気持ちもあります。

 

「これを実現するために頑張ろう」というよりも、流れに良し悪しがある中でバランスを取りながら、長く続けられることを大事にしたいと考えています。

 

「会社を大きくしたい、生き残りたい」という気持ちはありますが、とにかくお客様に愛され続けて必要とされる限りは残れるはずなので、きちんと喜んでもらえる商品提供に焦点を充てることが大事です。

今後の展望をお聞かせください。

何度も繰り返して申し訳ないですが、「乳の価値をアップデートする」という言葉に対して背かないような経営姿勢を貫いていくことです。少しずつ身の丈に合わせてという風に考えていますが、この先新しいブランドもお届けすることで喜んでもらえると嬉しいです。

 

また、採用もしているので、当社のビジョンに共感できる方にぜひ来ていただけると嬉しいです。当社は商品を作る会社ですが、オンライン販売のほかに、百貨店など対面でお届けする機会もあります。

 

募集職種の中にはお店で働いていただく方もいるので、作ったり販売したりする工程に興味を持てる方に向いています。

 

焼き菓子であれば、全国の百貨店で販売することもあり、その都度出張に行くこともあります。そういった出張も楽しみながら携わってくれると嬉しいです。

 

当社のビジョンへの共感がベースにありつつ、お客様との接点であったりものを作ったりする部分に興味をお持ちいただける方がいれば、ぜひご連絡ください。

 

現在開発中の新商品はあるのでしょうか?

たくさんありますよ。話せる範囲内の内容にはなりますが、アイスクリームであればレモン味のシャーベットを販売する予定です。レモンは夏をイメージしやすいですが、実は4月頃には収穫が終わってしまいます。

 

11月頃は緑色だったものが1月頃から黄色のレモンになります。そこから3、4ヶ月で1年分のレモンシャーベットを作り切らなくてはなりません。やはりファンになってくださったお客様に毎年同じ時期に商品を提供する役割もあるので、新規商品も大切ですが、既存商品を確実にお出しすることも欠かせませんね。

 

起業家へのメッセージをお願いします。

起業するにあたって良いパートナー、良い仲間に出会えるといいですね。

 

この会社は1人では作れなかったと思います。当社はまだまだ若い会社ですが、従業員も含めて、とても助けられています。1人での起業も決して悪くないとは思うのですが、おすすめするとしたら、1人でも2人でも仲間がいると成長速度も上がると思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:西尾 修平 氏

2003年に大手人材情報サービス企業に入社し、人材採用コンサルティングや子会社経営企画等を担当。その後、東証マザーズ上場IT企業の取締役等を経て、2016年に製菓のスタートアップ企業に参画。副社長・社長として新ブランドの立ち上げ、海外展開等を推進。2019年4月、クラフトアイスクリームブランド「HiO ICE CREAM」を創業。

 

企業情報

法人名

株式会社HiOLI

HP

https://hioli.co.jp/

設立

2018年8月

事業内容

 

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