株式会社Zenyum Japan 代表取締役社長 伊藤 祐
株式会社Zenyum Japanは、歯の矯正治療で使用するマウスピース装置を製作しています。通常は高額な資金を要する全顎矯正治療も、Zenyum(ゼニュム)ではリーズナブルな価格で提供し、お客様のアフターサポートでも高い評価を得ています。外資系企業の強みを最大限に活かし、日本国内のシェアの拡大について精力的に取り組んでいる同社の代表取締役社長である伊藤 祐氏に詳しくお話を伺いました。
アジア全体が市場だから実現できた低価格のマウスピース矯正
事業の内容をお聞かせください
ゼニュムはマウスピース矯正のメーカーです。
本社がシンガポールにあり、2021年9月より日本でサービスを開始しました。日本国内の歯科医院と提携し、リーズナブルかつ高品質なマウスピース矯正を提供しています。
日本では歯の意識が低く、マウスピース矯正の認知度も低いのが現実です。そのため国内の需要が小さく、1つの会社でのマウスピース装置の生産数に限りがあります。
当社では、アジア全体が市場です。台湾やシンガポール、香港、マレーシア、タイ、ベトナムなどアジアの大きな国での市場を獲得しています。そのため、大量生産が可能となりコストを大幅に抑えられています。
ゼニュムは、健康面に配慮した美しい歯並びの実現のために、最大20本の歯を対象とする部分矯正や、すべての歯を対象とする全顎矯正を提供しています。
価格だけではなく、お客様のサポートにも注力しており、現在多くの歯科医院では、矯正治療における不安などのメンタル面のサポートに充分なリソースを割けていません。しかし当社では専属スタッフが医療外のサポートを担当しています。
コストやパフォーマンス、アフターサービスまでを含めて、マウスピース矯正であればゼニュム以外の選択肢はないと言い切れるほど、自信を持っています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
コンサルティングの仕事をする中で、自分が良いと思ったサービスを広めたいと思ったのがきっかけです。
私は高校生までは勉強に打ち込んでいたのですが、大学ではやりたいことや将来なりたいものが見つからない日々を過ごしていました。就職活動をする中で、一生懸命働くならなるべく稼ぎたいと思い、アクセンチュア株式会社に入社しました。
そこではコンサルティングの仕事をしていましたが、思うように昇進できず非常に悔しい思いをしていました。その後、転職をしコンサルティングファームを合わせて9年ほど経験をしました。
ただ、コンサルタントはアドバイザーであり、自分でビジネスをしたり売り上げを出したりすることはできません。そこで、自分が良いと思ったサービスを世の中に広めたいという気持ちが強くなり、ホテル系のスタートアップに携わったのですが、コロナにより状況が非常に悪くなってしまいました。
そのような経験から、自分がトップになるしかないという思いにたどり着きました。そのタイミングでゼニュムの立ち上げのオファーをいただき、今に至ります。
本当に良いと思うものだけを提供する
仕事におけるこだわりを教えてください。
「自分が本当に良いと思うことをする」ことです。
コンサルティングをしているときは、成果を出したいという気持ちだけが前に出てしまい、仕事がうまくいかないことが多くありました。
現在はゼニュムのマウスピース矯正を選んでもらえば売り上げになりますが、「この人の場合はマウスピースではなくワイヤー矯正の方が良いな」と思えば、その人にあった最善な方法を提案するようにしています。
短期的な売り上げにならなくても、自分がやっていることと言っていることの矛盾がなくなれば、言葉に重みが出てお客様からの信頼に繋がっていくと思っています。
私は自分のスキルやサービスがその方のためになるのであれば強くおすすめしますし、そうでなければおすすめしません。「その方のためになるかどうか」を軸で考えることは、一貫して行っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
日々直面しているのは、外資系企業ゆえの共通認識の違いです。
日本人の感覚だと理解できることが海外のメンバーと意見が合わないこともあり、どのように認識を合わせるのかは今も課題の一つです。
また、日本におけるマウスピース矯正の認知度の低さも日々痛感しています。「本当に安全なのか」「歯並びは綺麗になるのか」と思っている方も多いですし、当社が外資系企業という理由で、懸念されることもあります。このようなお客様の抵抗感や不信感を一つひとつ解消していく必要があります。
具体的には、お客様に高品質なサポートを提供し、「ゼニュムを選んでよかった」と心から感じていただき、その結果として、ご家族やお友達を紹介いただくような良いループを作っていけるように試行錯誤しています。
最近はゼニュムで矯正して良かったというお声をいただく機会が増えてきました。ゼニュムを知ってくださっている方も増えてきているので、地名度の壁は今でも抱えていますがクリアしつつあると感じています。
意味がある仕事をしているという充実感
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
一つは、自分がゼロから作った責任感です。
ゼロの状態からゼニュムを作った分、社員やパートナー契約をしている歯科の先生方、過去・現在のお客様に当社に関わって良かったと感じていただける以上はその信頼に応えたいと思っています。
もう一つは、頂いているお金以上の価値提供です。
意味のある仕事をしていると思える瞬間は、実はそれほど多くないと過去の経験から思っています。データ分析やパワポ作成をしながら、結局これがどうなるのかわからないというフラストレーションを抱えながら仕事をした経験もあります。
ですがゼニュムでは、プロダクトがありその過程やゴールが明確です。意味のある仕事をしていると感じることは、人生を充実させるために欠かせない要素だと思います。自分のモチベーションかつ日々頑張る源泉になっています。
社員にも、意味がわからないまま仕事をして欲しくないと思っています。一つひとつの仕事において、「このプロセスの中で数字を上げるためにしている」「数字に繋がるかわからないけれどお客様の満足度のために必要」などの説明をその都度行い、モチベーション高く仕事に取り組める環境を整えています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
「マウスピース矯正といえばゼニュム」という第一想起を取ることを目標としています。そのためにデジタル広告やSEOなどのオンラインでの対応を前提としながら、オフラインへの進出を予定しています。
チラシや電車内の広告をはじめ、20-30代の女性というターゲット層が多い美容室でタブレットで広告を出したりと、オフラインでも広めていけたらと思っています。
歯に興味がない方にも「歯並びって大事なんだ」と思っていただき、ゼニュムを選んでいただけるような形にしていきたいです。
「負けても得るものがある」という考えでは成功できない
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業が本当に最善の方法か考えるべきだと思います。
昔と違い今の日本はサービスが飽和状態で「これがないと絶対にダメ」というものでないと売れないと思います。起業をしていても、大手企業のサービスを安く提供していたりと苦しんでいる方が多い印象です。
良いものを作ってもネットですぐに広まり価格の叩き合いになる可能性も高いです。そんな状況の中で、ゼロから起業するのはハードルが高いと感じています。ただネガティブなことを言われて躊躇するぐらいなら起業しない方が良いと思います。その上でやるのであればぜひチャレンジして欲しいです。
「上手くいかなくても得るものはある」という考え方がありますが、それでは成功できないということです。「アオアシ」というサッカー漫画があるのですが、その中で「負けて得られるものなんてない。全部言い訳だ。勝つことで俺は、前に進む。」という熱いメッセージがあります。
プロセスには価値がありますし、どんなことからも学ぶことはできます。ですが一方で、勝たないと意味がないことも真実です。私自身、良いプロセス、努力を積み重ねることを前提としつつ、常に勝ちにこだわってこれからも進んでいきます。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:伊藤 祐 氏
2011年:アクセンチュア株式会社入社
2016年:フロスト・アンド・サリバンジャパン株式会社入社
2019年:OYO Japan株式会社(現Tabist株式会社)入社
2021年:株式会社Zenyum Japanの立ち上げ、代表取締役社長に就任
企業情報
法人名 |
株式会社Zenyum Japan |
HP |
https://www.zenyum.com/jp-ja |
設立 |
2021年09月 |
事業内容 |
マウスピース矯正メーカー |
沿革 |
2018年:シンガポールにてZenyum設立 2021年:Lキャタルトン・セコイアキャピタル等複数の投資ファンドより4,000万ドル(約60億円)の資金調達実施 2021年:Zenyum9拠点目としてZenyum Japan設立 2024年:東京、千葉、群馬、新潟、愛知、大阪、兵庫、福岡、北海道など日本主要エリアにてサービス展開中 |
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