【#173】独自の遠隔就労支援プラットフォームを提供。加速する人手不足問題に真っ向から挑み、日本経済の発展に寄与したい|取締役副社長 太田 知孝/執行役員・ハードウェア開発マネージャー 中野 人夢(株式会社ジザイエ)
株式会社ジザイエ 取締役副社長 太田知孝(左)/執行役員・ハードウェア開発マネージャー 中野人夢(右)
「すべての人が時空を超えて働ける世界へ」をミッションに掲げる株式会社ジザイエ。リアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム『JIZAIPAD』を開発し、労働⼒不⾜が問題視されている⽇本経済の発展に寄与しています。2022年に設立したばかりのスタートアップ企業にもかかわらず、すでに幅広い領域から相談が絶えないという同社。今回は、取締役副社長の太田知孝氏と、執行役員 ハードウェア開発マネージャーの中野人夢氏に、事業内容や起業の経緯、今後の展望などを詳しく伺いました。
遠隔就労を世の中に広めていくためのプラットフォームを提供
事業の内容をお聞かせください。
中野氏:
メインで行っているのが、リアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム『JIZAIPAD』の提供です。現時点では、低容量・低遅延を実現する映像伝送に特化した映像伝送に軸を置いて事業を展開しています。
最終的な目標を「遠隔就労を世の中に広めていくため」と掲げているのですが、それを達成するには、どこにいても映像が途切れずに見られることが必須条件です。例えば、建設現場や工場内だと電波が入らなかったり、映像に遅延が起きてしまい操作できなかったりといった声を聞きます。そうした課題を解決するため、私たちはソフトウェア・ハードウェアの両面から低容量・低遅延のシステムを提供しています。
太田氏:
私たちが遠隔操作に使用しているカメラは、0.2秒以下で映像が伝送されるので、リアルタイムで見て操作できることが強みです。カメラの開発から操作まで網羅的に手がけている企業さんは他にはないと思います。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
太田氏:
弊社CEOの中川純希と私は、元々株式会社リクルートホールディングスで同期として働いていて、仕事以外にも「おもしろいことをやろう!」と言って、一緒に週末起業をしていました。
事業を始めたきっかけは、中川の母校である東京大学の稲見昌彦教授を紹介してもらったことです。稲見教授は「JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト」を主導しており、ジザイエの前身となる会社で、このプロジェクトに産学連携や知財管理、社会実装、アウトリーチの担当として参画しました。
自在化身体技術とは、人間がロボットやAIと人機一体となり、まるで自分の身体のように自己主体感を保持したまま自在に行動することを支援する技術です。同プロジェクトは、自在化身体技術を社会・産業ニーズに対応した新技術として確立しようというもので、東京大学をはじめ、早稲田大学、慶應義塾大学、豊橋技術科学大学、フランス国立科学研究センター、電気通信大学が参画していました。
そして同プロジェクトの成果を事業化という形で社会実装するために、私たちは“自分たちが取り組みやすいことからアプローチしよう”という話になりました。自在化の「操作する/乗り移る」に共通しているのは、見て操作するところだと私たちは理解していたので、まずはそこから取り組んでみることになり、ジザイエが誕生しました。
当事者意識を持って、楽しく仕事を進めていく
仕事におけるこだわりを教えてください。
太田氏:
楽しくやることが大事なことではないでしょうか。
社員同士が楽しいのはもちろんですが、技術に興味を持って楽しくやることによって、常に最新の技術をキャッチアップできると考えています。私たちは最新の技術を追っている自負があります。
また、弊社では4つのValuesも掲げています。
株式会社ジザイエのValues
- We are Positrons
- We are Owners
- We are Artisans
- We are Vanguards
私たちが事業を始めたとき、ちょうど新型コロナウイルスが猛威をふるっていました。あの時は、どの企業も「仕事上の悩みを相談できない」「良い提案に対していいねを言えない」など、社内の人間関係が希薄になっていました。
そこで、弊社では今いるメンバー同士が仲を深め、誰かが困ったらすぐにフォローに入れるようにしたいと考えました。せっかくベンチャー企業に入ったのだから、事業を自分事と捉えてほしい、当事者意識を持ってほしいと思い、4つのValuesを作りました。
中野氏:
顧客が抱えている課題を解決するためには、実際に触ってもらわないと分からない部分が多々あります。そのため、プロトタイプをなるべく早い段階で作り、実際に試してもらい、そのフィードバックをもとにブラッシュアップしていくというサイクルを大切にしています。
また、システムを開発するにあたって、私が手がけているハードウェアだけでは解決できないこともあります。良いサービスを生み出すには、ソフトウェアのチームとの協力体制が必須です。お互いに遠慮せずに相談して進めることも意識しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
太田氏:
シェアオフィスに入ったとき、事業のだいたいの方向性は決めていたのですが、具体的な施策は未定でした。シェアオフィスなので夜になると周りの企業の方々が退勤していく様子が見えます。しかし、私たちだけはオフィスに残って議論を続ける生活が長く続きました。その時は「本当に私たちの事業は勝てるのだろうか」と不安になったことを覚えています。
そんな中、初めて弊社の製品が導入されることが決定しました。お客様は農家さんで、カメラは温室に設置されることになりました。1〜2ヶ月という短期間で湿気対策を行い、設営をしなければいけなかったので、かなり大変でした。
実際に、農家さんとプロジェクトを進めていくにあたり、温室での作業はスタッフ個人の感覚に依るところが大きいことが分かりました。そのため、実際に現地でカメラを設置して、どのタイミングで水をあげているのか、どのくらいの日照りなのかなど、業務内容を事細かに把握しました。その上で改善を重ね、最終的に誰が対応しても均一なクオリティで栽培できるようになりました。
今では、お客様から「これまで自分たちだけで遠隔操作に取り組んでいたけれど、ジザイエさんに入ってもらったおかげで最適化できたよ」と感謝されるまでに成長しました。
中野氏:
ありがたいことに、最近は多方面の業界からお話をいただけるようになりました。現在は、これまで私たちがやってきたことを一つの製品としてまとめ、それを幅広く拡販していく段階だと認識しています。
また、リリース後の保守も含めて考えることも重要です。これを現在の体制でやりきれるかどうか、ジザイエにとって今が一番の正念場であると思っています。お客様のお困りごとを解決しつつ、社内の自在化もしていかなければいけないと考えています。
加速する人手不足問題を見据えた事業展開
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
太田氏:
「働くなら直接的に誰かのためになりたい」と思っていました。私は、おじいちゃん・おばあちゃん子で、昔からどうすれば2人が楽しく生きていけるかをよく考えていました。その中で、社会とのつながりを持ち続けることが良いのではないかと思うようになりました。
もし年齢や居住地、ライフスタイルのハードルを超え、遠隔で働けた場合、仕事や若い社員とのコミュニケーションを通じて良い刺激を受けられます。また、企業にとっても人手を確保できるので両者にとってメリットと言えます。そうした社会とのつながりをずっと持っていられるような世界を作れるのであれば、世代を超えてベネフィットをもたらすと思い、これをモチベーションにしています。
中野氏:
私たちが開発した商品がお客様の役に立ち、課題を解決できたときには直接感謝されることが多々あります。そうした声を聞くと、非常にモチベーションにつながります。
今後、日本では確実に人手不足問題が深刻化するので、遠隔操作はより必要になってくるでしょう。現在の弊社の規模感とフェーズを考えると、実際に現場に入りながら、研究開発ベースから携わらせていただけていることは、非常に貴重なことではないでしょうか。開発担当として得がたい経験を積めているので、大変ありがたいです。
世の中から孤立している人をなくし、日本経済の発展に寄与したい
今後やりたいことや展望をお聞かせください。
中野氏:
遠隔操作はまだまだ研究段階のフェーズです。導入するとなると法律的にNGなケースもあります。そういった面が国内・海外でもクリアされていけば、私たちの製品がより導入されていくと思います。
ゆくゆくは私たちのシステムの映像を介して、何かを操作するときに、より直感的かつ半自動的に操作できるようにしたいです。例えば、1人が10現場を同時にチェックできるような体制です。
まだ話がスタートしたばかりですが、医療業界からも相談がきています。薬品をつくる現場では、入室するときに厳重な除菌が必須ですし、薬品を取り扱う際の危険性もあります。また、新人スタッフを育成する際にも先輩スタッフが後ろにつきながら指導しなくてはならないそうです。これらの作業を遠隔で行うことができれば、作業時間の効率化が実現でき、結果として人的コストの削減にも繋がります。究極的には全自動化が理想ですが、その前のステップとして遠隔操作で何ができるのかを見極めています。
太田氏:
機械ではなく人間がチェックした方が良いとされている領域は意外と多く、何か問題が発生したら人間が止めたり、横でダブルチェックしたりと、その需要は幅広いです。例えば、最近よくニュースで目にするようになった自動運転の技術や、警備業務にも当てはめられます。身近なところ、当たり前だと思っているところに自在化の可能性が眠っているので、そのニーズに応えていきたいです。
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。
太田氏:
ある種当たり前だと思われていることでも、しっかりやり切ってみるとビジネスになり、評価されることに、経験を通じて気付かされました。実際私たちのサービス内容も、「遠隔で映像が見られる」との説明だけでは魅力が伝わりづらいかもしれませんが、実は需要が高いサービスです。
例え既存技術の組み合わせであっても、最後までやり切ると案外ビジネスになります。周りからくだらないと思われても、真面目にコツコツとやることが大事だと思います。
社会的意義がありつつ、ビジネスに挑戦したい方を募集しています。
人手不足問題の解決という社会的意義を感じつつ、ビジネスに挑戦したい方を募集しています。リアルタイム遠隔就労支援に特化した新しい技術に取り組めますし、お客様の話を現場で聞く貴重な経験も積めます。詳しい採用情報は下記をご覧ください。
URL:https://recruit.jizaie.co.jp/
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:
取締役副社長 太田知孝 氏
株式会社リクルートホールディングスに新卒入社後、新規事業の部署で主にバックエンドのエンジニアを担当。社内の新規事業提案(NewRing)にて優秀賞を受賞。
学生時代から10社以上の受託業務、2社のベンチャー企業のサービス立ち上げなどに従事し、教育に興味があったことからLifeisTech!にて4年間iPhoneコースのカリキュラム設計、大学生講師の育成などに従事。
また、日本最大級のビジネスコンテストで企業賞を獲得。
執行役員 ハードウェア開発マネージャー 中野人夢 氏
ソニー株式会社に新卒入社後、医療用プリンターやカメラの機構外装設計、プロジェクトマネジメント、量産管理などを担当。
ソニー株式会社卒業後は合同会社を設立し、個人や小規模ベンチャーのものづくりなどをサポート。
株式会社ジザイエに入社後は、ハードウェア開発マネジメントおよび開発作業を担当。
企業情報
法人名 |
株式会社ジザイエ |
HP |
|
設立 |
2022年11月 |
事業内容 |
リアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム『JIZAIPAD』の開発・運営および関連サービスの提供 |
沿革 |
2022年11月:ジザイエ設立 2023年5月:シードラウンドにて総額1.5億円の資金調達を実施 2023年6月:大手町ビル Inspired.Lab 5階に移転 2023年9月:リアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム『JIZAIPAD』正式版サービス提供開始 2024年3月:シリーズAラウンド・ファーストクローズにて総額約2億円の資金調達を実施 |
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