株式会社ネームレス 代表取締役 金田 隼人

起業創業支援からプロデューサーと呼ばれる人材の育成まで、幅広いプロデュース活動を展開している株式会社ネームレス。何もない状態から本質を見極め、価値という名前を付けていく独自のメソッドで、これまで多くの企業や自治体、教育現場を支えてきました。起業支援やプロデューサーの輩出を通して日本を活性化させたいと語る代表取締役の金田氏に、詳しい事業内容や今後の展望などを伺いました。

 

確率ではなく可能性にかけたプロデュース手法で道を切り拓く

事業の内容をお聞かせください

当社の事業は大きく分けて3つあります。

 

1つ目はプロデュース事業で、様々な企業や自治体の街づくりなど、新規事業に関するプロジェクトを立て、それを実際に形にして価値として世の中に発信していくところまでをリードさせていただいています。

 

2つ目は、プロデュースシンキング®︎事業です。当社がプロデュース事業の実践を通じて得たプロデュースに関する知見を、プロデュース思考という形で体系化して、企業の新規事業部門あるいは学校等の教育機関に対して、研修サービスを提供させていただいています。

 

現在、経済活動がオペレーション型からプロジェクト型に大きく変遷してきている中で、今後は新規性の高い領域を中心にこれまで以上に複雑になり、様々な人や組織が枠を超えてプロジェクトに参画して共通の目的に向かっていくことが必要不可欠です。その上で、どのようなビジョンを持ち言語化するか、どのようなリソースを調達するか、といった部分を考えることが重要になります。

 

そこで当社は、プロジェクトの方針をしっかりと整理し、リソースを適切に調達して実装していく「プロデューサー」の育成を体系化しリードします。

 

プロデュースシンキング®︎の方法としては、「マインド」「ビューポイント」「スキル」という3つの要素を基礎OSとしています。マインドの土台部分である考え方や思考などを改めて自己認知し、物事の価値を見極め、チームづくりをしながら、その上に互いのスキルをどのように統合して形にしていけるかというプロセスがポイントです。

 

3つ目は、起業創業支援です。これまで20社に対して、創業時から資本参加や経営参画をさせていただいたり、50社ほど設立に関与させていただいたりしました。新しく起業、創業される方とご一緒する機会が大変多くなっています。

 

また、当社が資本参加させていただいている起業家同士でネットワークを創り「BLUE SKY UK」というコミュニティを立ち上げています。

 

事業活動がそれぞれ進んでいく中、お互いに繋がりを持つことで協同できる事業を生み出したい、また、それぞれの知見や経験をシェアする場を作りたいという想いから発足しました。コミュニティを大きくするというよりも、クローズドなコミュニティとして、勉強会や情報の共有などを行っています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私が今の事業を始めたのは、新卒で会社に入社する前に世界一周をしながら大学巡りを行っていた際に世界の教育環境に興味を持ったのがきっかけでした。

 

世界中の学生と交流して、海外の学生は将来やりたいことが明確で、その実現のためにどのような活動をしているのかを語ることができる学生が多い印象を受けました。そこで、日本の教育に非常に危機感を感じました。

 

その後会社に入社し、教育事業を立ち上げて、営業学を世の中に提唱するということを目的とした教育プログラムを大学向けに提供していました。私は4年間の在籍期間中、年間800回、トータル3,000回以上学生と面談をし、将来への希望、あるいはやりたいことに対する不安や葛藤を含めてヒアリングを行いました。その中で、単に我々が学びを提供するだけの双方向のやり取りではなく、同じ方向を向いて一緒に活動することが自分のやりたいことなのではないかと気づきました。その時、自分の中にプロデュースという言葉が浮かび上がりました。

 

また、私自身が渋沢栄一の考え方に感化されたことも事業に大きく関係しています。彼は生涯を通じて、環境によって柔軟に変化しながら、自分の人生を日本のために尽くしてきました。単に経済を追求するだけでなく、企業としての社会的責任、今で言えばESG経営などを当時から重んじていて、道徳をもって世のため人のためという観点を持ち続けていました。そんな渋沢栄一の文献を読んだところ、彼のことを「プロデューサー」と表現する記事がいくつかあり、自分もそうなりたい、そういう人生を過ごしたいと考えるようになりました。

 

価値を生み出すには真っ新な状態から

仕事におけるこだわりを教えてください

如何に「何者でもない」状態を大事にできるかということです。

 

「何者か」になってしまうと、瞬間的な一歩を踏み出しにくいのではないかと感じます。本当に追求したいのは、挑戦したいことに対して伴走し続けるということであり、それがプロデュースなのではないかと考えています。そのような働き方をすると決めた以上は、「何者か」になってチャンスを逸してしまうことがないようにしなければなりません。

 

今は様々な仕事やプロジェクトに関われる姿勢を意識することで、自分の仕事の幅を広げることに繋がるのではないかと考えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

過去を遡ると、事業の失敗よりも人付き合いの失敗の方が多いと思います。

 

当社は最初、複数名で立ち上げていました。当時は今のような確固たるプロデュース事業というものがない中、仲間が離れてしまい非常に辛い経験をしました。しかしこの失敗は社長である自分の責任でもあると思っていて、今となってはこの失敗も含めて経営なのではないかと感じます。新しいことに挑戦するということに失敗はつきものだと思います。

 

また、自分がやりたいことに前例がない領域は、経済合理性の観点からなかなかお金にならない難しさがあります。そういったところに私ももっと向き合っていきたいと思いますし、その上で失敗や課題があったとしてもそれも楽しむことが大切です。様々な経験がプロデュースシンキング®️のメソッドの深化にも繋がりますし、それが次の挑戦に活きてくると思っています。

 

一億総プロデューサー社会でより良い未来を創造したい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

常に学びながら自分の人生を楽しみたいと思うこと、そして、自分が事業活動を終えた後も世の中に何かを残したいという意欲が自分自身の活動の源泉に繋がっています。

 

私はイノベーティブな事業創出ができる人間ではないと自認しているので、どちらかというと人に帰結するような概念や思考、あるいはそのような学習プログラムや経験を積める機会や環境のようなものを残したいと考えています。

 

また、現在の1番の目標は「1億総プロデューサー社会の実現」です。私は全ての人がプロデューサーたる素養を育むことはとても重要だと考えています。

 

現代は、プロジェクトチームの中で1人だけプロデューサーがいればいいという時代ではありません。自分自身を含めみんながプロデューサーのような視点や思考を持っていれば、活動において共通言語化しやすくなったり、みんながそのプロジェクトをどうしていくべきか主体的な視点で臨めたりすることができます。

 

全員がプロデューサーであり、その上でそれぞれ専門スキルがあり、役割があるという状態の方が健全ですし、物事が前に進みやすいと思います。これがまさに私の目指す「1億総プロデューサー社会」というものです。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

今後は、自分の意思を持って挑戦する人を1人でも多く増やしたいと考えており、そのためにあらゆる仕掛けを創っていきたいです。現在、Team Energyという30社のホールディングス会社の新しい会社づくりを推進する役割を持つ役員として参画しており、向こう20年で1万社を創出することを目標としており、社長を生み出し続け、会社を創り続けていきたいと思っています。

 

その活動の一環で、CEOオーディションという社長発掘プロジェクトを行っています。これは「人は誰でも社長になれる」と謳っており、ビジネスプラン不要で年齢や経験も不問となっているのが特徴です。夢を持つ全ての人にチャレンジできる場を提供したいと思っており、今後はもっと全国的に展開して行きたいと計画しているところです。

 

スタートを切ってしまえば見える景色は変わる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業しよう、挑戦しようと思ったら、まず会社を創ってしまうべきだと思います。

 

起業する際の準備に対する考え方は人それぞれですが、準備に時間を取られてしまい、気付けば時間が経ってしまったという人も少なくないでしょう。自分の旗を掲げて会社を設立した後の景色は、設立する前の景色と大分違うものがあり、その景色を変え続けようと思うことが大切です。

 

起業しようと思ったらまずは一歩を踏み出す、それが物事を早く前に進め、様々なことに気付くためにも必要なことだと思います。

 

自分自身をセルフプロデュースしていくには何が大切でしょうか?

自分をプロデュースするには、まず正しく自己認知し、自分自身を表明できる状態を整えることが大切だと思います。

 

そのためには、他者と自分の違いに気付き「これと言ったらこの人だ」という独自の価値基準となる土俵を創ることができるかがポイントです。これが、セルフプロデュースのスタートラインだと思います。

 

当社では、0→1を創出する視点やアプローチではなく、元々誰もが必ず複数個持っている「0.1」の価値を一緒に発掘することからプロデュースを行っていますので、その価値を形にしていきたい方は是非ご相談ください。

 

特殊な才能や資金力がなくても、徹底的な対話を通して自己の可能性を見つけ、それを必要としている人に価値として提供していけるよう取り組んで参ります。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:金田 隼人 氏

1990年、埼玉県深谷市生まれ。

2011年、大学在学中に、フリーペーパーの発行、ビジネスコンテストやプログラミングコンテストの主催、地方大学とベンチャー企業のマッチングイベントをはじめとした企業の新卒採用コンサルティングを経験。その後、世界一周大学巡りを企画実施、複数社からスポンサーを募り23カ国50大学を訪問。

2012年、獨協大学経済学部経営学科を卒業。

2013年、株式会社営業課 取締役副社長就任。「営業学」の研究をテーマにPBLを活用した独自プログラムを大学教育機関・企業・大学生向けに展開。

2016年、株式会社ネームレス創業 代表取締役就任。NHK総合「旅旅しつれいします。」企画協力。大手企業・老舗企業など複数の企業や組織への新規事業に参画。

2017年、大阪イノベーションハブ初の東京担当プロジェクトディレクター拝命。

2018年、同郷の渋沢栄一氏に幼少時代から影響を受けており、起業における事業構想・投資・経営支援等の活動を本格始動。

2019年、組織改組の一環により株式会社ネームレスを再度設立、代表取締役に就任。プロデューサー教育メソッド「プロデュースシンキング®︎(プロデュース思考®︎)」の研究および研修事業を開始。PRODUCE THINKING LABプロジェクト始動。

2020年、起業家による社会彫刻・共存共栄プロジェクト「BLUE SKY UK」を発足。

2021年、株式会社TOKYO EDUCATION LAB 共同創業、取締役副社長に就任。Team Energy株式会社に参画、執行役員就任。Columbia Business School Venture For All Program Japan 修了。

2022年、社会構想大学院大学 実務家教員養成課程 修了。CEOオーディション総合プロデューサー就任。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授就任。青楓館高等学院顧問就任。Team Energy株式会社 取締役CPOに就任。かわさきFMラジオ「夢と事業が育つラジオ」MC担当。

2023年、深谷市渋沢栄一政策アドバイザーに就任。一般社団法人PRODUCE THINKING LAB設立、代表理事就任。

2024年、事業構想大学院大学 事業構想研究科 修了(事業構想修士 / MPD取得)。深谷市教育委員会「ふるさと ふかや・渋沢学」推進会議委員受嘱。過去20社の創業時より資本・経営参画、50社の設立に関与。

 

企業情報

法人名

株式会社ネームレス

HP

https://nameless.work/

設立

2019年4月17日 設立

事業内容

  • プロデューサー人材育成
  • プロデュース業務全般
  • 出資先企業のマネジメント

沿革

2015年 個人プロジェクトとしてnameless projectを発足

2016年4月 株式会社ネームレスを東京都新宿区で創業

2019年4月 組織再編により新たに株式会社ネームレスを東京都渋谷区で創業

2020年7月 資本金を500万円に増資

2021年3月 本社を東京都港区に移転

2022年7月 資本金を1000万円に増資

2022年10月 本社を東京都港区内で移転

 

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