株式会社TalentX 代表取締役社長 鈴木貴史

株式会社TalentXは、転職・採用市場に新しい概念を創るという想いで2015年にスタートした会社です。労働人口が減少し採用が激化する中、企業が自前で優秀な人材を獲得できる採用マーケティングのプラットフォームを展開しています。令和を代表するビジョナリーカンパニーを目指す同社の代表取締役社長、鈴木貴史氏にお話を伺いました。

 

自社採用、応募者データの資産化で、採用競争力を高める

事業の内容をお聞かせください

採用活動をマーケティングに変革し、優秀な人材を効率よく自前で獲得できるタレント獲得プラットフォーム「Myシリーズ」の企画、開発、運営をしています。

 

TalentXはひとつの採用手段を提供しているのではなく、日本の採用活動をマーケティングに変革するチャレンジをしています。

 

これまでは企業が採用活動をする際、採用サイトを外部の制作会社に依頼し、人を集める段階ではエージェントや求人広告に依頼して候補者を紹介してもらい、入社後には研修会社に依頼してエンゲージメントを高めるといった外部に依存した非効率かつ高コストな採用活動になっていました。

 

「Myシリーズ」を活用することで、外部のエージェントや求人に依存した採用活動ではなく、自社独自で優秀な人材を効率よく自前で獲得できるようになります。

 

具体的には、採用ブランディングサービス「MyBrand」で簡単に採用サイトやオウンドメディアを制作することができ、そこで作ったコンテンツを従業員に展開してリファラル採用サービス「MyRefer」を活用することで、自社のつながりを活かしたリファラル採用を促進することができます。また、採用MAサービス「MyTalent」を活用することで、一度つながりをもった候補者を掛け捨てにすることなく、資産にすることができます。

 

このように、エージェントや求人広告に依存した従来の採用手法から脱却し、競合とバッティングせずに、転職潜在層から応募獲得、自社の魅力付け、入社後の活躍を見据えたタレント・アクイジションの実現を目指しています。

 

メインターゲットは採用を強化している企業で、その結果、システム導入企業の約60%以上が従業員1000名以上の会社になっています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

採用市場において、本質的なマッチングが行われていないという課題認識からMyRefer事業を立ち上げました。

 

企業は、外部の採用支援サービスだけでは自社の魅力を十分に訴求できず、持続可能性がありません。そのため、人が足りなくなったら毎年イチから募集をして人材を補っています。

 

一方、求職者も、履歴書だけでは自分の本質的な魅力を伝え切れず、学歴や年齢、経験年数や転職回数などの少ない情報でデジタルにスクリーニングされてしまっています。

 

こうした既存の構図を変え、人と人とのつながりを介した本質的なマッチングを行いたいと思ったことが事業を始めたきっかけです。

 

“世の中初”は、自らがトレンドを創ることで生まれる

仕事におけるこだわりを教えてください。

常に、オリジナリティを出していくことにこだわっています。

 

これは、会社のバリューの1つである「Be Columbus (コロンブスの卵であろう):リーダーは『初』を生み出す、”世の中初”コロンブスの卵のように」という指針にも紐づいた考え方です。

 

スタートアップの事業の作り方にはホットトレンドがあり、最近はこういうのが流行っているらしいなどという情報をよく耳にしますが、新規事業を創る際は、単にトレンドを取り入れたら良いわけではありません。

事業も、企業のカルチャーも違うわけですから、成功の方程式は全く異なるはずです。だからこそ、トレンドに惑わされずに既存の当たり前を疑い、自分たちがトレンドを生み出すんだということを、私自身とても意識しています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

まず、事業を展開する上では、創業時が一番大変でした。

 

2015年にリファラル採用サービス「MyRefer」の提供を開始した際、市場は興味を示してくれ、無料トライアルに数日で200社以上の申し込みが殺到しました。ナショナルクライアントからも複数申し込みがあり、手応えは十分でした。

 

しかし、その当時はリファラル採用という概念が世に浸透していませんでした。市場の興味自体は大きい一方で、実際にプロダクトを積極的に活用してリファラル採用を推進する企業は3割もおらず、7割は未活用という状況でした。

 

日本の大手企業の採用はこれまで新卒一括採用がメインであり、加えて人事と現場の距離感も大手になればなるほど遠いことから、現場の社員をリファラル採用に巻き込んでいくための社内調整が必要で、心理的負荷が非常に大きいことがわかりました。


起業から黒字転換するまでのいわゆる創業時の“死の谷”で、誰もが陥るところですが、既存のマーケットが何もないところから生み出していく事業を展開していこうとしていましたので、なおさら大きな壁でした。

 

また、組織的な面では、サークル的な運営から筋肉質な組織へと転換していった際にも壁がありました。

 

創業時から全員フラットな関係で、皆でアイデアを出し合い、協力しながら良いものを生み出そうとロマンを先行させて走ってきました。ただ、社員数が30名を超えてくると1人で全体を見ていくには限界があり、組織作りが必要だと感じ始めました。ちょうどその頃、新型コロナウイルスの感染が拡大していました。

 

HR業界はマクロ環境との相関が特に高い業界であり、リーマンショックの際も、多くのHR企業が人員削減を実施するほどでした。我々のクライアントも各社採用活動を凍結する未来が見えていました。有事のタイミングだからこそ、『ロマン』も重要ですが『算盤』の方が重要だと、経営全体でリアリティを志向しました。

 

そうすると当然、組織の在り方が変わることになり、より筋肉質な運営にシフトすることになります。私自身、レポートラインや管理を強化する組織運営は志向していなかったため、少なからず葛藤もありましたし、組織の在り方が変わることにより、適合する人材やカルチャーも変わっていくことになります。



ただ蓋を開けてみると、コロナ禍でも昨対比160%の成長を遂げました。他社の多くが昨対比を下回るほどのパンデミックな時期でしたので、大変ではありましたが、結果的には強い組織が徐々に出来上がり、良かったと思っています。
このようなイノベーションは実行が伴って初めて成立するものであり、今の当社のバリューであるProfessionalism(プロフェッショナリズム)に紐づく部分だと感じています。

 

歴史を塗り替え、令和を代表する企業に

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

「自分にしかないとできない」と思って、業務に取り組んでいます。これは、モチベーションというよりも、「HRの歴史を塗り替える壮大なチャレンジ」への使命感に近い気持ちです。

 

また、社員の多くは、自己成長をモチベーションにしていると思います。当社は内発的動機づけによって成長を実感できるような人事制度などにもこだわっており、ひとり一人のチャレンジを後押しするカルチャーとなっています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

令和を代表する会社になることです。これは、私自身の人生をかけた一番の目標でもあります。

 

例えば、昭和の時代を代表する会社と言うと、大手自動車メーカーなどがすぐに思い付きます。平成も、インターネット関連分野で代表する会社があります。では、令和はどうでしょうか?この会社!と言える企業は、まだないのではないでしょうか。

 

令和を代表する会社を私は、「企業価値1兆円の会社」と定義しています。この会社であれば世界を変えてくれると思ってもらえる指標は、売上高でも年商でも利益でもなく企業価値だと考え、ベンチマークとして1兆円を目指しています。

 

そこを目指す過程で、HRだけに軸足を置き続けるところから脱却するフェーズが来るかもしれません。大事にしたいところはブレることなく、社員の若い力を駆使しながらイノベーションを起こしていきます。

 

採用を強化されているそうですね。どのような人材を求めていますか?

新卒・中途問わず募集していますが、いずれも熱意と志を持つ成長意欲のある人材を求めています。

 

激しく変化しながら成長していく企業文化ですので、目標設定が会社から示されるわけでも、KPIをクリアしていればOKという体質でもありません。自分自身がどうなりたいのか、1年後にどのポストにチャレンジしたいのか、それを手にするためにどういうミッションをやっていくのかを自ら考え行動していく方には挑戦の機会が溢れています。実際、社内公募制度もあり、長年営業に従事していた社員が自身のWILLをもって未経験の職種へ手を挙げて異動したケースもあります。

また、エンタープライズ向けのソリューション事業ですので、本質的な課題解決力も必要です。グレード別に求められるスキル、例えば「目の前の問題のインサイトを捉えて構造化する力」など、5段階のレベルを設定し、各グレードごとで具体的なスキルを定めています。こうしたシステムを活かしながら成長することで、ビジネスマンとしての戦闘力を身に付けていって欲しいと思っています。

 

採用情報▼

https://talentx.brandmedia.i-myrefer.jp/

 

リーダーシップを発揮した成功体験を起業につなげよう

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

学生時代に起業するよりも、まずは一度、事業会社で勤務することをお勧めします。

 

会社という組織がどのように動いているか、どのような制度設計になっているのかをより明確に理解することができるからです。もう1つ、起業して成功・成長する人は圧倒的なメンタリティーがあると感じています。

 

自分のやり方にこだわりすぎると、課題に気づかず、ある地点から成長できなくなります。成功者の多くは、どんな意見でも気づきをもらえる種だと思って、積極的にフィードバックをもらいに行くマインドがあります。そうすることで味方も増え、どんな壁でも乗り越えることができるのだと思います。

 

また、もし学生時代の経験として活きるものがあるとするならば、リーダーシップを発揮した経験が挙げられます。皆がワクワクする旗印を立てて、大義に向かう姿勢を見せることと起業は一緒です。

 

小学校の友だち同士、受験で共に頑張る仲間同士、大学の部活などできっと誰もが1回はリーダーを経験したことがあるのではないでしょうか。集団が小さくても、そこでの経験を成功体験として捉え、起業に活かしてください。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:鈴木 貴史 氏

起業家。『戦わない採用』著者。国内1,000 社、100 万名が利用する採用マーケティングSaaS を運営。2015 年、日本の採用の在り方に課題を感じ、TalentX を創業。日本初のリファラル採用サービス「MyRefer」など、タレント獲得プラットフォーム「Myシリーズ」の企画、開発、運営を行う。2019 年、経済産業省後援「第4 回HR テクノロジー大賞」採用部門賞、日本の人事部「HR Award2019」を受賞。2021 年、東洋経済「すごいベンチャー100」に選出。

 

企業情報

法人名

株式会社TalentX

HP

https://talentx.co.jp/

設立

2018年5月28日

事業内容

タレント獲得プラットフォーム「Myシリーズ」の企画、開発、管理及び運営

沿革

2015.4 株式会社MyRefer(現:株式会社TalentX)創業。

2015.9 日本初のリファラル採用サービス「MyRefer」をリリース。

2018.5 株式会社MyRefer(現:株式会社TalentX)設立。

2018.8 シリーズAにて総額3.6億円の資金調達。

2018.10 日本初のアルムナイ支援「MyReferAlumni」をリリース。

2018.12 新卒リファラル採用「MyReferCampus」をリリース。

2021.2 シリーズBにて総額6億円の資金調達。

2022.2 日本初の採用MAサービス「MyTalent」をリリース。

2023.2 株式会社MyReferから株式会社TalentXへ社名変更。

2023.2 タレント獲得プラットフォーム「Myシリーズ」提供開始。

2024.1 採用ブランディングサービス「MyBrand」リリース。

2024.5 採用コンサルティング&RPOサービス「RXO」提供開始。

 

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