株式会社Simplee 代表取締役 諏訪 実奈未

株式会社Simplee(シンプリー)は、宿泊先やイベント会場などに出向いて託児サービスを提供する会社です。パパやママが自分たちのしたいことを育児で諦めることなく、気軽に、そして罪悪感なく子どもを預けられるようにと事業を追求する、同社の代表取締役、諏訪実奈未氏にお話を伺いました。

 

育児を理由に諦めることがないように

事業の内容をお聞かせください

保護者と企業を、育児の視点からエンパワーメントする事業を行っています。

 

具体的には、「訪日観光客向けの託児ITソリューション」と、「国内事業者向け『出張知育託児』」を提供しています。

 

訪日観光客向けの託児ITソリューションは、多言語対応の予約・決済システムにより、訪日観光客が簡単に利用できる託児サービスです。観光業・エージェント・ホテルとの提携を通して、宿泊先・滞在先まで保育士を派遣します。予約は、スマートフォンのタップのみで完了します。

 

例えば、日本で能を堪能したいご夫婦がいらして、お子さんがまだ小さいので鑑賞中に預かってほしいといったニーズにお応えしています。

 

Simpleeがフォーカスしてるのは、保護者の体験と、お子さんの体験を最大化させることです。2024年から、託児中のお子さんを対象に、日本文化キッズプログラムの提供を開始しており、日本文化に触れる体験を通じて、親子共に豊かな時間を過ごしていただきたいと願っています。

 

また、国内事業者向け「出張知育託児」は、事業者・保護者の予約管理をITでシンプルに管理し、学会・イベント・パーティなどあらゆるシーンへの出張託児サービスを提供するものです。事業者様に用意していただくものは、託児スペースだけです。

 

これまでは出張ベースの単発での利用が多かったのですが、最近は、リピートされる事業者様が多いので、契約いただく形態での取り組みも進めています。例えば、ある行政の施設内にあるコワーキングスペースで検討しているのは、月2、3回を育児支援デーにして、その日にお子さんを連れてくる方に託児を提供するサービスです。育児支援を身近にしたいという要望から、サブスクリプションのような利用を想定し、動き始めています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私自身の育児経験がきっかけです。

 

イベントに参加する際、会場近くの託児所を探して予約し、当日その施設に子どもを預け、そこから移動するという手間が大変でした。希望するような場所に託児所が見つかるとも限らず、参加を諦めたこともあります。

 

そんな経験が、臨時の移動式出張託児サービスのアイデアの源にあります。

 

イベント会場に直接託児スペースがあれば、親御さんが手間をかけずに安心してイベントを楽しむことができます。また、ただ預けるだけではなく、知育託児という形でお子様が楽しく学べるプログラムを提供することで、親御さんも気兼ねなく、「預けることへの罪悪感」を払拭できると考えました。

 

早朝時間の活用で、育児と両立

仕事におけるこだわりや重要だと思うことを教えてください。

物事の優先順位を見極めることです。譲れないことを軸として定め、その軸から外れるものは、時間が余ったらやっていこうというものです。時間は限られているので、重点思考でエネルギーを注ぐべきことを選らんでいます。

 

私自身としては、本当は自分の考えていることを全部やりたいと思っています。しかし、時間とリソースは限られているので、本質的なことに集中するように意識しています。ハイライトするイメージです。本質を考えることにも時間を費やしています。これに関しては、積極的に学んで磨いていこうと思います。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、育児と仕事の両立です。

 

ライフイベントを通して、自由にできる時間が狭まっていくので、仕事と時間のマネジメントはとても重要になってきます。

 

具体的には、時間を定数と変数に分けています。こだわりで話したような優先順位を見極め、自分でコントロール可能な部分を見つけ、改善するようにしています。

 

また、時間は自分でコントロールできるところと、できないところがあります。例えば早朝は、子どもも家族もまだ寝ていますし、会社のメンバーもまだ誰も動いていないため、コントロールしやすい定数の時間になります。

 

時間の定数を増やすチャンスだと思い、2020年頃から毎朝4時半に起きています。家族が起きる7時半頃までの3時間を、プログラミングや事業計画書を作成するなどの仕事の時間に費やしていました。

 

今でもアラームなしで早くて4時台、通常は5時台に起きます。朝の時間を有効に使うことが完全に習慣化し、朝型生活が定着しました。育児も仕事もどちらも大切にするためには必要不可欠なことでした。

 

産育休で気づいた、仕事ができるありがたさ

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

育産休とコロナ禍で感じた、仕事ができることのありがたさです。

 

産育休中に、仕事ができない時期がありました。ちょうどコロナも重なり、子供を保育園にも預けず、ずっと家に居る状態が続きました。とてももどかしい毎日で、当たり前にしていた仕事が恵まれていたんだと実感しました。

 

私は常に前を向いてチャレンジしていきたい人間です。そのため、毎日特に学ぶこともなく過ぎていく日々はもどかしく、苦痛に感じていたのです。知識をインプットしてもそれをアウトプットする場がなければ、勿体無いです。チャレンジする環境があり、毎日学びを実行することではじめて、豊かなサイクルになります。だからこそ、私にはモチベーションがあるというより、挑戦できているということがとても幸せなことだと実感しています。

 

私たちは健康や環境、あらゆる要因が整ってはじめて、進み続けることができます。仕事ができる“ありがたさ”を日々感じながら、やりたいことを楽しんでいます。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

“Simpleeに入ると、メンバーと組織が磨かれる”という場所にしていきたいです。

 

具体的には、「輪読チャンネル」を作り、「こういう本を読んで、こういう学びを得ました。社内でも活かしてみましょう!」と提案し合うということをしています。とても熱心に勉強するメンバーが多く、皆で提案、発信しています。

 

その提案と発信から生まれたものとして、組織の中で「タスク」という言葉を使うことをやめるというものがあります。「タスク」という言葉を聞くとやる気が出づらいものです。代わりに「論点」という言葉を使い、論点か論点じゃないかによってやるやらないを判断し、同時に、モチベーションを管理する方法を導入しています。

 

さらにTimesのチャンネルで、メンバーが思ったことを気軽に呟ける環境を整えました。従来であれば上司に「教えてください」と依頼するような場面でも、Timesで「エラーがでた、苦しい」などと呟くと、誰かがすぐにヘルプに入る体制ができています。

 

組織はダイヤモンドと同じで、人は人でしか磨けないと思います。このような仕組みを通して、一人ひとりが最大限に磨かれることで、組織としても磨かれたダイヤモンドになることを目指しています。

 

本当にやりたいなら、ヒト・モト・カネがゼロでもできる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

少しでも若いうちに挑戦することが、重要だと思います。

 

今日の自分が人生の中で一番若く、明日になるとどんどん歳を重ねていくわけです。若い時の1時間と年齢を重ねた時の1時間では、価値が全く違ってきます。

 

今、もし少しでも悩んで足を止めてしまっている方がいたら、まずやってみてください。貴重で大事な価値ある1時間を、まずは未来の自分に投資してみましょう。

 

私も、初期のころ、育児をしながら1人で会社を作っていました。ヒト・モノ・カネがゼロの状態です。しかし本当にやりたい場合は、それでもできるのです。プログラミングを勉強して、1人でモックを作成して、ピッチ資料と事業計画書を作成して、ピッチコンテストにでました。

 

投資家が投資を1カ月後に決めてくれたおかげで、カネが生み出されていきました。ビジョンを語ることで、ヒトがついてきました。この繰り返しで今に至ります。そのプロセスにおいては大変なこともありましたが、それ以上に、経験・自己成長という豊かさがありました。

 

どうぞ早いうちに、たくさん失敗をしてください。「やる後悔より、やらない後悔」です。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:諏訪 実奈未 氏

慶應義塾大学総合政策学部2017卒業。ハーバード大学主催の国際会議に日本代表として参画。ケンブリッジ大学のボーディングスクールを経験し、女性向けマーケティング事業・キャンパスラボを展開。外資系コンサル企業に2017年入社。大手金融機関のシステム導入に携わる。2022年に現在の会社を設立。

 

企業情報

法人名

株式会社Simplee

HP

https://simplee.jp/

設立

2022年8月

事業内容

育児支援、訪日観光客向けの託児ITソリューション、国内事業者向け出張知育託児、コンサルティング、講師

 

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