株式会社KOORI 代表・クリエイティブディレクター 郡 正志

株式会社KOORIは、人の心の中にブランドを存在させることを目的に、ブランドに関わるあらゆることをトータルにデザインする会社です。スピード重視の少数精鋭メンバーで数々の広告賞を受賞しながらも、追い求めているのはあくまでも「クライアントの目的と課題にしっかりと向き合うこと」と話す同社の代表・クリエイティブディレクター、郡正志氏。今回は事業の内容や起業の経緯などについて伺いました。

 

感情を揺さぶり、記憶に残すことで認知につなげる

事業の内容をお聞かせください

弊社は「トータルブランドデザイン」を手がけています。立ち位置としてはクリエイティブエージェンシーに当たると思います。

 

「ブランド」とは、目の前に何もなくても存在を感じることができる、そのようなものであると我々は考えています。

 

ブランディングプロセスとしては、まずは人々の感情を揺さぶることで記憶に残して知ってもらい、世の中に企業・サービス・製品を存在させるというものです。これらが知られていなければ、ブランドとして存在していないのと同じだと考えているからです。

 

ブランディングの仕事は幅広く、まず、企業の商品やサービスが持つアイデンティティを整理して体系化し、それをロゴマークやビジュアル、スローガンやステートメントにします。そして、メインのイメージ画像となるキービジュアルを作成し、さまざまなコンテンツを制作していきます。例えばテレビコマーシャルやサイト掲載用の長尺動画、ドキュメンタリーやラジオ番組などです。

 

弊社ではタレントの起用などもすべて担当しています。

 

コンテンツができると、皆さんに見てもらえるようにメディアプランを立て露出につなげます。さらにイベントを企画したり、デジタルを活用して話題化させたりと、仕事は多岐に渡ります。このようにいろいろなことをやっているので、我々は事業内容を「トータルブランドデザイン」と言っています。

 

最近では、渋谷の街や全国の交通広告などで大型広告やユニークなPRを展開しました。メディアやSNSでも話題となり、ユニークなPRで人々の記憶に残すことで認知につなげました。

 

今、ブランディングの必要性はますます増えてきているように感じます。そんな時代だからこそ私たちは、人の心に残るクリエイティブをつくることを心がけています。

 

▼手がけたトータルブランディング作品

 https://koori-inc.com/work/

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

前職は、外資系の広告代理店で働いていました。いろいろな国の人たちと働ける多様性のある環境でしたが、担当する仕事はというと、ひとつのクライアントにじっくり関わる一業種一社制でした。

 

とても良い経験だったのですが、より多くのクライアントを担当したいと思うようになり、これが起業のきっかけとなりました。

 

大手の広告代理店にいると必然的に関わる人も多く、社内のプロセスも複雑になり、その分コストもかかってきます。それならば優秀な人材が小さな規模で、かつスピーディーに対応した方がクライアントにとっては良いのではないかと考えるようになり、現在の事業につながりました。

 

独立したら絶対にうまくやれるというイメージができ、会社を辞めて起業準備に入った2011年3月、東日本大震災が発生しました。正直、どうしようかと思いましたが、シェアオフィスを解約できなかったこともあり、2011年4月8日に起業しました。

 

期待を上回る圧倒的な成果を残す、スピード重視の少数精鋭チーム

仕事におけるこだわりを教えてください。

事業を始めた原点でもある、クライアントにとって「良い」と思うことを追求しています。

 

依頼主には必ず目的と課題があるので、それをしっかり理解することが大切です。予算は限られているので、できるだけ少数精鋭のチームを作って無駄なプロセスを省きながらスピーディーに業務を行っています。その上で、クライアントの期待値をはるかに上回るクリエイティブをつくり、圧倒的な成果を残していくことが弊社の強みです。

 

前職の外資系代理店で仕事をしていた時には、クリエーターの目的は賞をとることだと言われていました。しかし、クライアントは賞をとることは求めていません。クライアントはあくまで自分たちのビジネスの成功のために良いクリエイティブを求めています。私はそのギャップに違和感を感じていました。

 

だからこそ私たちは、クライアントの要望に応えることを第一に考え、仕事をしています。賞という結果は、クライアントに満足いただいた上で、後からついてくれば良いと考えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

この仕事を何年も続けていますが、常に壁は感じています。

 

チャレンジングなプロジェクトも多く、計画通りに進むことは稀です。しかも、「クライアントの期待値をはるかに上回る」という基準を自分たち自身で設けているため、壁は必ず立ちはだかります。

 

そんな時は、頭を切り替えて柔軟に対応することが大事だと考えています。その結果、プロジェクトが思いもよらなかった良い方向にいくことも多々あります。

 

弊社はレギュラーの仕事がないので毎年が勝負の年です。しかしながら、会社を設立してから現在まで黒字を保つことができています。このため経営の観点では、壁を感じることなく現在まで続けてきています。ただ強いて言うのならば、スタッフを増やした今年が最大の壁なのではないかと考えています。スタッフは増えましたが、まだクライアントから大きな依頼が入っていないため、かなり緊張感があります。

 

ローカル&アジアブランディングで進み続けていく

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

クライアントから仕事の依頼があった時に我々の存在が必要とされていることを実感し、最もモチベーションが上がります。

 

また、いい仕事ができた時も、今までの苦労が吹き飛ぶほど達成感が感じられます。

 

さらにその仕事が認めていただけたことにより、最終的に受賞した時は、本当にこの仕事を続けていて良かったなと思います。

 

そしてもう1つ、チームメンバーがどんどん成長しているのを見ると、自分も楽しいと思うことができ、苦労しながらも起業した甲斐があったなと感じます。若く経験が浅いメンバーが多いので、自分の経験から教えられることは惜しまずに教えていきたいと考えています。またメンバーのモチベーションを保つためにも、楽しく、また居心地が良く、誰もが働きやすい会社であることを意識しています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

やりたいことは2つあります。

 

1つ目は、ローカルブランディングです。2023年7月に、福岡にオフィスを立ち上げました。現在はグローバル創業・雇用創出特区である福岡市にあるスタートアップ支援施設「福岡グロースネクスト(fgn)」に入居しています。

 

不動産会社が実施する住みたい街ランキングで、福岡市は4年連続1位を獲得するなど、今最もホットな場所です。実際に足を運ぶとわかるのですが、インバウンドでアジアの人たちも多く、海外にいるような雰囲気があります。さらに私は福岡出身で、福岡が大好きなこともあり、そんな福岡のローカルブランディングに取り組んで行きたいと考えています。

 

もう1つは、アジアブランディングです。アジアの国々は、仲が良いようで悪いようで、良くわからないところが沢山あるように感じますが、ビジネス的には間違いなくとても重要なパートナーです。だからこそ、アジアの交流の架け橋になるようなビジネスのお手伝いがしたいと考えています。

 

クリエイティブ活動を行うにも、東京のオフィスでじっとしているよりは、例えば福岡やアジアに行ったり来たりして旅するように仕事ができたら良いですし、そのほうが、人生楽しいと思うのです。

 

目の前の仕事に全力投球すれば、必ず結果がついてくる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業の良さ、就職の良さ、それぞれあると思いますが、起業に興味がある人はぜひやってみてください。自分の力が世の中にダイレクトに反映されるので、面白いと思います。

 

資金が枯渇したらどうしようとか、仕事が来なくなったらどうしようとか、不安は常に付きまといます。しかし気にしていても何も始まりません。少しでも起業に興味があるならば先の不安はあまり考えず、目の前の仕事に全力投球すれば、結果は必ずついてきます。

 

私自身、起業してすぐの時は仕事は1つしかありませんでしたが、それを一生懸命にやったら、次の仕事につながっていくという経験をしました。このように仕事は自然と繋がっていくものです。

 

例えば、クライアントの担当者が転職し、転職先の企業が実施するコンペに大手広告代理店と共に弊社も参加させてもらい、選定いただいたこともあります。また、起業して最初に手がけたのが遺伝子の研究機器メーカーのブランディングだったのですが、そこにいた方が海外に行ったことにより、アメリカから仕事の依頼をいただいたこともあります。

 

とにかく、目の前の仕事をいい仕事にしてください。応援しています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:郡 正志 氏

1973年福岡県出身。17歳の時に店舗の内装デザインでデザイナーデビュー。21歳の時にデザイン事務所を設立。福岡を中心に活動し、福岡の企業のブランディングや広告キャンペーンを手がける。27歳で上京。GREY Worldwide、Ogilvy & Matherでクリエイティブディレクターを経て、2011年4月、株式会社KOORIを設立。代表作は、Tinder「愛は他人と。」Netflix x Tinder「ケンカ広告」イソジン「君、なに人?」など多数。話題性の高い広告キャンペーンや、シンプルで力強いブランディングを得意とする。

 

企業情報

法人名

株式会社KOORI

HP

https://koori-inc.com/

設立

2011年4月

事業内容

トータルブランドデザイン

沿革

2011年 有楽町にて設立

2013年 千駄ヶ谷に移転

2015年 丸の内に移転

2018年 現所在地 南青山に移転 

 

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