株式会社TimeTree 代表取締役社長 深川 泰斗

株式会社TimeTreeは、全世界で5,500万人が利用する人気カレンダーシェアアプリ「TimeTree」の開発・普及をおこなっています。予定を共有するだけではなく、コミュニケーションツールとしての機能を持つのが特徴で、家族やカップルでの利用の他に、ビジネスでの導入も増加しています。「世の中の予定管理の概念を変える」というミッションを掲げる同社の代表取締役社長、深川 泰斗氏に、詳しい事業内容や今後の展望などについて詳しくお聞きしました。

 

5,500万人が利用する共有に特化したカレンダーアプリ

事業の内容をお聞かせください

当社の事業は、カレンダーシェアアプリ「TimeTree」の開発と運営です。TimeTreeは一般的なカレンダーアプリとは少し違いがあり、コミュニケーションサービスのような側面があります。

 

単に予定を記入するだけでなく、カレンダーを誰かと共有しその上で予定を投稿したり、やり取りしたりできます。つまり「人と一緒に使うカレンダー」なのです。

 

主な使われ方としては、家族やカップルでの共有が多いです。例えば「この日のお迎えはどっちが行く?」「バイトがあるからこの日は会えない」といった情報をカレンダーを見るだけでやり取りできるのが特徴です。

 

最近では使い方がさらに広がっていて、ビジネスでの利用も増えています。特にデスクワーク以外の土木や建築、医療や介護、飲食店などの現場で働く方々に多く導入されています。他にも、サッカーチームやオンラインゲームなど、さまざまな集団での利用が増えています。

 

現在は世界で5,500万の登録ユーザーを獲得しており、そのうち半分が日本、半分が海外のユーザーです。

 

スケジュール共有の課題は日本人だけのものではないですし、カレンダーは世界中にある普遍的なツールだと考え、2015年のリリース時からグローバル展開は視野に入れていました。リリース時には日本語、英語、韓国語の3言語での展開でしたが、現在は13言語に対応しています。

 

「TimeTree」が多くの人に選ばれる理由は何でしょうか?

当社のサービスが選ばれる一番の理由は、「共有」に特化しているためです。単に予定を共有するだけでなく、共有する過程をストレスなく簡単におこなえます。

 

スケジュールを共有する際に、快適に使用してもらうための細かな「おもてなし」をほどこしています。例えば予定を登録すると、すぐに相手にプッシュ通知が届きます。いつ誰がどの予定を登録したかが明確にわかりますし、相手が予定をいつ確認したかがわかる機能もあります。

 

これらの機能により、共有のプロセスがスムーズになり、コミュニケーションの行き違いを防ぐことができます。

 

さらに、予定ごとにチャットスペースを設けているのも特徴のひとつです。例えば「何を持っていく必要があったっけ?」といったコメントでのやりとりができます。また、子供の運動会の予定には、しおりの画像を貼り付けることもできます。

 

単なる予定の共有だけでなく、その予定に関連する情報やコミュニケーションも一元管理できるようになります。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

一緒に会社を立ち上げたメンバーと事業のアイデアを考える中で「予定は一人では決められないことが多い」と気づきました。例えば、会社での仕事を調整したり、家族と相談して外出の時間を決めたりと、相手と予定を合わせる必要があります。

 

それにも関わらず、当時のカレンダーサービスのほとんどが個人用でした。この現状に対し疑問を抱き、「共有を前提としたカレンダー」というアイデアが生まれました。

 

当時はすでに、予定を管理するスマホアプリが数多くありました。その中で、毎日アプリを開いてもらえて、世界中で使ってもらえるテーマは何だろう?と考えました。その結果、全人類に共通のツールであるカレンダーが最適だと確信しました。

 

社会やユーザーのニーズを敏感に捉える

仕事におけるこだわりを教えてください。

私の仕事へのこだわりは、さまざまな角度から「よく見て、よく聞くこと」です。

 

カレンダーというツールは形は同じでも、書き込む内容は人それぞれですし、国によっても大きく違います。例えば、ドイツでは友達の誕生日をとても大切にするので、カレンダーに誕生日を多く書き込む傾向にあります。そのような違いを、よく見たり聞いたりすることを大事にしています。

 

SNSを通じて、当社の製品の評判を調べる時間も多いです。ユーザーの声を拾い「なぜこの使い方をするのか」「なぜこれほど喜んでくれるのか」といった関心を常に持ち続けています。単に「喜んでくれてよかった」で終わらせず、その理由を深く考えるんです。

 

これは、ユーザーだけでなく世の中全般に対しても同じです。例えば、非難が殺到する出来事があったときは「なぜこれほど怒りを呼んだのか」を考察します。

 

会社の組織でも同じ姿勢を大切にしています。社内のメンバーの声に耳を傾け、会社への不満などを話しやすい雰囲気づくりを心がけています。全ての問題を解決できるわけではありませんが、まずはよく聞くことから始めています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

特に印象に残っているのは、初期の頃の資金調達です。

 

まだユーザーも少ない頃、資金調達のために投資家と会う時期がありました。投資家の10人中8人程度は「スケジュールなんて共有しない」といった反応で、最初は落ち込んでいました。

 

ですが、ある時から考え方を変えました。もし全員が「これは良い」と言うなら、すでに世の中に存在しているはずです。逆に全員が反対するなら危険ですが、1〜2人が「これは良いかもしれない」と言ってくれる程度が、丁度良いと思うようになりました。

 

結局、投資家や他の企業に興味を持ってもらえたのは地道にユーザーを増やし、そのユーザーからの熱心な支持を得たことが大きいと思っています。私はアピールが得意ではないのですが、ユーザーの声をできるだけ多く集め、それを伝えることで関心を持ってもらえるようになりました。

 

アイデアを形にし世界を変えていく面白さ

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

モチベーションの源は、アイデアを実現し世界を変えていく過程にあります。

 

常に「もっとこうしたら良くなるのではないか」といったアイデアを考え、チームで議論し、実際に試しています。そして、そのアイデアが現実の世界に影響を与え、少しずつ変化していく様子を目の当たりにしてきました。

 

例えば、初期の頃はスケジュールを共有すること自体を、「気持ち悪い」とか「誰がそんなことするの?」といった否定的な声が多かったですし、SNSでも批判されていました。

 

ですが、時間が経つにつれて認識が変わってきたのです。「結婚したからTimeTreeをはじめた」といった声も聞くようになり、当社のサービスが当たり前に受け入れられるようになってきました。

 

アイデアを形にして世界を少しずつ変えていく実感、この体験ほど面白いものは他にないと思います。このプロセスが、私のモチベーションの源になっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

目下の目標は、「公開カレンダー」を普及させることです。このサービスは、これまでのような家族や恋人といったクローズドなコミュニティ向けのものではなく、広く世の中に向けてイベント情報を発信したい方のためのプラットフォームです。

 

アーティストやお店、ブランドなどが自由にイベント情報を公開でき、ユーザーはそれをフォローできます。

 

例えば、あるアイドルのファンの方が、そのアイドルの公開カレンダーをフォローすれば、自分のカレンダーと一緒にイベント情報を見ることができます。これにより、コンサートの日程を確認しながら自分のシフトを調整したり、行きたいイベントを逃さず計画を立てたりすることが可能です。

 

また「公開カレンダー」は企業との連携に非常に適しています。企業が発信したいイベント情報をユーザーに直接届けることができます。

 

例えば、大手インターネット通販サイトとの連携では、セール用のカレンダーやポイントが増える日程を自分の予定と重ねて確認できます。それだけではなく、ある動画配信サービスと連携し海外サッカーの放映予定をカレンダーで提供するなど、さまざまな企業との連携を進めています。

 

今後は、より多くの企業や団体との連携を増やしていく予定です。ユーザーにとって便利で、かつ企業にとっても効果的な情報発信ができる場所にできたらと思っています。

 

最終的には「公開カレンダー」を通じて、人々が自分の未来をより納得感を持って選択できるようにしたいです。「知らなかった」「行きたかったのに行けなかった」といった後悔をなくし、楽しみな予定で溢れる世の中をつくりたいと考えています。

自分で選んだ苦難は乗り越えられる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業は大変な道のりです。しかし、私の経験から言えることは、自分で選んだ苦難であれば、大抵のことは乗り越えていけるということです。

 

起業の過程で直面する困難や課題は、後から振り返ると笑い話になることが多いです。そう考えると、苦労した分だけ面白いエピソードや学びが得られるわけです。

 

つまり、起業は大変だからこそ、たくさんの「ネタ」ができます。その経験は、あなたの人生を豊かにし、成長の糧となるでしょう。

 

採用を強化されているそうですね。募集している職種について教えてください。

現在、さまざまな職種で採用をおこなっています。

 

  • エンジニア職

「ユーザーに喜ばれるものづくりをしたい」といった思いがある方には、理想的な職場環境です。当社は全世界にユーザーがいるため、多様なフィードバックを得ることができ、それに伴って膨大なデータ量を扱います。100億レコードを超えるテーブルを扱う予定もあります。他ではあまり経験できない、大規模データへのチャレンジに魅力を感じ、入社するエンジニアも数多く在籍しています。

 

  • 企画営業職

当社のサービスは、数千万人規模のユーザーに支持されています。この大きなプラットフォームは、ビジネスのアイデアを実現するには絶好の環境です。0からビジネスを育てたい、新規事業の企画や立ち上げに携わりたい方にとって、非常にやりがいを持って仕事に取り組んでもらえるはずです。

 

上記の職種以外にも、人事などのコーポレート部門の人材を募集しています。ご興味がある方は、以下よりぜひ詳細をご確認ください。

 

▼採用情報▼
https://timetreeapp.com/intl/ja/corporate/careers

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:深川 泰斗氏

九州大学大学院で社会学・文化人類学を学び、2006年にヤフー株式会社へ入社。ソーシャル・コミュニケーションサービスの企画を担当。2012年にヤフーからカカオジャパンへ出向後、2014年に株式会社JUBILEE WORKS(現 株式会社TimeTree)を共同設立。2015年3月にカレンダーシェアアプリ「TimeTree」をリリース。

 

企業情報

法人名

株式会社TimeTree

HP

https://timetreeapp.com/intl/ja

設立

2014年9月1日

事業内容

iOS/Android、WEB対応のカレンダーシェアアプリ「TimeTree」の開発・提供

 

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