認定NPO法人 セカンドハーベスト・ジャパン CEO 横手 仁美

「すべての人に、食べ物を。」をコンセプトに、食品を受け取りたい人と支援したい人や企業の架け橋となっている認定NPO法人セカンドハーベスト・ジャパン。現在CEOを務めているのは横手仁美氏。大学卒業後は在シドニー日本国総領事館や日本を代表する大手メーカーや大学教職員など多彩なキャリアを持ち、20237月からセカンドハーベスト・ジャパンのCEOに就任しました。日本初のフードバンクである同団体のCEOとして、運営に関する課題や今後の目標などをお聞きしました。

 

多方面からの支援で食品を必要な人へお届けする

事業の内容をお聞かせください

余剰になっている食品を必要とする組織・団体や個人の方々に提供するのが、私たちの実施するフードバンク事業です。

 

食品を提供してくださる企業は、これまでの累計で2600以上、未だ増え続けています。一方、当団体同様に食支援を実施する提携フードパントリ―はじめ400を超える組織・団体が食品を引き取りに来ています。

 

個人向け支援においては、支援を必要とする個人の方に直接、食品をピックアップしてもらう受け渡し場所としてのフードパントリー「marugohan(まるごはん)」を展開しています。marugohanは木・金・土曜の週3日運営されており、食の支援が必要な方であれば、どなたでも食品を受け取っていただけます。収入証明の確認などなく、連絡先や名前が解るIDさえあれば国籍問わず利用いただけるため、外国籍の方もたくさんいらっしゃいます。また、沖縄県豊見城市でも地元のフードバンクと協働でフードパントリーを月に一度開催しています。現在、2号店のオープンを那覇市内で検討中です。

 

様々な理由で、食品を受け取りにこられない方々に送付する活動も行っています。お子さんのいる家庭なども送付の対象に含まれることから、お米や麺類、レトルト食品、調味料などに加え、お子さんに喜んでいただけるスナック菓子類など、バランスよくいろいろなものを入れるようにしています。

 

他にも、調理をすることができない方々のために、すぐに食べることができるお弁当を作っています。250〜500ほどのお弁当を、上野公園や墨田川などで提供している活動も続けています。 

 

その他には、政策提言と呼ばれるセクションでフードセーフティネットの構築や拡充のため、フードバンク活動に関する研究や講演、関係省庁との調整などを行っています。

 

平時においての活動だけに留まらず、自然災害が発生した場合等、有事の際の食支援も私たちのミッションに含まれます。

 

能登半島地震支援においては、発災直後から始動し、15日にはトラックを出して現地にスタッフを派遣し、炊き出しの後方支援をしました。現在は中能登に拠点を設置し、支援の拡充に加え、緊急支援後に必須となる中期支援に向けて各ステークホルダーと準備を進めています。

CEO就任の経緯をお聞かせください。

「食支援」は私のライフワークの一つであり、今までいろいろな経験をしてきましたが、私の中ではすべてつながっています。

 

セカンドハーベスト・ジャパンのCEOとしての仕事は、食支援を直接手掛けるフィールドに関わることができる、とてもやりがいのある仕事だと思いお引き受けしました。

 

まだ就任1年ほどですが、創業者が20年以上続けてこられた日本初のフードバンクとして責任ある組織だと思っています。業界での他団体への影響力はもちろんのこと、支援を必要としている組織・団体や個人の方々へ途切れることなく食品を届ける重責も自負しています。 

 

日本全国でフードセーフティネット構築を目指す

仕事において一番こだわっていることを教えてください

人の権利を尊重するところです。

 

支援活動をしていると、往々にして与える側と与えられる側という、力関係が出てしまうことがあります。しかし、それは違うと私たちは考えています。

 

一般的なお店で賞味期限切れの商品を出さないのと同じで、無償で食品を提供するからといって、賞味期限切れのものを提供することは決してありません。私たちの直営パントリーでは、お仕着せのパッケージ詰めで要らない食品ともども持って帰ってもらうやり方ではなく、それぞれに必要なものを必要な量持って帰っていただくショッピングスタイルを採用しています。これも、利用する方々の意思を尊重したいという想いから実施している事です。

 

人生にアップダウンは付き物です。今はダウンしていてフードパントリーを利用しているけど、いずれは、再起を果たし、元気になった人たちが社会貢献することで社会に恩返し(還元)することができるようになる、そんなサイクルが生まれることを願って活動に取り組んでいます。「marugohan(まるごはん)」の「まる」はそういう社会への還元サイクルを意図して名付けられています。もちろん、還元を強要するものではありませんが、ペイフォワードのようなものが生まれるといいなと思っています。

就任から今までの最大の壁を教えてください

あえて言うなら、自分自身です。

 

事業の運営面から、資金面までチャレンジは数多くあります。限られた専従スタッフで担える作業は限られており、事業運営のためにはボランティアの皆さんの力が大きな鍵となります。また、専従のスタッフへの給与、オフィスや倉庫の賃貸料、トラックの輸送費や維持費などにコストがかかる中、私たちのサービスは全てが無償で提供されるため、収入は、寄付や助成金が頼りとなります。

 

いつも頭の中には、どのように人的、資金含む各リソースを調達するかがあります。しかし、それを壁としないで前に進んでいこうと常にチャレンジしてきました。

 

自分がダメだと思えばそこで終わる。自分の壁は自分で乗り越えるしかないと考えています。

 

今後、新たにやりたいことや展望をお聞かせください

まずは小さなところでいうと、オフィスと倉庫を一体化して、働く環境をもう少し良くしたいと思っています。駐車場があって荷物の積み下ろしのしやすい倉庫と、そこに近いオフィスがあればスタッフの負担も減ります。また、今後事業を拡大していくためには、オフィス、倉庫もそれぞれより大きなスペースが必要となることから、何とか良い場所を見つけられるよう、チャレンジしていきたいと考えています。

 

そして、私たちの最終的な目的であるミッションは、日本全国に、有事、平時に関わらず、誰もが必要な時に充分な食品を受け取ることのできる、フードセーフティネットを構築するというものです。団体の主な活動エリアである関東に加え、沖縄県や、能登半島地震支援を通じて石川県においても活動を拡充しています。今後も日本初、日本最大級のフードバンクであるという自負のもと、革新的な取り組みに挑戦していきたいと考えています。

身近なところからできる社会貢献

これから支援やボランティアを考えている方へのアドバイスをお願いします。

社会貢献やボランティアと聞くと、難しいことだと思う方も多いかもしれませんが、決してそんな難しいことではなく、本当に身近にできることがたくさんあります。

 

例えば、家庭で使わない食品を寄贈するところから始めることができます。皆さんがお住まいの地域でも余剰食品を受け付けている組織や団体があると思うので、まずは身近なところから行動を起こしていただければと思います。

 

また、セカンドハーベスト・ジャパンでは、企業向けの賛助会員制度(https://member.2hj.org/)を導入しています。メンバー企業の皆さんと年間を通じて継続的にコミュニケーションの機会を作ることで、日本における食支援を共に進めて行くことを目的としています。企業としての社会貢献の第一歩としても適したものだと思います。

 

企業でも個人でも家庭でも、できることはたくさんあるので、ぜひ積極的に関わっていただきたいと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

経営者データ:横手仁美氏

上智大学外国語学部卒。慶應義塾大学経営管理研究科卒(MBA)

在シドニー日本国総領事館、ソニー株式会社、日本トイザらス執行役員、国連WFP協会事務局長、ベンチャー企業勤務を歴任。2018年から2023年3月まで国際基督教大学サービスラーニングセンター勤務。現在、森六ホールディングス社外取締役、学校法人アジア学院評議員、NPO法人国際人材創出支援センター(ICB)理事

 

企業情報

法人名

認定NPO法人 セカンドハーベスト・ジャパン

HP

https://2hj.org/

設立

2002年3月11日

(2018年4月11日より認定NPO法人となる)

事業内容

セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)は、2002年に創立された日本初のフードバンクです。問題なく食べられるにも関わらず、さまざまな理由で活用されない食品を企業や個人から受け取り、それらを必要とする個人や各種福祉施設、提携するフードパントリ―等へ無償で提供するフードバンク活動を行っています。基幹拠点のある関東エリアに加え、2023年11月には、コロナ禍で更に貧困率の上がった沖縄県に地元団体と協働で「セカンドハーベスト・フードパントリ―」を立ち上げました。また、2024年1月に発生した能登半島地震の被災地においては、これまで継続してきた緊急支援に加え、今後、必須となる中期支援に向けて、石川県に2HJ中能登拠点を新設しました。2HJは、「すべての人に、食べ物を。」をスローガンに、経済状態にかかわらず、災害時においても、誰もが栄養価の高い充分な食品を手にすることができるフードセーフティネットを構築することを目指しています。

沿革

https://2hj.org/about/history/

 

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