株式会社知恵の輪工房(Puzzle Ring Factory) CEO 中島 隆行
日本のスタートアップの海外進出海外企業の日本進出のサポートを行う株式会社知恵の輪工房は、クライアント第一のハンズオン型支援を提供しています。海外展開における様々な課題に着目し、市場調査から実践的なアプローチまでを包括的にリードします。今回は、スタートアップのトップ企業で陣頭指揮を取ってきた経験を持つ同社のCEO中島隆行氏に、事業を始めた経緯や今後の展望などを詳しく伺いました。
豊富な海外経験から生まれる知識や知恵を提供
事業の内容をお聞かせください
当社PRFは、スタートアップに特化した海外展開支援サービス、コンサルを行っています。コンサルといってもハンズオン型でサービスを提供しているのが特徴です。
海外進出は、国によって事情が異なるため様々なプロセスを踏みながら進めていく必要があります。弊社は、最初の市場調査から海外進出時の計画立案における壁打ち、セールス代行、チャネルの開拓、法的なサポートなど、あらゆる支援を行います。加えて、人材の採用やグローバル組織作りなども当社が中に入り一緒にやらせていただいています。弊社の社名は「知恵の輪工房」、英語表記で「Puzzle Ring Factory」です。これは、様々な形の知恵が集まって繋がり、新しいバリューを作っていくイメージで名付けました。我々だけでなく様々な人たちの知識や知恵を集め、それぞれの型に合ったサービスを提供していくというビジネスモデルになっています。
我々の強みは、幅広いネットワークを持っていることです。海外のチャネルを開拓できるネットワーク、海外の投資家ネットワーク、更に50ヵ国1,000人程の海外在住の日本人とのネットワークなどを保持しています。これらを起点として、クライアントと一緒にフィールドを広げていくイメージでサービスを提供しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
会社勤めしていた29年間のうち、19年間は外資系やIT系のベンチャーで働いていました。その時、海外のスピード感あるイノベーションやドラスティックさ、勢いのある考え方や経営の仕方を目の当たりにし、日本との違いを認識させられました。そのような自分の経験を活かし、日本の企業に対して何か貢献できることはないかと考えていたことが事業を始めたきっかけです。
私は直近でDeelという会社に勤めていました。この会社は20ヶ月でおよそ1〜100億円を達成するという記録的な成長を遂げ、スタートアップの中で世界で一番急成長した会社です。もちろんこの会社もグローバルな視点で世界を狙っており、私はその幹部にいました。在籍時に体験したその会社の凄さや急成長した背景を多くの方に伝え、そのエッセンスをベースにして日本企業の成長に繋げていきたいという思いが膨らんでいきました。。
日本企業が海外進出を考えるきっかけには、海外のお客様から引き合いがあるからその国で拠点を作りたいというケースや、日本のカルチャーの中で成長してきた企業が次に海外を目指したいといったケースがありますが、大体それではうまくいきません。会計事務所に相談し真っ先に現地法人を登記し日本から現地事情を知らない人材を派遣することはよくありますが、結局失敗してダメになってしまう場合も多いのです。実際に進出企業のうち撤退案件は1/3〜1/4を占めており、海外はそれくらい厳しい市場であることがわかります。
海外展開は初期にビジョンを持ち、海外の人たちを受け入れるための組織体制を最初のうちに作っておくことが大切です。なるべく早い段階からそういったカルチャー形成に取り組んでいく必要があるため、私はそのためのアドバイスや支援を実行していきたいと思いました。
また、私が培ってきた幅広いネットワークをどこかで活かしたいと考えていたことも事業を始めた理由の一つです。Deel在籍時、ジャフコというベンチャーキャピタルにおいてアメリカ側で事業を担当していたためアメリカの投資家ネットワークを持っていたり、イスラエルのスタートアップ関連の仕事もしていたりしたのでイスラエルのネットワークもあります。さらに、会計や法律のエコシステムを制作していた時の繋がりや、アメリカのチャネルパートナーシップのトップが立ち上げたコミュニティなど、過去の連携の上で成り立ってきた様々なリソースがあります。海外出張経験も豊富なため、とても広い人脈があると自負しています。
トレンドを創り日本企業の未来を開拓したい
仕事におけるこだわりを教えてください
日本に貢献できる仕事をする、これが私のこだわりです。これは、外資系企業で海外の製品を販売していた時からずっと思っていました。いつかもっと日本の社会に直接繋がって貢献できるような仕事がしたいと考えていたので、その思いが自分の原点になっています。現在一緒に働いているメンバーも、みんな海外を良く知っていて多言語に堪能ですが、日本に対する思いは強いと思います。
今後ぶつかりそうな壁、課題になりそうなことはありますか。
当社は海外進出支援をビジネスとしていますが、日本のスタートアップ企業が海外進出で成功した例はほとんどなく、難しいのが現状です。我々が支援したからこそ成功できたという成果を出さなければなりませんし、たくさんの企業が海外を目指すトレンドを無くさないためにも成功事例を増やしていきたいです。
また、クライアント企業の進出において言語とカルチャーの要素はベースになるため、文化の違いなどでうまくいかないことも多々出てくるでしょう。企業の従業員規則や、最近広がりを見せているジョブ型雇用などの評価ルールやレスポンシビリティーなども海外と全然違います。海外を目指すクライアント企業に早期から入り込み成功できる環境を提案し、我々もあらゆる機会を通じて皆さんの経験を吸収しサービスの質を上げていけるかが今後の課題です。
若い世代から刺激を受けることが活力になる
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私にとってこの仕事はライフワークであり、率直に仕事が楽しいということがモチベーションです。人生100年時代とは言っても今後いつまで働けるかわかりませんし、これが最後の仕事だと思って悔いなくやりたいという思いがやる気に繋がっています。
また、30代など年下のスタートアップの社長の方々と話をする機会も多く、その度にインスパイアされ元気をもらっています。若くして様々なことにチャレンジする姿はとても輝いていますし、私が30代の頃には考えていなかったようなことに取り組んでいることにも刺激されます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
この海外進出支援事業は、成功モデルを作らないと次がないため、まずは直近の目標として当社のサービスで海外展開を成功させたいです。
また、現在私自身もスポーツテックのあるサービスを作っている最中で、ニッチな分野だがプラットフォーマーとして海外展開を成功させることで、自らが成功例になってアピールしていきたいというのがこの先1年の野望です。
そして、最近支援事業と並行してコミュニティを立ち上げましたので、そちらにも力を入れていきたいです。このコミュニティは、海外進出における日本企業の様々な失敗例や成功例をみんなが持ち寄って共有する場として提供するものです。実際に、日本企業の困っていることのうち7割は共通している部分があり、これらの情報を共有することは非常に意義のあることだと考えます。2024年8月末までに100社を集め、50ヶ国をカバーできるようなコミュニティを作るべく尽力していきたいと思っています。
やりたいことへのチャレンジは何歳になっても遅くない
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
私も29年間サラリーマンをやってきたので、起業する時は、この年収を捨ててまでやるべきなのか、今後食ベていけるのかという不安がありました。しかし、腹を決めてしまえば後は楽しさしかないと思っているので、まずはやってみることです。私の周りにはもうすぐ定年という人も多いですが、だからやりたいことを諦めるというのはもったいないと思っていて、年齢を重ねている人でも何か想いがあれば是非やってみることをお勧めします。
つい先日ですがJSSA(日本スタートアップ支援協会)のピッチコンテストに出ましたが、若い方が多いかなと予想していた一方で意外に40代から60代、70代くらいの方もいました。そういった意味でも、年齢に関係なく事業を立ち上げたりチャレンジしたりしてみんなで切磋琢磨していければ良いなと思います。
採用を行っているそうですがどのような人材を求めていますか?
海外展開の支援事業に関心がある方がいれば是非お話ししたいです。クライアント企業も様々な業界があり特化している分野は特にありません。
当社は現在3名で運営していますが、ネットワークは大きいに越したことはないため、海外在住の方を含めて海外に関する何かしらの経験や専門スキルをお持ちの方はご連絡ください。是非一緒に事業を作り上げて行きましょう。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:中島隆行 氏
外資系ITベンダーであるSun・Oracle・シマンテックなどで約15年、海外展開を含む事業開発を歴任。その後日系VCであるジャフコで米国投資先の事業開発を担当し、投資先を含む複数のスタートアップにてカントリーマネージャーを務めた。直近では世界最速の成長をするDeelの日本市場立ち上げで陣頭指揮を取り、現在はPRFのCEOを務め、エンジェル投資などにも携わる。
企業情報
法人名 |
株式会社知恵の輪工房 |
HP |
|
設立 |
2024年02月 |
事業内容 |
スタートアップの海外進出支援 |
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