イオリア株式会社 CEO 松原 元気

イオリア株式会社は、地域の「人と人」、「人と情報」をつなぐプロダクトである「SpotsNinja」というサービスの開発・提供を行っています。AIによるパーソナライズを行い地域に根差した「おでかけ」「防犯」「地域求人」「行政支援」といった情報を、必要なユーザーに必要なタイミングで届けてくれるプロダクトになります。

 

「AI×ゲームの活用で人と人のつながりの可能性を広げる」というミッションを掲げる同社のCEO松原元気氏に、詳しい事業内容や今後の展望などについて詳しくお聞きしました。

 

地域の人と人、人と情報をつなぐ「SpotsNinja」の提供

事業の内容をお聞かせください

私たちは、地域の「人と人」、「人と情報」をつなぐプロダクトである「SpotsNinja」というサービスをリリースしました。ゲーム業界で働いていた経験からユーザーに長く愛してもらうためにはキャラクターという存在が親しみやすさを持つと考え、日本の文化を伝え世界中のユーザーに届けたいという思いから「忍者」をモチーフにサービス名に取り入れました。

 

こちらのサービスは「地域」を軸にその地域に根差した「おでかけ」「防犯」「地域求人」「行政支援」といった情報を、その情報が必要なユーザーに必要なタイミングで届けることが主な機能になります。

 

例えば「おでかけ」情報であれば、ユーザーが日常的に楽しめる場所やアクティビティの情報を提供します。半径1km以内を対象としており、ドライブなどの遠出ではなく散歩で行ける範囲を想定し、地方の子育て中の方や高齢者の方など遠出が難しい方にもこれまで気づけなかった情報を提供していきたいと考えています。

 

『イオリア株式会社が提供するSpotsNinja』

『イオリア株式会社が提供するSpotsNinja』

 

同業他社のサービスが多数存在する中で、私たちの強みは圧倒的な情報量と様々なユースケースに対応するために構造化された独自のデータベースにあります。多くの旅行系サイトやお出かけメディアは、検索する人が多くPVが稼ぎやすい都市部の有名な観光地を取り上げることが多いですが、私たちはより地方に目を向けています。観光地スポットがない、これまでは知名度の低い街など、取り上げられてこなかった場所にも焦点を当てています。

 

例えば、現在アメリカでは地方のロードサイドにカメラを設置し、撮影した動画を元にAIが解析し記事として配信したり地域情報をラジオで流すといった地域の見守り系サービスが行われていますが、こうした取り組みを日本の地方でも実現したいと考えています。人力で情報を集めることはコストがかかり人口が少ないエリアでは利益が見込めないため、他社は手を出しづらい領域になっています。

(出典: https://www.arlnow.com/ こちらのサービスは毎朝地方のローカルニュースを自動で配信しているサービスになります。)

 

しかし、生成AIを活用してコストを最小化し、我々がこれらの地域の情報を発信することで、その地域にお住まいの方には価値がある情報を低コストでその地域の人々に届けることができます。このようなサービスは大きな利益を生むものではありませんが、その分競合が参入しにくく、独自の価値を提供できると考えています。事業初期は他社が儲からないからこそできるこその差別化を図り、地方の情報を広く届けるソーシャルメディアを目指しその先の大きな事業の成長に繋げていきたいと考えています

 

現在の仕事・事業を始めた経緯をお伺いできますか?

事業を始めた経緯ですが、生成AIの登場に影響を受けたことが大きいです。エンジニアになるきっかけにもなった2015年に放映されたNHKの「ネクストワールド」というドラマで未来に訪れるであろう技術や生活について知り、そのドラマで描かれていた世界が現実になったように感じて生成AIに興味を持ったことも背景にあります。

 

私のエンジニアとしての仕事のスタンスとしてサービスを開発する中で、お金を稼ぐのももちろん重要ですが、作ったサービスをより多くの人に価値を提供するサービスを作りたいという思いをずっと強く持っていました。また18歳で上京の際に感じた地方と都心の格差にずっと課題を感じており地方を切り口に何かサービスを提供できないかとずっと悶々と考えて過ごしていました。

 

転機となったのは28歳の時にお会いしたとある政治家との出会いがさらに背中を押しました。その政治家も30歳で政治家になるきっかけを得たそうで、それまではずっと会社員だったそうです。「やるなら今だ」と背中を押していただき、半ば勢いで会社を設立したことを覚えています。キャリア的にはエンジニアとしての技術的な強みがあるので、失敗しても自分の時間を消費するだけだと考え挑戦しました。先輩の起業家たちとの壁打ちや事業相談など助けを借りながら、現在の事業形態ができあがっています。

 

生成AIを軸に価値提供を追求していく

仕事におけるこだわりを教えてください。

仕事におけるこだわりや軸は3つあります。

 

1つ目は、多くの方々に使ってもらえるサービスを提供することです。ネットサービスは1人に使ってもらうのも10,000人に使ってもらうのもサービスを開発するための工数としては同じです。限界費用のメリットを生かすためにもユーザーのパイは大きければ大きいほど良いと考えています。その中で一人ひとりにどれだけ価値を感じてもらえるサービスなのかを追求していくことにこだわりを持っています。

 

2つ目は、生成AIを軸に事業を組み立てるということです。LLMをはじめとする生成AIの登場により何度目かのAIブームが起きましたが、今回のLLMの登場によってコーディングが不要のチャット形式でAIを活用できるのでAIの民主化という革命が起きたと感じています。このテクノロジーがこれから社会の至る所に浸透していくのだと思います。テクノロジーによる大きな変化はそれだけチャンスがあると考えるのでこのドメインにベットしていきたいと考えています。

 

また、これまではたくさんの人員がいる大きな企業が強いとされてきましたが、生成AIの登場によりエンジニア数人と各職能のプロフェッショナルがそれぞれ数人いて、それ以外は自動化しているチームが最強になるのではと考えています。これはまだ仮説段階で自分たちを通して実証実験しています。これからますます社会の変化は激しさを増していくと考えるのでチームの機動力は最も重要だと考えます。さまざまな業務が自動化されていく未来において人間がやるべき本質的な業務だけが人間の手に残ると考えているので、その未来を先読みし、そこに合わせた組織設計をしていこうと考えています。

 

その機動力を活かしながら、大企業との協業など社会を動かすパワーを持っている企業のお力を借りたりもすることで社会にインパクトを残していきたいと考えています。

 

3つ目は、過去の自分と同じく人生に悩んでいるような方にサービスを届けたいという思いです。そのため、toC向けサービスでユーザーに向き合い続けたいと考えています。正直、toBビジネスは客単価も高いですし、収益も安定するのでお金を稼ぐのが目的なら現在の市場の状況からみてtoBビジネスを選ぶのが合理的です。現にスタートアップもSaaSモデルでtoBビジネスを行っている企業が体感として7割以上だと思います。

 

ただ、元々ゲームエンジニアであった自分が起業するならtoCのユーザーに向き合い続けて価値提供したいという思いから会社を設立して起業しています。そのため、周囲の起業のセオリーに流されるのではなくこれからもtoCユーザーと向き合いながら私たちだからこそできるサービスを提供し、社会に必要な存在となっていきたいです。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

起業したばかりなので大きな壁は感じていませんが、資金集めに苦労しました。住んでいる賃貸が登記禁止だったためバーチャルオフィスを利用しましたが、融資を受ける際にそれが問題となりました。資金集めや登記の知識が不足していたことが失敗の一因です。幸いなことに優秀な税理士さんがサポートしてくれたことで、何とか乗り越えることができました。

 

また、プロダクト作りの面でも苦労しました。エクイティでの資金調達を受ける選択肢もありましたが、チーム全員がエンジニアやデザイナーで構成されているため、自力でもプロダクトを作れることを証明しようとチームで話し合い、エクイティでの調達を受けずにこれまでの個人的な貯金という自己資本でプロダクトをつくり来ました。

 

合理的に考えるならエクイティでの調達を行い事業を立ち上げる方がリスクも少なく、早く事業を立ち上げられると思います。ただ、このフェーズでは独資で進める意思決定をしたことで、尻に火がついた状態になり、チームとしても自分たちの開発にかけるプライドに火がついたと感じています。

 

また、身の丈に合わない資金調達をしてしまうことによって、お金に対するバブル感のような状態にならず知恵を絞りながら地に足をつけて事業を行っている実感があります。

 

エクイティでの調達は魅力的でしたが、今回自力でプロダクトを作りきったこの経験は今後事業を進めていく上でも必ずポジティブに働くと信じています。

 

これから事業を進めていく中でこれまでとは比べ物にならない困難が待ち受けていると覚悟しています。先輩起業家や周囲の方々にアドバイスやサポートしていただきながら、これから待ち受けている壁に挑んでいきたいです。

 

物作りが大好きで、人のためになることがしたい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

進み続けるモチベーションは2つあります。

 

1つ目は、物作りが大好きであるという点です。保育園に通う頃からプラモデルや紙細工や木工細工など、子どもの頃から何かを作ることが好きでした。長崎県の出身で自然が多かったのも大きいと思います。長崎県内の工業高校に進学してからは金属加工やエンジンや機械の仕組みやプログラミングを学びました。社会人になってからはゲームやアプリケーションなど自分が作ったものが社会で価値を提供できることに喜びを感じます。

 

2つ目は、理不尽や不平等が嫌いで、人のためになることがしたいという点です。18歳で上京した時に地方と東京の情報格差・経済格差を嫌というほどに実感しました。地方にいてもこの格差を埋めるようなサービスにしていきたいなという思いがあります。

 

例えば補助金の制度など、日本には多くの支援制度がありますが、そもそも知らないと利用できません。そういった情報を提供し、格差を埋めるサービスを作りたいという思いが進み続けるモチベーションになっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

サービスの軸であるハイパーローカル化を重視しつつも、人口減少が進む日本の現状を踏まえて、グローバル化にも注力したいと考えています。過去に約3億人のユーザーがいるサービスに携わって経験があり、その知見を生かしてグローバルな視点で必要とされるサービスを提供したいと思っています。

 

具体的なビジョンは事業を進めていく中でよりはっきりしていくと考えています。ただ、常にグローバル市場を意識しながらも地方の暮らしに寄り添うサービスを手探りでユーザーの皆様の意見を取り入れながら改善し、社会をより良くするサービスとして提供していきたいです。

 

他には、高齢者向けの情報提供も視野に入れていきたいと考えています。高齢者は体が不自由で遠くに行けなくても、近所の情報を知ることで生活の質を向上させることができるので、そのような価値を提供することを目指しています。

 

さらに、今後は「SpotsNinja」のゲーム要素も強化していく予定で、ポケモンGOのように位置情報を活用して日常生活に新たな発見をもたらす体験も提供したいと思っています。そのためにもまずは粛々と事業を拡大させていき、事業が成長したタイミングでゲーム要素などを試験的に取り入れた新しい事業として展開していきたいです。

 

共に走っている仲間として寄り添えることがある

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私自身、まだ実績を積み上げている途中なので、共に走っている仲間として寄り添えることがあると思います。

 

起業するうえでの悩みや法人設立、ベンチャーデットの具体的な内容は相談に乗れるのでSNSからお気軽にご相談下さい。ともに社会をより良くしていく仲間として可能な限りお力にならせていただこうと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:松原 元気 氏

1994年長崎県南島原市出身。2013年に株式会社東芝に新卒入社。グリー株式会社、株式会社ディー・エヌ・エーでのゲーム開発・ソフトウェア開発を経験、株式会社グロービスでの教育プロダクトの開発を担当。2023年9月にイオリア株式会社を創業。

 

企業情報

法人名

イオリア株式会社

HP

https://aeolia.co.jp/

設立

2023年9月28日

事業内容

・AIを活用したハイパーローカルソーシャルメディア『SpotsNinja』の開発運営

・LLMを活用したシステムの受託開発およびコンサルティング

沿革

2023年9月28日 法人設立

2024年5月 SpotsNinja 開発キックオフ

2024年7月 SpotsNinja α版をリリース

2024年8月 SpotsNinja β版をリリース

2024年11月 SpotsNinjaアプリ版をリリース予定

 

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