株式会社maf 代表取締役社長 深江 暢
代表取締役社長の深江暢氏が率いる株式会社mafは、TVアニメやCM、PV、映画、ソーシャルゲームなど、多岐にわたるアニメーションの制作を手掛けています。深江氏は、以前よりアニメーションのクオリティアップとアニメ制作従事者の待遇改善を強く願っており、同社では業務効率化とフルリモートワークを実現しました。そんな深江氏に、起業までの経緯や事業内容、さらに今後取り組みたいことなどを詳しくお伺いしました。
アニメ制作従事者の待遇を改善したい
事業の内容をお聞かせください。
当社は、さまざまなアニメーション制作を手がけています。昨今のアニメブームにより、アニメの種類は多岐にわたっており、当社ではTVアニメのグロスを軸にCM、PV、MV、映画、ソーシャルゲーム、遊技機などを制作しています。
当社の特徴は、効率化とフルリモートワークを実現するために、ほぼフルデジタルで制作している点です。それにより地方で眠っていた優秀な人材を採用できています。現在は大阪、福岡、宮城、さらにはシンガポールから働いている社員もいるほどです。また、職人的な技術を継承していくため、アニメーターの教育にも力を入れています。
社名の「maf」は、トリプルミーニングなのです。1つ目は、「make a fire」(観る人の心に火を灯す)、そして2つ目は、「make animation film」(エモーショナルなアニメーションを作る)です。この2つは、当社の掲げるメッセージにもなっています。そして3つ目は、創業メンバー且つ作画のアドバイザーの満田一様の頭文字「m」と(and)私の名字の頭文字「f」を合わせたものです。色々と理由付けしましたがクオリティの高い映像をコンスタントに作っていける会社にしたいという思いで社名を決めました。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
フリーランス的な働き方をしていた際に、前職の同僚からソーシャルゲームの案件を定期的に依頼したいと相談されたことがきっかけです。その際に会社単位でないと依頼できないと言われてしまいました。もともと起業したいと考えていたので、これはチャンスだと思い起業しました。
起業したいと思った理由は、クオリティの高いアニメ制作を再現性を持って制作したいという気持ちとアニメ制作従事者の待遇について課題感を抱えていたからです。
昨今、アニメ業界が注目され、市場規模も拡大してきました。しかし、まだまだ未成熟な業界で、時にはハードワークが強いられることもあります。素晴らしい仕事をしているアニメーターが大勢いるにも関わらず、その活躍に見合った待遇を受けられていない現状があるのです。アニメ業界にいる一人として、こうした課題に長年モヤモヤしていました。起業したからには、この課題と真っ向から向き合い、アニメ制作従事者の待遇改善をしたいと思います。
アニメーションの世界に入ったのは、父親が映像カメラマンだったことが関係していると思います。幼い頃から特撮の映画によく連れて行ってもらい、その頃から映像は好きでした。大学に3DCGの講義があり、それを受講していくうちにCG、そしてアニメーションの面白さに気付き、追求するようになりました。
ストーリーも映像もハイクオリティなアニメを作りたい
仕事におけるこだわりを教えてください。
ストーリーも映像もハイクオリティな素晴らしいアニメを作ることです。スケジュールや予算は限られているので、その中でいかに効率化してクオリティを上げられるかを常に考えながら作っています。
しかし、こういったこだわりの強い仕事はどうしても集中力が問われたり、好きな仕事だからゆえ長時間労働になったりしてしまいます。社員には常に最大のパフォーマンスを出してほしいので、休めるときはしっかり休んでもらうようにしています。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
資金面の部分では苦労しました。
最初の1年間は1人で制作していたのですが、ありがたいことに依頼が増えてきたので、従業員を雇うようになりました。特に、想像以上に人件費がかかることに驚きました。また、制作系の仕事は共通だと思いますが、制作物を納品してから報酬をいただくので、キャッシュフローを安定させることが大変でした。
アニメ制作において、映像は水物です。予想以上にコストがかかってしまうことがあり、当初の見積もりから大きくブレてしまうこともあります。この感覚を掴み、正しく予測する必要があるため、今後も見極める力をつけていきたいと思います。
素晴らしいアニメとの出会いが、背中を押してくれた
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
これまでに多くの素晴らしいアニメと出会い、たくさんの感動を得てきた経験が、モチベーションにつながっています。
アニメ制作は芸術的な側面があり、直に視聴者に評価されるので、モチベーションを保持することが大変です。自分なりにリフレッシュもしますが、それでも疲れる時はあり、アニメから離れようと思うこともありました。しかし、その度に素晴らしいアニメや映像に出会ってきました。「なぜこんなに素晴らしいアニメを作れるのだろうか、自分も作りたい!」と繋ぎ止めてくれる、さらには背中を押してくれる作品に出会ってしまうのです。
私が3DCGデザイナーとして最初に手がけたのは、お子さん向けのロボット作品でした。ほぼ新卒で入社したため、右も左も分からない状況のまま、とにかく必死に制作したことを覚えています。そんな時、たまたまファミリーレストランで食事をしていたら、隣にいたお子さんが、担当していたロボット作品のことを楽しそうに話していたのです。自分が作ったものが届いていると知れて嬉しかったですし、仕事をする上でのモチベーションにつながりました。この経験から、いつか子供向けの作品も当社で手がけたいと考えています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください。
TVアニメや劇場版の元請けをやっていきたいです。TVアニメや劇場版は制作期間が長期にわたり、必要なカロリーも高いですが、会社の知名度や売上を上げるためにトライしたいと考えています。
また、制作費だけでの売上には限界があります。会社をスケールアップさせるべく、当社のブランディングを確立していき、ゆくゆくはライセンスビジネスにも挑戦する予定です。
さらに海外の視聴者をターゲットにした作品も手がけたいと考えています。日本アニメは、ガラパゴス的に進化を遂げています。宗教や人種などに縛られず、自由に作品を作れていますが、より海外に目を向けた作品があっても良いのではないでしょうか。いつかは世界中から愛されるワールドワイドな映像作りに挑んでみたいです。
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。
さまざまなシステムや融資を調べておくことをおすすめします。
私の場合、何も準備しないままゼロベースで起業しました。最初はいろいろと不安でしたが、今はIT化が進んでいるので、バックオフィス業務などはかなり簡略化できたので助かりました。
また、起業時はまとまった資金が必要になる場合が多いため、自治体や商工会などの融資情報を調べておくと安心です。常にアンテナを張って、会社に有利なサポートをチェックしておきましょう。
そして最後は人に頼ることです。責任感を持つことは大事ですが、抱え込みすぎて1人では潰れてしまう可能性があります。いかに人に相談して問題を一緒に解決していけるかが、成功の秘訣だと思います。
■ 採用情報
「株式会社maf」では、素晴らしいアニメを一緒に制作してくれる仲間を募集しています。
現在募集しているのは、アニメーター・演出職・制作進行職です。詳しい採用情報は下記をご覧ください。
アニメーター
https://jp.indeed.com/cmp/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BEmaf-1/jobs?jk=071253d86c09ccd5&start=0
演出職
https://jp.indeed.com/cmp/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BEmaf-1/jobs?jk=11bae8828f3d28fc&start=0
制作進行職
https://jp.indeed.com/cmp/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BEmaf-1/jobs?jk=66fb6a99085116a8&start=0
※hpにある問い合わせフォームからの質問なども受け付けております。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:深江 暢氏
学生時代に3DCGを学び、立体映像の研究やCMに従事。3DCGデザイナーとしてA-1 Picturesにて超速変形ジャイロゼッターやアルドノアゼロ、ソードアートオンラインなどで活躍。転属し再度制作進行として青の祓魔師やWWW.WORKING!!などを担当。CygamesPicturesにて制作デスクとしてプリンセスコネクト!Re:Diveやマナリアフレンズなどを担当。コミックスマートでプロデューサーとして同社ウェブ漫画のアニメ企画や各タイトルの製作委員会に参加。その後、独立しstudio mafを立ち上げる。
企業情報
法人名 |
株式会社maf |
HP |
|
設立 |
2022年2月4日 |
事業内容 |
アニメーション作品の企画・制作 |
沿革 |
2022年2月4日 自宅を事務所としてフルリモートで事業開始 2023年1月 従業員を採用。事務所をかまえる |
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