STRY株式会社 代表取締役 坂元 裕星

インド洋に位置するスリランカで、スペースポートの建設および周辺都市の開発を手掛けるSTRY株式会社は、宇宙開発を通じて新たな経済効果とライフスタイルの提供を目指しています。スペースポートはロケット打ち上げの発射基地であり、急成長する宇宙産業において重要な役割を担います。発展途上国の未来のために、宇宙事業を展開する同社代表取締役、坂元裕星氏に事業内容や今後の展望などを詳しくお聞きしました。

 

スペースポートの開発でスリランカの経済成長に貢献

事業の内容をお聞かせください

当社は、インド洋に位置する熱帯地方の国スリランカで、スペースポートを建設する事業とスペースポート周辺都市の開発事業を手掛けています。

 

スペースポートは、宇宙にロケットを打ち上げるための発射基地です。日本の種子島宇宙センターや、NASAのヒューストン宇宙センターを思い浮かべるかもしれませんが、私たちが手掛けるスペースポートは国が管轄するものとは異なり、民間が主導するスペースポートになります。

 

宇宙産業は今後160兆円規模に成長することが予測されており、そのわずか1%でも取ることができれば大きな利益につながります。現在、スペースXなどが定期的にロケットを打ち上げていますが、打ち上げ回数は多くなく、打ち上げ場所も100か所以下と少ないのが現状です。今後市場が成長するにつれて、ロケットの打ち上げ数も増加していくと考えており、宇宙産業において、スペースポートの開発は可能性に満ちあふれている分野でもあります。

 

スペースポートを建設するには適切な場所の選定が重要です。数ある国の中でもスリランカは赤道に近く、南や東に広がる海もあるため、ロケットの打ち上げには理想的な立地です。小規模であれば、実験用のスペースポートは3〜4か月での建設が可能であるため、現在はスリランカ南部のヤーラ国立公園付近での建設を計画しています。

 

また、スリランカは日本より規制が緩いため、日本では実験が難しいプロジェクトの持ち込みも可能です。軍事的でない限り、法律や利権の問題で日本でできない実験をスリランカで実施し、その結果を日本で応用できると考えています。単にロケットを打ち上げる施設をつくるだけでなく、その周辺の町づくりも行うことで、宇宙と地球がより近くなる新しいライフスタイルの提案も行っています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

元々カリブ海で別の事業をしていましたが、他の国にも事業を広げたいと思い、いくつかの国を訪れたうちの1つがスリランカでした。当社COOがスリランカの大統領顧問とつながりがあり、実際に現地を訪れたところ、スリランカの立地条件が非常に優れていることに気付きました。

 

スリランカは赤道近辺の国であり、南と東に開けた海もあるため、ロケットの打ち上げには理想的な立地条件でした。スペースポートの建設について「既に誰かがやっているのでは?」と思いましたが、調べてみると誰も手をつけていませんでした。そこで、スリランカの大統領顧問に提案をし、宇宙産業がこの国に大きな雇用を生み、国の発展につながるアピールをしました。

 

スリランカを選んだのは地理的な利点だけではありません。日本は過去の戦争の敗戦国であり、賠償をしなければなりませんでしたが、当時のスリランカ大統領が仏陀の教えを説き、賠償を放棄してくれた背景もあります。スリランカに助けられて今の日本があると感じ、恩返しの意味も込めてこの国でプロジェクトを進めることに決めました。

大切なのはお金を稼ぐ気持ちより、人のためを思う行動

仕事におけるこだわりを教えてください。

誰のために行っているビジネスなのか、軸をぶらさないことです。

 

私が大学時代に始めたビジネスでは、「誰と一緒にやるか」「何を大切にするか」が重要だと学びました。多くの人がビジネスをお金を稼ぐために始めますが、私は「誰かのため」にビジネスをすることが大切だと思います。

 

誰かを幸せにできなかったり、家族や大切な人のために働く気持ちがなかったら意味がなく、本来のビジネスの目的を見失ってしまうからです。大学時代に学んだ「誰のために何を大事にできるか」のマインドは今につながっています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

スリランカの方々と働く際、利害関係だけでは成り立たず、彼らの国の方針に我々が合わせる必要があるため、常に柔軟な対応を求められるところです。

 

また、プロジェクトを進める上で「お金」の問題は大きな壁になります。これは私だけでなくほかの人も同じだと思いますが、事業が大きくなるほどさらに資金が必要になるため、これが一番の壁だったかもしれません。

 

発展途上国の子ども達のために、明るい未来をつくる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

このビジネスを通して大きな雇用を創出し、貧困地域の子どもたちの未来を変えることが、目標でありモチベーションです。

 

私は大学時代からいくつかのビジネスを経験してきましたが、当時は友人が少なく、自己肯定が低かったです。そんな私の価値観を大きく変えたのが、ネパールで過ごした1年間です。

 

ネパールでは学校の先生として活動していたのですが、現地の人々から助け合いや笑顔の大切さを教わりました。彼らは貧しいながらも心の豊かさを持っていて、子どもたちの純粋な笑顔に強く感動しました。

 

人々の笑顔がすてきな一方で、ネパールの経済状況は未だよくありません。多くの大人が中東に出稼ぎに行き、その多くが出稼ぎ先で過労死して帰国する現状を目の当たりにしました。

 

彼らが出稼ぎに行く理由の多くは、子どもたちの将来のためですが、子どもたちは父親の顔を覚えていないことが多く、初めて対面する父親が遺体であるといった現実に悔しさがこみ上げました。

 

現在私が事業に取り組んでいるスリランカもネパールと似た状況にあります。強制労働などが未だに続いている「21世紀の奴隷制度」を変えるためには、スリランカ国内で雇用を創出し、大きな産業を興す必要があると強く感じています。

 

大人の人生を変えるのは難しいかもしれませんが、彼らの子どもたちの未来は変えられるはずです。私にとって、子どもたちにどんな仕事や未来を残せるかが、一番成し遂げたいことで、成し遂げるには宇宙規模の大きなプロジェクトをやらなければならないと考えています。

 

私がこうして海外で活動できるのは、ネパールの人々から教えてもらった助け合いや笑顔が根底にあります。彼らの心からの笑顔を守り、苦しい経験をしないで済む世界をつくるまで歩みを止めることはないでしょう。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

将来的には、ロケットでの移動が日常になると考えており、スリランカにスペースポートを設置し、ハブとして世界各地を結びつける役割を果たしたいです。

たとえば、国際宇宙ステーションが地球を1周するのには90分かかり、単純計算で反対側までは45分で行けます。スリランカからロケットの離着陸を含めても、アメリカには1時間以内で到着できるでしょう。スリランカからアメリカまで1時間で行けて、その途中で宇宙を見ながら移動できるというのは、まさに宇宙旅行体験です。

 

日本からアメリカまで13〜14時間かかっていたところが、日帰り可能になるほど早くなれば、世界の在り方が変わると思います。地球を出て、火星まで人類の行動範囲が広がった際に、どんな世界が待っているのか知りたいといった興味もあるので、こうした新たな移動手段のハブとなる場所をスリランカでつくりたいと考えています。

 

一生懸命頑張ったことは必ず結果になる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

まず、起業をしようと思っただけですごいです。

 

きっと何かをやろうとしたけどやらなかったことの方が後悔するでしょうし、個人的にはこの世に失敗なんてないと考えています。もしうまくいかなかったとしても、それはやり方が間違っていただけで、本人自身は失敗していないと思うからです。

 

一生懸命やった過程は自身の結果につながるのと、あのとき頑張ってよかったなと思えるときが絶対に来ます。それまでは今の自分にできることをしながら、一度きりの人生を楽しく幸せに生きて欲しいです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:坂元裕星 氏

大学4年 株式会社DADA 執行役員

2018 BUFF 公認コミュニティーマネージャー取得

2020~2021 株式会社アオイエ 代表取締役社長 シェアハウス事業

2021~ NPO法人Reale World 理事 NPO法人NCCP 理事

2021~2022 世界の水問題を解決する会社 コミュニティマネージャー

2022~2024 株式会社seretoine 代表取締役

 

企業情報

法人名

STRY株式会社

HP

https://stry.co.jp/

設立

2024年7月

事業内容

  • スペースポート、街づくりの不動産事業

  • 新しいライフスタイルの提案事業

  • スリランカ人材の斡旋事業

 

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