レイワセダ株式会社 代表取締役社長 畠山 祥
レイワセダ株式会社は、動画や音楽制作とクリエイター業務をサポートする人工知能・ソフトウェアを開発している会社です。
特にAIを活用したプラグインは動画編集の負担の大きい作業を大幅に削減できることが特徴で、パソコン操作に不慣れな人でも扱えるほど操作性に優れています。
今回は誰でも使えるプロダクトを作ると語る、代表取締役社長・畠山氏に事業の詳しい内容や今後の展望について伺いました。
ラジオ制作の経験から生まれた動画編集作業を効率化するプラグイン
事業の内容をお聞かせください
動画や音楽、ラジオドラマなどのコンテンツ制作や、人工知能・ソフトウェア開発を行っています。
特に今回お話ししたい事業が「Ready」という、AIを活用して動画編集の効率化ができるプラグインの開発です。Adobe Premier Pro(アドビ・プレミア・プロ)という動画編集ソフトにReadyを導入することでできることが増えます。
現在、提供しているプラグインは3つありまして、1つは動画内の無音声の箇所を削除する「Jet Cut Ready」です。音声がない部分をカットすることで、見せたい部分だけを見せられるテンポの良い動画を簡単に作れます。
もうひとつは「Pick Up Ready」で、動画内で特定の単語を話している箇所だけをピックアップしてくれるものです。たとえば、国会中継の動画で裏金問題に関する箇所をまとめたいときには、検索画面に「裏金問題」と打ち込みサーチボタンをクリックするだけで、AIが裏金問題について述べている部分だけをハイライトしてくれます。
3つ目のプラグインは、撮影で行われる「スイッチング」という手法を自動化してくれます。スイッチングとは、複数のカメラが撮影している映像を切り替える手法のことです。
トーク番組を例に挙げると、出演者Aさんを映すカメラと出演者Bさんを撮影するカメラ、そして全体を撮る引きのカメラを用意します。Aさんが話しているときはAさんを映しますが、Bさんが話したらBさんへカメラを切り替えなくてはなりません。
その切替作業は人が手作業で行っていますが、このプラグインを利用すると状況に合わせて自動でスイッチングしてくれます。
これらのプラグインは誰もが容易に操作できることが特徴です。パソコンが苦手な方でも、簡単に扱えるほど操作性に優れています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
ラジオ番組を制作した際に、クリエイティブな作業をもっと簡単に、誰でもできるようにサポートする事業を始めたいと思ったことがきっかけです。
私は受験生時代に1日に約14時間ほどの時間を勉強にあてていました。その際の息抜きは「ラジオを聴きながら数学を勉強する」ことでした。ラジオを聴いているとはいえ数学の勉強をしているので、休憩とはいえないかも知れませんが、モチベーションが落ちてもまたやる気が出てくると実感し、ラジオが好きになりました。
大学生になってからはラジオの魅力をもっと広めたいと思い、独学でラジオ番組を制作しました。楽曲制作や脚本作りから、収録、編集などすべて自分で学び、番組制作を行いました。。
FMラジオの企画や制作、販売などをしている大手ラジオ制作会社に納品できるクオリティの作品ができたのですが、制作期間は3年もかかってしまいました。独学で高クオリティの作品を作ったとはいえ、30分の作品に対して3年はかけすぎでした。
そこで、クリエイターの作業がもっと楽になるような事業を始めたいと考えました。大学で専攻していた宇宙工学でソフトウェアについて学んだ知識とインターンでエンジニアをした実務経験も役に立ちました。
大学の成績を落とさず起業し周囲を納得させる
仕事におけるこだわりを教えてください。
前述したように、プロダクトの操作性の高さにこだわっており、「全人類誰でも使える」プロダクトを目指しています。
世界には当社と似たような製品がありますが、それらは設定が難しいものがほとんどです。一方、当社が開発した製品の操作画面は、直感的に操作できるようなデザインなので、使い方がわからずに悩むことはないでしょう。
また、クリエイターの個性を活かしつつ、煩わしい作業だけを自動化することにもこだわっています。
たとえば、動画内で流す曲の種類やタイミングは、クリエイターの個性が反映すると思います。このようなクリエイティビティが必要な作業までAIで自動化してしまうと、誰が作っても同じような作品になってしまうので、当社のプロダクトでは個性が出る部分はAIで代替しないようにしています。
とはいえ、こだわりを持ちすぎないようにしています。こだわりが強すぎると、従業員が窮屈だ、辛いと感じてしまうおそれがあるので、できるだけ気持ちよく働いてもらうよう、余裕を持たせるようにしています。
当社のプロダクトの制作にはさまざまな人が関わっています。貴重なプライベートの時間を私の会社のために割いてくれているので、こだわりを持ちすぎて従業員を縛らないように留意しています。
従業員が気持ちよく働けるタイミングで働いてくれることで、時間はかかるけれどクオリティの高いものが作れると思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
起業当初に自分の意志を持ち続けなければならなかったことが最大の壁です。
私が最初に会社を設立したのは修士1年のときで、周りの友人は企業のインターンに参加したりエントリーシートを作成していたいわゆる就活の時期でした。しかし、私は登記書類を作るなど会社設立の準備をしていました。
また、みんなが修士論文を書いているときに私はアメリカの展示会に行っていましたし、就職した友人たちが新卒1年目としてがんばっているときに、私は自分の会社で売上伸ばそうしていました。
このように一般的に通る道から思いっきり離れてしまったので、自分の意志を持ち続けるのは少し不安でした。私以外にも学生起業家はいますが、私がいた学部では学生のうちに起業する人はいなかったので、先生たちや同期からも好奇の目で見られることが多々ありました。
そこで、誰にも文句を言われないように大学の成績評価GPAのスコアを絶対に3.5を下回らないようにしました。GPAの平均値は2.4〜2.8といわれていますが、私はGPAスコア4を達成できましたので、学生でありながら起業することを咎められることはありませんでした。
また、「学生」起業家を名乗るからには学生として勉学に励み、一定以上の成績を確保すべきだとも考えています。
すべての人がクリエイターとなる世界到来に向けて準備中
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
モチベーションは好奇心です。常に「どういったものを作ったら世の中がもっと良くなるのか」を考えています。誰も選んだことがない選択肢を選びたいですし、新しい分野を作っていきたいです。
大学時代に同じ学部の人たちが選ばなかった起業という選択も、辛いことはあったとはいえ、やってみたいという好奇心があったから成し遂げたのではないかと思います。
事業が楽しいこともモチベーションになっています。自己資金で会社を経営しているので、楽しみながら事業を行っていますね。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
全人類誰でもクリエイターになれるという世界観を作りたいです。
将来は、AIの進化によっていままで人がしていた仕事をAIが行うような世界になると思います。もしかしたら、国または自治体が住民全員に一定の現金を定期的に支給するベーシックインカムが導入されるかもしれません。そうなると、人は働く必要がなくなるでしょう。
仕事をしないと暇な時間ができます。その暇な時間を使って人はさまざまなことをすると思うのですが、その一つに創作があると考えています。誰もが本を書いたり曲を創ったりして自分の気持を表現するような世界になってもおかしくないでしょう。
そんな世界が到来するときまでに、創作活動をしたい人がすぐクリエイターになれるよう、誰でも簡単に使える製品を完成させたいと思っています。
私自身も事業が落ち着いて時間ができたら、創作活動をするつもりです。以前一緒にラジオ制作をしていた仲間がプロの作曲家として活躍しているので、その友人と一緒に作品を作ったら、おもしろいものがつくれるのではないかと考えています。
夢中になれることをまずは3年続けよう
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
「石の上にも3年」といわれているように、自分が熱中できることを3年は続けることが大切です。
起業していくなかで、メンバーとの意見の相違によって仲間が減ってしまったり、周囲から厳しい意見をもらったりすることがあるでしょう。そのように辛い状況に陥っても続けると3年くらいで芽が出てきます。
私もラジオ番組を作っていたときに、3年かかってようやく業界で認められるクオリティの作品が完成し、仕事を貰えるようになりました。
ずっとハイスペースで活動し続ける必要はありません。ときにはゆっくりとしたペースでも動き続けていれば、誰かが起業していることを覚えていて仕事を依頼してくれるということもあるので、まずは3年続けてみてください。
私は高校生や大学生に早く起業することを勧めています。学部1年生で起業すれば、その3年後、就職活動の準備を始める学部3年生になる頃には、立ち上げた会社の花が咲き始めますから就職するか起業を続けるのかの判断がしやすいです。高校生から起業できると尚良しですね。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:畠山 祥氏
富山県出身。早稲田大学にて航空宇宙工学を専攻。UC San Diego×WasedaにてMicroMBAを取得。宇宙開発を行う民間スタートアップ企業ではxR開発やUI/UXデザイン、衛星データの解析を経験する。虎ノ門ヒルズ・新宿区・大学といった様々な場でビジネスプランコンテスト優勝・受賞を果たす。文化人類学会での研究発表や、『オンライン武者修行プログラム』にてイスラエルのVC・経営者へのプレゼン、インターナショナルなチームでの宇宙開発など、異分野での豊富な経験もある。楽器を弾いたり、作曲も行ったりする。
企業情報
法人名 |
レイワセダ株式会社 |
HP |
https://www.reiwaseda.com/ |
設立 |
2022年6月10日 |
事業内容 |
動画・音楽等クリエイティブ制作とそれに関する人工知能・ソフトウェア開発 |