株式会社おりおり 代表取締役 堀 真菜実
複数の子連れファミリーが一緒に旅をするコミュニティ「おりたび」を展開する株式会社おりおり。子ども連れに特化しつつも”大人が楽しむ”をキーワードに、ママパパがいきいきと過ごせる瞬間を生み出す旅を提供しています。子どもの幸せを願うなら、まずは一番身近な大人が楽しむことが大事だと語る代表取締役の堀 真菜実氏に、事業の詳しい内容や今後の展望をお聞きしました。
赤ちゃんでもワンオペでも旅行に行ける親子旅をプロデュース
事業の内容をお聞かせください
当社は「おりたび」といって、乳幼児や小さなお子様がいるファミリー向けの親子旅プランを作り提供しています。「みんなでおりなす親子旅」をコンセプトにしており、見知らぬ複数の家族が1つの大きな家族のように一緒に旅をするという少し変わった旅です。これまでツアーを14回行い、420名の方々に参加していただいています。
小さい子どもを連れて旅をするのはとても大変です。特に0〜5歳の年齢は、親がトイレに行くだけでも大変だったり、大きな荷物を持ちながらあやしたりしなければならないためなかなか親の休まる時間がありません。更に、子連れファミリーが旅先を選ぶ際、心理的なハードルがとても高いことが様々な調査から分かっています。ベビーグッズが充実している施設はとても多いですが、安心して過ごせるように心理的負担を減らす仕組みがとても大切なのです。
そこで当社は、同じ立場の親同士の助け合いや支え合いを通して、親子旅特有のストレスを減らす旅を提案しています。最低4家族、多くて10家族で旅行をしますが、「私が見ているから行っておいで」と協力し合うことでお互いの心理的な負担を減らすことができます。そのため子どもだけでなく親も存分に旅を楽しめることが魅力です。また、未就学児が必ず参加できるような内容にしているため、世代を問わず楽しめることも魅力です。
旅の内容は、餅つきや川遊びなどの日帰りプランから、島根や奄美大島、アフリカのケニアへの旅行までととても幅広く、参加費用も2〜80万円と様々です。基本的には貸切や周りの目を気にすることのない環境を選び、親子が参加しやすいように考えています。
また、おりたびは参加者の皆さんの繋がりも大切にしており、会員限定の「OLITABIコミュニティ」と、ツアーに申し込んだ参加者だけのグループコミュニティという2段階の交流の場を設けています。
「OLITABIコミュニティ」では、今後開催予定の企画情報を見ることができたり、ツアーでやりたいことなど意見を出し合えたりして、旅のプラン作成に関われることが特徴です。そして、ツアー参加者限定のグループコミュニティでは、オンラインのチャットやZoomで事前に自己紹介をしてニックネームを決めるなどしながら顔合わせを行います。ツアーに初めて参加する人もいればリピーターの人もいますが、それぞれの事情を理解してお互いに協力し合える体制を旅行の前に作っておけることがこのコミュニティの強味となっています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
年子で2人の子どもを産み、育ててきた実体験が一番の経緯となっています。育児中は社会から離れて他人との繋がりがなくなり、とても葛藤する時期がありました。そしてある時、虚ろな顔で子どもに接している自分の顔を見て、子どもに見せる顔はこれでいいのかと疑問に思ったのです。
そんな話を周りに相談したところ、ほとんどの方々が子どもばかりに目を向けていました。自分がどんな姿でありたいかということや、自分の楽しみには意識を向けられていなかったのです。しかし、子どもの幸せを願うなら、まず一番そばにいる自分がいきいきしなければいけないと、多くの方々から共感を得ることができました。
それからトライアルでツアーを開催しました。すると、旅先の地域の人から旅のプロデュースの依頼の話をいただくことができました。このように様々な点でニーズの高さを感じ、それを機に事業化することを決めました。起業を決めたのは突然のことでしたが、結果的に大人が積極的に楽しむ姿が子どものためになるという共通認識を持つ方々がたくさんいるということに気付くことができました。だからこそ「おりたび」によって良い価値を生みだすことができているのではないかと思っています。
価値観が変わる体験をたくさん提供したい
仕事におけるこだわりを教えてください
おりたび事業においては、旅が楽しければいいというよりも、参加者の皆さんの人生が良くなったらいいなという視点で考えています。
母親の話をたくさん聞いていくと、旅を楽しむ以前に自己肯定感の低さから自信がないと不安に感じている人が多くいらっしゃいます。それは、何をするにも子どもを優先してしまっており、自分のための選択をする機会が減っているからではないかと考えています。
そんな時、1つの旅に「これがやりたい」という主体的な気持ちで参加し、活動しているうちにいつの間にか価値観が変わっていく、そういう体験をたくさんしてほしいと思い、様々な仕組みを旅行中に散りばめています。
また、旅に関わる全員が名前で呼び合うこともこだわりの1つです。子どもを産むと「〇〇ちゃんママ」「〇〇ちゃんパパ」と呼ばれることも多く、役割として扱われがちです。そのため、おりたびで母親も父親も個人として扱う文化形成をしっかり行っています。これは親に限ったことではありません。添乗員さんや地域の人、ホテルの人も巻き込み、名前で呼ぶことで一緒に遊び、仲良くなることを徹底しています。
おりたびは、いわゆるベビープランのようなものではなく、大人目線の「やってみたい」を優先に面白い企画を作ります。クルーズ船を貸し切って無人島に行くプランやケニアに行くプラン、廃校で大人がハロウィンをするプランなど様々です。これらは一見すると未就学児連れでは不可能に見える内容ですが、きちんと子どもにも照準を合わせているのがポイントです。
私自身は代表でありますが、徹底して旅人目線で旅を考えるよう意識しています。双方向からコミュニティのやり取りがあるため、とても解像度が高い旅を実現できているところを評価していただいているように思います。
起業から今までの最大の壁を教えてください
仕事自体はやりたいことなのでそれほど大変だと感じませんが、一番大変なのは子育てとの両立です。子育てや他の予定との両立は常に悩んでおり、その度に調整したり再構築したりして乗り越えてきました。起業前から今まで同じ悩みを抱えているので、今後も両立できるかが壁となりそうです。
子どもに見せたい背中=自分の生き方になる
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
先程子育てとの両立が大変だと言いましたが、モチベーションはやはり子どもの存在です。子どもにどんな背中を見せたいかというのは自分の生き方にもなると思っていて、子ども目線でいることは常に心掛けています。
常に母親がどのようなマインドを持ってどういう風に進んでほしいと思うかなと子ども目線で想像するようにしています。こうすることで自分がこれまで選ばなかった選択もできるようになり、進み続けられていると思います。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
事業を運営する中で、これまで親だけではなく地域の人の声もたくさん聞いてきました。今後は、旅先と旅人がお金だけでなく愛着や感謝、理解などでも繋がれる世界を作りたいと思っています。魅力的なコンテンツを持っているけれど、世間に出せていない自治体もあり、OLITABIコミュニティを活用してそのような自治体の方々に企画を作ってもらうことも将来的にやりたいことの1つです。
そして、私はみんなの「やりたい」を「できる」に変えていく機会をたくさん作りたいと思っています。旅に参加した人からの声として多いのは、時々旅行に行くのではなく日常的にもっとお出かけがしたいという意見です。そこで、単発で終わる旅ではなく、通える本拠地である場所をみんなで作る計画をしています。気軽に農業体験や自然体験ができる場所にしようと考えています。また、夢のままで終わりそうな旅、例えば子連れで弾丸世界一周のようなものなどを、おりたびを通して実現させていくのが私の願いです。
現在おりたびにはSNSや実際に参加した家族からの紹介経由で訪問してくれる人が多いのですが、今後は公式チャットツールを開設し、利用者同士が気軽にコミュニケーションを取れる場を提供していきたいです。
起業することを選んだら思いっきり楽しんで
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業はツールでしかありませんが、それが自分にとって最適だと思うならやるべきです。私自身、やりたいことを実現するために起業を選びましたが、起業して良かったと改めて感じています。企業を迷っているのであれば、ぜひ飛び込んでみてほしいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:堀 真菜実
早稲田大学卒業後、東京海上日動で法人営業を経て、スタートアップに転職。事業責任者として赤字事業を再建しながら、200のオリジナルツアーを企画し、3,000名の旅行者と体験を共有する。2児の出産・子どもの闘病生活を通して、ライフスタイルに葛藤を抱えた経験から、「みんなと行く親子旅OLITABI」をスタート。毎日を奮闘する親が、心からいきいきと過ごせる瞬間をお届けする。
企業情報
法人名 |
株式会社おりおり |
HP |
|
設立 |
2023年10月 |
事業内容 |
見知らぬ複数の家族がひとつの大きな家族のように一緒に旅するツアー「OLITABI(おりたび)」 |
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