合同会社S.FARMS 代表 蛯名 洸

合同会社S.FARMSは陽の目が当たりにくく、働き手の高齢化などの課題を抱えている農業業界において「農業における負の固定概念を払拭する」ことをミッションに掲げ、商品開発や農業プロデュースに取り組んでいます。今回は代表の蛯名 洸氏に、事業内容や今後の展望についてお話しを伺いました。

 

農業の現状を変えたいと考え起業を決意

事業の内容をお聞かせください

農業プロデュースを行っており、商品開発事業とプロモーション事業、地方創生事業の3つの事業を展開しています。

 

なかでも最も注力しているのが商品開発事業です。地方の農産物などをそのまま販売するのではなく、製造・加工会社と業務提携をして加工食品を開発しています。たとえば、最近だと僕の出身地である青森県のごぼうを使用した味噌炒め缶を業務委託している企業と一緒に作りました。

 

もう一つの事業がプロモーション事業で、地方で採れた野菜を使った料理を提供するポップアップイベントを主催しています。地方で生産されたおいしい野菜が都内の人に認知されていないという現状を変えるためにこの事業を始めました。

 

そして3つ目の地方創生事業は、実はまだ進行中なんです。先ほどお話ししたような、とてもおいしいけれど一般的にあまり知られていない特産品を使って新たな商品を作り、地方創生をしていく予定です。現在、自治体の方と連携しながら事業を進めています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

実家の農業を継ぐという選択肢もありましたが、「都内で大きいお金を動かしたい」「多くのお金を稼ぎたい」という思いから、上京してハウスメーカーで営業職に就きました。農業は体力が必要なうえ、更には自然災害の影響を受けやすくリスクが高いなどといった複合的な理由から、稼ぐことが難しいと考えていました。

 

しかし、2020年頃のコロナ渦を境に私の気持ちに変化が生まれました。パンデミックを経験し、経済活動が制限され食料の価格の高騰や、ステイホームなどで外出できないことから、「食」に対して多くの人がフォーカスするようになりました。これらを経て、私は当たり前のように食事ができているのは農家さんが農作物を生産してくれているからだということに気づきました。

 

人の食を支える重要な仕事なのに感謝されることがほとんどないと知り、その現状を変えたいと思うようになりました。

 

そのためには、私が実家の農業を継ぐだけでは根本的な解決にはなりません。そこで、農業をもっと盛り上げられるような事業をすれば良いと考え、起業を決意しました。

 

起業するからにはITの知識が不可欠だと思い、IT系のベンチャー企業にてWebサイト制作やシステム開発のPM(プロジェクトマネージャー)として働いたのを経て、2024年8月30日にS.FARMSを設立しました。

 

チャンスが訪れたら「なんとかなる」と決めて即行動!

仕事におけるこだわりを教えてください。

周りの方々への感謝を忘れないことです。

 

商品一つを作るにしても、業務提携をしている企業様の協力なしには成功しませんでした。さらに、その提携先の企業様も、イベントで出会った社長さんからの紹介でした。さまざまなご縁があって今の事業ができているので、関係者の方々に感謝を忘れないで仕事をすることを心がけています。それと、僕がまだ何者でもないところからついてきてくれた創業メンバーにも本当に感謝しています。

 

私も誰かをサポートしたり何かを与えたりしていれば、巡り巡ってまた自分のところに返ってくると信じて仕事をしています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

商品開発事業を確立するまでの模索期間です。いろいろな事業を企画しましたが、すぐにマネタイズできるものではなく、企画倒れが続きました。原因のひとつは、細かな事業計画を立てる前に行動に移してしまい、具体的に収益化するまでの計画までは考えられていなかったことでした。

 

瞬発力も大事ですが、自分たちのビジョンを叶えるためには、キャッシュフロー等細かいところを詰めておくことも必要だったと感じています。

 

また、農家さんとの関係構築も壁になりました。こだわりの強い方や、DX化に縁のない方もいますので、すべての農家さんを一度に説得することはできません。そのため、まずは興味を持ってくれた方と一緒に仕事をして実績を積み上げることを意識していました。

 

さらに、何か実績を持っていると、農家さんだけでなく、自治体と仕事をするときにも役に立ちます。

 

農家さんに光が当たらない悔しさをバネに進み続ける

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

進み続けるモチベーションは「悔しさ」です。

 

私が感じている悔しさとは、日本の食を支えているために日々努力している農家さんたちに陽の光が当たらないという現実です。さらにいうと、農業など一次産業の人たちがヒエラルキーの最下層に位置するという、マイナスイメージを持っている人も少なくありません。

 

この悔しさから、農業に対するイメージを私たちの事業を通じて払拭したいと考えています。

 

そこで、なかなか陽の光を浴びていない農業を営む方々に光をあてたいという思いを込めて、私の会社を「S.FARMS」と名付けました。S.FARMSの「S」には様々な意味が込められているのですが、そのうちの一つが輝くという意味の「Shine」を由来としています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

S.FARMSを令和を代表する農業の会社にしたいという野望を持っています。

 

「農業に関する企業といえばS.FARMS」を一般常識にしたいですし、それだけでなく、農家さんが困ったことがあったら、相談先として私たちを思い出してくれるようになったら良いなと思っています。

 

また今後は、農家さんに伴走して独自開発をするという事業を展開する予定です。農家さんのなかには、とてもおいしい野菜を作っているけれど新しい販路を作ったり、自分たちの生産物を商品化したりする余裕がない方が多いことに気づきました。そこで、私たちが農家さんと一緒に商品を作ってくれるOEM先やメーカーなどをお繋ぎし、クラウドファンディングで資金調達して商品化するお手伝いがしたいと考えています。

 

それの実現のために、商品開発するにあたってのOME先や業務提携してくれるメーカーさんと繋がりたいと考えています。

 

また、私たちが行っているプロモーション事業を継続して続けるために、同じような志を持ったレストランやカフェの方とも、一緒に商品のPRができたらと思います。

 

私たちと一緒にビジネスをしたいという方がいらっしゃいましたら、お問い合わせいただけるとうれしいです。

 

苦境に立たされてもミッションやビジョンを思い出せば乗り越えられる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私は今年起業したばかりで、起業家としては1年生ですから、大きなことは言えないのですが、起業は楽しいことばかりでなく、苦しいこともたくさんあります。私もこれから、苦境に立たされることがあるでしょう。

 

そのようなときには、掲げたミッションや成し遂げたいビジョンを思い出すと、また頑張ろうと思えるんです。一緒にビジネスをしている仲間の存在も大きいですね。ですので、本当に起業したいと思うなら、一緒にがんばりましょう!

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:蛯名洸 氏

青森県の農家出身。大学卒業後に上京し、大手ハウスメーカーにて約3年営業を担当。新型コロナ蔓延をきっかけにマルタ共和国へ留学し、海外6か国以上を巡る。帰国後にWebサイトやシステム開発のPMなどを経験する。

2023年10月に同年代の仲間2名と一緒に農業プロデュース集団S.FARMS(エスファームズ)を創設。青森県産のごぼうを使った缶詰の監修や商品開発、地方野菜を活用したポップアップイベントの主催など、農業を多角的な視点で盛り上げていく。

 

企業情報

法人名

合同会社S.FARMS

HP

https://s-farms.online/

設立

2024年8月30日

事業内容

農業プロデュース、商品開発など

 

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