サントリーフラワーズ株式会社 &Greenブランドオーナー 尾山 翠
サントリーフラワーズ株式会社が2021年に新規事業として立ち上げた「&Green」。土を使わない画期的な観葉植物の製造・販売を手がけるこの新事業は、サントリーグループの技術力と革新精神を受け継ぎ、植物市場に新たな風を吹き込んでいます。
ユニークなブランド戦略と革新的な商品開発により、前年比で売上2倍といった飛躍的な成長を遂げています。
「もっと気軽に植物のある暮らしを楽しんでほしい」と語るブランドオーナーの尾山 翠氏に、事業誕生の背景から今後の展望まで詳しくお伺いしました。
植物栽培のハードルを下げる土を使わない観葉植物
事業の内容をお聞かせください
「&Green」の事業では、土を使わない観葉植物という一風変わった商品をECで販売しています。
土の代わりに使っているのは「パフカル」という特殊な素材です。スポンジ状の素材で、植物に最適な水と空気の量を均一に保持できます。このパフカルに根付いた状態の植物をお客様にお届けしています。
「&Green」のコンセプトは「緑との新しいつながりを創るグリーンブランド」です。植物初心者の方はもちろん、過去に植物を枯らしてしまって自信をなくした方でも、簡単に扱えて自分好みに気軽にアレンジができる商品設計にしています。
管理方法はとてもシンプルです。グラスなどの容器に少量の水を入れて、水がなくなったら足すだけです。初心者の方でも水やりのタイミングに迷うことがないため、安心して育ててられます。底穴のある鉢を使用する必要はなく、ご自宅にあるグラスやコップで育てることができます。
また、土を使わないので、バラバラとこぼれたり手が汚れたりする心配もありません。そのため、キッチンやベッドルームなどでも、衛生的に植物を楽しんでいただけます。
基本的には3種類セットで主にECで販売しており、切り花を生けるような感覚で色々な組み合わせを楽しめます。好きな器に気分によって入れ替えるのも簡単なので、土植えの植物に比べて楽しみ方の幅が広いです。
さらに2024年7月からは、サブスクリプションサービスを始めました。そこでは、毎月3種セットで観葉植物をお届けすることから、徐々に観葉植物を増やしてグリーンに囲まれた暮らしを実現できるプランとなっています。
お客様からは「植物のおかげでリラックスできた」「部屋がおしゃれになって気分が上がった」といった声をいただいています。中には「植物を世話する時間がルーティーン化して、生活リズムが整った」と言う方もいらっしゃいます。
この事業には、サントリーフラワーズの「植物の力を通じてお客様に潤いと感動をお届けしたい」との思いが込められています。
単なる植物販売にとどまらず、簡単で楽しい植物のある暮らしを提供することで、人々の生活に潤いと豊かさをもたらしたいとの思いを込めて、日々取り組んでいます。
「&Green」の魅力を伝えるためにどのような工夫をしていますか?
パフカルを使った土いらずの観葉植物としての特徴は大きいですが、それ以上に大切にしているのは、お客様とのつながりです。
植物の売買で終わりではなく、お客様が植物を買うことで、新しいつながりが生まれる、そんなブランドにしたいとの思いがあります。
例えば、いろいろな方にインタビューをして、その方の暮らし方や植物に対する思いを記事化したコンテンツを展開しています。これは、単なる商品紹介ではなく、植物のある暮らしの魅力を伝えるための取り組みの一つです。
さらには、商品名も工夫をしていて、セット名に「Connie(コニー)」「Sandy(サンディー)」など、人やペットの名前に近いものを使用しました。ペットのような感覚で、植物がそばにあると心が癒されたり、元気をもらえたりする、そのような意味づけをして、お客様に興味を持っていただくきっかけづくりを行っています。
それに加え「Find My Green」といった診断コンテンツをサイト内で展開しています。一般的な植物診断だと「お部屋の環境は?」のような質問が多いです。しかし、当社の診断では「あなたの好みは?」「ライフスタイルは?」といった質問をして、その人の性格やライフスタイルに合った植物を提案しています。
大事にしているのは、植物初心者の方にも気軽に選んでもらうことです。植物を育てるのは難しいと思っている方は多いです。だからこそ、そういった印象を払拭できるように、サイトのつくり方やコンテンツの内容はこだわり、植物を育てるハードルを下げるようにしています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
当社は、お花や野菜の苗などのガーデニング商材の品種開発から販売までを手がける種苗メーカーです。
ガーデニングは広いお庭やべランドがある郊外や地方にお住いの、シニア層のユーザーが多くいらっしゃいます。新規事業を立ち上げるにあたって、私たちはもっと若い世代や都心に住んでいる人たちにも、部屋の中で気軽に植物に触れてほしいと考えました。そこからパフカルを使った商品開発が始まったのです。
また、当時はコロナ禍でECビジネスが伸びていました。しかし、当社ではECのノウハウが不足していたことから、新しい挑戦として取り組み、会社の資産にしていきたいとの思いもありました。
現在、主なユーザー層は30〜40代が中心になっています。新しいターゲット層に向けて、ECを中心としたビジネスモデルで、観葉植物を通じて植物の魅力を届ける新しい挑戦が「&Green」の事業の始まりだったのです。
一貫した世界感を表現し、顧客に選ばれるブランドに
仕事におけるこだわりを教えてください。
ブランドの本質的な価値を追求することを重視しています。
事業を成立させることは非常に重要ですが、それと同時に、私たちが本当にお客様に届けたいものは何か、お客様が求めているものは何か、私たちはどうありたいのか、といった軸を絶対にブレさせないようにしています。
上司を含め周りから「こっちの方が売れるんじゃない?」「これもやってみたら?」といった意見をもらうことがあります。それが本当に私たちのやるべきことなのか?といった疑問を常に持つようにしています。
また、商品を1つ選ぶにしても、単に「これが売れそうだから」という理由では選びません。必ずブランドの世界観に沿っているか、ターゲットに適しているかを慎重に検討します。これは商品選びだけでなくコンテンツの制作など、すべての面において同じことが言えます。
今の事業に携わってから直面した最大の壁を教えてください
最大の壁は、安定的な生産と供給を確立することであり、今も取り組んでいる最中です。
取り扱っているものが生きた植物なので、どんどん成長しますし、病気にもかかりますし、時には枯れてしまうこともあります。今でもまだ完全に生産と供給が安定しているとは言えず、日々試行錯誤を重ねています。
その対策の一つとして、我々が直接生産現場に出向いて、植物のメンテナンスや管理を行っています。さらに新たな取り組みとして、滋賀県にあるサントリーフラワーズイノベーションフィールドという開発拠点の活用をスタートしました。
元々、この開発拠点は花の苗の開発がメインでしたが、「&Green」の物流拠点兼管理拠点を設置しました。ここで植物の管理や商品の発送ができるようになれば、生産現場により近い場所でコミュニケーションを取りながら、迅速かつ効率的に対応できるのではと考えています。
お客様の喜びの声が前に進む力になる
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
モチベーションは、主に2つあります。
まず、一つ目として「&Green」の事業拡大に向けて、やるべきことがまだまだ残っている点です。
現在はビジネスの完成には程遠く「次はこれをやろう」「その次はあれに取り組もう」と、常に前に進んでいく状況にあります。この成長の余地こそが、大きな原動力となっています。
二つ目は、お客様から良い声をいただくと共に、ブランド認知の拡大が実感できている瞬間です。
例えば、不定期に開催しているイベント出店などで、お客様と直接お話しする機会があります。そこで、ユーザーの方々がウェブサイトやInstagramで発信した情報をみて足を運んで下さり、喜びの声やお悩み事を直接聞くことができるのは本当に嬉しく感じます。それが認知拡大や「やっていて良かった」と実感できる瞬間であり、確実にモチベーションにつながっています。
ユーザーアンケートやインタビューで、「植物があるとなんかいいなと感じた」と語ってくださり、植物をどんどん増やしてグリーンのある生活を楽しまれている方がいらっしゃいました。また最初は土の植物は苦手意識があり、土を使わない&Greenを購入いただいた方が、今では土の植物もお部屋に迎え入れたといったお話を伺えると、まさに&Greenを立ち上げた時の想いが実現できていると実感し、よりモチベーションが高まります。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
ブランドコンセプトである「緑との新しいつながりを創る」を大切にしながら事業を発展させていきたいと考えています。具体的には、パフカルの観葉植物以外の植物関連アイテムECサイトを軸に展開していく予定です。
これにより、私たちの製品に魅力を感じてくださったお客様により多くの選択肢を提供し、さらに広く愛用していただける商品展開を目指しています。
植物を育てる喜びと地球への優しさを両立
最後に「&Green」に興味を持っている方にメッセージをお願いします
&Greenは緑との新しいつながりをつくるグリーンブランドとして、土を使わない観葉植物を販売しており、さまざまな人や想いとつながり、暮らしが豊かになることを願い、Contentsを発信しています。
また、&Greenを通して自然環境や「水」に関わる課題についても知るきっかけになればと考えています。
例えば、生産時の水使用量は、従来の植物の約3分の1で済みます。ご家庭での育成においても、通常の観葉植物と比べて水の使用量が格段に少なくて済むのです。
また、売上の一部を水環境を守る団体に寄付させていただいています。お客様が当社の植物を購入し育てていただくことで、間接的に環境保護活動にも貢献できるサイクルになっているのです。
気軽に植物を育てる喜びを感じながら、同時に環境にも配慮できる、そんな新しいライフスタイルをみなさんと共に創造していきたいと思っています。
▼「&Green」の詳細・購入はこちら
https://andgreen.direct.suntory.co.jp
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:尾山翠 氏
2020年サントリーフラワーズ株式会社に中途入社。
ブランディング、商品設計、マーケティング、生産・フルフィルメント構築など、ブランド構築に関わる全てを担い&Greenを立ち上げる。現在は同ブランドのグロースに向け戦略策定のもと推進・運用に従事。
企業情報
法人名 |
サントリーフラワーズ株式会社 |
HP |
|
設立 |
2002年7月1日 |
事業内容 |
花苗・花鉢、野菜苗・野菜青果、および切花の開発・生産・販売 |
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