【#298】テクノロジーとクリエイティブを両立し、世の中に新しい感動を創り出せるようサポーティブAIでクリエイターをサポート|代表 竹原 康友(株式会社KaKa Creation)
株式会社KaKa Creation 代表 竹原 康友
「AIの力で、創造する人に力を。もっと、世界をつなぐクリエイションを」をミッションに掲げる株式会社KaKa Creation。AIを活用したアニメーション制作により、従来の制作時間を大幅に削減することが可能なAIを活用したアニメ制作事業 、コンテンツサービス開発事業を展開し、クリエイターが創造活動に集中できる環境を実現しています。
代表の竹原康友氏は、クリエイターにより多くの収益が還元される仕組みが必要だと話します。事業内容や今後の展望なども含めて、詳しくお聞きしました。
人間の創造性を活かすAI活用で、アニメ制作を効率化
事業の内容をお聞かせください
当社では、AIを活用した本格的なアニメーション制作を行なっています。既存のAIツールを独自の方法で組み合わせ、効率的なアニメーション制作のワークフローを構築しています。
現在のAI技術では、キャラクターの一貫性の維持や細かな動きの表現など、意図したアニメーション作りが難しいという課題があります。私たちはこれらの課題を克服し、クリエイターの表現したいことを的確に反映できるシステムの開発を目指します。
例えば、クリエイターが描いた線画をAIが着彩する技術や、ラフ原画から特定のキャラクターを描画する技術、さらには動きの指示だけでキャラクターを動かす技術などをクリエイターの意見を取り入れながら、開発しております。
また、音声に合わせて目や口の動きを自動生成する技術や、写真からアニメ背景を生成する技術など、アニメーション制作のさまざまな場面でAIを活用し、制作プロセスを大幅に効率化しています。
当社の経営理念は「サポーティブAI」です。AIはあくまでもクリエイターをサポートするツールであり、創造性のベースは人間にあると考えています。最終的には、個々のクリエイターが自分一人で新しい作品をつくり出せる環境を整えることを目指しています。
AIを活用した他社の事業との違いは何でしょうか?
当社の最大の特徴は、純粋なAI技術会社ではなく、コンテンツ制作会社としてのアイデンティティを持っている点です。AIを活用しながら作品をつくり上げる、コンテンツプロデュースチームとAI技術者の融合を目指しています。
当社の組織構成もこの方針を反映しており、AI技術者だけでなく、プロデューサー、シナリオライター、マーケターなど、コンテンツ制作に直接関わる人材が半数を占めています。
さらに当社のCCOは、有名アニメをプロデュースしてきた経験を持つ人物です。このように、AIの技術力とアニメ制作の現場知識を併せ持つ点が、当社の強みであり、他社との大きな差別化ポイントです。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
2003年にサイバーエージェントに入社し、主にコンテンツ制作に携わり、ゲームやABEMAのプロデューサーとしてさまざまな経験を積みました。
その中で印象深かったのが、アニメやフィギュア事業での経験です。フィギュア事業では、売上の7割が海外だったことに驚きました。日本のコンテンツが瞬時に世界中に広がる力、特にアニメのグローバルな影響力に改めて気づかされました。
しかし同時に、アニメ制作現場の厳しい現状も目の当たりにしました。制作費用の大部分を製作委員会が負担し、全ての権利を持つ一方で、実際に制作を担う会社は投資できず、制作受託のみで利益を得る構造になっています。さらに、アニメーションの質への要求が高まる中、現場のスタッフの待遇は改善されない状況が続いています。
この状況は、日本のアニメ産業の将来に大きな影響を与えかねません。制作に携わりたい人は多くいますが、実際に制作できる人が減少しているのです。これは日本の国益にも関わる重要な問題だと考えました。
そこで、AIを活用してこの構造を改善したいと考えました。例えば、優れたシナリオライターが自らキャラクターを考え、1人でアニメを作れる世界をAIで実現することを目指しています。これにより、クリエイター自身が権利を持ち、ヒット作の利益を直接得られるようになることを期待しています。
最近、日本政府もコンテンツの海外展開支援を強化する方針を打ち出しています。この機会に、日本のコンテンツをグローバルに展開していくための制作プロセスを根本から変革できるのではないかと考えています。生成AIの登場は、そのためのチャンスだと捉えています。
クリエイターファーストで貫く制作環境の改革
仕事におけるこだわりを教えてください。
クリエイターファーストの姿勢を貫き、彼らにとって有益なAI活用法を追求することです。その結果、クリエイターエコノミーを変革し、より多くの感動的な作品を生み出せる環境を整えたいと考えています。
新しいビジネスモデルを構築し、クリエイターの方々により多くの収益が還元されるようにすることも重要です。想像力豊かな人々に経済的な力を取り戻してもらうことが、私の揺るぎない軸となっています。
また、私は45歳で起業したのですが、最近は日本のために何かできないかといった思いが強くなってきました。日本人特有の発想力や物語をつくり出す力は、他国にはない強みだと感じています。特に、アニメーションは日本の独創的なアイデアを世界に広める大きな力を持っています。
例えば、漫画作品のアニメ化によって、作品の魅力が広く伝わることがあります。漫画は素晴らしい原作を生み出す力がありますが、アニメはそれを世界中に広める力があります。
私たちの目標は、多くのアニメ作品を生み出し、日本人の独創的な発想を世界中に認めてもらえるような環境をつくることです。そのため、日本で事業を展開することに大きな意義があると考えています。
技術面だけでなく、コンテンツ制作に注力するのもこのためです。AIの技術開発では、大規模なデータを持つ英語圏の企業が優位に立つ可能性が高いですが、そういった技術を活用しつつ、発想力豊かな日本でコンテンツとして勝負することが重要だと考えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
現在も多くの課題に直面しているのですが、最も難しく感じているのは事業化の部分です。
技術開発とビジネスモデル構築という二つの大きな課題に同時に取り組んでいます。これらはまだ完全には解決できておらず、克服すべき重要な壁だと認識しています。
さらに、AI技術に対する社会の認識も大きな課題となっています。ユーザーや一般の方々にどのように説明し、理解を得るかが重要です。
法的観点については、関係省庁から方針が提示されており、それらの方針やガイドラインに則って制作を進めています。
私たちの制作プロセスでは、クリエイターがキャラクターデザインなどを行い、それをAIに学習させて使用しています。つまり、創作物の大部分は人間が関与しており、あくまでもAIは制作のサポートツールとして利用しています。
今後の課題は、このような私たちの取り組みをいかにユーザーに伝えていくかです。AIが全てを制作しているわけではなく、アウトプットの大半は人間が作成し、AIをサポートツールとして利用していることを、明確に説明していく必要があります。
AI活用したアニメを海外にも届けたい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
一緒に働いているメンバーの存在です。現状を乗り越え、未来を共につくり上げる彼らの存在が、私にとって何よりの原動力になっています。
私たちが挑戦していることは、ある程度のリスクが伴います。それにも関わらず、会社の理念や私個人の考えを信じて、今一緒に歩んでくれているメンバーがいることが、私のモチベーションのすべてと言っても過言ではありません。
それと同時に、日本とクリエイターのためになる仕組みをつくることも大きなモチベーションになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
一言で言えば「かっこいい会社」になることです。
クリエイティブ&テクノロジーの分野でグローバルに認められる企業をつくり上げ、有名クリエイターたちが「あの会社に参加したい」と自然とオファーしてくるような魅力的な存在になることを目指しています。
AI技術を駆使してアニメーション制作を行う上で、技術面は確かに重要です。それと同時に、現代のトレンドに合った作品を効率的かつ数多く生み出していくことを目指しています。そして、これらの作品を日本だけではなく、グローバル市場をターゲットに展開する予定です。
言わば、エンターテイメント業界における新しいビジネスモデルの先駆者になりたいという思いがあります。大きな目標を持ちつつも、現在のチームメンバーと楽しみながら、前進していければと思っています。
ミドルエイジだからできる起業がある
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
私は20年間サラリーマン経験があり、長年のキャリアを積んだ人間が起業するメリットを身をもって感じています。人脈や経験則、さまざまな状況に対処できる経験値などは、確かに大きな強みとなります。
私自身、ある程度の地位を得て、周りからの評価も得られるようになりました。しかし、その経験値と反比例して、チャレンジ精神が薄れていくのを感じました。
このまま20年過ごしていくのは嫌だと思い、新たな挑戦を決意しました。もちろんリスクはありますが、逆に言えば、今までの経験と人脈があり、目指すべき場所が見つかったのであれば、チャレンジする価値は十分にあると考えています。
日本の活性化のためにも、私たちミドルエイジの経験豊富な人材がチャレンジすることが重要ではないでしょうか。若い起業家とは異なる戦い方、経験を活かした独自のアプローチができるはずです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:竹原康友 氏
2003年サイバーエージェント入社。インターネット広告の営業職を経て、マネージャーとして従事。その後、海外事業立ち上げに参画し、アメリカ市場に向けたゲームのプロデューサーを経験し、ゲーム事業へ異動後、プロデューサーとして従事。動画事業の関連会社の立ち上げに参画し、セールスの責任者として従事した後、ABEMAの新チャンネルの立ち上げに従事、番組プロデューサーとして様々な番組のプロデューサーを行う。 2016年(株)eStreamの取締役に就任。高品質フィギュアブランドの「SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE」の立ち上げやアニメの製作事業に取り組む。同経験の中で「クリエイターが最も評価され報われる世界」を目指したいと決意し2023年6月にKaKa Creationを創業。
企業情報
法人名 |
株式会社KaKa Creation |
HP |
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設立 |
2023年6月5日 |
事業内容 |
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