SkyBear株式会社 代表取締役 熊澤 主馬

「日本一のスカイエンタメカンパニー」をビジョンに掲げるSkyBear株式会社は、最新技術のドローンを活用したプロデュース事業を展開しています。

 

国内初のロードレースのライブ配信や、スケートリンク上でのドローンショーの実現など、常に革新的なチャレンジを続け、エンターテインメント領域での新しい可能性を追求しています。

 

「ドローンを軸に地域創生に貢献したい」と語る代表取締役の熊澤主馬氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

最新技術のドローンによるプロデュース事業を展開

事業の内容をお聞かせください

当社では従来の空撮とは一線を画す「FPV(First Person View:一人称視点)」という特殊なドローン技術を用いて、エンターテインメント領域で新しい市場を開拓しています。



一般的なドローン事業者の99%が使用している定点撮影型のDJI製ドローンとは異なり、時速150キロでの追従撮影や、花火や工場内部など、これまで撮影が困難だった領域に挑戦しています。

 

最近では、国内で初めてロードレースのライブ配信をドローンで成功させ、大きな反響がありました。この実績が、箱根駅伝やオリンピックなどでの新たな映像表現として認知される大きな一歩であると感じました。



事業の特徴は、単なるドローン撮影会社では、事業成長の上限のアッパーがきてしまうので、現在はドローンを用いたプロデュース会社として展開していることです。

 

この段階では社内にパイロットを抱えず、たくさんお繋がりをいただいている外部パートナーと協力して新しい世界観を創造しています。

 

例えば、ホテルの休館日に行う特殊撮影や、ドローンショーと建物のライトアップを組み合わせた演出など、ドローンを活用した総合的なプロデュースを国内初の仕掛けを手がけています。



クライアントは、特殊撮影のニーズがある地方の放送局、施設の魅力を立体的に伝えたいホテルやリゾート施設が中心です。最近では、別荘事業などの不動産分野でも需要が高まっています。

 

FPVドローンならではの自由な視点で、まるでガラス張りの建物のように、施設全体をありのままに映し出すことができるため「写真と実物が違う」といったミスマッチを防ぐことができます。お客様は実際の空間をより正確にイメージしながら、安心して予約や購入を検討できるようになりました。



現在のドローン市場規模は現在約6,000億円、2029年には1兆円規模に成長すると見込まれています。私たちはその中で、保険や免許取得支援ではなく、ドローンを活用したサービスに特化しています。

 

通常1ヶ月以上かかる映像制作に対し、撮影したその場での納品が可能な「ツバメ」サービスでは最短1週間での納品を実現するなど、新しいビジネスモデルの構築にも注力しています。

 

インバウンド向けの事業を通じ、地域創生に貢献されているそうですね

ドローン技術を活用したインバウンド向けの事業を、大きく2つの方向性で展開しています。



一つ目は、外資系ホテルなど、インバウンド受け入れ施設とのコラボレーションです。私たちには旅行会社様ほどのリソースはありませんが、FPVドローンならではの魅力的な映像プロモーションを提供することで、間接的にインバウンド誘致に貢献しています。



2つ目は、より直接的なインバウンド向けイベントの企画・実施です。例えば、現在取り組んでいるのが、国内初となるスケートリンク上でのドローンショーで、大型イベントとして注目を集めています。

 

さらに、将来的な展望として「空旅」というプロジェクトを進めています。これは日本全国の魅力的なスポットをFPVドローンで撮影し、まるで空を飛んでいるような体験を提供するサービスです。高齢者や足の不自由な方々にも日本の絶景を楽しんでいただけるよう、視覚だけでなく、音や香り、温度まで再現する没入型の体験を目指しています。


このサービスは、インバウンド向けにも展開可能で、海外の方々に日本の魅力を体験してもらえる機会にもなります。従来のCGベースの映像制作は莫大な費用がかかりますが、当社のFPVドローン撮影なら実写での提供が可能で、大幅なコスト削減も実現できるのです。

 

このように、ドローン技術をエンターテインメントとして活用することで、誰もが日本の魅力を体験できる新しい観光の形を創造し、地域創生に貢献していきたいと考えています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

以前は不動産会社のサラリーマンとして6年間、電話営業の仕事をしていました。朝から晩まで400件以上の電話をかけ、25歳頃には年収1,000万円を達成したのですが、自分で商品を開発していない、他部署のつくったものを売るだけの仕事に違和感を覚えるようになったのです。

 

新たな道を探るため、InstagramやYouTubeが注目され始めた時期に、動画編集とSNSマーケティングの会社を立ち上げました。その過程で差別化を図るためにドローンを購入し、空撮の資格を取得したのです。このドローンとの出会いが、私の人生を変える大きな転機となりました。

 

最初は30万円の資格取得費用と25万円の機体購入の投資でしたが、1件の撮影案件で元が取れる計算でした。さらに、通常の撮影にドローン撮影をオプションとして追加することで、収益性の高いビジネスモデルを確立できたのです。お客様にも喜んでもらえましたし、新しい映像表現ができることに多くの方が興味を持ってくれました。

 

彼ら(ドローン)のおかげで事業が軌道に乗り、生計を立てられました。だからこそ今度は私が、彼にとって有意義な存在でありたいと思っています。彼らの活躍するステージの可能性を広げていくという恩を返す気持ちで、今の事業を展開しています。

 

クオリティに関して一切妥協しない

仕事におけるこだわりを教えてください。

仕事へのこだわりは、クオリティの追求に尽きます。例えば、たった10秒の映像のために半年前から準備をすることもあります。特にテレビ局様とのお仕事でのFPVドローン撮影は、生放送のように一発勝負のため、失敗は許されません。

 

そのため、当社ではパイロットの選定にも厳しい基準を設けています。単なる操縦技術だけでなく、クリエイティブな表現力を持っているか、保険の対応領域はいくらか、飛行実績はどうか、これまでの飛行時間はどうかを重視しています。結局のところ、私たちの仕事は、その映像を見た人に「感動」や「行ってみたい」といった、高ぶる感情を彷彿とさせることなのです。

 

実際の例を挙げると、ある4日間のイベント撮影では大分長者原という国立公園付近での撮影に失敗しました。先頭集団の把握が難しく、車やバイクが入り乱れる中でベストアングルを見つけられなかったのです。しかし、この失敗を教訓に、熊本阿蘇エリアでの撮影では夜中までミーティングを重ね、細部まで準備を徹底しました。

 

その結果、お客様であるとある地方テレビ局の社内アンケートで「迫力がある」「インパクトがある」といった高い評価をいただきました。何十年も映像を扱ってきたプロフェッショナルからの評価は、当社のこだわりが間違っていないことへの証明でした。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

間違いなく資金繰りです。経営経験のない私にとって、想像以上に厳しい課題でした。

 

営業畑出身だった私は、売上ばかりに目を向けていて、実際のキャッシュフローの管理がまったくできていませんでした。特に、自分より給料が高い社員の給与支払いに困ったときは、本当に追い詰められました。

 

この危機を乗り越えるため、二つのことを行いました。一つは、事業計画をしっかり立てて個人の支援者たちに頭を下げて回ったことです。もう一つは、お客様に状況を説明した上で「クオリティは絶対に下げません」との約束のもと、前金でお支払いいただけるようお願いしたことです。

 

つまり「入ってくるお金は早めに、出ていくお金は遅めに」といった基本的なキャッシュフロー管理を、実践を通じて学んでいったのです。

 

エンタメを通じた被災地支援の新しい形をつくる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

ドローンを活用した社会貢献です。特に、ドローンショーには大きな可能性を感じています。

 

最新のドローンショーでは、中国で8,000機を同時に打ち上げてギネス記録を達成しました。日本では2,000〜3,000機程度が主流ですが、その表現力は驚くべきものです。空中にQRコードを描き出すことも可能で、活用すれば観客がその場で簡単に寄付できる仕組みもつくれます。

 

特に注目しているのは、被災地支援への活用です。熊本地震から10周年となる2年後や、能登半島地震の被災地で、ドローンショーを通じたチャリティーイベントを実現したいと考えています。PayPayやPayPaなどを使えば、感動した観客が100円でも1,000円でもその場で気軽に寄付できます。

 

このように、エンターテインメントと社会貢献を組み合わせた新しい形のイベントをプロデュースすることが、当社の目指す方向性です。ドローンの可能性を最大限に活かして、社会に貢献していきたいと考えています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

今後の展望はドローンパイロットの育成を通じて、地方の課題解決に貢献することです。

 

大手企業が進出しない地域にこそ、私たちのようなベンチャー企業が果たせる役割があると考えています。私は神奈川県平塚の出身で本社機能を東京ですが、実は特別東京には興味はありません。なぜなら、東京をはじめとする首都圏は、放っておいても成長していく地域だからです。

 

私が目を向けたいのは地元も含めた地方です。地方には困っている人たちが多く、特に「見せ方・プロモーション」に苦労しています。だからこそ、当社では熊本での事業展開を進めているのです。

 

また今後については、新技術連携絆特区として、九州では長崎県が国家戦略特区に指名されたことを受けて、長崎県への進出を準備をしています。

 

社会貢献を事業として成り立たせることは、簡単ではありません。ベンチャー企業として、収益も確保しながら前に進む必要があります。ですが、生まれてきた以上自分にできることがあるはずですし、その思いがドローンパイロットの育成事業に繋がっています。

 

顧客ファーストで行動し続ける

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業する上で重要なのは「行動力」です。ただし、行動力といっても、闇雲に動けばいいわけではなく、お客様への真摯な姿勢が何よりも大切なのです。

 

私自身、会社員時代は自分のものではないサービスを販売することに違和感を感じていました。しかし、起業後は自分のサービスとして胸を張って提供できるようになり、その違いは大きかったです。

 

特に印象に残っているのは、起業して4ヶ月目の出来事です。実績もない中で、北海道の児童養護施設関連の会社に電話営業をしました。「実績づくりのために無料でやらせてください。交通費だけいただけませんか」という提案をしたのですが、納品後に30万円を支払ってくれたのです。

 

お客様からは「ちゃんとお客様目線でサービスを提供してくれたから」といった言葉をいただき、大きな学びとなりました。

 

起業には不安や苦労が伴います。ですが、お客様への真摯な姿勢さえ忘れなければ、必ず認めてくれる人が現れますし、結果としてお金はついてくるでしょう。起業家としての自由には責任も伴いますが、野望があるなら一歩を踏み出してください。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:熊澤主馬 氏

1991年生まれ、神奈川県平塚市出身。
2014年、映像事業とは畑違いの大手不動産会社にて営業職として6年間従事する。
友人と冗談半分で始めたYoutubeの企画が「他人に評価される」といった映像の魅力に翻弄され脱サラを決断。2020年、個人事業主 KOGUMA開業。その後、人生で一番寝ていないと豪語するほど、ミラーレスカメラやドローン映像を独学で勉強し、日本全国を飛び回った。2021年、kutsuhimo consulting株式会社 代表取締役 法人設立。大手リゾートホテルやクライアントからの評価は見事に人が人を呼んだ。しかし先の見えない単発案件に頭を悩ます映像クリエイターが沢山いることに疑問を感じ、何か力になれないかという視点で、「SNSコンサルティングと定期撮影・映像制作」を一社で請け負うサブスクサービスを展開。1年後、2020年 年商5,500万円の売上にて企業譲渡。2022年、ドローン特化のプロデュース事業を展開するSkyBear株式会社を設立。現在に至る

 

企業情報

法人名

SkyBear株式会社

HP

https://skybear.jp/

設立

2022年5月

事業内容

社外マーケティング事業

 

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