ウリドキ株式会社 代表取締役 木暮 康雄

複数のプロの査定士が売りたいモノの価値を可視化し比較できるサービス「ウリドキ」を展開するウリドキ株式会社は、買取サービスのオンライン化を実現し、誰でも安心して利用できるプラットフォームの開発を行っています。

 

代表取締役の木暮 康雄氏は、モノが溢れる時代だからこそモノが循環する社会の実現が重要だと言います。今回は、リユース業界歴約20年の木暮氏に事業の詳しい内容や今後の展望を伺いました。

 

売りたいモノを一括査定できるC2Bプラットフォームを展開

事業の内容をお聞かせください

我々は、C2B(CtoB)の買取プラットフォームを運営しています。C2Bはあまり聞き馴染みがないと思いますが、売りたい個人と買い取りたいリユース企業を繋いでいる会社です。

 

具体的には、古本、バッグ、時計、楽器など様々なものが売られる中で、プロの査定士がオンラインで各商材に特化した専門的な査定を行います。複数の買取業者による一括査定で結果を比較できるため、一番高い金額が一目でわかるところが魅力です。

 

複数の専門家が査定するので、例えるならば、テレビ番組「なんでも鑑定団」がオンラインで誰でも使えるようになったイメージです。

 

また、フリマアプリなどの個人間取引のプラットフォームとは違い、当社には比較的単価の高いものが集まります。個人間で取引される商材は当然買い手も個人なので、お財布事情に左右されやすく比較的安価なものが売れやすい一方で、100万円を超えるようなものは売りづらくなっています。

 

そこで、高い商材については専門的に査定や鑑定をおこなう複数のプロに依頼することで、適正価格が分かるようにしています。

 

日本に眠っているリユース品は66兆円分あります。例えば、皆さんのご自宅にも使っていない携帯やスマホがあるかも知れませんが、それだけでも6兆円分眠っていると言われています。

 

つまり、10人に1人が売れば、携帯だけでも日本は6000億円分活性化する、それくらいリユース市場はインパクトがあるのです。

 

しかし実際は、過去1年間にモノを売った人の割合は35%程しかおらず、残りの65%は溜め込んでしまっていることになります。物を売らない理由の上位には「いくらで売れるかわからない」「どうせ売れないと思っている」「めんどくさい」の3つがあり、これらの解決がリユース行動に繋がると思いサービスを作りました。

 

昨今はSDGsへの意識の変化やリユース品に注目が集まっていることも後押しして、この66兆円を掘り起こしていくことができるのではないかと考えています。そして、この日本のリユース品は海外の需要も高いことから、外貨が手に入り日本の国力強化にも寄与できるでしょう。

 

また、最近では円安で海外旅行のハードルが高くなっている実情を受け、モノを売って旅行資金に当てるHISとのコラボ企画「ウルタビ」をスタートしました。

 

これは、買取で得たお金を旅行などのコト消費に使う人も多いことから実施した企画です。その他にも、各自治体やマンション等とも連携しています。

 

我々の力だけではリユースの認知を広げることはできないため、様々なパートナーとの連携を通じて「売ってみよう」というタッチポイントになればと思っています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は学生時代に起業し、オンラインで漫画の全巻セット売りをするサービスを作りました。新品は各出版社や取次店、中古は約60店舗のリユースショップの在庫をシステム連動させ、オンライン上で管理・販売をしていました。

 

当時はリユース品に限らず様々な商品の販売がEC化していく時代でした。リユース業界は売れるものを買い取る世界なので、販売よりも買取が重要です。一方で、当時はリユース業の仕入れの本質となる買取のバーティカルサイトが存在しないことが課題でした。

 

そこで、販売のオンライン化の加速に合わせて、リユース業界を支援する第三者的な買取のプラットフォームを作ることが必要だと思い、現在の事業をスタートさせました。

 

弊社のサービスが提供できる価値は大きく2つあります。

 

1点目は、リユース企業に対するオンライン取引システムの提供です。リユース業界は比較的レガシー産業であり、DX化が課題です。各種リユースカンファレンスでもこのDX化は毎年問題提起されています。

 

もちろん大手リユース企業はオンライン買取をはじめとしたDX化を進めていますが、業界全体から見ればそれはほんの一握りです。自社でオンライン買取を成功させるには多額の投資が必要です。

 

一方で、弊社のプラットフォームを利用すれば、自社でなかなか進められなかった企業さまも、すぐにでもオンライン買取ができるようになります。

 

2点目として、個人ユーザーがリユース企業を簡単に比較できるようになります。引越し業者や中古車、不動産選びと同じように、業者が多いほどユーザーはどの業者を選べばよいか分からなくなります。そのため、「ウリドキ」のようにまとめて比較できるサービスは需要があると考えています。

 

査定士の確かな技術がユーザーを満足させる

仕事におけるこだわりを教えてください

C2Bの概念に「鶏が先か卵が先か」のような話があり、Cさえ大量に獲得できればBはついてくるという発想の人がいるのですが、私は逆だと思っています。

 

我々のプラットフォームの最大の価値は、全国の優秀な査定士さんの存在に尽きると思っており、これを周知できればユーザーはついてきてくれると思っています。そのため、査定士さんにとっても使いやすく、満足いただけるサービスを作ることがこだわりでありスタート地点だと考えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

コロナ禍の2年間は売上が横ばいで成長ができませんでした。

 

プラットフォームに関しては最初は売上を追及せず、まずはきちんとプロダクトを作り成長させる戦略でいきました。その後実際に売上は上がり、累計で4億円の資金調達をすることにも成功しました。

 

しかし、その矢先に新型コロナウイルスの流行が始まってしまいました。店を閉めて休業をせざるを得ない店舗も多く、その状況が続いたのは苦しかったです。

 

そもそも資金調達は、新規を獲得するためのマーケティングと営業人材の確保、開発のためのものでした。

 

ビジネスを成長させる指標には、ARPU(1人あたりの利用金額)、チャーンレート(解約率)、新規獲得の3つがありますが、ARPUの成長とチャーンレートの低減はある程度実証されていたため、今度は新規獲得に力を入れていこうとしていた時にコロナの影響を受けてしまったのです。

 

この当時は赤字も月2000万円程出ていたことから一気に方針転換し、注力していた新規獲得におけるリソースを全て止め、再度ARPUの成長とチャーンレート低減に集中しました。

 

借りたばかりのオフィスもすぐに引き払い、完全リモートワークで業務効率を上げ、なんとか2年間は売り上げを落とすことなく凌ぎました。

 

信じてくれる人やリユース業界に寄与したい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

リユースビジネスは、モノが循環し、人のお財布にも優しく、しかもCO2削減にも繋がります。さらには、日本のリユース品は海外需要が高い為、外貨が手に入ることで日本を豊かにすることにも貢献でき、いいことずくめです。

 

もちろん我々を信じてくれているクライアントさんも多くいるため、そういう人たちを前に歩みを止めることはできません。

 

以前、会社の忘年会でサプライズでビデオが流れたことがありました。それは、営業チームがクライアントさんたち1社1社からもらったビデオレターで、「ウリドキのおかげでこれだけ買取が増えました」という全国のリユース企業の方々からの嬉しいお言葉を写したものでした。

 

IT企業の我々が現場の方々とお会いする部署は限られているため、そのビデオを見てもっと業界に貢献したいという思いが、私含め社員一同さらに強まりました。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

新しくやりたいことはたくさんありますが、まずは日本に眠るリユース品を掘り起こす今のビジネスをやり切りたいです。買取の依頼は、コロナ禍前の月900万円からここ5年程で月20億円まで増えてきましたが、それでもまだ市場としては少ないため突き詰めていきたいと思います。

 

その後やりたいことは、買取の先にあるリユース品の販売支援です。買い取った物を売っていく手段として、業者オークションや越境販売など様々な方法がありますが、ここが強化されるとより買い取れる幅が広がります。

 

モノの価値が移動コストを超えた時にはじめてリユースビジネスとなります。今後はより高い価格で買い取り、昔売れなかった商品を売れやすくする環境を作るなど、リユース業界を販売面でも支援していきたいです。

 

「世の中のためになるかどうか」が事業の基準

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

事業をやっているといいこともあれば悪いこともあります。ポイントは、自分が事業をやっている時、世の中がいい状況であることが担保されているかどうかだと思っています。

 

例えば、自分の会社の収益が10倍になった時、世の中にそれ以上の価値を提供できているでしょうか。ここがリンクしているかは確かめるべきです。

 

もちろん、「金持ちになりたい」「いい家に住みたい」「いい車に乗りたい」などの健全な欲求は大事ですが、稼ぎたい気持ちが先走ってしまうと、うまくいかなかった時にモチベーションが保てません。

 

ビジネスは稼げない時期もありますし新しいことをやれば競合ができ敵も増えるため、世の中やユーザーが喜んでくれる姿を心の拠り所としてイメージできるといいと思います。

 

道なき道を行く時は自分が正しいのか不安になりますが、そこに大義があることで軸がぶれず自分を信じられるはずです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:木暮康雄 氏

慶應義塾大学大学院修了。2005年に学生起業し、漫画の全巻大人買いサービスをつくる。新品は各出版社や取次店、中古は60店舗のリサイクルショップの在庫をシステム連動しオンライン上で管理・販売。その後、2014年に株式譲渡を行い、自身がリユース企業を経営していたことから、買取プラットフォームの将来性を感じ同年シリアルで起業。ウリドキ株式会社を設立、代表取締役に就任。著書に「リユース革命」(幻冬舎)がある。

 

企業情報

法人名

ウリドキ株式会社

HP

https://uridoki.co.jp/

設立

2014年12月1日

事業内容

売りたい人とプロの査定士を繋ぐC2Bの買取プラットフォーム「ウリドキ」を運営。

 

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