合同会社ねこのて 代表 北原 咲希

「猫の手」も借りたいほど忙しい方への家事代行・ホームコンシェルジュサービスを提供する合同会社ねこのて。「1秒をいかに創出するか」をテーマに、リモコンの位置から靴の置き方まで、お客様一人ひとりの生活スタイルに合わせた徹底的な気配りで、経営者やアスリートから高い支持を得ています。代表の北原咲希 氏は「一人で頑張りすぎている方に、誰かの力を借りることの素晴らしさを知ってほしい」と語ります。今回は事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

経営者から選ばれるオーダーメイドの家事代行サービス

事業の内容をお聞かせください

家事代行とホームコンシェルジュサービスを提供しています。具体的には、お客様のご自宅に伺い、掃除、洗濯、料理などの家事全般をお任せいただいています。

 

主にご利用いただいているのは、経営者やアスリートなどの非常にお忙しい方々です。プロの家事代行スタッフがご自宅に定期訪問して家事・掃除を丸ごと行わせていただき、1秒でも時間が惜しい経営者の方や、トレーニングや身体のメンテナンスに時間を使いたいアスリートの方を、トータルでサポートしています。

 

特徴的なのは、私たちが考え方の土台として採用している、「選択理論心理学」という心理学に基づいたアプローチです。人はそれぞれ異なる価値観や欲求を持っているとされていて、その欲求を満たすお手伝いをすることが重要だと考えています。

 

例えば、寝室であれば「睡眠を大切にされたい方なのか」「朝スッキリ起きたい方なのか」、リビングであれば「家族団らんを重視されるのか」「仕事や趣味の空間として使われるのか」など細かな部分まで考慮します。

 

リモコンの位置や向き、カーテンの開け閉め、靴の置き方、スリッパの位置まで、生活動線を意識した空間づくりをおこなっています。

 

最近は女性の社会進出や女性起業家の増加に伴い、家事代行の需要は確実に高まっています。ただ、「誰が来るんだろう」「家の中を見られるのは抵抗がある」などの不安から、なかなか依頼に踏み切れない方が一定数いらっしゃいます。

 

そのため、お客様との信頼関係を最も大切にしている当社では、まずは面談でご要望を1時間ほどかけてじっくりと伺います。その上で、一人ひとりに合わせたプランをご提案させていただいています。

 

嬉しいことに、お客様からは「感動しました」とのお声を多くいただいています。綺麗にすることは、私たちにとって基本となる100点の価値提供です。そこにとどまらず、その方に最適化されたサービスを提供することで、120点の価値創造を目指しています。

 

どのような点で他社にない価値提供をしていますか?

シンプルで分かりやすい、トータルサポートの提供方法をおこなっています。

 

他社のサービスでは、掃除・料理・シッターなど依頼内容ごとに料金やメニューが分かれていることが多いですが、ねこのてではご依頼内容を問わず時間単位でのシンプルな一律料金設定を採用しています。

 

「とにかく全部お任せしたい」といった忙しい経営者の方々のニーズにお応えするため、必要なサービスを必要なだけご提供することで、お客様の手間を最小限に抑えることができています。

 

そして何より自信があるのは、限られた時間の中で最大限の価値を提供する能力です。現在、約50件のお客様にご利用いただいており、週4回のご利用から月1〜2回のご利用まで、各々のライフスタイルに合わせて柔軟に対応しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

きっかけは、大学1年生のときに始めたベビーシッターのアルバイトでした。

 

子ども教育に関する大学に通っていたので、実践的な経験を積みたく、シッターの仕事を始めました。その後、2年ほどでリピート率90%、地域のランキング1位を獲得できました。

 

最初は純粋に子どもが好きでシッターを始めましたが、働いていく中で「お客様は子どもではなく、親御さんだ」と気づきました。以降、「どうしたらママがもっと安心して子どもを預けられるか」「親御さんが帰宅したときに気持ちよく子どもと関われるか」を深く考えるようになりました。

 

そこで、掃除の手伝いや些細な片づけをするようになったのですが、予想以上に喜んでいただけました。「もしかしたら私、掃除が得意かも?」と思い、最初は友達の家の掃除から始めて、徐々にビジネスとしてチャレンジしたいと考え起業に至りました。

 

起業当初は私一人で事業を始めました。ですがありがたいことにお客様のご紹介でご依頼が増え続けており、一人では手が回らなくなったタイミングでメンバーの採用・育成を行い、現在はバックオフィスメンバーを含めて3名のスタッフが参画してくれています。

 

「お客様の時間を生み出す」ことに徹底的にこだわる

仕事におけるこだわりを教えてください。

こだわりは「お客様の1秒をいかに生み出せるか」にあります。

 

家事代行は単に掃除をする仕事ではなく、お客様の時間を生み出すことが仕事だと考えています。

 

私たちが「名前のない家事」と呼んでいるものがあります。例えば、シャンプーの容器が空になる前に詰め替える作業や、ティッシュが切れないように補充しておく作業です。

 

一見些細なことに思える作業が、お客様のちょっとしたストレスを減らし、貴重な時間を生み出すことにつながっています。

 

「時間は命」との言葉があるように、時間はその人の人生そのものだと思います。経営者やアスリートの方々が、家族や会社など、自分の人生で大切にしたいことにより多くの時間を使えるようにすることに強いこだわりをもっています。

 

また、サービスの質を支えているのが、スタッフ一人ひとりの人間性です。単なる掃除のクオリティだけでなく、明るい笑顔で挨拶ができること、前向きな姿勢で仕事に取り組めることを重視しています。

 

特に経営者の方は空間のエネルギーにも敏感なので、「空気まで綺麗にする」ことを心がけています。ポジティブな気持ちで掃除をすることで、空間の雰囲気そのものが変わっていくと考えています。このような細部へのこだわりが、当社のサービスの根幹となっています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は「自分の魂をメンバーに浸透させていく過程」にあり、今も試行錯誤しています。

 

おかげさまで多くのお客様からご依頼いただいていますが、今の状況に慢心してしまうと、サービスの質が落ちてしまったり、スタッフの育成がおろそかになってしまうでしょう。

 

特に難しく感じているのが、仕事の感性的な部分の育成です。当社では選択理論心理学に基づいたサービスを提供しているのですが、実際の現場では数値化できない感性的な部分が重要になってきます。マニュアルだけでは伝えきれない部分をどう育てていくのかといった点も、課題の一つです。

 

研修では、私が実際に掃除をする様子を見ていただいて、何に気づいているのか、どこを意識しているのかを共有していきます。

 

例えば、テーブルのどこまで細部をチェックするのかや、他の家事代行より良い仕事をしたいならどこを重視するのかなど、過程を一緒に体験しながら気づきの機会を増やすことを大切にしています。

 

家事代行が当たり前の社会をつくる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

一番のモチベーションは、お客様の笑顔と喜びの声です。

 

特に嬉しいのは「あなたがいなきゃダメでした」というお言葉です。経営者の方が当社の家事代行サービスを使ってくださったことで、事業が前に進んだり、子育てがより充実したものになったりしたと聞くと、価値提供ができていると実感できます。それが私にとって、大きなモチベーションになっています。

 

お客様と密接に関わらせていただける仕事だからこそ、直接的な反応をたくさんいただけます。その一つひとつが「もっとお役に立ちたい」といった気持ちにつながっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

会社を大きくしていきたいといった思いはあるのですが、実は私の中で一番やりたいことは社会福祉事業です。

 

私には7年間付き合っている女性のパートナーがいるのですが、将来のことを考えたときに、子どもを持ちたいという気持ちがあります。

 

現状として、同性カップルでは養子縁組ができないのですが、里親という形なら18歳まで子どもを預かることができます。施設ではなく、家庭で育つ子どもたちを増やしていきたいと思っています。

 

将来的には100人くらいの子どもたちが、やりたいことを思い切りできる環境をつくってあげたいです。今の事業を通じて経営者の方々とのつながりも広がっているので、将来の里親さんが増えるきっかけにもなればいいなと思っています。

 

家事代行事業としては「家事代行が当たり前の社会」をつくっていきたいです。一人で頑張りすぎている人に、誰かの力を借りることの素晴らしさを知ってもらいたいという思いがあります。

 

仕事でも子育てでも、サポートしてくれる人がいることは本当に心強いので、そのような存在になれたらいいなと思っています。

 

具体的な目標としては、3年以内に売上1億円を目指しています。ですが、正直なところ、私の中ではもっと上を見ています。この思いを形にするために、より頑張っていきたいと思います。

 

社会の普通や当たり前に流されない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

できるアドバイスは少ないかもしれませんが、エールとして「自分がどう生きたいか」という気持ちに、素直に向き合ってみてください。

 

私自身、世の中の普通や正解とされる道ではなく、「自分がどうしたいか」を軸に決断することを大切にしています。特に大切な家族や友達だからこそ「それって大丈夫?」と心配されたり、ときには批判されたりするかもしれません。それでも「これをやりたい」と決断できたときに、人は強くなれます。

 

また、就職せず起業の道を選んだのは、一緒に歩んでくれるビジネスパートナーの存在が大きかったです。「何かあってもまた一から一緒に頑張ろう」と人生を共にする覚悟を持ってくれる仲間がいたからこそ、ここまで来られたと感じています。

 

貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします

サービスのご利用は年1回からでも大丈夫です。お風呂や洗面所などの水回りだけ、といったご依頼も承っています。もちろん、ご不安な場合はご在宅時に利用していただくことも可能です。

 

当社では、サービスを始める前に約1時間の面談のお時間をいただいています。その中で、触れてほしくない場所や具体的なご要望をお伺いするのはもちろんのこと、「どうすれば人生がより豊かになっていくのか」「どのような状態になったら幸せなのか」といった、深いお話もさせていただいています。

 

最初は少し驚かれるかもしれませんが、このプロセスを通じて理想の状態をしっかりとすり合わせることで、サービス後の充足感にもつながっていきます。

 

少しでもお困りのことがありましたら、まずはお気軽にお話を聞かせてください。理想の暮らしの実現に向けて、私たちにできることを一緒に考えさせていただければ嬉しく思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:北原咲希 氏

東京家政大学子ども支援学部卒。家事研究科資格2級、社会福祉主事任用資格保有。子どもに関わる仕事がしたいとの想いから大手シッターサイトに登録。シッターを始めてわずか2年でサイト内地域ランキング1位を獲得し、独立して「ねこのて」を開業。その後家事代行のスキル・経験も築き上げ、リピート率90%・ご利用実績10,000時間以上の実績を持つ。ご愛顧頂いているお客様の多くが経営者やプロスポーツ選手など多忙を極める方々のため、家事代行・シッターとして宿泊から出張まで柔軟にご要望にお応えしている。

 

企業情報

法人名

合同会社ねこのて

HP

https://nekonote314.xsrv.jp/

設立

2024年10月11日

事業内容

家事代行・ホームコンシェルジュ

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