株式会社レバレッジ 代表取締役 只石 昌幸
「前例のない熱狂を、しかける。」をミッションに掲げる株式会社レバレッジは、フィットネス・ヘルスケア領域で事業を展開しています。主力製品であるプロテイン「VALX(バルクス)」は、プロテイン累計1億3,000万食の実績を持ち、独自のSNS戦略で市場に新たな価値を創造し続けています。代表取締役の只石 昌幸氏に、事業内容や今後の展望なども含めて、詳しくお聞きしました。
「本物」を求めるトレーナーから選ばれるプロテイン
事業の内容をお聞かせください
当社では、プロテインやサプリメントを扱うブランド「VALX」を展開しています。これまでに、ブランド累計販売数570万個、プロテインの累計販売食数は1億3,000万食を超える販売実績があります。
事業の始まりは、フィットネスジムのトレーナーマッチングサービスです。約2,000人のトレーナーとのネットワークを築く中で、「トレーナーが心から勧められるプロダクトを作ろう」といった考えが生まれました。
トレーナー界のレジェンドと呼ばれる山本義徳氏に監修をお願いし、製品開発をスタートしたのです。トレーナーが自信を持って勧められる製品といった強みが功を奏し、ブランド立ち上げからわずか10ヶ月で月商1億円を突破することができました。
当社のプロテインの最大の特徴は、「美味しさ」と「溶けやすさ」です。従来、プロテインは「トレーニングの一環として、我慢して飲むもの」といったイメージでした。しかし、当社ではそれを一変させ、「ジュースのように美味しく飲める」プロテインを実現しました。
プロテインのスペックは超一流な上で、私たちが本当にこだわっているのは、「プロテインはVALXじゃないと嫌だ」と感じてもらえる世界観の構築です。単なる機能や性能を超えた、情緒的な価値の提供に力を入れています。
他社のプロテインとどのように差別化を図っていますか?
SNSを通じたコミュニケーション戦略です。
2019年にフィットネスブランドを立ち上げたときは、SNSで発信しているプロテインブランドはありませんでした。その中で、当社では単に「当社のプロテインが良い」といった宣伝ではなく、筋トレのやり方や適切な栄養摂取方法など、お客様が「これ無料で見れるの?」と思う価値の高い情報提供にこだわってきました。
このアプローチにより、お客様からは「私のトレーニングを手伝ってくれる」「私の人生に寄り添ってくれる」といった評価をいただき、自然と「このブランドを応援したい」との気持ちを持ってもらえるようになったのです。そのため、情緒的な繋がりの強さが当社の大きな強みとなっています。
広告戦略においても、他社とは異なるアプローチを取っています。CMや一般的な広告宣伝などには頼らない方針です。実際、当社の広告比率は業界の中でも極めて低く、約5%に抑えています。その分を製品の品質向上に投資し、SNSを通じて築き上げた信頼関係を基盤にブランドの浸透を図っています。
味の工夫についても教えてください
美味しいプロテインを作るのは、本当に大変です。ですが「絶対に日本で1番美味しいプロテインにしよう」と決め取り組んでいます。チョコレート味1つを取っても、他社には再現できない味を目指しています。
そのために、徹底的な試飲テストを実施しています。製造メーカーの方からも「ここまで試飲の数が多いプロテインブランドは他にない」と言われるほどです。一つの商品の開発に、長い時は半年かけることもあります。
開発プロセスで特に大切にしているのは、製造メーカーの方との関係性です。工場にいる素晴らしい技術者の方々と「本当に良いものを作ろう」といった同じ目標に向かって、開発を進めています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私の事業は、ブログからスタートしました。大学卒業後、第一志望であるキーエンスに入社したものの、入社と同時にモチベーションを失ってしまったのです。給料は良かったのですが、3年目にして限界を感じ退職を決意しました。
その後の転職活動では大手企業からもオファーがありましたが、条件に満足できず、自分の理想を追求する時間を選びました。ただ、その時間が予想以上に長引き、資金が底をつく中で始めたのが、アメブロでした。
アメブロでは、徹底的に1番を目指しました。成功の秘訣を探るため、上位200人全員にDMを送り、遠方でも直接会いに行って話を聞きました。そこで得た知識をもとに、新規オープン店に特化したグルメブログといった独自路線を確立し、アメブロで日本一になったのです。
この実績を活かしてアメブロコンサルティングを始め、現在の会社の第一歩となりました。さまざまな会社のホームページ制作やブランディングを手がける中で「もっと突き抜けた表現がしたい」との思いが強くなり、自社サービスを立ち上げました。そこで始めたのが、パーソナルトレーナーのマッチングメディアで、現在のフィットネス事業に繋がっています。
徹底的に「1番になること」にこだわる
仕事におけるこだわりを教えてください。
絶対的に「1番を目指す」ことです。
それ以外は全て捨ててもいいとさえ思っています。もちろん、1番を目指す過程で大切なことはたくさんありますが、根底にある「1番になる」という強い意志がなければ、良いアイデアも生まれません。
ただ、1番へのこだわりで失敗もありました。以前、ブログを書くのも、1,000人規模の勉強会を開催するのも、コンサルティングするのも、全て自分一人でやっていた時期がありました。
その中で、自分だけが価値を生み出していると思い込んでしまったのです。セミナー会場の手配や入金管理など、スタッフがいなければ成り立たない仕事なのに見えていませんでした。
その結果、スタッフ全員から辞表を提出されてしまったのです。そのときに初めて「仕事は一人では成り立たない」ことに気づきました。この経験から、仕事の任せ方が大きく変わり、勉強会の運営をスタッフに任せてみたところ、スタッフの方が私よりも高い売上を達成したのです。
彼らは「任せてもらった」といった責任感から、工夫を凝らし、情熱を持って取り組んでくれたからです。対して私は、毎月の習慣で惰性になっていた部分があったと思います。
この経験から、1番を目指すことは一人で達成するものではなく、チーム全員で取り組むものだと気づいたのです。一人ひとりの可能性を信じ、引き出していくことが私の役目だと考えるようになりました。
起業から今までの最大の壁を教えてください
私に「壁」は、存在しません。困難な出来事も振り返ってみると「あって良かった」といった気づきや成長の機会だったと感じるからです。
目の前に大きな壁があったとしても、私の中では「日本一になる」といった目標の方が遥かに大きいです。もちろん日々の経営で、ストレスはあります。辛いと感じることもありますが、すぐに「このおかげで」という思考に切り替わるのです。
「1番を目指す」という強い意志さえあれば、大きな壁も必要な道筋に見えてきます。その結果、人生における「行き止まり」が消えていくのです。
上を目指して頑張る過程が楽しい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私のモチベーションは、筋トレと同じです。「自分は筋肉がつきにくい体質だ」と言う人がいますが、実はそんな人はいません。正しいトレーニングを続ければ、誰でも必ず筋肉はつきます。
人生も同じだと思っています。くしゃくしゃにしたアルミホイルをひたすら叩き続けると、自分の顔が映るほど綺麗な球になるんです。これは誰がやっても同じ結果になります。人生も継続して努力すれば、必ず望む形になるのです。
だから、私は怖いものがありません。必ず1番になれると信じてやってきましたし、今まで1番になれなかったことは一度もなかったです。
ただ、今の事業に関しては、まだ業界1位ではありません。ですが、それが楽しいのです。大手企業がいて上を目指せる状況があるからこそ、ワクワクしています。「1番になる」目標があるからこそ、新しいアイデアが生まれますし、具体的な行動にも繋がっていると感じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
世界ナンバーワンのエナジードリンクブランドを超えることです。現在、そのブランドの売上は1兆円規模です。途方もない数字に聞こえるかもしれませんが、この目標には意味があります。
私は車が大好きなのですが、1兆円規模の売上があればF1チームを持つことができます。スポンサーではなく、チームそのものを所有することが、私の大きな夢の一つです。
F1チームを持つことで、事業としても最前線で戦えます。F1の年間の維持費は約500億ですが、スポンサーを集め、着実に勝利を重ね、グッズ販売なども含めた総合的な戦略を展開すれば、収支はプラスマイナスゼロ、あるいはそれ以上の利益も見込めます。
さらに、効果的な広告宣伝も実現できます。スポンサーとして参加する場合、永続的に高額なスポンサー料を支払い続けなければなりません。しかし、自社チームを持つことで、より効果的かつ自由度の高いブランディングが可能になるのです。
もちろん、これは私の個人的な夢でもあります。F1界隈では、当社のブランドは知名度がまだまだ低いです。だからこそ、大きなチャンスがあると考えています。
起業は自分の願望を実現する手段ではない
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
「やめときなさい」と最初に言いたいです。なぜなら多くの人の「起業したい」との思いは、自分の欲求から始まっているからです。
自分の欲求を満たそうとするアプローチでは、世の中の本当のニーズを捉えることはできません。はっきり言って、それは自分のエゴなのです。
私が起業志望の方に必ず伝えていることがあります。まず「起業したい」との思いを完全に手放すことです。
その代わりに、世の中の困りごとや問題点に目を向けて、その問題をどうやって解決できるか、必死になって考えてください。そこから生まれたアイデアが、もし誰も実現していないものだったら、あなたの出番です。これこそが起業のあるべき姿です。
よくあるのが「証券会社で働いていたから、金融の知識がある。だから金融関連の事業を始めたい」といった話をよく聞きます。おそらく肝心なお客様のニーズは見えていないでしょう。
起業したいというエゴを一度捨てて、世の中のどんな課題があって、自分のキャリアや得意分野を活かして、どのような解決ができるのか考えてみてください。
この視点で見ていけば、起業の成功率は確実に上がるはずです。大切なのは「起業したい」ではなく、「世の中のここを変えたい」という思いです。その結果として自分が起業する必要があるなら、自然な流れとして起業できるでしょう。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:只石 昌幸氏
1975年群馬県生まれ。法政大学卒業後、株式会社キーエンスへ入社しマーケティング戦略を学ぶ。退職後、2006年にレバレッジを起業。2016年よりフィットネス領域でメディア運営を開始し、2019年にフィットネスブランド『VALX』を立ち上げると、10ヶ月で月商1億円を達成。手がけるビジネスは全てで『日本一』か『誰もやらないことしかやらない』と決めている。チャンネル登録73万人を誇るYouTubeを中心に、広告に頼らないマーケティング戦略で2021年に売上が前年比362%を達成し、EO成長率アワードを受賞。趣味の空手では、新極真塚本道場に所属。黒帯取得、シニア部門世界ベスト8位。
企業情報
法人名 |
株式会社レバレッジ | Leverage Inc. |
HP |
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設立 |
2006年5月24日 |
事業内容 |
D2C事業 フィットネスジム事業 |
沿革 |
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