【#335】「インテントセールス」という新カテゴリを創出し、国内初のSaaSツールを提供|代表取締役 小笠原 羽恭(株式会社Sales Marker)
株式会社Sales Marker 代表取締役 小笠原 羽恭
株式会社Sales Markerは、企業のWeb行動データを活用し、顧客のニーズにピンポイントで狙い撃ちする営業手法「インテントセールス」に特化した国内唯一のツール「Sales Marker」を提供しています。同社は「Sales Marker」リリースから2年半で年間成長率900%以上を達成し、日本で最も急成長しているスタートアップの一つとして注目されています。今回は、代表取締役の小笠原 羽恭氏にサービスの内容や今後の展望をお聞きしました。
顧客起点の営業「インテントセールス」を基盤にした国内初のSaaS
事業の内容をお聞かせください
当社は、インテントセールスに特化した国内初のSaaS「Sales Marker」を提供しています。ローンチは2022年3月ですが、現在すでにスタートアップから大手企業まで500社以上に導入されています。(2024年12月現在)
最近では、マーケティングを支援する「Marketing Marker」や採用支援の「Recruit Marker」も展開し、ビジネス成長を包括的に支援するAIオーケストレーションの仕組みを提供しています。
当社は、これまで市場に存在していた四つの課題を解決したことで、国内初のインテントセールスツールを提供できるようになりました。それらの課題とは第一に、膨大なデータを取得することの壁です。第二に、たとえデータを取得できたとしても、それを十分に分析し、活用できないという問題もありました。
第三の課題は、必要なインサイトが可視化されていなかったということです。これに対しては、私が前職で培ったコンサルティングのノウハウを活かし、行動に直結する実用的なインサイトを提供することで、この問題を解決しています。
第四の課題は、営業現場で成果を上げることが難しいことでした。当社の創業メンバーの一人であるCOOは、元キーエンスの営業のプロです。その知見を活かして現場で高い成果を生み出す仕組みを構築しています。
「Sales Marker」を導入いただいているお客さまからは、商談数が3倍に増加したり、商談効率が8倍に向上するなど、大きな成果があったとのお声をいただいています。また、営業活動の効率化により、営業担当者のモチベーションが向上するといった定性的な成果も生まれています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は中学生の頃から、新しいITサービスを作り、未解決の社会課題に挑戦したいと考えていました。これはエンジニアである父の影響が大きく、自然と「自分も父のようになりたい」と思うようになったからです。
その思いを形にするため、未来創発を掲げ、新しいサービスを次々と展開していた野村総合研究所に新卒で入社しました。在職中は、基幹システムの開発から新規事業の立ち上げ、さらには社内起業まで、さまざまなプロジェクトを推進し、新しいサービスを生み出す面白さを実感する日々を送りました。
しかし、既存事業との衝突や制約を感じる場面も多く、次第に自由に挑戦するには自分で起業するのが最適だと考えるようになりました。起業を決意したものの、当時は「自分にはまだ足りないものがある」とも感じていました。
まず、ビジネス構築の経験が不足していたため、経営コンサルタントとしてのスキルを身につけるためにベイカレント・コンサルティングに転職しました。戦略コンサルタントとして企業の営業戦略や事業戦略を支援できたことで、エンジニアとしての経験に加えビジネスの知見も深めることができました。
当時、もう一つ足りないと感じていたのは、志を共にする仲間でした。この課題は、ハッカソンやビジネスコンテストへの参加を通じて信頼できる仲間に出会えたことで解消されました。その後、前身となる「CrossBorder株式会社」を設立し、「Sales Marker」を提供するに至りました。
▲撮影場所:WeWork 神谷町トラストタワー 共用エリア
逆算思考で最短ルートで目標を達成する
仕事におけるこだわりを教えてください
仕事で大事にしていることは二つあります。
一つ目は、既存の枠を超えることです。具体的には、「普通はこうする」と言われるような常識や既成概念を打ち破り、最も効率的で理想的な形を追求することを大切にしています。こうした思考を持つことで、これまで誰も考えつかなかったような方法で困難な課題を解決できると信じています。
二つ目は、逆算思考です。私は常にゴールを明確に定め、その達成に必要な手段を逆算して計画を立てることで、最短ルートで目標に到達する方法を見つけ出すようにしています。この思考法は学生時代から実践しており、就職活動では3年生の4月には内定を得ることができていました。
起業後も逆算思考をベースとし、1年かかると見積もっていた事業成長の目標を半年で達成するなど、効率的な事業推進を実現しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
あえて挙げるとしたら、起業当初は資金調達が難しかったことです。当時は自分たちが勝負できる領域が明確に定まっておらず、投資家から出資を渋られることもありました。
以前取り組んでいた事業は、世界中の新しい情報やスタートアップの情報をAIで翻訳・テキストマイニングし、必要な情報を日本語で集約できるサービスでした。このサービスで日本と海外の情報格差を埋めることを目指していましたが、月額4,500円という単価の低さからビジネスとしてスケールするのが難しい状況でした。
その後、営業に特化したサービスへと方向転換しました。営業のターゲティングや商談獲得に貢献できる仕組みを作れば、より深刻な営業課題にアプローチできると考えたからです。ただし、セールステック市場には既に多くのサービスが存在しており、我々が新たにこの分野でサービスを展開する意義に迷い、方向性を見失っていました。
投資家からは「経営陣は優秀で出資したいが、事業自体は新規性が乏しい」と指摘され、出資には至らない状況が続きました。この課題を克服するため、徹底的な市場調査を行い、海外の先進的なビジネスモデルやデータ活用の事例をリサーチしました。
その中で見出したのが「インテントデータ」という領域でした。「インテントデータ」は当時日本では未開拓であったことに加え、当社の技術力や知見を最大限に活かせる領域でもあると感じました。「インテントデータなら、日本市場で競争に勝ち抜ける」という確信を持ち、投資家に提案した結果、支持を得ることができたのです。
振り返ると、「Sales Marker」の開発に至るまで、自分たちの得意分野を見極め、それを基に新たな事業領域を切り開く必要があったことが大きな壁だったと感じています。
▲撮影場所:WeWork 神谷町トラストタワー 共用エリア
グローバル展開を見据えた、AIオーケストレーションを軸とするサービス展開
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
モチベーションというより、創業時から掲げているパーパスの実現に向けて、直面している課題にひたすら取り組み続けている、という感覚です。
当社は「全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る。」というパーパスを掲げていますが、現時点で実現できているのは一部に過ぎません。これを実現するためには、さまざまな壁を乗り越え、さらに上の段階へ進む必要があります。そのために、絶えず進化し続け、挑戦を続けることが重要だと感じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後は「AIオーケストレーション」を軸にしたサービス展開をしていく計画です。既存の多くのサービスは、営業やマーケティング領域の特定のプロセスのみを部分的に解決するものが主流です。しかし、私たちは経営全体を俯瞰し、ボトルネックを特定したうえでその原因を解明し、解決策を導き出すプロセスをAIを活用して実現するサービスを目指しています。
そのためセールスに留まらず、マーケティング、採用、ビジネス開発、プロダクト開発、ファイナンス、M&Aといった6つの領域をカバーするプロダクトの構築を進めています。これらが揃えば、当社のプロダクトさえあれば経営が円滑に回る仕組みを提供できると考えています。
すでにプロダクトのリリースを前倒しで進めており、今後3〜4年以内に6つの領域のサービスを揃え、経営の基盤として欠かせない存在になることを目指しています。さらに、グローバル展開も視野に入れています。
今後、経営全体を自動化する「ハイパーオートメーション」という分野が注目されると考えていますが、これを実現できている企業は世界にもまだ存在しません。当社はAIオーケストレーションによってこの分野を切り開き、グローバル市場で競争力を発揮したいと考えています。
▲撮影場所:WeWork 神谷町トラストタワー 共用エリア
「カテゴリーキング」を目指して、世の中にない価値を生み出す
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
これから起業を目指す方には、ぜひ新しい「カテゴリー」を作ることに挑戦していただきたいと思います。既存の産業に参入すると、すでに市場で力を持っているプレイヤーが多く、競争も激しくなります。
そのため、私がおすすめするのは自分たちの強みと、まだ誰も解決していない課題を掛け合わせた事業を作り出し、その分野で圧倒的な1位を目指すことです。
当社の場合、「インテントセールス」という新しい領域を作り、それを普及させる事業を構築しました。皆さんもぜひ新しい分野を切り開き、そこで1位を獲る「カテゴリーキング」を目指してほしいと思います。
「何か良いサービスを作る」という姿勢ではなく、せっかく起業するのであれば「世の中にないものを生み出す」という挑戦を通じて、新しい価値を提供していただきたいです。
我々はカテゴリー作りが得意ですので、もし困った際はぜひご相談ください。当社では、カテゴリー戦略伴走プラン「CATEGORY」も提供しています。新しいサービスを作った際に、そのサービスを外部の人にわかりやすく説明することは難しいことが多いです。
この課題を解決するためには、まずサービスをどのカテゴリーに分類するかを明確にし、その後、市場開拓に向けた戦略を考えることが重要です。
我々はカテゴリー作りから戦略の可視化までをサポートするために、「Sales Marker」や「Marketing Marker」を活用し、インターネットデータを起点にした事業成長を支援しています。起業家仲間の挑戦を応援できることを楽しみにしています。
▲撮影場所:WeWork 神谷町トラストタワー 共用エリア
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:小笠原羽恭 氏
新卒で野村総合研究所に入社後、新規事業開発に従事。その後コンサルティングファームにて新規事業・営業戦略の立案・DXプロジェクトに携わる。2021年、CrossBorder株式会社(現:株式会社Sales Marker)創業。国内初のインテントセールスを実現するSaaS「Sales Marker」を開発・提供している。2023年「Forbes 30 Under 30 Asia List」選出、2024年「The Wall Street Journal Next Era Leaders」受賞。一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)協議員。著書に『インテントセールス – 米国企業の6割が実践する興味関心[インテント]データを活用して売上を伸ばし続けるための最先端モデル』がある。
企業情報
法人名 |
株式会社Sales Marker |
HP |
|
設立 |
2021年7月29日 |
事業内容 |
インテントセールスSaaS「Sales Marker」の開発・運用 |
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