【#344】世界中の法律を学習したAI”ロボット弁護士“で「法の民主化」を実現|代表取締役会長 横山 英俊(株式会社Robot Consulting)
株式会社Robot Consulting 代表取締役会長 横山 英俊
株式会社Robot Consultingは、世界中の法律のアドバイスを無償化し、誰もが気軽に法律を利用できる社会を実現するために、最新のAI技術を活用した独自開発に取り組んでいます。同社を代表する開発中の「ロボット弁護士」は、個人の日常的な困りごとから法人間のトラブルまで24時間、無償での法律アドバイスを可能にすることを目指しています。グローバル展開を視野に進み続ける同社の代表取締役会長である横山英俊氏に、事業内容や今後の展望などについて詳しくお聞きしました。
AIを活用した「ロボット弁護士」が24時間対応
事業の内容をお聞かせください
当社は、大規模言語モデル(LLM)などの最新のAI技術を活用した研究や、システム開発・提供を行っています。その中で注力しているのが、「ロボット弁護士」と呼ばれるAIロボットの開発です。
ロボット弁護士は、ネット検索するように気軽に法律のアドバイスが聞けるAIシステムです。日常的な問題から複雑な法的トラブルまで、あらゆるアドバイスが可能です。
通常、弁護士への相談はどの弁護士事務所に相談したらいいのか分からなかったり、緊急性が高いのにすぐに対応してもらえないなどさまざまなハードルがありますが、ロボット弁護士なら24時間、無償で対応できます。AIでの解決が難しい場合やより詳しい相談を希望する場合はリアルな弁護士と連携することも可能です。
さらに、国内だけでなく、アメリカ・カナダなどの英語圏、中国を含むアジア諸国の法律をデータ学習させて、世界中の法律アドバイスにも対応していく予定です。
注力しているデジタル空間上の法整備について教えてください。
デジタル領域市場は今後ますます拡大し、現実の経済規模を大きく上回ると予測されています。
しかしながら、現状デジタル空間上の法律は不明確なままで、AIの進化に法律が追いついていません。特に、SNSの詐欺広告やフェイクニュースなどについての法整備は非常に遅れています。グローバル化と情報化がかけ合わさり、さらにAIが入ってきたため、問題はより深刻化しています。
またVTuberが活動する仮想世界やオンラインゲームが提供するデジタル空間の中で雇用が生まれるなど、一般社会の評価データには当てはまらない新たな経済活動も活発化しています。
今後経済圏がさらに拡大した際に、デジタル空間内を健全な状態を保つためには、国家の役割を果たす法律が絶対に必要になります。
そこで、デジタル空間と非常に相性が良いといわれている“会話型AI”である「ロボット弁護士」が連携することで、まるでその場にいるかのようなAIとのリアルな会話で法律のアドバイスが聞けるようになります。
デジタル空間上の情報をどんどん学習させて、「ロボット弁護士」によってデジタル国家の新しい法律を作成する。それが、当社が目指す“法の民主化“です。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
2020年の創業前に法律関連の事業に携わっていたなかで、例えばDXに関する助成金を受けるにしてもかなりハードルが高いなど、テクノロジーやDXをうまく活用できていないと感じることがありました。
また、弁護士からのアドバイスや回答は士業特有の難しい言葉が多く、一般の方が理解しづらい面も気になっていました。一般用語のようなわかりやすい言葉の方が理解が深まりますし、各種手続きや裁判・訴訟もスムーズに進みます。しかしながら、これまでその点の改革がまったくなされていませんでした。
そこで、士業にAIを取り入れることで、いつどこにいても、誰もが法律のアドバイスが聞ける身近なサービスを提供できるのではないかと思ったのが、事業を始めたきっかけです。
事業を通じてどのような社会を実現したいですか?
弁護士に相談するまでのハードルを下げて、誰もが気軽に平等に法律のアドバイスが得られる社会にしたいです。
特に日本では、人生において弁護士に相談する機会がない方が大半で、離婚や相続・交通事故など、大きな問題に直面したときにしか、弁護士に相談しない傾向にあると思います。
しかし最近では、SNSの普及によりネガティブな書き込みに対して、「どのように対応したらいいのだろう?」「風評被害で訴えることは可能か?」などさまざまな問題を抱えている方が増えていますが、やはり実際に弁護士に相談し、法的手段を取る方はほとんどいません。その理由は、弁護士への相談はハードルが高く、費用が高額だからでしょう。
ですが、もし身近に法律に詳しい人がいて、無料で相談できる環境があれば、多くの方が相談すると思います。当社はAIを活用して、誰もが24時間無料で法律のアドバイスが聞ける利便性の高いシステムを構築することで、その問題を解決したいと考えています。
AIを活用して、法律のアドバイスの無償化を目指す
仕事におけるこだわりを教えてください。
仕事の軸になっているのは「法律アドバイスの無償化」の実現です。
例えば、アフリカに旅行に行って何かしらのトラブルに巻き込まれたとします。そのとき、アフリカの法律も知らなければ、現地の弁護士に依頼する手段さえ分からないと思います。さらには、なんとか現地の弁護士に相談できたとしても、おそらく高額な弁護士費用が必要となるでしょう。
もしそのような状況であっても、「ロボット弁護士」を利用すればパソコンや携帯電話から24時間無料で法律のアドバイスを日本語で得ることができます。また希望者には、そのままリアルな弁護士に連携することも可能です。
このように無償でのサービス提供を可能にするには、「ロボット弁護士」のサービスに登録する弁護士から一定の手数料を徴収することを考えています。一般ユーザーが増えれば増えるほど、サービスに登録する弁護士に紹介できる案件も増える仕組みを考えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
特にAIの活用による「法の民主化」の実現には、非常に大きな壁が立ちはだかっています。それは、弁護士以外の者が法律事務を行うことを禁止している「弁護士法72条」の解釈です。世界では、AIを使った法律相談がすでに普及し始めていますが、日本でもこの新規事業を普及させるためには「弁護士法72条」の解釈を時代に沿ったものに整備しなくてはいけません。
かつて国民の声により導入された「裁判員制度」のように、法律も時代の流れとともに変化することが自然の流れなのです。
法律を身近にし、より豊かな社会を実現したい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「法の無償化」を実現することで、「法の民主化」が当たり前の社会にしたいという強い想いです。
誰しもが法律から逃れることはできません。法律を犯すことを気にしない方はいませんし、悪事を働く人であっても、隠蔽したり逃げたりします。
そういう意味で、私たちは法律に支配された社会に生きているとも言えます。だからこそ、法律はもっと身近なものであるべきですし、「法の民主化」を実現することでより安心安全で豊かな社会に繋がっていくと考えています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
当社のように米国市場での上場や大型の資金調達達成を目標としている日本の会社はほぼありません。つまり、日本のスタートアップ企業のグローバル展開は現状あまり進んでいませんが、ボーダレス化した社会で生き残っていくには、グローバル視点での経営戦略が不可欠となります。
世界一のリーガルテック国である米国での上場は大きな挑戦ですが、当社が日本のリーガルテックスタートアップ企業の成功モデルとして新しい道筋の一つになれればと思っています。
アメリカで事業を展開する理由を教えてください
リーガルテックの市場規模は約4兆円ほどありますが、その大部分を占めるのが米国で、日本市場は400億円にも満たない小さな規模です。つまり、米国へのビジネス展開でシェアを取ることは、世界を制すると言っても過言ではありません。
また米国の株式市場では、利益が伴わない赤字企業であっても将来性や企業価値が見込まれれば上場を認め、どんどん資金調達できる環境があります。一方日本では、未上場のスタートアップ企業のバリュエーションは低く、資金調達が難しい状況にあります。こうした背景もあり、米国を中心に事業展開していく予定です。
起業したい本当の目的を明確に
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
本気で情熱を持ってやりたいことがあるのなら、ぜひ起業家を目指してください。お金を稼ぐことが起業の目的であれば、起業家ではなく投資家になる方が賢明でしょう。
私自身、起業前は投資家として活動していた経験により、そう考えています。会社経営は簡単に稼ぐことができるほど甘い世界ではないですし、本気でやり抜く覚悟がなければ継続は難しいです。
起業を迷っている方は、「本当にやりたいことなのか?」としっかり自分に向き合う必要があります。リスクを負ってでも成し遂げたいと思うなら、ぜひ行動を起こしてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:横山英俊 氏
企業情報
法人名 |
株式会社Robot Consulting |
HP |
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設立 |
2020年4月 |
事業内容 |
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