株式会社Plott 代表取締役 奥野 翔太

ショートアニメ事業・webtoon事業・IP(Intellectual Property:知的財産)展開事業を軸に、人々が熱狂できるIPの創出を目指している株式会社Plott。若年層を取り込めるコンテンツの提供を強みに、国内のみならずグローバル展開を見据えた海外のファンづくりにもまい進しています。代表取締役の奥野翔太氏に、起業の経緯や今後挑戦したいことなどについてお話をうかがいました。

 

日常の楽しみ、そして人生に熱狂を与えるコンテンツを提供

事業の内容をお聞かせください

YouTube、TikTokなどのSNSに配信するショートアニメの企画・制作を軸に、IP(知的財産)をプロデュースしています。具体的にはショートアニメやwebtoon(縦読み漫画)、カジュアルゲーム、楽曲などの企画と制作、そして周辺グッズも展開しています。

 

創業から手がけるショートアニメは、キャラクターものから男性向け、女性向け、ラノベ系などオールジャンル展開しています。5〜10分といった短いものを毎日チェックすることで単純接触の回数が多くなること、またテレビアニメと比較して異なるファンエンゲージメントを作り出し、10代から20代前半の若年層を取り込んでいることが強みです。

 

現在、海外からの視聴者は、まだ少ないですが、日本の数倍ものポテンシャルがあるだろうと思っています。

 

IPのプロデュースやコンテンツを生み出す際は、私が戦略やジャンルなど大枠を決めた上で、社内コンペでアイデアを集めています。1つのコンペで200もの企画が集まることもあり、優秀な企画を選んでブラッシュアップしてかたち作っていく流れで進めることが多いです。

 

弊社はログライン(共通の目的)に“日常に温度を。世界に熱狂を。時代に灯火を。”を掲げています。まずは日常の中で、1日に3分だけでも私たちが提供するコンテンツを楽しんでほしいという思いが込められています。

 

その次の段階で、熱狂するような、生きがいになるような熱量にまで高めていきたいです。最終的には、それをさらに超えたエンターテインメント史に残る、後世に影響するようなコンテンツにまで成長していけたらと願っています。

 

人気コンテンツ『テイコウペンギン』はどのように誕生したのですか?

『テイコウペンギン』は、とりのささみ。氏がX(Twitter)に投稿していた漫画が原作です。

 

VTuber事務所を運営していた頃、YouTubeで絵や音声、文字を組み合わせた漫画動画というジャンルが伸びてきているのを認識し、プロのクリエイターの方とショートアニメ化、そしてキャラクター展開できるものを作ろうということになりました。そのタイミングで出会ったのが『テイコウペンギン』で、YouTubeでアニメ化するに至りました。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

元々エンターテインメント業界がとても好きで、幼い頃は、お小遣いを全部漫画に費やしているようなタイプでした。ただ、親族に経営者がいるわけではなく、ごく普通のサラリーマン家庭で育ったので、起業を考えていたわけではありませんでした。

 

ところが、大学在学中にインターンシップを経験したことで、私にも何かできるかもしれないという思いが募り、起業するに至りました。

 

起業時、私がこれから数十年頑張れる領域とは?と思い巡らせたところ、やはり幼い頃から好きだったエンターテインメントに行き着きました。そこで、はじめはゲーム制作をしていたのですが、ゲーム制作は資金もノウハウ、人脈も必要です。

 

学生だとなかなか思うように作れないということもあり、漫画やキャラクターを生み出すコンテンツ制作にシフトしていきました。

 

VTuber事務所の運営もしていたのですが、短時間で観られるコンテンツの広がり、いわゆる”動画のモバイル化”の流れを感じ、アニメも今後短くなっていくだろうと考えました。そこで、ショートアニメの制作を始めました。

 

ショートアニメはグローバルに行けるドメインですし、IPを広げていく上でも必要不可欠なジャンルであることに気がつき、事業拡大していくことに決めたのです。

 

 ”売れる”確信を持ってコンテンツを世に送り出す

仕事におけるこだわりを教えてください。

エンターテインメント領域は、日本がグローバルに進出できる数少ない産業であり、偶然の機会もあって、この打席に立てていると感じています。だからこそ、日本を背負っていきたいという意識がありますし、会社を大きくすることを目指し、高みを目指していると自負しています。

 

したがって、何かこだわりを持って進むというよりは、会社が発展することを軸に、言い換えると”会社ファースト”で事業を進めています。

 

加えて、新しいIPを創出する際は、面白い・売れると確信できるものを世に出すようにしています。発信していく私たちが「これは売れるかわからない…」といった後ろ向きの気持ちで進めていくと一生売れることはないでしょう。そのような確信を持つためにも、社内コンペなどを行い、主観を排除して判断できる環境を作っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、起業してから1年間、一人で色々なことにトライしていたことです。孤独の中、結果も出ない状態だったので、寂しく辛かったのを覚えています。その後はコアメンバーが増えていき、壁はありますが、仲間と一緒に立ち向かっていくようになったので辛い感情は芽生えませんでした。

 

壁ではありませんが、最初のハードルは商業レベルのコンテンツを作っていくことでした。学生起業であるがゆえに、学生の延長のようなコンテンツを出してしまったこともあります。きちんと予算を組み、プロの方たちとコンテンツを作るように意識を変えたので、結果としてはクオリティを上げることに成功しました。

 

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

最近特に強く感じているのが、日本が下降していくような感覚です。多くの人が感じているかもしれませんが、その中でグローバルに出て行く人もいれば、日本で頑張っていこうとしている人もいる。

 

私たちの会社は、日本を背負える産業にいると思っているので、後者である「日本で頑張っていくこと」がモチベーションになり、そのようなマインドや視座を持つことを大事にしています。

 

私自身でいいますと、何かで1番になったことがあるタイプではないので、「経営×エンタメ」という好きな領域ではきちんと1番になりたいと強く思っています。それが人生の”生きた証”にもなると思っているので、これからもトップになれるまで走り抜けていきます。

 

 IPを100生み出すことが目標。協業によるコンテンツ制作も活性化

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

最も先にある展望は、遊園地を作ることです。理由としては、私たちの世界は1分や10分といった短い時間で戦っていますが、遊園地はあれも行こう、これも体験しようと20時間くらい費やす熱量を持っている最大のエンターテインメントだと感じているからです。

 

そして、そこにはアニメーションスタジオからテレビ局、漫画の出版社、グッズを展開する部署などさまざまなものが存在している。そのようなレベルのコンテンツを生み出したいと考えていますし、チャレンジできるくらいの資金力も欲しいです。

 

目標としては、今後2年間でIPを100増やすことを掲げています。小さいものから大きく展開するものまで規模はさまざまですが、そのくらいの勢いをもって作品数を増やしていければと考えています。また、ショートアニメにとどまらず、webtoon(縦読み漫画)を増やしたり、2年間で10のゲーム、50の楽曲も作ったりしようと考えています。

 

おかげさまで協業する機会も増えてきており、直近では小学館・イラストレーターMika Pikazo氏と共同制作でアニメ&ゲーム配信チャンネルを開始しました。そのほか、ショートアニメを活用して、テレビアニメのプロモーションを行ったり、ゲーム配信グループ「ドズル社」のゲームを制作したりといったことも進めています。

 

視座を高く、コミュニケーションを大切に

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

数年前の起業する自分へ伝えようと思ってアドバイスすると、「一番の競争力は視座の高さにある」ということです。年商1億円の会社を目指す人と年商1兆円を目指す人とでは選択する手段が変わってくるものです。とにかく高い視座を持った上で、アクションを起こすことを大事にしてほしいですし、そこからぶれないことで一貫性が出てくると思います。

 

3年前にしたことが今になって効いてくるといった非連続的なこともあるので、起業するのなら「視座の高い打ち手を講じること」を常に意識してほしいです。

 

そして、学生起業を振り返って、もっと早いうちにたくさんの大人を巻き込めばよかったなと反省しています。「誰と一緒にやるか」という点でもより視座を高く持っておくべきなのかなと感じています。

 

今後どのような人材を採用したいと考えていますか?

弊社にはショートアニメの企画・制作だけではなく、広告営業などIP展開事業を発展させていくための業務がいくつもあります。

 

IPを創出する人、それを広げていく人、IPを活用したLINEスタンプの制作やグッズのオンライン販売を担当する人など業務担当は多岐に渡りますが、どの業務もそれぞれの担当者の裁量が大きいのが特徴です。そのため「責任者としてIPに関わる業務にチャレンジしていきたい」「事業家として働いていきたい」と考えている方にぜひ来ていただきたいです。

 

また、コミュニケーションを大事にしている会社であるため、チームで仕事していくことに楽しさを感じられる方を採用するようにしています。

 

コミュニケーションを促す施策もいくつか講じていて、例えば年齢関係なくニックネームで呼び合ったり、シャッフルランチ会を開催したり、さらには月1回称賛と労いを込めた社内イベント「締め会」や夜間、自由に飲酒できるフリーアルコール制度も整えています。

 

私自身は、会社という箱にただいるというよりは、皆に居場所を提供しているという感覚を強く持っています。特にエンターテインメントという領域だと趣味が仕事のような人が多く、個人の価値観を出すことがクリエイティブにつながることもあります。

 

仕事とプライベートが一体となっている部分もあり、社内・社外問わず進んでコミュニケーションを取る風土があるのが当社の魅力です。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:奥野 翔太氏

1995年生まれ。筑波大学情報科学類卒業。大学在学中に起業し、1年間VTuber事務所を運営。自身もプロデューサーとしてゲーム・ドラマなど、複数コンテンツを企画・プロデュース。2019年より「テイコウペンギン」を立ち上げ、その後複数のショートアニメをリリース。Forbes UNDER 30 ASIA 2022 選出。

 

企業情報

法人名

株式会社Plott / Plott Inc.

HP

https://plott.tokyo/

設立

2017年8月2日

事業内容

IPコンテンツの企画・制作・ビジネス展開

沿革

2017年8月

動画メディア運営事業を目的として、前身の企業を設立

2018年5月

VTuber事業開始

キズナアイ・ホロライブなどを輩出したTokyoXR Startups4期に選出され、計25名のVTuberを企画・プロデュース

2019年1月

YouTubeにおけるショートアニメ事業開始

2019年8月

gumi venturesを引受先とする資金調達を実施

2021年5月

ANRI、DIMENSION、セガサミー、博報堂、OLM、小学館などを引受先とする4億円の資金調達を実施

2022年4月

株式会社BUZZCASTをM&A

2022年6月

webtoon事業に参入を発表

2023年7月

IPビジネス事業を既存事業部から切り分け、ショートアニメ・webtoon含めた3事業部制に

2024年11月

ジャフコ グループ、 MIXI、バンダイナムコエンターテインメント、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル、SMBC日興証券などを引受先とする10億円の資金調達を実施

 

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