
株式会社PeopleX 代表取締役CEO 橘 大地
株式会社PeopleXは、AIテクノロジーを活用して人材採用から入社後の活躍までを一気通貫で支援する企業です。人生の半分を占める「仕事」をより良くすることで、働く人が生き生きと活躍できる社会の実現を目指しています。今回は同社の代表取締役CEOを務める橘 大地氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
AIと人間、それぞれの強みを活かした採用プロセスの最適化
事業の内容をお聞かせください
我々は主に2つの事業を展開しています。
1つ目は、優秀な人材の採用支援を行う「People XRecruit(クロスリクルート)」というAI面接サービスです。このサービスではAIや3DCG技術を使い、実在する人間のような外見で、対話や感情表現などを再現する技術である「デジタルヒューマン」が面接を行うため、24時間365日いつでも面接が可能となり、優秀な人材の採用を実現できます。
2つ目は、入社後の活躍支援を行う「PeopleWork」というエンプロイーサクセスプラットフォームです。社員同士のコラボレーション基盤や、人材開発・オンボーディング、社内報、福利厚生などの機能が備わっています。
このように当社では、採用から入社後の活躍支援まで一貫したサービスを提供しています。
現在、両事業は同程度の規模で展開しており、業態によって需要の傾向が異なります。小売店や飲食店などの店舗型ビジネスではAI面接サービス「People XRecruit」の引き合いが多く、大企業やスタートアップ、士業事務所などからは「PeopleWork」に高い関心をいただいている状況です。
まず、採用支援のサービスである「People XRecruit」について詳しくご説明します。AI面接を導入する利点は多岐にわたります。1万人規模の同時面接が可能であること、24時間365日いつでも対応できるため日程調整が不要なこと、そして面接官の主観に左右されない客観的な評価ができることなどが挙げられます。
さらに、応募者側からすれば「今日この企業を受けてみよう」と思い立ったときにすぐにさまざまな企業の面接を受けられるのです。企業側はAI面接官にどのような質問をするか設定でき、その範囲内で状況に応じた深掘り質問を自動的に行うため、人間が面接するのと同様に、応募者への理解を深めることができます。
このように、AI面接を導入することで、従来の採用プロセスで多くの時間を要していた書類選考や日程調整などの作業が効率化されます。その結果、人事担当者は採用方針の説明や期待値のすり合わせ、企業の魅力伝達に時間を使えるようになり、入社後のギャップを減らすことができます。
AIは大量処理や即時対応などの強みを発揮する一方で、期待値の調整や人間同士の相性といった側面については人間が対応すべきだと考えています。AIと人間それぞれの強みを活かした採用活動を実現することが私たちの目指す方向性です。
AI面接での導入効果を教えてください
AI面接を導入することで採用の応募数が増えた企業は多くあります。採用担当者が面接に費やす工数を削減しつつ、応募数を増加させることが可能な点が、サービスを支持していただける大きな理由と考えています。
「PeopleWork」は従来のHR商品と何が違うのでしょうか?
従来のHR製品との大きな違いは、ワンプラットフォームであることです。今までのHR製品は、「採用管理」「1on1」「福利厚生」とバラバラのツールになっていました。
それに対して、私たちは人事に必要なものを全て兼ね備えたプラットフォームを目指しています。人材交流、入社後の即戦力化や能力開発、さらに最近では福利厚生や社内報なども1つのプラットフォームで展開しています。今後は評価の部分にも参入していき、人材領域で必要なものを全て備えたプラットフォームを目指していきます。
ワンプラットフォームで提供することによって、社員がどのような指向性を持っているか、どんなスキルを持っているかといった情報が一元的に見られるようになります。これにより、その人に最適な評価や最適なキャリア形成が可能になります。これはワンプラットフォームだからこそできることであり、最も重要なポイントだと考えています。
まだリリースして半年ぐらいのため、現時点では急成長中のITスタートアップの導入が多いのですが、沖縄県の介護施設や東北最大の会計事務所に導入いただくなど、地方でも導入が進んでいます。
「人を成長させたい」「人が活躍してほしい」といったニーズは業種を問わない普遍的なものなので、特に業種にこだわりなく導入が進んでいる状況です。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
起業に至るまで、私は弁護士としてキャリアを歩んでいた時期があります。
社会から求められることをしたいという軸でこれまでキャリアを築いてきましたが、弁護士も時代によって求められるものは違います。例えば、かつて日本企業が次々と世界的に進出していたときは、外国と交渉する弁護士が求められました。
時代によって弁護士に求められるものは違うので、私はインターネットの時代に合った弁護士がこれからは求められると考えました。そこでサイバーエージェントに入社したり、電子契約の「クラウドサイン」の事業責任者を担当したりと、弁護士のスキルを活かしながら、社会から求められるものに応じて仕事を選んできました。
しかし、キャリアを進める中で疑問に思い始めた点がありました。経営においては人材を増やすこと、エンゲージメントを高めることこそが半分以上を占めるのですが、そこに役立つ製品が世の中にあまりなかったのです。
そこで、これからは自分自身の力で人が活躍できる社会を作っていきたいと考え、起業に至りました。実際に、10年ほど経営者をする中で、事業を伸ばす秘訣は「事業に関わるチームづくりや、人によるものがほとんど」だと実感しています。
誰も取り組んだことがない事業を生み出す
仕事におけるこだわりを教えてください。
歴史に残る会社、事業を作ることにこだわっています。
私はすでに誰かが取り組んでいる事業は、あえて取り組む必要はないと考えています。また、小さな成功や、売上10億や100億の規模で終わってしまうビジネスでも満足したくないのです。
この考え方は弁護士時代からありました。当時、大手法律事務所はたくさんありましたが、そこでいち会社員として新人で入るのは、自分がやることではないと考えていました。それらの事務所を創業した方々は偉大だと思いますが、後からそこに会社員として入るのは違うと感じました。
このように、私は誰かがすでに取り組んでいる仕事には情熱を注げません。自分しかできないことをやりたいという思いがあり、それによって情熱が生まれてきます。
起業から今までの最大の壁を教えてください
今後、想定し得る壁としては「世の中が求めるものを作れるかどうか」という点です。まだ始まったばかりなので、これから壁はどんどん出てくると思いますが、明るく立ち向かっていこうと考えています。
組織拡大については、前職で500名以上いる会社を経営していたので、その経験が活きると考えています。自分の経験では、売上約100億、従業員500名から1000名までは、ここ10年ぐらい取り組んできたので想像がつきます。ただ、売上100億以上、従業員1000名以上になると未経験の分野になるので、大企業での経営経験がある人を迎え入れながら成長していきたいと思います。
資金調達に関しては、信頼関係のある投資家から投資していただいたので、特に壁にはなっていません。ただ大きな責任を預かったので、それを収益化できるかという点が今後の課題です。
資金調達の成功確率を高めるためにやるべきことはありますか?
資金調達においては、大きな夢を描くことが出発点です。
投資家の方はファンドとして資金を預かり最大化することが仕事なので、投資リターンが描けるチームや事業に投資します。しかし実際のところ、多くの企業は事業計画が小さく、ユニコーンまで目指していないケースがほとんどです。
私自身も投資家からアドバイスを受けたときは、事業計画の売上と時価総額を5倍にした方がいいと言われました。私自身も、若い起業家にも同じことを伝え、調達額についても同様に、5倍程度に設定した方がいいとアドバイスしています。
夢を現実にする力の重要性
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
仕事そのものに生き生きと取り組めるようにすることです。
現代社会の中では、仕事が人生の約半分を占めています。そこを良くするのは、非常に本質的な課題であるがゆえに、これまでほとんど解決されてこなかったと考えています。
だからこそ当社では「大人になっても、もう一度夢を見よう」という感覚で働いている人が多いのではと感じています。
貴社ではどのような人材を求めていますか?
我々は努力し続けられる人を求めています。
夢を実現するためには、長い期間にわたる取り組みが必要になることがほとんどです。メジャーリーガーとして活躍している日本人など、夢を実現した人たちを見ていても、長期間にわたって努力を続けられる人だけが、夢を現実にする機会を得ています。
そういった夢を現実へと変えていくために、長い時間をかけて努力を継続でき、精神的な強さや体力も含めた総合的な実力を持った人と、一緒に仕事をしたいと考えています。
努力し続けるために、私自身も体力づくりを意識しています。また、精神的な強さも重要だと考えています。スポーツ選手はメンタルトレーニングを科学的に行っていますが、辛いことがあったときに乗り越える能力もスキルのひとつなので、私も意識して取り組んでいます。そして何より、互いに高め合える仲間たちの存在が大きな支えになっていると感じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
先人たちが世界から尊敬される日本企業を築いてきたように、私たちの世代からも世界が認める企業を創出していきたいと考えています。
インターネット業界でも世界に認められる大企業が日本から出ていますので、私たちも辿り着きたいです。その実現に向けて、まずは3年以内に売上100億円を達成することを目指しています。
社会を根本から改革する事業を行う
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
数ある職業の中から「起業」を選ぶということは、世の中に対して大きな技術革新を起こすことを意味します。そして、起業は本来、そのために存在しているのです。私は皆さんに、技術革新や社会を根本から変革するような大きな夢を描いてほしいと願っています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:橘 大地氏
2010年東京大学法科大学院卒業。弁護士資格取得後、株式会社サイバーエージェント、GVA法律事務所にて、弁護士として企業法務活動に従事。
2015年に弁護士ドットコム株式会社に入社し、クラウド契約サービス「クラウドサイン」の事業責任者に就任。2018年4月より同社執行役員に就任、2019年6月より取締役に就任。
株式会社PeopleXを創業し、従業員のスキル、エンゲージメントの向上を支援するエンプロイーサクセスプラットフォーム「PeopleWork」の開発、運営の他、生成AIを活用したAIエージェントを開発。
企業情報
法人名 |
株式会社PeopleX |
HP |
WEBサイト:https://peoplex.jp/ |
設立 |
2024年4月 |
事業内容 |
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