株式会社ままよろ 代表取締役社長 石 光

株式会社ままよろは、シングルマザーの経済的自立と企業の成長を実現する人材企業です。企業の課題に応じたビジネスサポートを提供し、シングルマザーには実務を通じたキャリア形成を支援。継続的な業務改善と高品質なサービスにより、人材不足に悩む企業とキャリアを求めるシングルマザーの可能性を広げています。代表取締役社長の石 光氏に、事業内容や今後の展望なども含めてお聞きしました。

 

シングルマザーの可能性を広げ、企業の人材不足を解消する

事業の内容をお聞かせください

株式会社ままよろと、一般社団法人ママヨロアカデミーという二つの組織を運営しています。

 

一般社団法人ママヨロアカデミーは、教育を通じたシングルマザーのマインドセットの改革を目指しています。私自身の経験から「学びの機会は全ての人に平等に提供されるべき」だと考え、全てのプログラムを無料で提供しています。また、メンバーはボランティアとして活動しています。

 

特に離婚前後の時期は、心理的にも経済的にも大きな転換期です。この時期に適切な支援があるかどうかで、その後の人生が大きく変わってきます。

 

現在、熊本県の芦北町をはじめとする地方自治体と連携し、教育プログラムを展開しています。ITリテラシーが比較的低い地方在住のママたちのために、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッドな支援を行っています。行政には学習の場とパソコンの提供を依頼し、その他の運営は私たちが担当する形で、効率的な連携を実現しています。

 

一方、株式会社ままよろは、実務を通じた経済的自立支援が主軸です。クライアント企業に対して、経理、秘書、アシスタント、カスタマーサポートなど、幅広い業務支援を提供しています。特徴的なのは、定型的なパッケージではなく、クライアントの課題に応じてカスタマイズされたソリューションを提供する点です。

 

クライアントとの取引においては、最初の3ヶ月を試用期間とし、お互いの適合性を確認します。また、クライアントを「パートナー様」と呼び、目標達成にコミットすること、PDCAサイクルシートによる業務改善の継続的な実施、そしてすべての業務履歴を記録し、責任ある対応を徹底することを重視しています。

 

事業の特徴は、私たちの人材育成に対する考え方です。ただ業務を提供するだけでなく、クライアント企業への就職も視野に入れています。実際、多くのママたちは驚くべき成長力を見せており、スキルがなくても努力で急速にキャッチアップしています。なぜなら、シングルマザーには明確な目標があり、その目標に向かって全力で努力するからです。

 

この事業モデルが評価され、サーベイでは数千社中1%にも満たないクオリティカンパニーとしての評価をいただきました。

 

ただし、これは通過点に過ぎません。私たちの目標は、シングルマザーという言葉のネガティブなイメージを払拭し、「ままよろ経由のスタッフは優秀」といった新しい評価を社会に定着させることです。それが、人手不足に悩む企業とキャリアを求めるシングルマザー、双方の課題を解決する道だと考えています。

 

他社にはない貴社ならではの強みを教えてください

最大の強みは「心がある」ことです。

 

業務フローを提供するだけでなく、クライアントの課題に深く寄り添い、共に解決策を見出します。そのためには工数もコストもかかりますが、それが私たちの信念です。

 

例えば、経理業務からスタートし、その後インサイドセールスの支援が必要になれば柔軟に対応します。創業期の業務から、組織の成長に応じた人事、広報、営業支援まで、契約範囲を厳密に制限せず、クライアントの困りごとに応じてできる限りの支援を提供します。

 

「ままよろには何でも相談できる」存在として「心のある支援」に全力を注いでいます。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

事業の原点は私自身の経験にあります。

 

中国の黒竜江省で生まれ育ち、12歳のころに来日しました。母は再婚後に離婚し、シングルマザーとして、貧しい中で私を育ててくれました。

 

そして31歳のとき、私自身も離婚しました。当時、小学1年生と年中の子どもがいました。子どもが熱を出して休むたびに、会社で嫌味を言われる毎日だったのです。両親は既に他界しており、頼れる親戚もいません。そんな中で将来への不安を抱えながら生活していました。

 

行政に相談してもたらい回しにされる中で、「自分で何かできるんじゃない?」といった周りの声に背中を押され、起業を決意したのです。

 

当初は、派遣業に必要な2,000万円の資金もなく、「誰が仕事を紹介するのか」と冷ややかな声も多くありました。しかし、シングルマザーたちが活躍できる環境さえあれば、必ず事業は伸びると確信し、20万円で合同会社を設立しました。

 

そして現在、事業は着実に成長を続けています。将来的には、シングルマザー向けの不動産事業、シッター事業、保育園、グループホーム、さらにはお墓の提供まで視野に入れています。シングルマザーが将来に不安を感じることなく、一生懸命頑張れば人生を変えられる社会を作ることが目標です。

 

誰もが同じ人間。だから誰に対しても誠実に接する。

仕事におけるこだわりを教えてください。

こだわりは2つあります。

 

1つ目は、誰に対しても誠実であり、責任を取ることです。

 

トラブルに繋がりそうなお客様に対しても、正論で誠実な対応を心がけています。相手がどんなに感情的になっても、冷静さを保ち誠実な対話を続けます。

 

具体的には、約半年前に経営危機により支払が滞っていた会社がありました。その際、経営者としての経験から「支払よりも、目の前の社員さんたちのために会社を立て直すことに集中してください」とお伝えしました。すると相手は「最初の頃と変わらない心配りがある」と評価してくださり、関係性を継続することができました。

 

私たちにとって、相手の地位や経済力は重要ではありません。なぜなら、誰もが同じ人間だからです。ただし、一つだけ譲れない基準があります。それは「人を大切にできない人」「誠実でない人」とは取引をしないことです。これは、お客様に対しても、働くママに対しても同じ基準を適用しています。

 

2つ目は、自社の思いと基準を守り通すことです。

 

まず、シングルマザーの方々への対応において、当初は「かわいそう」といった観点から接していた時期がありましたが、間違いでした。今では「愛のある厳しさ」をモットーに、その人の人生をより良くするための本気の対話を心がけています。

 

そして、シングルマザーに対しても企業に対しても、大切なのは「対話」です。私たちはまだ小さな会社かもしれません。しかし、日本のシングルマザー支援のトップ企業になると決めている以上、企業規模や立場に関係なく、自社の基準を曲げることはできません

 

自社の譲れない基準の具体例として、企業取引での「前払い制度」です。ある上場企業から「後払いにしてほしい」といった要求がありましたが、断りました。

 

その後、この企業は前払いを可能にする業者を自ら見つけ出し、再提案してきました。このような誠実な対応には感謝の念を持って、取引を開始することを決めました。

 

誰かのためになるから本気で頑張れる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

シンプルに「誰かのために」という思いです。

 

この思いは、群馬や熊本など全国各地のママたちとの出会いを通じて、日々強くなっています。リアルな場での交流、オンライン会議での対話、届く手紙やコメント、そのどれもが「やってよかった」と感じさせてくれる瞬間です。

 

しかし、私たちの存在意義は、現在のメンバーのためだけにあるのではありません。これから出会うかもしれない困っているシングルマザーのために、頑張っています。確かな実績を積み重ねることで、より多くのシングルマザーの仕事が生まれ、より多くの子どもたちの未来が開かれていく。この思いが、揺るぎないモチベーションとなっています。

 

そのため、「とりあえず稼ぎたい」といった考えの人は採用していません。なぜなら、この仕事は本気で取り組むべきものだからです。一人ひとりの仕事が、パートナー企業の満足度となり、そしてそれが他のママたちの仕事の機会にも直結しています。

 

経営者として私が実感しているのは、人は自分のためだけに頑張ろうとすると、ある程度の限界が来てしまうことです。しかし、誰かのために動き出した瞬間、とてつもないエネルギーが湧いてきます。それが私たちの最大の強みであると自負しています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

グローバルな視点からシングルマザーの可能性を広げていくことです。世界各国を調査していく中で、「シングルマザー」という言葉が強いネガティブな意味を持つのは、実は日本特有の現象だと気づきました。

 

その理由は、海外では「シングルマザーだから」といった理由で特別視されることがないからです。日本のような生活保護制度もなく、国からの手厚い支援もない中で、皆が必死に働いています。

 

日本の現状を見ると、制度が逆に足かせになっているケースが多々あります。収入制限付きの母子手当や配偶者の扶養制度などは一見、保護的な制度に見えますが、実はこれらが女性たちのキャリアの選択肢を狭めています。

 

私たちの展望は「シングルマザー」という言葉のネガティブなイメージを払拭し、ポジティブな概念へと変革することです。その実現のために、ビジネスを海外へ展開していきたいと考えています。なぜなら、国内市場だけでは時給の上限に限界があるからです。外貨を稼ぐビジネスモデルを構築することで、より可能性が開けるでしょう。

 

最終的には、日本特有のホスピタリティを強みとして、海外企業との取引を拡大していくことを目指しています。海外からの収益によって新たな付加価値を生み出し、シングルマザーの皆さんにより良い待遇を提供していきたいと考えています。

 

自分はできると信じないと成功できない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

「自分は絶対にできる」と心の底から信じることです。

 

信念を形にする方法は、まず自分の言葉で宣言することから始まります。それが必ず実現させるといった自分へのプレッシャーとなり、同時に周りの方々からの応援を引き寄せる力にもなります。

 

ビジネスで大切なのは、自分の商品やサービスを売り込むことではありません。相手が何を求めているのか、なぜその仕事に情熱を注いでいるのかに、真摯に興味を持つことです。

 

当社では、即座の売上にならなくても、相手のために何ができるかを常に考え行動しています。これは種まきのようなものです。今すぐ実を結ばなくても、何らかの形で必ず返ってくるでしょう。

 

ただし、焦る必要はありません。すべてには適切なタイミングがあります。大切なのは、自分の信念を持ち続け、心の底からやりたいことに本気で取り組むことです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:石 光氏

中国、黒竜江省出身。

12歳のとき、日本語が全くわからない状態で渡日。自分自身がひとり親家庭で育ちそして自分もシングルマザーとなったことで社会や会社へのはたらきにくさを痛感し、シングルマザーが働きやすい会社がないならば自分で作ろう!と、2019年34歳で人脈0、スキル0、資金20万で起業。今では、年間100名以上のシングルマザーに仕事を生み出し、さらには、その子供たちへの教育格差を無くすため一般社団法人ママヨロアカデミーを運営。

 

企業情報

法人名

株式会社ままよろ

HP

https://www.mamayoro.com/

設立

2019年4月11日

事業内容

オンライン企業の業務代行、親子への有益な情報配信や学習支援の総合プラットフォーム運営

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