ARATA株式会社 代表取締役 楠瀬 勇

BPRコンサルティングやITスキルアップなどを手がけるARATA株式会社。今、同社が事業拡大に乗り出しているのが人材派遣のサービスです。今回は、「人材派遣会社は間で利益を抜いているだけというイメージを一掃したい」と語る代表取締役の楠瀬勇氏に、人材派遣事業におけるこだわりや今後の展望についてお聞きしました。

 

従業員のエンゲージメントが強みの人材派遣サービス

事業の内容をお聞かせください

弊社はBPR(業務改善)コンサルティングと人材派遣、ITスキルアップの3つの事業を手掛けています。このうち主力となるのは創業時から続けているBPRコンサルティングと、現在特に力を入れている人材派遣事業です。

 

現状では、弊社の人材派遣サービスはモバイル通信のエンジニア、システムエンジニア、そして土木建築関係の人材の3つに特化しています。そして登録している従業員のほとんどが既存のメンバーの紹介で入社しているというのが、1つの大きな特徴です。

人材派遣サービスを展開する中で重視していることはありますか?

弊社は従業員のエンゲージメント、つまり働く意欲や満足度を非常に重視しています。仕事をしていれば、当然ながら辛いことや不満が出てくるでしょう。そのときに我々が従業員を丁寧にフォローすることで、彼らが気持ちを切り替えられるようにし、次の日からまた感謝の心を持って意欲的に働けるようにマネジメントしています。

 

そうして従業員と信頼関係を築くことで「友達にもARATAで働くことを勧めたい」と思ってもらい、人が人を呼んで人材派遣の事業を拡大することができました。

 

私自身の前職での経験からモバイル通信のエンジニアを育成・派遣することに始まり、システムエンジニアへと領域を広げ、さらに建築業界出身の友人が一緒に事業をやるようになったことで、まったく畑違いの土木建築の仕事も手掛けられるようになったのです。

 

ホワイトカラーとブルーカラーの両方をカバーしていることで、新しく弊社に来てくれた人には希望に合わせて仕事を選んでもらえるようになっています。

 

将来的に目指す方向も、好きな働き方も、それは人によって様々です。弊社では、できるだけ本人の夢や目標を尊重し、仕事を通じてその実現を応援したいと考えています。日本の将来を担う世代にチャンスを掴んでほしいという思いから、高卒の人を対象として新卒採用もスタートする予定です。

 

弊社では仕事を通じて成長したいと考えている、意欲のある人を歓迎します。現状に満足できないと感じている人は、ぜひARATAで新しいキャリアに挑戦して欲しいです。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は高校で造園を学んでいたため、最初は大手不動産グループで造園土木の施工管理をしていました。施工の現場にはタワーマンションの外構植栽工事などもあったのですが、仕事をしながら高級マンションを見上げたとき、ふと「自分は何歳になったら、ここに住めるくらい稼げるようになるだろうか」という疑問が頭に浮かんだのです。

 

そうして独立を意識するようになり、まずは経営者の方々にお会いすることにしました。自分の可能性を広げたくて様々な業種の方々からお話を聞いていたとき、とある会社の社長から「まずは、うちで個人事業主として頑張ってみないか」とお声がけいただきました。

 

そこで大手通信会社のモバイル通信業務に就き、メイン業務をこなしながら、自分でマクロを組んで、単純作業を自動化していました。

 

その後も、GASやPythonといった言語を独学で学び、職場の業務改善に取り組んでいると、派遣先の上層部の目に留まり「これからは業務改善に集中してほしい」と言われました。

 

まだ自分が本当にやりたい事業のプランも組み立てられていない中で仕事が増えていき焦っていましたが、ふと目の前にある業務改善の依頼リストを見たとき「これをそのまま事業化できるんじゃないか」と気づいたのです。

 

まずは副業として実績づくりから始めて、売上目途が立ったところで晴れて会社を立ち上げました。最初は地方の企業の業務改善からスタートしたのですが、その後人材派遣の事業やITスキルアップ事業へと領域を広げて今に至ります。

 

こうして振り返ってみると、根本として私は「人」が好きなのだと思います。人材派遣やスキルアップの事業も、元の職場でスキルアップ研修を実施するなどして、人材育成や組織管理に自主的に取り組んだ経験から思いついたことです。

 

今も「一緒に働く仲間の夢を応援したい」と思っていますし、逆に言うと、それさえ叶えば今後展開していく事業内容には特にこだわりはないのです。

 

徹底して「従業員ファースト」

仕事におけるこだわりを教えてください。

徹底しているのは「従業員ファースト」の姿勢です。いかに従業員が主体的に成長できる環境を作れるか、そして頑張りに見合った報酬が得られるようにしてあげられるか、ということを常に考えています。

 

私自身、高卒という学歴で社会に出て、そこから努力して今の地位にいます。同じ状況で可能性が狭められていると感じている人たちを、夢があると思えるところまで連れていってあげたいです。

 

今の時代はSNSを見ても、「仕事に夢を持てない」「働きたくない」とこぼす人たちで溢れています。だからこそ弊社の従業員には人生で何を叶えたいのか、そのために今何をすべきかを一緒に考えて、納得したうえで活力を持って働いてほしいと思っています。

 

上を目指してスキルアップしている人は評価したいですし、仕事で成果を出していればお金の面でも報いてあげたいです。そのためには私からクライアントに要望を言うこともありますが、それは従業員のエンゲージメントを高めることが結果的に質の高いサービスとなって、クライアントの満足に繋がると信じているからです。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大かは分かりませんが、今まさに組織運営の壁に直面しています。

 

少し前に集中的にリーダー育成を行って、リーダー層を増やしました。しっかりとした組織体制を構築するのが目的でしたが、現時点では組織の中でリーダーだけが増えた状態で、それに見合う仕事が無い状態です。彼らに十分な予算を渡すためには、派遣の人員を増やして組織を拡大しなくてはなりません。

 

人材派遣事業において、組織体制を整えることと人を増やすことは、言わばニワトリと卵の関係です。人を増やしてから体制を構築すればよかったかと言うと、それでは環境が整っていない中で従業員を働かせてしまうことになるでしょう。どちらを優先しても不具合が生じてしまい、非常に難しい問題だと感じます。

 

ひとまず次は組織拡大を目指して、新しい従業員獲得に力を入れることにしました。LPを制作してSNSからの動線を作るなど、本腰を入れてWebマーケティングにも取り組んでいます。これからマーケティングの効果が出てくるので、今までとは違ったタイプの人たちも仲間になってくれると期待しています。

 

従業員が自社で稼げるようにするために

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

従業員にしっかり稼がせてあげたい、今はその一心で事業に邁進しています。

 

そうした中で嬉しいのは、クライアント側から派遣単価を上げてもらえるときです。こちらからお願いすることもありますが、先方から「すごく頑張ってくれているので単価を上げます」と言ってもらえるケースもあります。私にとっては従業員の優秀さが認められるのは大きな喜びなので、クライアントからのその言葉もモチベーションに繋がっています。

 

ときには、従業員が「社員として引き抜きたいという話がありましたが、断りました」と教えてくれることもあります。その理由は居心地の良さであったり、意欲を持って働けるからであったりと様々だと思います。

 

しかし、あくまでも弊社の社員として働くほうがプラスになると思ってもらえることが何より嬉しいです。それこそ人材派遣というサービスの意義だと思いますし、心からこの事業をやっていて良かったと感じられます。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

今後は自分のやりたいことよりも、従業員がやりたいことをいかに実現するかに注力していくつもりです。

 

ARATA(新た)という社名が表すように、事業を限定することなく、常に新しい領域に挑戦していきたいと思っています。そして今は従業員の中から「こういうことがやりたい」という意見が上がってくるようになりました。それらを事業化して、しっかりと利益を上げられるようにしていきたいです。

 

また、夢を持って働く従業員がいつかは独立して経営者の仲間入りをしてくれれば、こんなに嬉しいことはありません。

 

会社として従業員に求めることはもちろんありますが、弊社では今後も従業員がやりたいことにも耳を傾け、一緒にそれを叶えていきたいと思います。

 

行動してみない限り、アイデアは浮かばない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

考えるよりも行動することが大切だと思います。小説が原作のとある映画の台詞にも「頭の中にあるうちは、いつだって、何だって、傑作なんだよな」という言葉があるのですが、つまりは構想段階でどれだけ素晴らしいアイデアでも、実際に行動して形にしないとただの自己満足に過ぎないのです。

 

起業にまで進まない人の中には、「もっと良いアイデアが浮かんだら」と考えて踏みとどまっている人が多いと思います。けれど行動してみない限りは、アイデアなんて浮かびません。考えることも必要ですが、常に行動しながら考えるのが鉄則です。

 

そうは言っても、まだ具体的な事業のアイデアが無くて動き出せない人もいるでしょう。そういう人たちは、まずは様々な経営者の方々に会いに行くのをおすすめします。世の中にどのような業界やビジネスモデルがあるかを知ることが、自分の事業を見つけるための第一歩です。

 

心から尊敬できる経営者と出会えれば、その人から経営のノウハウも学べます。反対に経営者としての姿勢に疑問を感じるような人がいれば、その人の会社が10年後どうなっているかで、自分の考えの答え合わせもできるでしょう。

 

私自身、そうして起業までの道のりを歩いてきました。取り組むべき事業が見つかっていない段階でもできることはあります。まずは今できることから行動してみてください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:楠瀬 勇氏

大阪府立園芸高校を卒業後、某大手不動産グループ傘下の造園土木会社に入社。3年間従事し、個人事業主でモバイル通信業へ転身。業務先で培った業務効率化のスキルを活かし、2020年7月にARATA株式会社を設立。

 

企業情報

法人名

ARATA株式会社

HP

https://arata-automation.com/

設立

2020年7月15日

事業内容

  • BPRコンサルティング事業
  • 人材派遣事業
  • ITスキルアップ事業

 

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