【#381】ショート動画で広告を変える。1/10のコストで10倍効果を生み出すZ世代向けブランドマーケティングカンパニー|代表取締役 田中 聡(株式会社GOKKO)

株式会社GOKKO 代表取締役 田中 聡 氏
株式会社GOKKOは、縦型ショートドラマを制作するクリエイター集団を運営しています。TikTokなどの縦型動画プラットフォームでの知見と「面白いコンテンツ」とを軸にしたアプローチで、従来のテレビCMの10分の1のコストで10倍の効果を実現。
また、縦型ショートドラマアプリ「POPCORN」をローンチし、リリース1週間で約1万ダウンロードを達成するなど、この領域で日本をリードしています。代表取締役の田中 聡氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
日本NO.1の縦型ショートドラマのクリエイター集団
事業の内容をお聞かせください
当社では、TikTokやYouTubeショート、Instagramリールなどの縦型動画プラットフォームを中心に、縦型ショートドラマを配信するクリエイター集団「ごっこ倶楽部」を運営しています。
最近では、縦型ショートドラマアプリ「POPCORN」をローンチしました。中長編作品を1話あたり課金して視聴できるシステムです。リリースから1週間ほど経ちましたが、特に大きなプロモーションをしていない状態で約1万ダウンロードを達成しています。
縦型ショートドラマの部門では日本でNO.1の地位を築いていますが、まだまだ成長の余地があり、引き続き力を入れていきたいと考えています。具体的な目標としては年内に100万〜200万人のユーザー獲得を目指しています。
私たちの最大の強みは、中国をベンチマークしながらコンテンツを作っていることです。縦型動画の発祥地は中国です。共同代表の多田が中国とのハーフで、中国版のTikTokサービスをよく見ており、縦型ショートドラマが流行っていることを発見しました。さらに重要だったのは、中国では企業がドラマを作り始めたといった流れをキャッチできたことです。
「これは必ず日本にも同じ流れが来る」と予測して制作を始め、中国でうまくいっているものを参考にしながら日本向けに展開していきました。これが最初から成功した理由だと思います。
動画のテーマとしては「日常で忘れがちな小さな愛」に焦点を当てています。創業者の多田がよく言っていますが、現代はデジタルが過度に普及しており、アナログな人間関係がどんどん希薄化しています。
だからこそ、私たちの映像ではアナログに見えるシーンが多く、非日常ではなく日常的な作品が多いのです。若い人たちにもそういった価値に気づいてほしいという思いがあります。
企業プロモーションを成功させるには何が必要ですか?
大前提として、今はテレビを持っていない若い世代が増えています。さらに、広告を見ないためにお金を払う時代になりました。これが重要なポイントです。
企業は若者にも商品認知を届け、好感度を獲得する必要があるため、広告をしないという選択肢はありません。しかし、広告自体が見てもらえなかったり、アレルギー反応で嫌われてしまう現状があります。
その中で成功の鍵は「広告を無理やり見せる」といった考え方を捨てることです。結局、広告であれ何であれ、見てもらえるのは「面白いコンテンツ」です。
当社のショートドラマを活用した企業プロモーションでは、「コンテンツの中に広告要素を乗せる」という手法を行っています。「ショートドラマにすれば見てもらえる」という誤解が広がっていますが、それだけでは十分ではありません。
第一に必要なのは「面白いコンテンツを作ること」であり、その中にいかに自社のメッセージや読後感を届けられるかが重要です。
企業プロモーションでの成功事例を教えてください
大手通信会社との事例では、3〜4ヶ月間の連続施策でZ世代の認知度が40%を超え、最大で49%まで伸びました。これは非常に大きな数字です。
この認知度40%超えというのは、一般的にはテレビCMなどで何十億もかけて何年も続けてようやく達成できるレベルの数字になるのですが、それを10分の1のコストで実現しながら、さらに10倍の効果を出せている結果になっています。
また、航空会社との沖縄の離島キャンペーンでは、キャンペーンページへの申し込みが前年比450%になりました。ショートドラマのプロモーションによって桁違いの成果にも繋がっています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
「ごっこ倶楽部」は、コロナ禍に役者5人とカメラマン1人で立ち上げました。この5人のメンバーは、コロナで彼らの仕事が全部なくなってしまったのです。そのタイミングで、創業者の多田がメンバーを集めたのが始まりです。
スタートしてすぐに手応えがありました。投稿2本目からミリオン再生を達成するなど、苦戦するようなシーズンは “あまりなかった” です。ただ、途中で「1年間マネタイズを一切しない」と決め、9ヶ月間ほど無償で活動を続けました。
理由は、広告案件に依存すると自社オリジナル作品の制作が困難になるからです。企業案件は、通常のコンテンツと比較して3〜4倍の工数を要します。それにより、案件を始めた瞬間に、インプットもアウトプットも減るため、トレンドに対応し続けることが難しくなってしまいます。それでは短命になってしまうため、最初にマネタイズはしませんでした。
法人化した理由は「世界でナンバーワンになるため」です。法人化するからには世界を目指そうと決め、現在も進み続けています。
多くの人に届くバズを生み出す
仕事におけるこだわりを教えてください。
1人でも多くの視聴者に作品を届けること、見てもらうことを大切にしています。
自分たちのエゴを出して「作りたいものを作る」といった考え方は良しとしていません。持続可能なクリエイティブを作り続ける環境を整えることをミッションとしているため、最低限として多くの人に届けることが重要なのです。
多くの視聴者に作品を届けるために、レコメンドエンジンにうまく乗せてバズらせることが最も重要だと考えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
急速な組織拡大による「人材育成と管理の課題」に直面しています。
あらゆる部門から悲鳴が上がっていますが、成長過程で必ず通る道だと認識しています。現在正社員が約65人いますが、そのうち40人は入社1年未満です。組織の大半が新しいメンバーで構成されているため、業務の把握が不十分な状況や認識の共有が難しい状態が多々あります。
このような環境では、OJTやエントリーマネジメントといった手法が十分に機能しない傾向があります。ですが、やることはたくさんあり、さまざまなボールが落ちている状態で、手当たり次第拾っていく状況です。
だからこそチャンスも多くあります。例えばオフィスを綺麗にするといった基本的なことでもみんなから感謝される。このような、取り組むべきことや喜ばれることが山ほどある、そんなフェーズです。
その中で採用を強化されているそうですね。どのような人材を求めていますか?
ポジションにもよりますが、クリエイティブに携わりたい方に関しては、トレンドを追いかけ続けられる人材を求めています。
TikTokやInstagram、YouTube、さらには漫画やゲームなど、こうしたコンテンツに桁違いの時間を費やせる方、あるいはそれが日常の一部になっているような方が、当社では活躍しています。
それに加え、ストレス耐性の強さも重視しています。具体的には「放置されても大丈夫」な人です。(笑)
モチベーション高く入ってきた人が「やることがない」と感じると、「期待されていない」「活躍できない」と悩む場合があります。その時に、TikTokをひたすら見るなど、その時間をエンタメ摂取に使えるかどうかが重要です。
これは入社してきた方に問題があるわけでは全くなく、完全に受け入れる側の問題です。そういう負荷をできるだけ減らしていきたいと思っています。
常に緊張感のある「半歩先」の成長を目指す
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「オワコンにはなりたくない」という思いです。
これはクリエイターや作り手だけの話ではなく、ビジネスマンとしても同じです。長年の経験がある方は、確かに知識の蓄積があります。ただ、経験に頼りすぎると、新しいインプットを受け入れられなくなったり、経験則から先に答えを出してしまったりする傾向があります。
本来すべきなのは、プロセスを飛ばさずに体験することだと思っています。誰でもできることではありますが、実際にはかなりエネルギーを使います。
だからこそ、私が意識しているのは「半歩先」の位置を保つことです。この場合、偉そうにできない点が良いと思っています。かといって同じ場所に留まれば即座に追いつかれて追い抜かれます。
「この人はすごい」と完全に認められた瞬間から、危険信号だと思っています。常にグラデーションゾーンにいることで、緊張感を保ち進化し続けられるのです。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
2029年までに、国際的に名誉ある映像の賞を取ることが目標です。そのために、長編コンテンツの制作、横型動画の撮影、さらには映画制作などを見据えたロードマップに描いています。
2029年という期限を設定した理由は、ある大手配信サービスの事例が参考になっています。彼らは2007年にビデオレンタル事業からオンデマンド配信へと転換しました。当初は「ネットドラマ」と呼ばれ、有名俳優や一流監督からは敬遠されていたのです。
しかし、2012年に制作されたドラマシリーズがエミー賞を獲得し、流れが大きく変わりました。某配信サービスが5年で賞を取れたのだから、私たちにも出来ない理由がないと考えています。ですよね?(笑)
縦型ショートドラマアプリ「POPCORN」のキャッチコピーは「あなたのスキマに、感動を」です。
現代はコンテンツに触れる機会がかつてないほど増えているものの、心に届く体験はむしろ減ってきているように感じます。人々の心を震わせ、感動するコンテンツを届けることを続けていきたいです。
株式の勉強は必ずするべき
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業しようと思っているなら、明日始めてください。
起業する際に最低限やっておいたほうが良いことは、株式を理解することです。1社目では友人と株を分けましたが、資金調達時に「株は一人に集約すべき」と言われました。理由を尋ねると本を読めと言われ、3冊株式に関する本を読んだのですが、3冊ともに理由がしっかり書いてありました。
社会にインパクトを残すには規模拡大が必須ですが、一定の段階で準備不足や知識不足が原因でスピード感が失われることがあります。だからこそ、事前に必要な知識を身につけておくことが不可欠です。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:田中 聡氏
法政大学卒業後、セプテーニ、ビズリーチ、ファベルカンパニーで事業責任者、採用責任者などを歴任。飲食店(アンプール)4店舗のバイアウト経験をしている連続起業家。
企業情報
法人名 |
株式会社GOKKO |
HP |
|
設立 |
2022年2月 |
事業内容 |
TikTok向けの縦型ショートドラマを作るクリエイター集団「ごっこ倶楽部」の運営。 |
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