
トライズ株式会社(TORAIZ Inc.) 代表取締役社長 三木 雄信
トライズ株式会社は、「話す」に特化した英語コーチング「TORAIZ(トライズ)」を提供しています。一人ひとりの目標に合わせた個別最適化したカリキュラム、毎月のスピーキングテストによる客観的な進捗管理、そして徹底的なサポート体制により、1年で確実な英語力向上を実現します。
海外赴任や転職をする受講生だけでなく、IT・金融業界のビジネスパーソンを中心に、幅広い分野で活躍する方々から支持を得ています。代表取締役社長の三木 雄信氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
具体的なゴール設定から始まる英語コーチング
事業の内容をお聞かせください
私たちが提供しているのは、英語コーチングサービスですが、従来の英会話学校とも、他の英語コーチング会社とも大きく異なります。最大の特徴は、すべてを「個別最適化」している点です。
一般的な英会話学校では「ビジネス中級」といった標準的な教材があり、基本的にどの校舎でも同じレッスンを提供します。さらに教師が交代する可能性があるため、画一的な学習を提供する傾向にあります。一方、英語コーチング会社の多くは、学習方法のアドバイスに留まり、実際のレッスンは提供していません。
私たちのアプローチは、まず徹底的なゴール設定から始まります。「なぜ英語を学びたいのか」「どのような場面で使うのか」を具体的に掘り下げていきます。
例えば、「品質管理のために月1回タイの工場に行く」ケースでは、現地スタッフとの品質管理に関する会話ができることが目標になります。「海外支店の立ち上げに関わる」ケースでは、ネイティブスピーカーをマネジメントできるレベルの英語力が必要になります。このように、具体的な目標を設定することで、効果的な学習計画を立てることができます。
「話す」ことに特化したプログラム設計も特徴です。「読む」「書く」は、AIで対応した方が早いでしょう。しかし、「聞いて即座に話す」コミュニケーション能力は、人間にとって必須のスキルなのです。私たちは、この「話す」力を効果的に伸ばすためのプログラムを提供しています。
そのため、学習の進捗管理は非常に緻密に行います。毎月、ピアソン社の英語スピーキングテスト「VERSANT(ヴァーサント)」を実施し、客観的な成長度を測定します。
英語力の向上は、身長の伸びのように日々の変化を実感しにくいものです。そのため、定期的なテストで数値化し、確実な進歩を確認できるようにしています。
教材選定も独自のメソッドで行っています。3ヶ月で1冊のペースで進めますが、その選び方が重要です。第二言語習得理論の「i+1」(現在の実力よりもやや難しいレベル)を採用し、1ページあたりの知らない単語が2〜3個程度になるよう調整します。多すぎると挫折の原因になり、少なすぎると成長が遅くなるためです。最初は一般的な内容から始めて、徐々にその人の業種や目的に特化した教材にシフトしていきます。
学習サポート体制も充実させています。従来の英会話学校のような週1回だけの学習ではなく、毎日の学習報告のやり取りや定期的な面談を通じて、継続的なサポートを提供します。この密接な関係性により、学習を伴走するパートナーとしての信頼関係を築いています。
この結果、高い学習効果と継続率を実現しています。1ヶ月目の全額返金保証期間を除けば、月間の退会率は1%未満です。
利用者の約4割がIT系、2割が金融系で、その他製薬、会計系コンサルティング、メーカーなど、さまざまな業界の方々にご利用いただいています。多くの受講生が10ヶ月程度で目標を達成し、海外赴任や転職など、新たなキャリアステージへと進んでいます。
指導するコンサルタントの採用にもこだわっているとお聞きしました。
現在、約100名のコンサルタントが在籍していますが、採用は非常に厳選しています。コンサルタントの英語力はTOEIC平均937点、VERSANT平均64.9点と高い水準を維持していますが、それ以上に重視しているのは「共感性の高さ」と「自身の夢を持っていること」です。
なぜなら、私たちの仕事は「受講生の人生を変える仕事」だからです。実際に受講生の多くは、10ヶ月目くらいで「人生が変わった」と言ってくれます。海外赴任の社内試験に合格したり、希望の転職を実現したりと、具体的な成果を出しています。
コンサルタント自身も、「地元で海外向けのゲストハウスを作って町おこしをしたい」「オランダに住みたい」などの、具体的な夢を持っている人を採用しています。目標のない人に、他者の目標達成をサポートすることは難しいと考えているからです。
誰でも人生を振り返ると、「あの人がいたから自分の人生がこう変わった」という、人生を変えてくれた5人くらいの存在がいると思います。それは、学校の先生や親、友人かもしれません。私たちのコンサルタントは、そのような存在となる仕事をしています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
今の事業を始めたきっかけは、ソフトバンク在籍時の経験にさかのぼります。入社当時、海外での出張先で英語を話せないことにより、孫社長に迷惑をかけたことから、1年間で英語を習得した経験があります。
しかし、当初は別の事業からスタートしました。2006年から2015年まで、eラーニングの事業をしていましたが、なかなか成長しませんでした。アメリカや中国、韓国では急成長する一方、日本ではeラーニング市場自体が伸び悩んでいたのです。
その原因を探っていく中で、日本の「学び」に対する考え方に課題があることに気づきました。日本では学ぶことが「強いて勉める」という意味の「勉強」となっており、自分の意思とは関係なく、言われたことを嫌々やるという形になりがちです。
そこで、「何のために学ぶのか」といった原点に立ち返り、一人ひとりの目標に合わせて最適化した英語コーチングを始めることに決めました。
絶対的に自信があるものしか提供しない
仕事におけるこだわりを教えてください。
「絶対に自信があるものしかやらない」です。
まず自分が体験して、納得したものでなければ、決して提供したくありません。少しでも「騙してでも売ってやろう」という考えが入ってしまうと、売る側である社員のモチベーションも下がってしまいます。そのため、社長として絶対的な自信を持てるものだけを世に出しています。
社員の育成でこだわっている点は、社員一人ひとりが「何をゴールとするのか」といった夢を持つことです。
その上で、会社として必要な能力やスキルを明確に示し、個人の夢と会社が求めるものが一致する部分を見つけ出すことを大切にしています。例えば年間の目標設定の際には「あなたの人生の役にも立ち、会社の求めることにも合う」といった観点から、必要な学びを位置付けています。
これは、私たちが受講生に対して「あなたは何のために英語を学ぶのですか」と問いかけるのと同じアプローチです。社員に対しても常に同じ姿勢で向き合っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
最大の壁は社員教育で、大きな挫折を経験しました。
20年以上のビジネス経験から、当初は社員に私の指示通りに動いてもらえばいいと考え、マニュアル的な経営で組織を運営しようとしていました。しかし、この方法では組織が100人の壁を超えられませんでした。
なぜなら、マネージャーとして必要な判断基準や知識が社員に備わっていなかったからです。経営データやKPIをすべて開示していても、問題意識や知識がなければ、それを活用することはできません。
この課題を乗り越えるため、現在は私の時間の半分を社内研修に費やしています。新入社員からマネージャー、部長まで、全レイヤーの研修を体系的に実施しています。さらに、全ポジションを毎年公募制にし、必要なスキルセットを明確にした上で人材を登用する仕組みを作りました。これにより、常に成長する組織づくりを目指しています。
日本人が「英語を話せること」を当たり前にする
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「世の中を変えていく」ことです。
今では従来型の英語学校でも英語コーチングを取り入れ始めています。日本の社会人向け英語学習市場は1,000億円規模ですが、そのうちの約20%の200億円がコーチング型学習に移行しています。
つまり、英語学習の常識が大きく変わりつつあるのです。こうした社会の変革に関われることが、私のモチベーションとなっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
5年後には「英語が話せる」ことが当たり前の状況を作り出したいと考えています。
英語学習に関しては「子どもの頃から英語を学ぶのはいいのか」「AIがあれば英語は不要なのか」などのさまざまな議論がありますが、実際にやってみれば「英語はすぐできるようになる」ことを、社会の常識として定着させていきたいと思います。
「シャドーイング」という学習方法も、以前はほとんど実践している人がいませんでしたが、私たちがコーチングを通じて普及させることで、今では一般的な学習方法として認知されています。このように効果的な学習方法を広めていくことで、英語学習の常識を変えていけると考えています。
一生をかけて取り組む事業を選ぶ
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
大きく2つあります。まず、24時間365日没頭できるような、一生をかけてもいいと思える事業を選んでください。
孫正義氏がよく言っていた「世の中を変えるような志」を持って取り組んでほしいと思います。また、起業の道のりには苦しい時期もあります。だからこそ、心から打ち込める事業に取り組んで欲しいです。
2つ目は、今の時代は起業のハードルが下がっている点です。副業からスタートすることもできますし、資金調達の手段も以前より充実しています。若い頃の私たちのように、すべてを賭けて命がけで始める必要はありません。
また、「必ず成功できる道筋」を見つけやすい環境が整っています。一生をかけられるような事業を見つけつつ、自然な形で成長できる仕組みを作り上げていくことができるのではないでしょうか。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:三木 雄信氏
- 1995年 東京大学経済学部経営学科卒
- 1995年 三菱地所株式会社に入社。丸の内活性化プロジェクトを企画
- 1998年ソフトバンク株式会社入社
→久留米大学附設高等学校時代に孫正義氏の実弟の孫泰蔵氏と同級生だった縁で入社。孫正義氏のカバン持ちからスタートし、プロジェクトを徐々に担当するようになる。カーポイント(現カービュー)、ナスダック・ジャパン(現JASDAQ)、あおぞら銀行買収などを担当
- 2000 年 ソフトバンク社長室長就任
- 2001 年 ブロードバンド・プロジェクトを担当。その後、管理本部長、サービス・プロセス・マネジメント本部長、サービス企画本部長、品質管理本部長、光事業本部長を兼任・歴任
- 2006 年 ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト株式会社、トライオン株式会社を設立(2023年12月1日に社名をトライズ株式会社へ変更)
- 2008 年 年金記録問題作業委員会委員
- 2009 年 厚生労働省大臣政策室政策官(舛添厚生労働大臣)
- 2010 年 日本年金機構 理事。厚生労働省 システム開発委員
- 2013 年 内閣府 原子力災害対策本部 廃炉・汚染水対策チームプロジェクトマネジメント・アドバイザー
- 2015 年 1年でグローバルビジネスに必要な英語を話せるようになる英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」を開始
企業情報
法人名 |
トライズ株式会社(TORAIZ Inc.) |
HP |
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設立 |
2006年12月20日 |
事業内容 |
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