ブレイクポイント株式会社 代表取締役 若山 泰親

ブレイクポイント株式会社は、20年の実績を持つインキュベーションオフィスの運営企業です。ベンチャーキャピタルとアクセラレーターの機能を併せ持ち、起業前からIPOまでスタートアップの成長をワンストップでサポートします。グローバル展開を目指す起業家を積極的に支援し、直近ではグローバル・アクセラレーター・プログラムを準備中です。代表取締役の若山 泰親氏に、施設の特徴や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

VCとアクセラレーターの強みを融合し、成功確率を高める起業環境

貴社の施設の強みや特徴をお聞かせください

最大の強みは、当社自身がベンチャーキャピタルであり、アクセラレーターでもある点です。単なるオフィススペースの提供にとどまらず、投資も含め起業前から将来の成長支援のための幅広いサポートが可能です。

 

具体的な支援内容としては、起業前段階からのビジネスプランの壁打ちや、企業で働きながらの起業準備の進め方などのアドバイスなども行っています。会社設立支援や会計・税務のサポート、特許など知的財産が必要な場合の専門家の紹介、毎月の弁護士無料相談なども実施し、専門家への相談の敷居を下げる環境づくりに努めています。

 

施設面では、さまざまな起業フェーズに対応可能です。10名弱まで利用できる個室オフィスからコワーキングスペースまで、それぞれのニーズやスタイルに合わせた環境を提供しています。IT系スタートアップの方々が多いこともあり、通信インフラについては力を入れています。

 

また、20年ほどの運用実績があるため、一般的なサービスオフィスでは難しいとされる銀行口座開設や公的借入、助成金の受給なども可能です。エクイティファイナンスで高い成長を目指す企業には、当社のファンドからの投資も検討できます。

 

実際に、当オフィスを利用してIPOを達成した企業は4社あり、そのうち3社は完全にゼロからスタートしてIPOまで到達しています。

入居企業の傾向について教えていただけますか?

全体の3〜4割が起業前の段階から関わっており、ベンチャーやスタートアップのプレシード段階にあたる起業前後の方々が多くを占めています。

 

施設のキャパシティの関係上、個室オフィスでも最大10名程度しか収容できないため、多くの企業は5〜10名規模になった時点で卒業されます。スモールビジネスの方々も入居していますが、スタートアップではプレシードからシードあたりの企業が中心です。



業種については特に制限を設けていないので、多種多様な企業が入居しています。ただ、数的にはIT関連企業が最も多いです。また、以前XRやメタバース系に特化したアクセラレータープログラム「Tokyo XR Startups」(株式会社gumiと共同運営)を実施したことから、その際に形成されたコミュニティが今も存続しています。このコミュニティから起業されるケースも多く、XR関連企業の比率は相対的に高くなっています。



その他、ディープテック領域では、医療機器、再生医療、素材、ロボット関連企業の入居実績もあり、多彩な業種の方々が集まっています。

 

また卒業した企業ともつながりがあり、当オフィスの勉強会やセミナーに登壇いただくこともあります。IPOを達成した卒業企業から「この技術に強い企業はないか」といった問い合わせがあり、現入居企業とのマッチングが実現したケースもあります。

 

卒業すると物理的な距離ができて維持の難易度は上がりますが、可能な限り関係を継続しています。特にXR分野については活発なコミュニティとして機能しています。

入居企業の具体的な成長事例についてお聞かせください

大手VTuberプロダクションを運営する企業です。当初2名のメンバーでスタートし、2023年に株式上場を果たしました。2016年の設立から約7年でIPOに至り、上場後の時価総額は1,000億円を越えて推移し、現在は従業員数も500人規模にまで拡大しています。

 

この企業との関わりは、私たちのアクセラレータープログラムがきっかけでした。第1期目のプログラムの後、参加企業の成長を見て「このプログラムに入ることで自分たちも成長できる」と判断され、第2期目に参加いただきました。

 

当初の事業内容は、現在のものと違いました。約半年かけて事業ピボットを行い、VTuber事業に展開していきました。最終的なピッチイベントではうまくいかず、投資家にも響かなかったため、その後約半年間は厳しい時期が続いていたのです。しかし、経営努力とマーケットの変化、そしてビジネスモデルの進化が重なり、一気に伸びていきました。

投資をする際にはどのような点を重視していますか?

投資判断のポイントは3つあります。

 

最も重視しているのは経営者・経営チームです。高いモチベーションを持ち続ける力、常に学び改善する成長意欲、PDCAサイクルを回せる実行力、そしてチームを構築できる能力があるかどうかを見ています。

 

次に重視しているのが市場です。市場の規模や全体の成長性はもちろん、市場の中でどのようなポジショニングを取ろうとしているのかといった市場戦略も詳しく見ています。

 

3つ目はテクノロジーの部分です。テクノロジーだけでは価値創造が難しいケースが多いため、いかにテクノロジーを組み合わせてイノベーションを生み出すかが重要です。テクノロジーを使って、どのような「差分」を実現しようとしているのかを特に注視しています。「差分」という言葉は私がよく使う表現ですが、他とどのように違いを生み出すかがビジネスでは欠かせないと考えています。

 

また、私たちはエクイティ投資が基本ですので、将来的に大きな成長を遂げてリターンが出るかという財務的な観点も入ってきます。ただ、シードステージの場合は財務的な予測を正確に行うことはほぼ不可能です。そのため、その一段前の要素である「経営チームの強さ」「市場」「テクノロジー」といった視点で評価を行っています。

 

起業家の成功確率と成長速度を上げる場所

開設から今までの最大の壁を教えてください

当社自身にとって大きな壁はそれほどありませんでした。

 

ですが、日本では、インキュベーターやアクセラレーターの数はあまり増加していません。その中でも、起業家の「成功確率と成長速度を上げる」といった価値を継続的に提供することで、事業を継続できていると感じています。さまざまな小さな壁はありましたが、1つずつ乗り越えてきたというのが実情です。

 

現在の課題の1つは「認知度」だと考えています。現状ではまだまだ当社の存在は十分に知られていないため、より多くの起業家に私たちの存在と提供価値を認識してもらう必要があると考えています。

 

グローバル展開を積極的にサポート

運営メンバーの方はどのような思いで携わっているのでしょうか?

入居者の方に「成功確率と成長速度を上げていただく」ことをコンセプトとして活動しています。

 

現在、自宅やさまざまなサービスオフィスなど、起業する環境の選択肢は数多くあります。その中で、「ここに入って良かった」と感じてもらうには、居心地の良さだけでなく、ビジネスの目標達成を本気でサポートすることが重要だと考えています。

 

起業する方は人生をかけて挑戦しています。そのため私たちは、経済的にも非経済的にも、差分化された価値を提供することを存在意義としています。この考えに共感したメンバーが現在の運営チームに入ってくれています。

 

最近の華やかなサービスオフィスと比べると、私たちの施設は豪華さや設備の充実度では優れていません。給与や待遇も大手と比べれば見劣りするかもしれません。それでも、起業家を支援する社会的意義のある活動に携わりたいといった思いで集まったメンバーが、運営に携わっています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください

グローバル展開の強化を予定しています。直近では、グローバル・アクセラレーター・プログラムを開始する予定です。

 

日本のスタートアップは国内だけに限定されがちで、ユニコーン規模に成長する企業の数が国際的に見ても少ないのです。GDPでは日本より小さい韓国やフランス、イギリスなどと比較しても日本のユニコーン企業数は圧倒的に少ないのが現状です。

 

この違いはグローバル展開ができているかどうかだと思っているので、グローバル志向を持つ起業家をより積極的にサポートしていきたいです。例えば、海外での投資家向けピッチイベントの主催や、現地展示会に共同ブースを出展して売上拡大の機会を作ることなどを計画しています。

 

グローバル市場や投資家へのアクセスは難しいのですが、環境を整え、入居者の方が当オフィスに入ってよかったなと思ってもらえる場を提供していきたいと考えています。

 

また、投資事業も展開していく予定です。当社からの投資とその他の支援活動によって差分を生み出し、より大きな価値を創造できると考えています。

 

事業成長し続けられる場所を選ぶ

インキュベーションオフィスを検討している方に、アドバイスをいただけますか?

意識してほしいのが「経営者の時間は貴重」という点です。時間をどこでどう使うかが、会社の成果に大きな影響を与えます。仕事をする「場所」も同様で、どこで経営判断をし、業務を行うかによって大きく変わります。

 

ですから、オフィス選びは妥協せずに行ってほしいです。単に見た目が良いとかではなく、「この場所が自分の事業の成功と成長にどう繋がるか」といった視点で判断することをお勧めします。

 

また「信頼性」も非常に重要です。どのような人が利用しているか、運営者はどんな思いでスペースを提供しているかなど、実際に訪れてみることで感じ取れるカルチャーも確認するといいでしょう。

最後に、貴社のオフィスの利用に興味がある方にメッセージをお願いします

起業家の方がどれだけ世の中にインパクトを与えるかによって、未来は変わります。

 

私自身、大手VTuberプロダクションが創業前からユニコーン規模の企業へと成長する姿を間近で見られたことは、非常に貴重な経験でした。それを機に、日本のエンターテイメントシーンは大きく変わりました。この結果は、創業メンバーが日々諦めずに地道に努力し続けたからです。

 

起業では大変なことがたくさんありますが、日々の積み重ねが将来の世界を変えることを信じてください。私も信じていますし、当オフィスには同じ志を持つ人々や、そういった方々を応援する仲間がたくさんいます。

 

オフィス選びは単なる物理的な場所の選択ではなく、あなたのビジネスの成長にとって重要な決断です。私たちは起業家の皆さんにその価値を提供したいと考えており、お互いの相性が良いことが重要だと考えています。

 

また、入居前に行う経営者・代表者の方との面談は、私自身が行なっています。厳しい審査というわけではありませんが、面談を通じて「私たちのオフィスにフィットして、他の入居者の方とも良い関係を築いていただけるかどうか」を確認させていただいています。これが、入居者間の信頼性の高さに貢献していると感じています。

 

こうした環境の中で、一緒に仕事をしたいと思う方には、ぜひ当オフィスを選んでいただきたいと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:若山 泰親氏

総合商社での新規事業開発担当者、スタートアップでの株式公開準備責任者などを経験後、2004年にブレイクポイント株式会社を設立。2015年からはTokyo XR StartupsプロデューサーとしてTokyo XR Startupsインキュベーションプログラムを運営。

2021年にXVCを設立。X-DOJOアクセラレータープログラムを年2回開催し、年間約10社のスタートアップに投資を行っている。

 

企業情報

 

法人名

ブレイクポイント株式会社

HP

ブレイクポイント株式会社のHP:

https://www.breakpoint.co.jp/

インキュベーションセンター.comのHP:

https://incubation-center.com/

設立

2004年3月29日

事業内容

インキュベーション施設、起業支援プログラムの運営、投資

続きは、ベンチャー.JPの会員の方がご覧いただけます。

送る 送る

関連記事