株式会社EmpaC 代表取締役 松山真衣

23歳で起業し、「長く愛されるブランドづくり」を軸に、SNS戦略や自社プロダクトを展開されています。バズや数字よりも共感と信頼を重視し、人と人、文化と社会を繋ぐ仕組みの構築に取り組んでいます。近年は子ども向けSNS教育にも注力しており、次世代育成へと領域を広げておられます。今回は松山氏に、事業を立ち上げた経緯や今後の展望を詳しくお聞きしました。

人とブランドを深く繋ぐ、ファン視点のSNS支援

事業の内容をお聞かせください

私たちのメインの事業はSNSのマーケティング支援です。「ブランドを共創する」というスローガンを掲げて、ブランドの認知・興味・関心・比較・検討、ファン化について、ベストな施策を組み合わせたSNSマーケティングの戦略から運用までを支援しています。

 

ご支援の形としては、戦略設計から投稿運用までを一括して行うケースもあれば、ディレクションやアドバイザリーとして関わるケースもあります。

 

また、企業や自治体向けにSNS研修を実施することもあり、そこでは、私が大学講師として培ってきた知見をもとに、炎上リスクへの対応、企画の立て方、データ分析の方法など、実践的なカリキュラムを提供しています。

 

加えて、私たちは自社プロダクトの運営にも取り組んでいます。他社の支援を行う立場として、実際にお金を使い、自分たちでプロダクトを成長させていく難しさやリアルを理解することが重要だと考えており、社員にとっても大きな学びの機会となっています。

 

自社で得た知見は、SNSとECの連動やイベントとの連携など、さまざまな形でクライアント支援にも活かしています。その他にも、アーティストのマネジメントやスポーツ選手の支援、地方創生プロジェクト、さらには台湾をはじめとした海外展開支援など、SNSを軸としながら幅広い取り組みを行っています。

 

私はファンマーケティングに長く携わってきたため、愛され続けるブランドのファン戦略に知見があることが大きなアドバンテージだと思っています。

 

数字を追いかけるSNSマーケティングではなく、愛されるブランドへという意識になったきっかけは?

私は、アパレル会社でとあるモデルのブランドのディレクションをしていた時に「モデルが好きだから買う」といったスタイルが作り上げられていました。

 

しかし、この事象には限界を感じていました。広告塔やインフルエンサーにギフティングしようとするのではなく、きちんと「このプロダクトがどう愛されていくか」について考えた上でブランドを作らなければならないと思ったことがきっかけです。

 

また、ギャルブランドの担当をしていた時に、店舗にいたカリスマ店員をインフルエンサー化する提案をしました。当時はInstagramが告知のみに利用されていた中、「この店員さんから買いたい」という顧客の状況に着目し、当時一般的でなかったInstagramのDMを活用し、店員と顧客の直接的なコミュニケーションを実現させました。

 

これは、当時ファンマーケティングという言葉を知らずに行ったものの、まさにファンマーケティングの実践でした。後に、佐藤尚之さんの本「ファンベース」を読んだ際、「この考え方、めっちゃ好きだな」と思ったと同時に、ファンマーケティングの本質や長く愛されるブランドを作ることの大切さに気づかされ、このスタイルでやりたいと強く思うようになりました。

 

フォロワー数の増加や、リールをバズらせる等、数字で判断することが主流ではありますが、それは「現時点での単なる通過点」でしかないと私は思っています。ブランドを運営する上では質やバリューこそが本質的な考えであり、弊社はそれに則ってサービスを行っています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

SNSが現代において必要不可欠なものとなる中で、ブランド様が売上を拡大するためにはSNSの活用が避けられないと感じました。

 

しかし、多くの企業がSNSの運用に課題を抱えており、「本当に長く愛されるブランドになるためのSNS活用」をサポートしたいという思いから、この事業を始めました。当初はフリーランスだったのですが、自分一人で成し遂げるのは難しいと感じたので、株式会社EmpaCを立ち上げることにしました。

 

私たちは、単なるバズや、短期的なフォロワーの獲得ではなく、長く愛される「もの・こと・人」をつくることを大切にしながら、ブランドの成長を支援しています。


弊社が仕事をするにあたってクライアントだけではなく、その先にいるお客様にどうアプローチしていくか考えています。もちろん、お客様の満足がクライアントの満足にも繋がるため、クライアントにも「SNSって楽しい」と感じてもらえたら、嬉しいと思っています。

 

人とつながり、文化を育てる。“愛されるブランド”づくりへのこだわりと挑戦

仕事におけるこだわりを教えてください。

「短期的なバズではなく、長く愛されるブランドをつくること」が、事業におけるこだわりです。SNSは一過性の流行を生み出しやすいツールですが、本当にブランドの価値を高めるためには、ファンとの信頼関係が欠かせません。

 

つまり、単なる映えやフォロワー数の増加だけでは意味がなく、「このブランドだから買いたい」と思ってもらえることを目的とし、そのようなプランニングを大切にしています。

 

個人的なこだわりとしては、「つながりを生み出すこと」です。SNSは、ただ情報を発信するだけのツールではありません。人と人、ブランドとお客様、文化と社会を繋ぐものだと思っています。

 

だからこそ、フォロワー数を増やすことやバズを狙うことだけに捉われることなく、「このブランドとつながっていたい」と思ってもらえる関係づくりをしていかなければと思っています。

 

私たちが手がける自社プロダクトは、単なる販売のための仕組みではなく、「人が集まる場」や「文化」を大切にしたものです。たとえば、数が減りつつある銭湯のように、消えゆく文化を記憶として残し、人々に改めてその魅力を感じてもらいたいという思いから生まれています。

 

私たちは、こうした場所や文化を通じて人と人の接点を増やし、そこから新たなつながりやコミュニティが生まれていく仕組みづくりを大切にしています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

苦戦したのは、「会社のカルチャーをどう従業員に浸透させるか」ということと、「自身のスタイルをどのように言語化するか」の部分です。

 

「長く愛されるもの・こと・人をつくる」という会社の軸をチームに共有し、各メンバーが主体的に動けるように試行錯誤を重ねました。組織が拡大するにつれ、感覚的な伝達では限界を感じ、「言葉にして伝える」重要性を痛感しました。

 

私自身、プレイヤーとして直感的に仕事をしてきたため、自身の仕事スタイルや価値観の言語化に苦労しました。属人化を防ぎ、クライアントに一定の品質を提供するためには、言語化と仕組み化が不可欠です。

 

この難しさに直面し、苦戦した経験から、現在は価値観の整理と、それを言葉に落とし込むことを強く意識しています。

 

利益ではなく、未来への投資。子どもたちのために考えるSNS教育への挑戦

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私の一番の原動力は、お客様の想いや、共に働く仲間の存在です。自分たちが関わったブランドのプロダクトがエンドユーザーに届き、喜んでいただいている様子を見ると、心から嬉しくなります。

 

ある日、社員たちと「この会社をどうしていきたいか」を語り合う機会がありました。その中で私は、「長く愛される会社をつくりたい」「百年続く会社を本気で目指したい」と宣言しました。

 

そのためには、一緒に働く仲間やクライアント、そしてその先にいるお客様を大切にし続けることが不可欠だと思っています。

 

最近では、チームの雰囲気も大きく変化してきており、「こんな会社にしていきたい」といった前向きな意見やアイデアが自然と飛び交うようになりました。メンバーそれぞれの価値観や目指す方向が重なり合い、チーム全体が同じゴールに向かって進んでいる実感があります。

 

中でも特に嬉しいのは、「松山真衣と一緒に会社を大きくしたい」と言ってくれる仲間が増えてきたことです。たとえ難しい課題があっても、解決に向けて前向きな話し合いができるこの環境はとても心地よく、チームとしての成長が今は本当に楽しいと感じています。

 

振り返ると、自分が前に進むモチベーションの多くは、こうした仲間や環境からもらっているのだと改めて感じます。そして、自分自身も誰かにとっての原動力になれるよう、これからも挑戦を続けていきたいと思っています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

会社としてさらに成長し、これからさらに会社を成長させ、より多くのブランドやプロジェクトの支援ができる体制を整えていきたいと考えています。中でも特に注力したいのが「地域創生」です。

 

私自身、東京で生まれ育ったからこそ、地方の持つ魅力に強く惹かれています。そして、その魅力をもっと多くの人に伝えていきたいという思いがあります。

 

地方には素晴らしい文化や風景があるのに、まだうまく発信できていない場所がたくさんあります。そんな地域の魅力をSNSの力で発信し、「この街に行ってみたい」「ここで働いてみたい」「住んでみたい」と思ってもらえるようなきっかけを作っていきたいと考えています。

 

これは、私が20代のうちに仕掛けたい大きな挑戦です。スピード感を持って取り組み、動き続けることで新しい景色が見えてくると信じています。

 

もう一つ取り組みたいと考えているのが、お子さまへのSNS教育です。最近では、炎上やいじめ、時には事件にまで発展してしまうなど、SNSが関わる社会課題が増えています。

 

今、私は小・中・高校でのSNSリテラシー講座の実施に向けて、教育現場への働きかけを始めています。子どもたちとその保護者に、SNSの正しい使い方や危険性を伝えることで、安全に、そして前向きに使ってもらえるような環境をつくっていきたいと思っています。

 

考える前に動く。その一歩が、すべてを変える

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業を考えているなら、まずは迷わず動いてみることが何より大切です。これまでに「起業したい」という相談を何度も受けてきましたが、私が必ず伝えるのは「とにかくやってみて」というひと言です。やってみないことには、本当のところは見えてきません。

 

たとえうまくいかなかったとしても、その経験は必ず次に活きます。失敗も大事な学びの一つで、いずれ自信や糧になるはずです。実際に動いてみることでしか見えない景色が、たくさんあると実感しています。

 

また、起業してから特にありがたく感じているのは、人との繋がりの力です。起業は一人で完結するものではありません。仲間やクライアントなど、多くの支えてくれる人たちがいてこそ、道が開けていくものです。

 

信頼関係を大切にしながら、共に成長していく意識を持つことで、新たなチャンスが生まれることもあります。だからこそ、人とのコミュニケーションや繋がりを意識して行動することはとても大切です。

 

起業にはうまくいかないことや困難もつきものですが、最終的には「なんとかなる」と信じて続けることが、いちばんの強さになります。大変なときこそ、自分が何のために起業を決めたのか、原点を思い出して、一歩ずつでも前に進んでいってほしいと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:松山真衣

1997年生まれの20代女性起業家。株式会社EmpaC代表取締役。大手アパレルメーカーに入社後、マーケティング部でEC運営およびSNS運用を担当。入社1年目でInstagramアカウントのフォロワー数を20万人に増加させ、エンゲージメントの重要性に気づく。その後、ファンマーケティング専門のSNS運用代行会社に転職し、SNSを活用したファン作りに特化した運用を行う。

 

・女ひとりと猫ふたりで過ごす日常

https://www.instagram.com/taratouni/

Art Culture Street. アートカルチャーストリート

https://www.instagram.com/artculturestreet/

OSENTO [オセントウ] – 銭湯マガジン –

https://www.instagram.com/osento.jp/

 

企業情報

 

法人名

株式会社EmpaC

HP

https://www.empac.co.jp/

設立

2021年4月14日

事業内容

  • ソーシャルメディアマーケティング事業
  • グラフィックデザイン・広告・映像の企画及び制作

 

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