
株式会社ソーシャルインテリア 代表取締役 町野 健
家具のサブスクリプションサービスを始めとする革新的なサービスで、日本のインテリア業界に新たな風を吹き込む、株式会社ソーシャルインテリア。「インテリアの世界を変える。インテリアで世界を変える。」をミッションに掲げ、業界の進化に挑戦し続けています。
今回は、インテリアの新しい価値観や文化の創造を目指す同社の町野社長にお話を伺いました。
3つの事業でインテリア業界に新しい風を吹き込む
事業の内容をお聞かせください
当社の事業は大きく3つに分かれており、法人向けと個人向けの両方を展開しています。
まず、法人向け事業では、企業のオフィス移転に伴う空間デザインを手掛けています。企画、設計、インテリアデザインから家具の選定・納品まで、トータルでサポートすることが特徴です。お客様の企業規模は様々で、一社一社に最適な空間をゼロから創り上げています。
次に、当社が「DX事業」と呼んでいる領域です。長年の家具仕入れ経験を活かし、国内外で約600ブランドの家具を取り扱っています。仕入れ業務の煩雑さや手間に課題を感じ、発注業務を効率化する支援サービスを立ち上げました。
このサービスは、同じような課題を抱える内装・設計業者を中心にご活用いただいています。
最後に、個人向けの家具サブスクリプションおよび販売サービスです。法人向けでは2,000社以上をサポートしてきた実績があり、個人向けサービスも順調にユーザー数が増加しています。
従来の「レンタル系」とは異なり、当社は「リース系」の課金体系を採用しています。レンタルでは同じものを使い回しますが、当社では新品を中心に提供し、利用後は購入いただくことも可能です。また、返却された家具はオフプライスで二次流通させます。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
きっかけは、私自身が引っ越しをしたときの体験です。家具探しで、目黒にある「家具通り」と呼ばれるエリアを一通りまわってみたのですが、高級な家具はリビングセットで50万円を超えるものもあり、「家具ってこんなに高いのか」と驚きました。
一方で、ディスカウント系の家具店に行くと価格はとても安いけれど、自分が本当に欲しいと思えるものにはなかなか出会えませんでした。
その時に、高品質なものは高価で手が届かない一方、安価なものは品質に満足できない、という極端な市場の構造に違和感を覚えました。そこで、中間価格帯でセンスの良い家具がもっと気軽に選べてもいいのではないかと感じ、「これはビジネスになる」と直感したのです。
インテリア市場は非常に大きいですし、その“中間の穴”を埋めることができれば、多くの人の暮らしに貢献できると思い始めたのが、今の事業です。
実は2017年にアメリカを訪れた際、現地のハードウェア系スタートアップがサブスクリプションモデルで収益を得始めていたのを見たことも大きな刺激になりました。
当時の日本では、まだ「サブスク」という言葉も浸透しておらず、ようやく音楽の配信サービスが始まって「月額使い放題」という概念が知られ始めたころでした。
私にとってこれは2回目の起業で、以前から市場データやビジネスモデルの分析には常に注目していました。とはいえ、家具を仕入れてサブスクリプションで提供するというのは、非常にお金のかかるビジネスです。それでもやろうと思えたのは、2つ理由があります。
1つ目は、「無知の勇気」です。あれこれ考えすぎると、誰でも一歩が踏み出せなくなるのではないでしょうか。リスクを計算しすぎて結局何も始められないというのは、大企業が新規事業に踏み込めない大きな理由でもあります。
リスクはあっても、自分が面白いと感じたビジネスには自ら飛び込んでみようと思い、事業を始めました。
資金面は調達で乗り切れると考えていましたが、実際には想像以上に厳しく、大きな苦労も伴いました。それでも、起業したことで「まず行動すること」の重要性をあらためて実感できました。
2つ目の理由は年齢です。この会社を始めたのは40代に入ってからでした。自分の年齢を考えると、小さな規模でビジネスを始めても、納得できない気がしたのです。
どうせやるなら社会を変えるような大きなインパクトのあるビジネスをやるべきと思ったときに、家具のサブスクリプションという切り口が“革命”になると感じました。それが、今の事業の原点です。
予定調和を壊す。革新とスピードを信じて進む
仕事におけるこだわりを教えてください
私は予定調和なことがあまり好きではなく、「普通」や「当たり前」に落ち着いてしまうことに違和感を覚えるタイプです。根本的な課題に向き合うこと、新しいことに挑戦すること、そしてスピード感を持って動くことに価値を感じています。
とにかく、つまらないことはやりたくない。それが事業を進める上での大きな判断軸になっています。
もちろん、ただの破天荒な会社というわけではありません。今年、あらためて「インテリアの世界を変える。インテリアで世界を変える。」という企業ミッションを掲げました。
これは単に家具を扱うだけではなく、インテリアの力で業界全体、さらには社会そのものに変革をもたらしたいという想いの表れです。
インテリアを通じて、日本に革命を起こしたい。そしてそれが、業界関係者や自分自身の幸せにもつながっていると感じています。仕事も人生も、最終的には「幸せであるかどうか」が一番大事だと思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
正直に言うと、これまでずっと壁だらけでした。最初に挑戦したのは、自社で家具を製造して個人向けにサブスクリプションで提供するというビジネスモデルだったのですが、これがまったく売れませんでした。
すぐに方向転換し、仕入れ型に切り替えたことでようやく軌道に乗りはじめましたが、そこに至るまでにもかなりの苦労がありました。
何よりも大きな壁だったのは、資金繰りです。資金繰りはすべてのスタートアップに共通する悩みかもしれませんが、当社も例外ではありませんでした。キャッシュが本当に足りなくなり、社員の給与が払えず自分の手元資金で支払ったこともありました。
特に厳しかったのは、2回目の資金調達の時です。2019年の年末頃、リード投資家からの出資がほぼ内定していて「これでなんとかいけそうだ」と、安心していました。
ところが年明けすぐに日本で新型コロナウイルスの感染者が確認され、4月の緊急事態宣言の頃に、予定していた投資の話がすべて白紙に戻ってしまいました。
リード投資がなくなると、それに続く他の投資家も一斉に引いてしまい、気づけば会社の資金が持つのはあと1〜2ヶ月という状況でした。投資してくれる会社が見つからなければ明日にも会社が潰れる、というギリギリの状態に追い込まれました。
なんとか極限の状況を乗り越えられましたが、あの時の経験は本当に忘れられません。
革命とは、社会を変え、人を救うこと
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
革命に一歩近づいていると感じられることが、進み続ける上での大きなモチベーションになっています。
私は物質的な成功や目に見える報酬にはあまりモチベーションを感じないタイプですし、時代的にもそうした価値観だけでは突き動かされにくくなっている気がします。
私にとって革命とは、ただ斬新なことをするという意味ではなく「困っている人をどれだけ救えるか」ということに尽きます。
救済が伴わなければ、それは本当の意味での革命ではありません。社会が少しでも良くなったと実感でき、大きな構造や価値観の変化を多くの人が肌で感じられてこそ、初めて「革命」と呼べるものになると思っています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後はインテリア業界における法人・個人の領域で、確実にトップシェアを取りにいきたいと考えています。「インテリアといえば、ソーシャルインテリア」と、誰もが真っ先に思い浮かべる存在になることが目標です。
そのためには、会社を大きく育てる必要があります。 インテリア業界全体にインパクトを与えるには、小さな組織のままでは限界があるためです。
「インテリア業界を変える」と言葉で言うだけでは意味がなく、実際に行動で示し、目に見える変化を起こしてこそ本物だと思っています。
夢を語るのは自由ですが、そこに現実的な力を伴わせることが大切です。だからこそ、本当に大きなことを成し遂げるには、それにふさわしい規模の会社でなければなりません。
大は小を兼ねる。大きなビジョンを描き、考え抜いた計画で挑んで
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
「根本的に何を変えたいのか」という大きな絵を描いたうえで、起業に挑戦していただきたいと思います。「大は小を兼ねる」という基本的な考え方は、起業において非常に重要です。
私は、市場規模やターゲットの大きさを常に意識してきました。今の時代、新しいビジネスというのはほぼ存在しません。すでに誰かが始めていることがほとんどです。
だからこそ、「誰もやっていないことをやろう」と考えすぎるよりも、既存の要素をどう組み合わせるか、新しい切り口でどう提供するかを工夫するほうが現実的です。
ただし、あまりに組み合わせすぎると対象が絞られてニッチな事業になりがちです。ニッチなビジネスにも価値はありますが、「大は小を兼ねる」という原則を理解した上で、意識的に選択することが重要だと思います。
私は「とにかく起業すればいい」とは思いません。私自身、起業したからには必ず成功するという強い気持ちで始めました。成功の確率を高めるためには、「絶対に失敗しないために何が必要か」を真剣に考えることが欠かせません。
この答えは、インターネットでいくら検索しても出てくるものではありません。自分の頭で考え抜くしかないのです。
一緒に働きたい人物像を教えてください
当社が目指しているのは「世の中を変える」「インテリアの文化そのものを変える」という大きな目標です。その目標に共感してくださる方であれば、インテリア業界出身の方でもそうでない方でも大歓迎です。
この大きな目標は、どの企業でも実現できることではありません。だからこそ、その文化を変える革命の1ページを自分の手でめくりたいという強い思いを持っている方に、ぜひ仲間になっていただきたいです。
反対に、中途半端な姿勢の方には向いていないかもしれません。決して“覚悟を決めて飛び込んでこい”という意味ではなく、一緒に働いている仲間は「これがやりたい」という強い意志がある人ばかりです。
当社は、まさにこれから大きくなっていくスタートアップです。ビジネスモデルとしても、1兆円規模に成長する可能性を持っていると本気で信じています。
だからこそ、「自分が入った会社が大きく成長していく過程を最前線で体感したい」「自分の手で会社を大きくしたい」といった想いを持つ方に、ぜひ加わっていただきたいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:町野 健氏
上智大学大学院修了。株式会社日本HPのコンサルタント、株式会社マクロミルにて経営企画、海外事業立ち上げを経て、2012年にキュレーションマガジンAntenna立ち上げのため、株式会社グライダーアソシエイツを創業。2016年にソーシャルインテリアを立ち上げ、2018年3月に日本初の家具のサブスクリプションサービスを開始。600ブランド12万種類の商品を取り扱う。
企業情報
法人名 |
株式会社ソーシャルインテリア |
HP |
|
設立 |
2016年11月9日 |
事業内容 |
|
関連記事