株式会社RemitAid 代表取締役社長 小川裕大

株式会社RemitAidは、国際送金における手数料や着金状況などの見えないコストを「見える化」するフィンテックサービスを展開しています。海外展示会で活用できる決済サービスや、海外支社を持たずに現地口座を開設し、国内振込で海外への決済を可能にするサービスなど、企業の国際取引をサポートしています。今回は、代表の小川裕大氏に、事業内容や今後の展望についてお話を伺いました。

自分にしかできない課題に挑む。新しい国際送金のかたち

事業の内容をお聞かせください

当社は、国際送金に特化したサービスを提供しており、現在は主に2つの事業を展開しています。1つは、海外展示会などで使用できるクレジットカード決済サービス「デジタル決済」サービス、もう1つは、海外支社を持たずに現地口座をもつことができ、現地国内振込で海外企業との取引が完結できる「海外ラクヤス振込」サービスです。

 

「デジタル決済」サービスは、2023年のリリースから約2年で350社ほど導入いただいており、化粧品・美容機器やジュエリー、アート、食品、自動車部品など幅広い業種の方にご活用いただいています。

 

これまで、海外展示会では現金でのやり取りが一般的でしたが、当社のサービスによって釣銭準備や現金の持ち運びなどによって発生する、紛失・盗難のリスクや両替費用などを軽減できるようになりました。

 

もう一方の振込サービスですが、従来の国際振込は、早くて数日、遅ければ数週間〜1ヶ月ほどかかります。また、為替手数料や中継銀行による中継手数料など「見えないコスト」も多く発生していました。

 

我々は、そうした手数料もすべて「見える化」することで、着金状況や手数料が情報として見えるだけでなく、手数料の安さや、安心感を提供することができます。

 

日本は島国ゆえに貿易大国で、輸出入額は220兆円ほどの市場とも言われます。我々のサービスは「メイドインジャパン」であることを強みに、大きな金額を扱う取引をサポートしながら、サービスを提供しています。

 

また、日本の会計ソフトの多くは外貨の情報をもつことができないため、我々の蓄積したデータを会計ソフトと連携し簡素化することも、日本を拠点にサービス展開することに意味があると思っています。

 

我々のサービスは、日本国内では法規制や制度の複雑さから、参入障壁が高い領域でもあります。法的な整理や現地のパートナーの選定を通じて、新たなスキームを形にしていくことができるチームが当社の強みでもあると考えています。

    

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

今回の事業は、私にとって2度目の起業です。1度目はHRテック領域での挑戦でしたが、その後も「チャンスがあればもう一度起業したい」との気持ちを持ち続けていました。

 

前職では、決済サービスの新規事業を担当しており、その経験から、3つの大きな気付きを得ました。

 

1つ目は、ファウンダーマーケットフィットの重要性です。「なぜ自分がこの事業をやるべきなのか」との問いに対して、自分にしかできないこと、自分以外にはなかなかできない領域で挑戦するべきだと強く感じました。そして、その領域が私にとってはフィンテックでした。

 

2つ目は、国際送金の課題が依然として解決されていないことでした。新規事業では国内振込サービスを提供していましたが、クライアントからは「国際送金もどうにかならないか?」との相談を多くいただいていました。

 

この課題の根深さを実感し、「この分野なら、自分が解決しにいく意味がある」と思えたことが大きな後押しになりました。

 

3つ目は、社内でこの事業を立ち上げるハードルの高さです。国際送金は規制産業であり、既得権益が残る領域です。そのため、当時の親会社やその上位にあたる銀行を含む組織構造の中では、社内で立ち上げることの難しさがあり、スタートアップとして始めるべきだと判断しました。

 

また、前職で培った規制に対する知見や、関係各所とのつながりは、今の事業を進めるうえで大きな価値になっていると感じています。社会に出てからこれまでの経験があっての今だと常々感じていますし、これまで関わってくださった皆様には心から感謝しています。

届けたいのは、「+α」の価値

仕事におけるこだわりを教えてください。

仕事をするうえでの軸として大切にしていることは、ステークホルダーに寄り添える人でありたいとの思いです。そのためにも、プロフェッショナルであることを重視しています。

 

社内には4つのバリューがありますが、その1つに「+α Value」の指針があります。これは「相手が求めている以上の価値を発揮すること」を意味しています。私自身も、この考え方にこだわりを持っています。常に相手の立場にたち「何を求めているのか」を意識していますし、メンバーができていないと感じた時は、きちんとフィードバックするようにしています。

 

スタートアップの環境は特殊だからこそ、前提のすり合わせが全てだと考えています。
例えば、人それぞれ幸せの価値観は異なります。仕事にやりがいを見出す人もいれば、家族との時間を大切にする人、推し活を楽しむ人もいる。それはどれも素晴らしいことです。ただ、スタートアップで働くことは、仕事に対する強いコミットメントが求められます。

 

プロフェッショナルであることは、自分のキャリアを築いていきたい人にとって大切な姿勢だと思いますし、我々の組織もそうした意志を持つ人が集まる場所でありたいです。社会に価値を提供し、キャリアを通じて世の中を少しでも良くしたいとの意識を持つ人たちが集まれる土壌をつくっていくことが、私の大切にしていることです。

起業から今までの最大の壁を教えてください

起業してから今もなお、壁に向き合い続けていますが、それが事業をつくることだと思っています。

 

たとえば現在展開している振込サービスも、β版のリリースまでに約1年半かかりました。法的な整備や、顧客のセグメンテーション整備、課題の構造化など、フィンテックならではの難しさが相まって、一つひとつクリアしていくことに非常に時間がかかりました。

我々は2024年の11月にプレシリーズAラウンドのセカンドクローズをしましたが、小さいチームではファイナンスに多くの時間を割かれたため、事業の進捗が思うように進まなかったことも反省点の1つです。

 

今後の課題として感じていることは、組織づくりの部分です。スタートアップで今のフェーズの会社で働いた経験がある方は限られているため、この環境を求職者の方や社内メンバーにもしっかり伝えていく必要があると思っています。

 

プロフェッショナルとして+αの価値を出していく姿勢を、我々がもう少し明確にメッセージングしていく必要があると考えています。

挑戦の先に描く「世界をつなぐ銀行」

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

シンプルに言うと、「楽しいから」だと思います。事業をつくることそれ自体も私にとっては楽しいですし、そこで誰かに価値を提供できている実感があると更に嬉しく思います。「楽しい」という感情が自分の中で1番のモチベーションになっていると感じています。

 

私が選んだこの領域は、何十年にもわたって課題が残されてきた分野であり、かつ大きなマーケットでもあります。その領域に対して、我々が挑戦できること自体にやりがいを感じています。

 

そして、ここで何かを成し遂げられたときに得られる価値の大きさを考えると、起業家としてのモチベーションにもつながります。

 

実際に「やっていてよかったな」と感じる瞬間もあります。お客様に我々のサービスを使っていただき、感謝の言葉をいただいたり、その後に食事をご一緒する関係が生まれることもあります。

 

また、海外パートナー企業とともに、案件を一つひとつ進めていく過程も、楽しさを感じられる時間です。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

短期・中期的には、現在提供している振込サービスの「受け取り側」の立ち上げを進めています。並行して「送り手側」の法的整備にも取り組んでおり、日本の企業が輸出入セットで行うケースもサポートできるよう準備を進めています。

 

最終的に目指すところは、国際送金の領域に特化しながら、「世界をつなぐ銀行」としての立場になることです。

 

今は我々がフロントに立ち、システムを通じて海外送金や決済をサポートしています。現在の国際送金は、主にSWIFTと呼ばれる銀行間ネットワークで行われていますが、将来的には、両替や海外残高相殺だけでなく、ステーブルコインといった仕組みに置き換えていく可能性も視野に入れています。

 

そこまで実現できれば、国際送金のインフラそのものになれる可能性があると思います。また送金や決済に特化した銀行的な存在になれたら面白いと思います。

 

これは時間がかかる挑戦ですが、日本においてこの分野に本気で取り組めるプレイヤーはほとんどいないと感じています。もし実現できれば、外貨を稼ぐ手段として日本の国際競争力を高め、企業や経済をインフラ的な立場から支えることができるので、非常に価値のある取り組みだと考えています。

価値を出し続ける。その覚悟が、自分自身を動かす

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私は1度目の起業を、新卒2年目の早い段階で経験しました。当時は辛い経験もしましたが、その時の挫折が今のキャリアや力の土台になっていると実感しています。

 

起業は決して楽ではありません。だからこそ、本当に「この領域で価値を出し続けたい」という覚悟があるなら、できるだけ早く始めた方がいいと思います。

 

最終的に決めるのは自分自身です。もし、覚悟とこだわりをもって起業したいと考えている方がいるなら、今すぐ挑戦してみてください。私自身もまだこれからなので、「一緒にがんばりましょう」とお伝えしたいです。

採用を強化されていると聞きました。どんなかたを求めていますか?

これまでお話しした価値観を共有できることを前提に、現在はビジネスサイドを中心に採用を進めています。ポジションとしては、最終的にCOOの役割を担えるマネジメント人材を早期に迎えたいと考えています。社内には日々成長しているメンバーも多く在籍しているため、そうしたメンバーと切磋琢磨しながら、引っ張っていただける方を求めています。

 

足元では、営業戦略を含めた上流部分の策定をはじめ、インサイドセールスやフィールドセールス、オンボーディングを含むカスタマーサクセスなど、全体を幅広く見ていただきたいです。実際に手を動かしながら取り組んでいただける方を募集しています。
また、インターン生の採用も歓迎しています。

 

◾️採用情報
株式会社RemitAidでは、一緒に事業に取り組んでくれる方を積極的に募集しています。

詳しくは下記の採用情報をご覧ください。

https://youtrust.jp/companies/remitaid

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:小川裕大

新卒で株式会社ネットプロテクションズに入社し、アライアンス営業に従事。同社を退職後、起業。サービスのリリース・グロース・資金調達の経験を経て、株式会社ディー・エヌ・エーに転職。新規事業の事業責任者として業務を行う。その後、株式会社ペイジェントにて新規事業の責任者として戦略の策定・事業企画・セールスを担い、大手からスタートアップ、国家プロジェクトで活用されるプロダクトにまで成長させる。2022年8月に株式会社RemitAidを創業し、現在に至る。

 

企業情報

法人名

株式会社RemitAid

HP

https://remitaid.co.jp/

設立

2022年8月8日

事業内容

RemitAidの開発・運営

 

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