株式会社meeting technology 代表取締役 長尾俊介ヘンリー

全国のスタートアップなどに向けて、独自のマッチングプラットフォームを提供している株式会社meeting technology。専門知識不要で、直感的に操作できる気軽さから導入企業を増やしています。同社代表取締役の長尾俊介ヘンリーに、現在の事業や今後の展望について伺いました。

 

多様なマッチングを支えるプラットフォーム

事業の内容をお聞かせください

当社の主な事業は、「マッチングプラットフォームの提供」です。マッチングサービスと聞くと、恋愛系のサービスを想像される方も多いかと思いますが、当社が提供しているのは、ビジネスや採用の分野の中で人と企業をマッチングするビズリーチのようなものから、人とモノをマッチングするメルカリのようなサービスまで、多岐にわたります。

 

このサービスを起業して間もないベンチャー企業でも導入しやすいよう、月額10万円のサブスクリプション形式で提供しています。現在は40社ほどに導入いただいています。

 

競合他社と比較した際の当社の強みは、大きく分けて3つあります。

 

1つめは、開発スピードの速さ。一般的に、マッチングサービスなどのWebアプリケーションをゼロから開発する場合、通常は半年〜1年ほどの期間が必要です。しかし当社では、あらかじめ開発のテンプレートを準備しておくことで、最短3週間でサービスの立ち上げが可能です。スピード感を重視するスタートアップや新規事業に最適です。

 

2つめは、 直感的な操作性です。多くのノーコードツールでは「コード不要」とされていても、実際には一定の開発知識が求められ、使いこなすには約3カ月程度の習得期間が必要とされます。また、構築作業も利用者自身で行う必要があります。当社のツールは、専門的な知識がなくても直感的に操作可能で、開発工程に悩むことなく、誰でも短期間でプロダクトを形にすることができます。

 

3つめは、柔軟な設計に対応できる拡張性とカスタマイズ性です。 一般的なノーコードプラットフォームと比較して、データベースの拡張性に優れ、より柔軟なサービス設計が可能になりました。パッケージ型サービスでは対応しきれない、細やかな仕様変更や設計ニーズにも柔軟に対応できます。

 

このほか、プラットフォームに紐づくところで、ソーシャルログインの導入も手がけています。ECサイトなどで会員登録する際、メールアドレスとパスワードを入力するのが一般的ですが、サービスごとにパスワードのルールが異なり、再設定の手間もあります。

 

そうした面倒さを解消するために、LINEやX(旧Twitter)、FacebookなどのSNSから簡単にログインできる仕組みを整えました。ログインの利便性が向上し、公式LINEとの連携もスムーズに行えると評価していただいています。

 

ー6月末に新しいサービスをリリース予定と伺いました。

新たに始めようとしているのは、自社プラットフォームを活用した「人材の企業間出向」を支援するサービスです。

 

ある程度の規模を持つ企業では、多様な価値観や志向を持つ社員が在籍しており、必ずしも現在の職場環境や企業文化と最適にフィットしないケースも見受けられます。

 

そうした社員を出向の形で他社に送り出すことで、出向元の企業は人件費の削減に、出向先の企業にとっても、人手がほしいタイミングで即戦力を得る手段となるのです。

 

該当社員にとっても自分の特性やスキルがより生かせる企業で新たな可能性を見出すことができます。「他の会社も見てみたい」と思っている若手社員にとっては、会社を辞めずに他社で経験を積むチャンスにもなり、給与を得ながらのリスキリングとしても機能し、離職防止につながると考えています。

 

出向と聞くとあまり良い印象を受けない方もいると思いますが、このサービスの根幹にあるのは、社員の能力やキャリアに合わせて、最適な場を提供できることです。

 

出向の形を取ることで、社員はあくまで出向元企業に在籍したままで、人材を「切る」のではなく、「生かす」方向で、企業にも社員にも前向きな選択肢を提供することを目的としています。

 

今後は、中小企業やベンチャー企業でもこのスキームを活用できるようにしていきたいと考えています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は大学時代から、業務委託という形でさまざまな企業の支援に関わってきました。最初に取り組んだのは採用代行(RPO)で、そこから人材コンサルティングや人事制度の設計、新規事業の立ち上げ支援など、実務を通じて幅広い経験を積んできました。

 

その中で、ある企業の社長室業務を担当する機会があり、上場に向けた準備を経営陣と共に進めました。その企業が上場を果たしたことを一つの節目とし、2021年に現在の会社を立ち上げました。

 

もともと「起業家になりたい」と強く思っていたわけではありません。大学時代、家庭教師のアルバイトで月に30万円ほど稼いでいましたが、時間を切り売りする働き方に限界を感じていました。「このままでは収入が倍になっていく未来は見えない」と思ったのです。

 

そんな中で注目したのが、当時新しい採用手法として登場した「ダイレクトリクルーティング」でした。現場では多くの企業がその運用に苦労していたため、私はそのオペレーション代行からビジネスをスタートさせました。

 

できる方法はないか、問い直す

仕事におけるこだわりを教えてください。

特別な理念を掲げてはいませんが、強いて言えば「報・連・相(ほうれんそう)」をしっかりやろう、と社員によく話しています。

 

このほか、「できない」の一言で終わらせないことを徹底しています。たとえば、「30分ほど調べましたが、無理でした」といった報告だけではやり直しさせられるでしょう。できないと判断する前に、他にやれる方法はないかを最後まで考える姿勢を重視しているからです。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

起業して最初に手がけたのは、恋愛系のマッチングサービス事業でした。企業の福利厚生としてマッチングアプリを提供するという、ややニッチなモデルに挑戦しました。

 

この仕組みにより、企業名とユーザー情報が紐づくことで、利用者が正確なプロフィール情報を登録しやすくなり、従来のマッチングアプリと比べて高い信頼性と安全性を目指したサービスでした。

 

導入企業の数は順調に伸びたものの、一般ユーザーの獲得においては想定していた成長スピードに届かず、事業としての持続可能性を見直すこととなりました。結果として方向転換を決断しましたが、この経験からは多くの学びがありました。

 

特に、コスト構造や収益モデルの重要性を改めて痛感し、その反省を活かして、より手数料の抑えられる新たなプラットフォームの立ち上げを検討するようになりました。

 

すでに保有していた技術や基盤を活かし、より柔軟かつ効率的な形での事業展開を模索するきっかけとなった貴重な経験だったと思っています。

 

ユーザーの声に耳を傾ける

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

ゼロから事業のアイデアを企画・設計し、仕組みとして成立させていくプロセス自体に、非常に大きな楽しさとやりがいを感じています。もちろん、当社のプラットフォームをご利用いただいたお客様からポジティブなフィードバックをいただけることは大変ありがたく、励みになります。

 

しかし私たちのスタンスとしては、あくまで「お客様のやりたいことを実現するための手段を提供する」という立場を取っており、その価値をいかに高めていくかが重要だと考えています。

 

こうした取り組みを積み重ねていく中で、自社の規模や影響力をさらに拡大していきたいという思いも自然と強まっています。

 

現在は業務委託を含めて8名程度のチーム体制ですが、私の周囲にはすでに上場を果たした起業家仲間も多く、より高いステージに挑戦することを視野に入れています。

 

また、現実的なモチベーションとして、収益面での向上も大きな原動力の一つです。学生時代、アルバイトで一定の収入を得ながら、次にどうすればさらに上のフェーズに進めるかを常に考えてきました。その積み重ねが、今の事業への姿勢や成長志向に繋がっていると感じています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

将来的な目標としては、上場を視野に入れて事業を展開しています。その実現に向けて、今後は複数の新規事業を順次立ち上げていく計画です。現在、検討中の事業アイデアは約10件ほどあり、各案について市場性や収益性、社会的意義などの観点から優先順位をつけながら準備を進めています。

 

アイデア発想のきっかけは日常の中に多く潜んでいますが、特にサウナに入っている時間が創造性を刺激する貴重な機会になっています。スマートフォンなどのデバイスに触れられない環境で、思考に集中することで、より本質的な視点で事業を構想することができています。

 

新規事業の立ち上げにおいては、リスクを恐れすぎないことを大切にしています。もちろん、成功確度を高めるためのリサーチや検証は徹底しますが、最終的には「やってみなければ見えない」部分があるのも事実です。これまでの経験の中でも、結果としてうまくいかなかった事業もあれば、手応えを感じられた取り組みもあります。

 

そうした中で、特に重要だと実感しているのが「ユーザーの声に真摯に耳を傾けること」です。市場のニーズがあるように見えても、実際にユーザーが望んでいなければ、事業としての継続性はありません。

 

過去には、企業側の論理だけで進めてしまい、結果として顧客の共感を得られなかった経験もあります。その反省を踏まえ、今後はよりユーザー起点の視点を持ち、実際の行動やフィードバックを重視したプロダクト開発を行っていく方針です。

 

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

学生であっても、起業にチャレンジすることには大きな価値があると考えています。ただし、思いつきや一時的な流行に乗じた形での起業は、リスクが高く慎重に判断すべきです。

 

たとえば、「初期投資がかからないから」という理由だけで代行型ビジネスを始めることには賛同しかねます。重要なのは、自分自身の中に確かなアイデアや仮説があり、そこに勝機を見出せるかどうかです。そうした納得感を持てる事業にこそ、本気で取り組むべきだと思います。

 

また、起業を検討するのであれば、早い段階で資本政策について学んでおくことを強く推奨します。私自身、この分野の基礎知識をもっと早く身につけていればと感じる場面が少なくありませんでした。

 

スタートアップ経営に関する理解を深めるためには、『起業の科学 スタートアップサイエンス』(日経BP、田所雅之 著)などの書籍が非常に有用です。起業して成功するには沢山の失敗があるとは思いますが、挫けずに頑張ってください。応援しています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:長尾俊介ヘンリー

慶應義塾大学卒業後、20社以上の人事コンサルティングやRPO(採用代行)事業を提供。株式会社ROBOT PAYMENT[4374]にて、社長室の一員として人事やIR、新規事業開発に従事し、同社の上場プロセスに携わる。この経験を通じて、企業経営や資本市場に関する深い知見を培った後、2021年に株式会社meeting technology

を創業。また、上場企業や大規模な資金調達を成功させたベンチャー企業の代表など約200名が参加する「ベンチャー三田会」の幹事として、スタートアップエコシステムの活性化にも尽力。

 

企業情報

法人名

株式会社meeting technology

HP

https://meetingtechnology.co.jp/

設立

2021年05月

事業内容

  • マッチングアプリプラットフォーム提供
  • システム構築
  • コンサルティング 営業支援
  • ソーシャルログイン提供

 

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