
株式会社オーガイ 代表取締役社長 山田 魁
株式会社オーガイは、AI開発とコンサルティングを通じて「人類と人工知能の共存」を目指す企業です。代表取締役社長の山田魁氏はフリーランスのエンジニアとしての経験があり、経営とAI両方の知見を兼ね備えています。今回は同氏に、事業内容や今後の展望について詳しくお聞きしました。
月額5万円からスタートできるAI導入サポート
事業の内容をお聞かせください
AIの開発とコンサルティング事業を行なっています。Webサイトの制作、Web開発、AIのコンサルティング、AI開発、SESなどの幅広い業務を手がけています。弊社の目玉サービスが「AI顧問」で、AIの使い方や業務への活かし方を伝えるサービスを提供しています。
AI顧問の競合他社がいくつか存在する中で、当社の差別化のポイントは3つあります。
1つ目は、代表の私自身が直接導入に関わることです。
2つ目は実績です。すでに2社の公開実績があり、上場企業へのAIコンサルティング実績もあります。それに加え、Udemyでベストセラーかつ最高評価のAI動画を提供し、グロービス学び放題にも動画を掲載していただいています。
3つ目は価格です。最安で月額5万円から始められます。他社が10万円や30万円などの高価格な設定が多い中で、非常に強みになっていると言えるでしょう。
また、AI顧問は受託開発やシステム開発の案件獲得に繋がります。なぜなら、AIのことを学んだ企業の多くは、「外部に任せたい」というニーズが生まれるからです。
受託開発は案件獲得が難しく、案件が不足している会社が多いです。さらにAIの台頭で、企業がシステム開発を外部に発注する動きが減少しているのです。エンジニアの稼働時間もAIによって大幅に短縮され、これまで10時間かかっていた作業が3時間で済むようになると、7時間分の収入がなくなってしまいます。
システム開発の発注案件自体が今後減少していくと予想されるので、お客様により近いポジションにいる会社でなければ生き残れません。AI顧問はそのための重要な戦略のひとつです。
AI顧問は実際にどのように活用されていますか?
最近好評なのは提案書のスライド自動生成AIと、テレアポの自動化、電話の自動化です。
ただし、既存のツールには課題があります。例えばGensparkやGammaなどの提案書スライド生成ツールは、そのサービス独自のテンプレートで作成されるため、各社の社内フォーマットに合いません。
特にマーケティングや受託開発のような単価が高い大型案件では、高品質な提案資料がなければ受注できません。そのため「社内フォーマットに準拠したスライドを、AIで生成したい」などの要望をよくいただきます。
もう1つ重要な点は、慣れ親しんだツールで編集できる点です。ほとんどのスライドAIツールは、プラットフォーム内でしか編集ができません。普段使わないツールは操作が難しく、実用的ではないのです。
AIでの生成は専用ツールでも構いませんが、その後の編集作業は日常的に使用しているツールで行いたいというのが現場のニーズです。そこで、「御社専用にカスタマイズしたシステムを提供します」といった提案をすることもあります。
どのようなAI開発をされているのでしょうか
今後、弁護士、会計士、司法書士向けのサービスを展開する予定で、現在は弁護士向けのAIツールを開発中です。
士業に特化する理由は2つあります。1つ目は、知り合いの弁護士と連携していることです。その方が納得するツールを作れば、そこから業界に広がっていくと考えています。
2つ目は戦略的な理由です。AI受託開発を行う若い起業家たちは、その後は営業系か人材系のシステムを開発します。しかし、生成AIの発達により、営業や採用といった汎用的なシステムやSaaSは、Googleなどの大手企業が手がける領域になってきました。生き残るためには、専門性が高く日本固有のニーズがある分野が重要で、リーガルテックは非常に有望だと考えています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
元々は、宇宙スタートアップの創業メンバーとして人事責任者をやっていました。IPOを目指していた会社だったのですが、退職することになりました。
その後、フリーランスのエンジニアとして活動を始めました。案件を獲得し、時間単価で働くスタイルで働いていました。受託開発案件にも携わるようになったのですが、法人ではないため制約が多く、法人化することを決めました。
起業したいとの思いはもともとあったのですが、結果的に法人化した方がビジネスを進めやすいのではないかと考えていました。
エンジニアとお客様の希望を叶えた上で、利益を出す
仕事におけるこだわりを教えてください。
完全にできているとは言いませんが、三方よしは大事にしています。
まず、第1に当社のエンジニアが、やりたい言語、フレームワーク、開発環境で仕事ができ、やりたいと思える金額で働けるようにします。さらに、お客様が求める人材像や実現したいシステムの姿を明確にしたうえで、当社としてはその双方のニーズを的確に捉え、期待に応えながらも、しっかりと利益を創出するビジネスモデルを構築していくようにしています。
また、三方よしの実現のために、3つの工夫をしています。
1つ目が契約書です。エンジニアとお客様が折り合いがつく契約書を、1期目から弁護士をつけて当社で用意しています。
2つ目は財務の強化です。三方よしを実現するには、自社のキャッシュがないと倒産します。毎日私が仕分けをして、資金の増減や月次推移などを細かくチェックしています。
3つ目は売上です。これは私の担当領域であり、日々全力で取り組んでいます。私は経営者の方と1対1でじっくり話すことを得意としているため、少人数制のランチ会や交流の場を設けることで関係を深め、継続的にナーチャリングを行いながら契約につなげています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
去年の8月に、受託開発で大きなトラブルが発生したことです。
当時は受託開発しかやっておらず、会社の事業の1/2に問題が生じました。そのため、会社自体が危機的状況に陥りました。当時、私がまず頼ったのは友人の弁護士でした。おかげで案件自体は無事に解決できたものの、キャッシュフローの課題は依然として残ったままでした。
そこで、財務アドバイザーに融資の支援を依頼しました。弁護士による的確な対応と、融資獲得という2つの奇跡が重なったことで、会社は危機を乗り越えることができたのです。
このような問題は受託開発やシステム開発の会社なら、創業初期に1回は経験するものです。とはいえ、自責にしないと前に進まないので、しっかりと教訓にしています。
AI導入を促進し日本企業の価値を高める
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「人類と人工知能の共存」という当社のミッションを実現することです。
日本の大企業がAIをもっと使いこなせるようになれば、生産性も利益も大幅に向上するはずです。その結果、時価総額も上がり、世界における日本の価値もより高まっていくでしょう。しかし、日本はAI分野において世界から大きく後れを取っているのが現状です。だからこそ、当社がAI導入の橋渡し役となり、企業のデジタル変革を後押しできればと考えています。
もう1つのモチベーションは、東大発のAI受託開発会社との関係性です。
現在、このような企業は約100社存在しており、そのうち2〜3社は確実にIPOを果たすと見込んでいます。当社はSES事業も展開しているため、これらの企業はすべて将来的な見込み顧客となり得ます。すでにいくつかの企業とは取引が始まっており、今後も関わりを深めることで、互いに成長していけると考えています。彼らが上場すれば、「創業初期から取引していた」という実績が当社にとって大きな強みになります。
東大発のAI企業が次々と上場していく中、そのプロジェクトに当社の優秀なエンジニアが参画し、技術面から支えているという構図ができつつあります。彼らの成長を陰で支える影の立役者として関われることに、大きなやりがいを感じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
自社プロダクトを開発・ローンチし、成長させることです。受託開発の世界では、エンドユーザーであるお客様に近いポジションにいなければ生き残れない時代がすぐそこまで来ています。そこで、弁護士向けのAIサービスの開発を着実に進めて販売していく予定です。
具体的な数値目標としては、2期目は売上2億円、利益4,000万円を目指しています。今の推移だと年間売上1億円程度で終わってしまいそうですが、1期目が3,000万円だったことを考えると300%成長となり、決して悪くない数字です。
とはいえ、まだまだ伸びしろがあると感じています。既存のシステム開発事業を着実に成長させる一方で、AIの急速な進化に取り残されないよう、自社プロダクトの開発にも力を入れていく必要があると考えています。
弁護士向けのAIサービスのリリース時期については、今年の6月〜7月を目標にしています。現在開発中で、周りの弁護士の方々に使ってもらおうと考えています。まずは、身近な人たちに満足してもらえるシステムを作ることから始めるのが、重要だと思っています。
貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします
AIを活用したいけれど、何から始めればいいかわからないという企業様には、まさにぴったりのサービスだと自負しています。ぜひご導入をご検討いただければと思います。
私自身が直接対応させていただくのですが、経営とAI、両方の知見を持っている点が、他社にはない強みのひとつだと考えています。この経験を活かして、課題解決に全力で取り組ませていただきますので、お気軽にご相談ください。
今までの実績×AIでの起業を
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
固定費の負担が少なく、高利益なビジネスモデルを選ぶことが重要です。
タイミングについて言えば、やりたいと思ったら今すぐ行動すべきです。特に家族がいない人は、リスクを取りやすい今がチャンスです。学生の方は、サークル活動の延長のような感覚で始めてみるのもいいでしょう。
時代の変化は驚くほど速いですが、これまで積み上げてきた経験やスキルは決して無駄ではありません。むしろ、その積み上げを活かせる事業から始めることをお勧めします。さらにAIを組み合わせることで、生き残る事業を作れるでしょう。
また、日本は起業しやすい環境が整っている国です。恵まれた環境を最大限に活用して、ぜひ挑戦してみてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:山田 魁氏
大学時代に、ベンチャーキャピタル「SAMURAI INCUBATE」でインターンを経験。その後、宇宙スタートアップ「ElevationSpace」に3人目の創業メンバーとして参画し、創業当初3人だったチームを約1年半で30人規模まで拡大。
その後、大手IT企業でエンジニアとして勤務したのち独立し、AIチャットボットの開発などに携わる。現在は、約12名のチームを率いながら事業を展開している。
企業情報
法人名 |
株式会社オーガイ |
HP |
|
設立 |
2024年4月 |
事業内容 |
AIコンサルティング及び開発 |
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