株式会社アルバトロス 代表取締役 谷本慎二

株式会社アルバトロスは、退職代行サービス「退職代行モームリ」を運営しています。退職の意思伝達にとどまらず、転職支援や生活サポートまで幅広く対応し、月1,500件以上の依頼を受けるまでに成長しました。更に、企業向けサービス「MOMURI+(モームリプラス)」にも注力し、離職率の低下を目指すコンサルティングに取り組んでいます。今回は、代表取締役谷本慎二氏に、事業内容や今後の展望などをお伺いしました。

 

退職に伴う悩みを丸ごと解決。次につなげるワンストップ支援

事業の内容をお聞かせください

当社は、退職代行サービス「退職代行モームリ」を運営しています。依頼者の代わりに会社へ退職の意思を伝え、退職を確定させるのが基本の内容です。さらに転職支援や保険、引っ越し、クリーニングなど、退職に付随するサポートも幅広く整えています。

 

窓口を一本化できることで利用者にとっても安心感があり、ワンストップで必要なサポートを受けられることが強みです。

 

退職に伴う様々な課題を一緒に解決できる仕組みを整え、提携サービスが非常に充実しているのが特徴です。

 

また、私自身が顔を出してSNSで情報を発信していることも、透明性のある運営として評価いただいている部分です。他社の退職代行は小規模な体制が多い中、営業面でも安定して継続的に事業を展開できているのは当社ならではだと思っています。

 

実際に寄せられる退職理由の多くは、有給が取れない、サービス残業、休日の連絡など労務トラブルです。次いで人間関係の悩みが続きます。依頼件数は月平均1500件以上にのぼり、多くの方の退職をサポートしてきました。

 

これまで退職は暗いイメージで避けられてきましたが、メディア戦略により「退職代行」という言葉を前面に出すことで社会的に認知され、選択肢のひとつとして浸透しました。

 

その流れを踏まえ、キャッチーな名称「モームリ」を付け、身近に感じてもらえるようにしました。

 

自ら退職を伝えたい方に向けては、セルフ退職支援サービス「セルフ退職ムリサポ!」を用意しています。法律や交渉に不安を抱える方が、自分で退職を伝える際にサポートを受けられる仕組みです。

 

利用件数は退職代行の方が多いものの、円満退職を望む方などから一定のニーズがあります。

 

さらに、「検索代行モーシラン」という検索代行サービスもあります。膨大な情報の中から利用者に代わって調べ、最適な答えをまとめて提供するものです。情報が多すぎて探しきれない方にとって、的確な情報を届けられる価値は大きいと考えています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

前職で退職代行が使われた話を聞き、その時初めてこのサービスを知ったことがきっかけでした。

 

私自身労働や退職の問題が確かに存在していると実感していました。だからこそ、この分野に挑戦したいと思い、事業化することに決めました。

 

モームリは私ひとりで立ち上げ、最初はSNSで退職を考えている人に声をかけ、アプローチをしていました。

 

起業自体は大きな大義名分があったわけではありませんが、自分がやりたいことを実現するには、自分が社長になるしかないと考えたことも起業に至った理由の一つです。

 

消去法に近い形でしたが、起業を選んだのは自然な流れだったと思います。

 

 

4万件の退職理由から導く、企業支援のかたち

仕事におけるこだわりを教えてください。

退職代行だけにとどまらず、その先の働き方改善につなげていくことにこだわっています。

 

退職代行を手がける中で、いまだに厳しい労務環境の会社が存在することに驚くと同時に、労働者や企業の努力だけでは解決できない課題があると実感しました。

 

だからこそ、労働者側と企業側の双方に向けてアプローチしていきたいと考えています。

 

企業に向けては「MOMURI+(モームリプラス)」を立ち上げ、労働者には退職情報の開示を、企業にはコンサルティングや講演会を提供しています。特に講演会は注目度が高く、今年だけですでに50件以上の依頼をいただきました。

 

当社には4万件以上の退職データが蓄積されており、その実例をもとに、離職防止につながる具体的な改善策をお伝えできるのが強みです。退職理由が分かれば、その逆を実践することで離職率を下げられるので、そのポイントを現場に届けています。

 

依頼先も幅広く、商工会議所や看護・介護現場、コールセンター、さらに大学などからもご依頼をいただき、学生に向けて「ブラック企業を見極める方法」や「知っておくべき労働法」を伝えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

正直なところ、これまで大きな壁を感じたことはあまりありません。依頼件数も認知度も右肩上がりで成長してきました。

 

あえて挙げるとすれば、急成長による人員増です。社員数が大幅に拡大したため、新しいメンバーの育成やケアに苦労しました。当社では月14日休める場合もあるなど福利厚生を充実させ、働きやすい環境を重視しています。

 

また、退職代行に欠かせない電話対応では、ストレスを軽減できる工夫を取り入れています。定期的な面談を行うのはもちろん、職場全体が風通し良くお互いにケアし合える雰囲気です。

 

YouTubeやメディアで現場を公開しているため、覚悟を持って応募してくれる人が多く、負担を感じている人は少ないのが特徴です。

 

求人広告を出していないにもかかわらず、「人を助けたい」という思いを持った人材が自然と集まってきてくれているのも、大きな支えになっています。

 

 

退職代行から働き方改善に挑む

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

退職に苦労されている方を助けることは、私にとって一番のモチベーションです。これまで多くの依頼に向き合ってきましたが、近年はMOMURI+を通じて企業側にもアプローチできる体制を整えました。

 

また、講演会などを通して、勉強になったと言っていただけることは、大きな励みになっています。

 

DXPOの展示会で講演した際には、たくさんの方々が聴講に来てくださり、多くの方と名刺交換をさせていただきました。その場で交わした会話からも、企業が本当に離職問題に悩んでいることを実感しましたし、実際に取り入れてみますと言っていただけたことは、モチベーションになりました。

 

また、利用者の方々からいただく声も原動力になっています。当社のサービスに救われたことを涙ながらに言われたり、直筆の手紙で感謝を伝えてくださる方もいました。

 

そうした出来事の一つひとつが、人の役に立っていると実感できる瞬間です。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

MOMURI+を今後はさらに広げていきたいと考えています。退職代行は必要なサービスですが、本来あるべき姿ではないとも思っています。

 

退職代行が必要とされなくなる未来をつくるために、企業へのアプローチこそが重要で、その役割を果たすのがMOMURI+だと思っています。

 

企業がサービスを利用する一番の理由は、離職率低下のためです。実際に中間管理職や部長職の方から、自分だけでは変えられないと相談されることも多くあります。

 

上層部の指示や古い社風に阻まれる現状があるからこそ、第三者として私たちが関わることに価値があると感じています。講演会でも経営層の方が多く参加され、年配層に向けて課題を伝えられることが広がりにつながると実感しています。

 

離職問題を解決するためには、特に若年層への理解が欠かせません。役員が70〜80代という大企業も珍しくありませんが、20代の価値観や働き方を理解することが一番大切ではないかと考えています。

 

若い世代に合わせた施策を講じること、そして労務関連の法令を順守することが何より大切だと思っています。勤怠管理やサービス残業、有給取得など、問題ないと思い込みがちな部分を、実際に徹底できているかを見直すだけでも状況は大きく変わるはずです。

 

 

消去法から始まる起業。大切なのは工夫

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業は正直な話、簡単ではありません。

 

前職では10年以上にわたり、休みを惜しんで人一倍の時間を仕事に注いできました。その積み重ねは、今の自分にとって大きな糧となっています。

 

転職という道も考えましたが、ゼロから環境を変えるよりも、これまでの経験を活かしながら前へ進める起業の方が、自分にとって自然な選択だと感じました。

 

起業するには、必ずしも大義名分や強い情熱がなければできないわけではありません。私の場合は、消去法で起業するしかないと考えたことが始まりだったので、その方法もあります。

 

社長というと「強い熱量を持った人」というイメージがあるかもしれません。しかし、必ずしもそうである必要はなく、工夫を重ねていけば道は必ず開けると考えています。

 

サービスを検討している企業へメッセージをお願いします

私は、企業には大きく2つのスタイルがあると考えています。ひとつは、上を目指すために優秀な人材を少数精鋭で集めるやり方です。この場合は、離職率が高くても戦略として成り立つため、それも一つの形だと思います。

 

一方で、人材が不足しているのに次々と辞めてしまい、その理由が見えずに悩む企業も少なくありません。こうしたケースでは、離職率の低下が経営課題として極めて重要になります。

 

当社にはこれまでに4万件以上の退職データが蓄積されており、私は日本でも有数の退職事例を見てきた一人だと自負しています。そのデータと経験をもとに、退職理由の傾向を明らかにし、改善のヒントをお伝えすることで、離職率の低下を支援してきました。

 

データをご覧いただくだけで必ず気づきや学びを得られるはずです。

 

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:谷本慎二

神戸学院大学卒。大学卒業後、東証一部上場企業に入社し接客サービス業に従事。2022年に株式会社アルバトロスを創業。

 

企業情報

法人名

株式会社アルバトロス

HP

https://www.alba-tross.jp/

設立

2022年2月1日

事業内容

  • 転職支援事業
  • 退職支援事業(退職代行サービス)
  • 転職支援事業(転職支援サービス)
  • コンサルティング事業
  • 保険代理店事業
  • ネット事業(情報収集サービス・ブログ運営)
  • コインランドリー運営
送る 送る

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