【#522】「話すことが苦手」を根本解決。AI診断×専属トレーナーが実現する話し方トレーニング『kaeka』|代表取締役 千葉 佳織(株式会社カエカ)

株式会社カエカ 代表取締役 千葉 佳織
株式会社カエカは、「話す力」を磨き確実に「伝える力」を向上させる、話し方トレーニングサービス『kaeka(カエカ)』を提供する企業です。AI診断とトレーナーによる指導を組み合わせ、話し方スキルを体系的に改善。経営者から学生まで、人前で話すことに自信を持てない方や、キャリア向上のためコミュニケーション能力強化を求める方を支援しています。代表取締役の千葉 佳織氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
人生やキャリアを変革する「話し方トレーニング」
事業の内容をお聞かせください
AI診断とトレーナーの指導を組み合わせた、話し方トレーニングサービス「kaeka」を提供しています。
これまで経営者や政治家をはじめ、人事職、営業職、エンジニア、学生、学校の先生など、様々な職種の社会人の方々、合計7,000名以上にサービスを提供してきました。
サービスの流れとしては、まず自分の言語化力や抑揚にどのような強みや弱みがあるのかをAI診断で可視化します。具体的には、パソコンに音声を入力して分析することで強みと弱みを明確にします。約30分程度で、音声情報だけでなく言語情報もしっかりと抽出できる仕組みです。
その後、3〜6ヶ月間、専属のトレーナーが、一人ひとりに合わせた理想的な話し方を追求していきます。個人向けサービスでは完全パーソナルからグループトレーニング併用まで、企業向けサービスでは単発のものから1年間の長期プログラムまで、皆様のニーズに合わせて幅広く対応しています。
私たちが話し方トレーニングを届けているのは、話し方をより良くすることが、その人の人生やキャリアに大きく影響すると考えているからです。単に学ぶだけでなく、しっかりと変化し確実に成長していただくことで、最終的に人生のキャリアアップや事業成長など自分自身のやりたいことを実現してほしいと思っています。
そのためには、学習方法を体系立てて、その方の課題解決にふさわしい順番や強度でカスタマイズして提供することが重要です。話し方の要素を「言葉」、「音声・動作」に分けて細分化することで、その方の最適な課題解決ができるサービスを提供しています。
話すことに悩みを抱えている方には、さまざまな背景や状況があります。中でもよく見られる傾向として、いくつかのタイプが挙げられます。
一つは、話すことに自信が持てずに悩んでいるケースです。話をする際にうまくまとめられずに上司から叱られてしまった方や、以前からコンプレックスを抱えており、人前で話すことや会議で緊張してしまい、適切に情報を伝達できない方です。
他には、話せないことがキャリアの壁になっていると感じているケースもあります。
例えば、これまでプログラミングに従事していたエンジニアの方が、マネジメント職を任されるようになったことで、コミュニケーションの重要性を実感し始める場合。あるいは人事部門へ転職し、多様な人材とそれぞれに適したコミュニケーションを取らなければ評価されない立場になったことで、スキル向上の必要性を強く感じている方も少なくありません。
いずれの場合も、長年身に付いた話し方はそう簡単に変わるものではありません。そのため、3ヶ月〜6ヶ月程度の期間をかけて継続的に取り組むことが、学習効果を定着させる重要な要素だと考えています。
トレーニングではグループトレーニングとパーソナルトレーニングを組み合わせて実施しているとお聞きしました。組み合わせる形態にしている理由を教えてください。
kaekaのトレーニングではグループでのトレーニングと1対1のパーソナルトレーニングを組み合わせて実施しています。グループトレーニングでは、体系的な実践を中心に進め、受講生同士で感想を共有したり切磋琢磨しながら学ぶことができます。
一方、パーソナルトレーニングでは、一人ひとりの課題に合わせた内容で、より自分の成長に集中して取り組むことが可能です。
この両方を組み合わせることで、スキルを効率的に向上させることを目指しています。ただし、単に話し続けるだけでは上達しません。まず自分の課題を把握し、体系的なカリキュラムに沿って学ぶことが、確実な成長につながるポイントです。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は元々、話すことがとても苦手でした。
ですが、15歳の時に日本語のスピーチ競技に出会い、自分の話し方に向き合うことで、話すことを苦手から得意分野へと変えることができました。たまたま話し方の学習に出会い、自信を持って話せるようになったことで、人生が開けていきました。
一方で、社会に出てみると、「話し方を学んだことがない人が多い」という現状を目の当たりにしました。自分自身の原体験から、話し方を学ぶための事業にニーズはあるのだと確信していたので、思い切って事業を立ち上げることにしました。
実際、現在の社会情勢を見ても、コミュニケーション力強化の重要性は高まっています。働き方の多様化やリモートワークの普及、さらには多文化・多世代が共に働く環境の広がりによって、価値観や前提を共有することがこれまで以上に難しくなっているからです。
そのような状況では、学校や職場において適切にコミュニケーションを取れなければ、誤解やすれ違いが生じ、同じ目標に向かって協力して進むことが困難になります。
また、SNSが普及した現代では、発言によってチャンスを掴む人もいれば、機会を失う人もいます。一つの発言が個人や組織のあり方、ブランディングにも大きく影響するため、コミュニケーションの重要性はより一層高まっています。
さらに、AIも大きな要因の一つです。AIが論理的で分かりやすい説明や様々な業務を代替してくれる時代になりましたが、コミュニケーションはAIに代替されません。
人間にしかできないことは、相手と分かり合いながら関係を築くことや、熱意を伝えるといったコミュニケーションの本質的な部分だと考えています。これらはAIには代替できない、人間だからこそ持つ価値です。
そのような理由から、話し方の学習は現代において非常に重要になっていると考え、事業を行っています。
どんなに苦手でも、努力すれば変化できる世界を作りたい
仕事におけるこだわりを教えてください。
これまで感覚的に語られてきたことや、漠然と存在していたものを体系化し、誰でも努力すれば習得できる仕組み作りに、強いこだわりを持っています。
話し方の学習は確立されたモデルがなく、体系化が非常に困難な分野です。話し方には変数が多く複雑に絡み合っているため、上達するためにどの要素に焦点を当てるべきかの判断が難しいのです。
それでも、お客様とコミュニケーションを重ねながら、多くの方に納得していただける手法や学習順序、成功体験へと落とし込む作業を諦めることなく続けています。どんなに強い苦手意識を持っている方でも、努力をすれば必ず変化できる世界を作ることに、こだわりを持って取り組んでいます。
起業から今までの最大の壁を教えてください
スタートアップとして事業を立ち上げる過程にありました。
私は元々一人でスモールビジネスを行う形態から、資金調達を行いベンチャーキャピタルの支援を受けるスタートアップの形態に転換しました。この転換期が最も困難の多い時期だったと感じています。
話し方教育があまりにも新しい分野のため、そもそも市場が存在するのかと懐疑的に見られることが多くあったのです。
逆境を乗り越えられた理由は、起業にあたり「人生をかけて取り組むなら何に賭けたいのか」という明確な思想を持っていたからです。私自身、話し方を磨くことで人との関わり方やチャンスの広がりが大きく変わり、人生が前向きに動き出したという経験があります。その成功体験があったからこそ、話し方の力を信じ、この分野に挑戦する覚悟を持てました。
だからこそ、一時的な批判や否定的な意見に左右されるわけにはいかないという強い思いで取り組んでいたのです。
また、話し方教育に携わっているからこそ、信念がブレにくい部分はあると思います。この学習は単に話し方のスキルを向上させるだけでなく、自分自身の内面に向き合い、自分がどのような人間で何を達成したいのかを深く掘り下げるレッスンを含んでいます。
私自身も実践しているため、「私はこの目的のために起業し努力するのだ」といった気持ちが確固たるものになっていると思います。言語化や感情の整理が、日頃からできることが大きな支えとなりました。
全世代が話し方教育を受けられる仕組みを構築する
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
社会に話し方教育という新たな文化を創り、人の幸せを生み出したいという思いが、私の大きなモチベーションになっています。
私自身、学習を通じて自信のない自分から、自信を持てる自分へと変化できた経験があり、その体験を一人でも多くの人に味わってもらいたいと強く願っています。
さらに、自分が乗り越えてきた困難や大変だった出来事も、将来誰かに伝えるときには大切な材料になると考えています。そうした経験も含め、すべてをポジティブに捉えながら前に進むことが、私の軸になっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
長期的な目標は、話し方教育を一般教養として定着させることです。さらに義務教育に組み入れて、誰もが学習できる仕組みを構築することを野望として掲げています。
そのための中期的な取り組みとして、全国に拠点を増やしていきたいです。現在、東京に2校、大阪に1校、そしてオンライン校の計4校を展開していますが、さらに拠点を増やすことで全国の方にご利用いただける環境を整えたいです。
また、人とテクノロジーの掛け合わせによって、最適な学習を実現することが非常に重要だと思っています。
そのため、現在プロダクト開発にも力を入れています。完全にプロダクトのみで学習が完結するシステムも視野に入れながら、プロダクトで学習できる範囲を拡大していきたいです。
批判こそ新しい視点を得るチャンス
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
新しいことを始める時は、必ず様々な意見を言われます。ですが批判こそ新しい視点を得るチャンスと思った方がいいです。
今の時代に求められるのは、この課題を解決したいといった心の底からの思いを形にして、事業を展開していくことだと思います。
だからこそ、心が踊る領域を見つけて起業してほしいです。起業する過程の中では時には、多くの批判を受けるかもしれませんが、成長の機会として前向きに受け止め、向き合ってみてください。
貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをいただけますか?
私たちは個人・法人の両方にサービスを提供しています。個人の方には主にキャリアアップやチームの目標達成を目的としたプログラムをご用意していますので、まずは無料の個別相談会にお越しください。
法人様向けには、マネージャークラスや経営層向け、営業職向け、人事向けなど、それぞれの職種に特化したコンテンツをご用意し、長期的な課題解決をサポートしています。
参加人数についても柔軟に対応可能です。単発講演では100名規模での実施もありますし、長期プログラムでは少人数でも対応可能です。ご要望に合わせた形態でご提案させていただきます。
私たちが大切にしているのは「話し方トレーニングは人と事業を強くするもの」という考えです。コミュニケーション力の向上にチャレンジしたい方や企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
▼法人様向けのお問い合わせはこちら
https://kaeka.jp/courses/corporation
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:千葉 佳織 氏
15歳から弁論を始め、全国弁論大会3度優勝、内閣総理大臣賞受賞。慶應義塾大学卒業後DeNAに入社。人事部所属時に同社初のスピーチライター業務を立ち上げ、登壇社員の育成、社長のスピーチ執筆など部署横断的に課題解決に取り組む。
2019年株式会社カエカを設立、話し方トレーニングサービス「kaeka」の運営を行い、経営者、政治家、社会人の話す力を数値化し、話し方を改善するサービスをこれまで5,000人以上に提供している。また、企業総会や国政選挙などでスピーチ原稿の執筆にも取り組む。2023年、東洋経済新報社「すごいベンチャー100」、Forbes JAPAN「次代を担う新星たち 2024年注目の日本発スタートアップ100選」に選出。著書に『話し方の戦略』。
企業情報
法人名 |
株式会社カエカ |
HP |
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設立 |
2019年12月 |
事業内容 |
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