【#526】「働く人をワクワクに」社内コミュニケーションツールで会社の文化を変える|取締役CEO 嶋田健作/COO 荏原靖氏(株式会社コミュニティオ)

株式会社コミュニティオ 取締役CEO 嶋田健作/COO 荏原靖氏
株式会社コミュニティオは、「働く人にもっといいコミュニケーションを」をミッションに掲げるスタートアップです。社員同士の感謝と称賛を可視化できるデジタルサンクスカードアプリ「チームステッカー」や、ありそうでなかったMicrosoft Teamsでの一斉配信を実現する「ニューコミュニケーター」を展開しています。同社代表取締役CEOの嶋田健作氏と、プロジェクト統括責任者(COO)の荏原靖氏に事業内容や仕事のこだわりについて伺いました。
働く人を元気にする
事業の内容をお聞かせください
荏原靖氏(以下荏原氏):私たちは「働く人を元気にする事業」を展開しています。
1つ目のサービスは「チームステッカー」です。社員同士のちょっとした「ありがとう」の気持ちを、サンクスカードやeギフト付きカードで送り合うTeams向けのSaaSアプリを提供しています。
導入のきっかけとして多いのは、「感謝されない」「やって当たり前」といった職場の空気に悩む声です。特にバックオフィスでは、完璧に業務をこなしても感謝が届かず、モチベーションが下がるケースが少なくありません。「もっとお互いに目を向け、感謝を言葉で伝え合いたい」との思いから導入する企業が増えています。
こうしたツールは導入しただけでは根付かないため、私たちは専任のカスタマーサクセスが社内運営チームに伴走するかたちで、Teams上で経営からのメッセージや利用者インタビューを全社に共有するなど、社内への浸透を支援します。
さらに、eギフトをつけてサンクスカードを送り合えるキャンペーンや季節ごとの限定ステッカーのデザインなどを活用し、飽きずに楽しめる工夫を凝らして、企業風土施策が盛り上がるように演出支援をしています。
結果として、同僚や上司との関係性が改善され、エンゲージメント調査でも「同僚からの支援」や「上司とのコミュニケーション」の項目のスコアが改善したといった実績に現れる顕著な例もあります。導入企業は主に大企業で、ご利用中のユーザー数は17万〜18万人にのぼります。
2つ目のサービスは、Teams上で重要なメッセージを全社員に一斉配信できる「ニューコミュニケーター」です。もともと「チームステッカー」の施策のなかでイベントを盛り上げるために効果を発揮するビジョンキャスト機能として開発しました。
この周知開封効果が目覚ましく、経営メッセージや会社のビジョンが社員に届かないといった大企業が抱える課題へのソリューションとして、独立したSaaSアプリとして誕生しました。
従来のメールでの一斉配信は他のメールに埋もれがちですが、Teamsはメンション通知付きで個人チャットに届くと必ず開く習慣があるため、社員に必ず届く点が強みです。大規模な組織ほどニーズが高い傾向があります。また、国を問わずユニバーサルなニーズを捕まえることができており、現在60カ国に向けて展開しています。
販売は、Microsoft Market Placeというプラットフォームを通じて行っており、受注第一号のインドを皮切りに、イギリスやアメリカ、さらには欧州発の多国籍企業のサブスクリプションが増えています。引き合いは全世界から寄せられ、アフリカ・中東・南米など、どこからでも舞い込んできます。
「チームステッカー」が横のつながりを温めるサービスなら、「ニューコミュニケーター」は縦のつながり。いわばトップの思いを組織に通す背骨の役割といえます。縦と横、両方のエンゲージメントを支えることで、働く人が元気になれる環境づくりを進めています。
プロジェクト統括責任者(COO)の荏原靖氏
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
嶋田健作氏(以下嶋田氏):私たちの事業の原点は、コミュニケーションを通して会社を信頼できるサービスを作りたい、との思いでした。
当初は技術先行でブロックチェーンを使った社内通貨を試作しましたが、特に何らかの課題解決につながるといった意図を持ち合わせていませんでした。そんな中、大手企業から、社内で感謝の気持ちをポイントで伝える仕組みに応用できるのではという反応をいただきました。
さらに「Microsoft Teams上で実現できないか?」という具体的な要望もありました。正直、当時はTeamsの仕組みについて詳しく理解していませんでしたが、「やります」と即答し、そこから本格的な開発が始まりました。
ポイント制度の導入については、感謝の気持ちが数値化されることで「値踏みされているように感じる」といった懸念もありました。そうしたフィードバックを受けて、より感情に寄り添った形を模索し、試行錯誤の末にたどり着いたのが、気軽にカード送り合える「チームステッカー」という仕組みでした。
2019年の会社設立後、コロナ禍でTeamsが普及すると導入企業が急増し、大手企業に採用されたことでマンスリーアクティブユーザー数は2022年にアジア1位、世界15位に達しました。
「チームステッカー」の導入企業数の伸びと、利用開始した企業での高いリテンション率に注目したMicrosoftとの親密さも一気に縮まりました。一斉通知機能には世界市場から幅広くニーズがあるとMicrosoftからの助言を受けたのが「ニューコミュニケーター」をアプリとして提供するきっかけとなりました。
敬意を持って受け入れる
仕事におけるこだわりを教えてください。
荏原氏:私のこだわりは「何でも自責で考える」ことです。他社間の対立があった場合でも「自分にできることはなかったか」と振り返ります。プロダクト開発でも無理な要望があれば、すぐ断るのではなく「実現できたらどんな価値が生まれるか」を自分ごととして考え抜きます。仕事も人間関係も常に「自分に何ができたか」を反芻し、改善することを大切にしています。
コミュニティオのバリューである”コミュニティオらしさ”として譲れないのは、「たすけあう」を軸にした「お互いへの敬意をもつ”リスペクト&インクルージョン”」と「部署の垣根をこえる “クロスボーダー”」の価値観です。
当社では、年齢や性別などの線を越える勇気を持ち、越えてきた人を敬意をもって受け入れることを重視しています。採用では履歴書よりもディスカッションを通じ、価値観に共感できる仲間かどうかを見極めています。
嶋田氏:私のこだわりは職場環境づくりです。問題が起きても誰かを責めるのではなく、チームで解決策を考えるポジティブな職場でありたい。そのために、常に柔軟に状況を見極め、どうすればより良くなるかをチームで考えることを心がけています。
代表取締役CEOの嶋田健作氏
起業から今までの最大の壁を教えてください
嶋田氏:最大の壁はやはり、売れないことでした。多くのスタートアップと同じように、サービスをリリースしてもすぐには売れず、売上が立たなければ資金繰りも厳しくなります。
会社として成立させる「0→1」のフェーズのつらさや資金面での苦労は大きな壁でした。今の顧客数を達成できたのは、間違いなく現在のメンバーがいてくれたからこそだと思います。
荏原氏:私にとっての壁は、嶋田かもしれません。彼は非常に高い才能がある人なので、その才能を最大限に引き出し、発揮できる環境をつくることが、私にとって常に挑戦し続けてきた課題です。そして、恐らくこれからも。彼のアイデアや直感をどう形にしていくか、どう組織に落とし込むか。そこには葛藤もありますが、同時に大きなやりがいも感じています。
新しい風土を作る
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
荏原氏:現在22人のメンバーがいますが、そのうち20人がメンバーのリファラル(紹介)で入社してくれました。先が見えないスタートアップに人生をかけてくれたからこそ、彼らやその家族に「この会社に来て本当に良かった」と思ってもらえる会社にしたいです。
メンバーがワクワクしながら働き、家族が「転職してよかったね」と笑ってくれる姿を見ることが、最大のモチベーションです。
嶋田氏:私のモチベーションは、新しい会社の文化を作ることにあります。会社がギスギスした雰囲気なら、誰もそこのサービスを導入したいとは思わないでしょう。社内にはカルチャーリーダーもおり、荏原をはじめ全員で良い文化づくりを大切にしています。今のコミュニティオには、人が人を呼ぶ求心力が働いていて、日々の業務が充実していることが次の素晴らしい仲間を集めてくれているように思います。
だから、日本企業の新たな文化醸成や風土作りへの挑戦をご支援するからには、私たちコミュニティオが先陣を切って世の中に良い影響を与えられて企業文化を作る、そんな実感が私のモチベーションです。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
荏原氏:コミュニティオのビジョンは「ワークとライフをワクワクに」です。職場内からもったいないすれ違いをなくし、働くすべての人が良いコミュニケーションを取り、チームワークで高める成果を楽しむことによって、笑顔が広がり、人生をより素敵にする。そんな未来を、人間らしいテクノロジーで実現していきます。
そのために、まずは私たち自身がこのビジョンを体現すること。その姿を起点に、日本から世界へと文化を広げることが目標です。
プロダクト面では、「チームステッカー」を小規模な企業でも使いやすくすること、「ニューコミュニケーター」を思いを届けるだけでなく、受け手のアクションにつなげられるツールへ進化させることを計画しています。さらに近接領域への展開も視野に入れ、今後3年間で企業価値を拡大していきます。
できないことを見極める
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
嶋田氏:今の時代、起業はとても楽しい挑戦だと思います。大企業で安定を目指すだけでなく、自分たちで新しい価値を生み出すことに大きなやりがいがあります。つらいこともありますが、良い仲間がいれば乗り越えられます。ぜひ、信頼できる仲間を見つけて思いっきり挑戦してください。
荏原氏:できることとできないことを冷静に見極めることが大切です。そして、自分一人でできないことは素直に認め、それを補ってくれる仲間を見つけることが成功への鍵です。喜怒哀楽を共にし、背中を預けられる仲間がいることが、私たちの強みです。人を頼り、尊敬し、信頼できる仲間と共に歩んでほしいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:嶋田健作氏
1976年北海道生まれ。2000年オン・ザ・エッヂ入社。ライブドアにてネットワーク事業部事業責任者、現LINEの子会社・NHNテコラスの代表取締役社長などを経て、2016年にゲーム開発会社オルトプラスのCTOに就任。2019年にコミュニティオを設立。
起業家データ:荏原靖氏
1979年神奈川県生まれ。三菱地所グループの社内ベンチャー第一号四季リゾーツにて総支配人・社長秘書を経て、子会社四季倶楽部リンクスの代表取締役に就任。2007年にニュージーランドへ移住。アイスクリームの売り子から総料理長までを経験し、永住権を取得。2018年に帰国し、嶋田に出会う。2019年にコミュニティオ立ち上げに関わる。2023年COOに就任。
企業情報
法人名 |
株式会社コミュニティオ |
HP |
|
設立 |
2019年3月19日 |
事業内容 |
社内コミュニケーションツール「TeamSticker」「NewCommunicator」の開発・運営 |
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