【#571】完全無人の会員制ゴルフスタジオ。圧倒的スピード感で市場を開拓｜代表取締役　高須賀優人（株式会社SMART GOLF）

2025.12.19 98 views

起業家インタビューインタビュー

株式会社SMART GOLF　代表取締役　高須賀優人

2020年に創業し、現在は160店舗を運営する株式会社SMART GOLF。独自開発の分析システムを用いた無人ゴルフスタジオを運営し、インドアゴルフ市場に新しい選択肢を提案してきました。代表取締役の高須賀優人氏に、事業内容や今後の展望について伺いました。

「使いやすさ」と「通いやすさ」を追求

事業の内容をお聞かせください

完全会員制・無人運営のインドアシミュレーションゴルフスタジオ「SMART GOLF」を展開しています。現在は全国で約160店舗を運営しており、首都圏の1都3県、地方では人口の多い都市部を中心に出店しています。

無人施設だからこそカスタマーサポート体制にも力を入れており、何かあった際にはすぐに対応できるようにしています。SMART GOLFの大きな特徴は、独自の技術でシミュレーターの「使いやすさ」と「データの分かりやすさ」を実現している点です。

まず操作面では、シミュレーターの上に設置したタッチパネル式モニターを使い、「アプローチ練習をしたい」「距離は何ヤード」といった設定をワンタッチで行えるようにしました。

従来のように複雑な操作をしなくても、誰でも直感的に使うことができます。こうした仕組みは当社独自のもので、他社にはない機能です。

各打席のモニターには、打った球の弾道データをリアルタイムで表示します。ヘッドスピードや打ち出し角度、左右のズレなどの細かな数値を一目で確認できるほか、専門用語の解説や数値の良し悪しを判定する機能も備えています。

これも、当社の開発チームが独自に制作しました。データはスマートフォンからも確認できるため、いつでもご自身の成長を確認いただけます。

30代から40代の男性に多くご利用いただいていますが、最近は女性の会員様も2割ほどを占めるようになりました。9割のお客様はお一人で練習されますが、レッスンを希望されるお客様のためにコーチとのマッチングの仕組みも整えています。

正社員コーチに加え、外部のコーチにも業務委託で登録していただいています。シミュレーションのゴルフ施設が増える中、当社が選ばれる理由として「立地の良さ」も大きいと考えています。

特定の店舗に利用が集中して予約が取りにくくならないよう、例えば練馬区では半径500メートル圏内に3店舗を配置するなど、複数店舗を使いやすい環境を整えています。

さらにSMART GOLFでは、2カ月に1回のペースで全店舗共通のオンラインコンペを開催しています。約200コースを舞台に、期間中のスコアを自動集計してランキング化する仕組みで、多いときには千人ほどの会員様にご参加いただきます。

上位入賞者や抽選で景品を用意しているほか、協賛企業とのコラボコンペも増えており、メーカーからゴルフセットをご提供いただく企画も実施しています。

誰もが使いやすい仕組みづくりと、独自のシステム開発、利用しやすい立地戦略を掛け合わせ、快適にゴルフを楽しんでいただける環境づくりを進めています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか？

新卒で証券会社に入社し、4年ほど勤めた後、M&Aの仲介業務に携わりました。どちらの仕事でも経営者の方と接する機会が多く、次第に起業への思いが強くなっていきました。そして2019年、シミュレーションゴルフの事業を思いついたのです。

友人と飲んでいる時に思いついたのですが、そこにはしっかりとした根拠もありました。ゴルフは単価を取りやすいこと、シミュレーションゴルフなら狭い面積で開業できること、そしてサブスクリプションモデルを導入すれば売上が安定すること。初期投資や利益率を試算すると、投資回収が早いこともわかりました。

当時は会員制の無人シミュレーションゴルフ施設がほとんどなく、まさにブルーオーシャンでした。私自身はゴルフはお付き合い程度の経験しかありませんでしたが、都心では練習場が少なく、車を持っていない若い方にとっては通いづらい状況であることは知っていました。

「ここには潜在需要があり、大きく伸びる可能性もあるな」と思ったのです。

懇意にしていた優秀な経営者の方から10店舗分の資金調達ができたことも、起業の後押しとなりました。最初から直営で10店舗を一気に立ち上げる機会は二度とないと思い、会社を辞めて独立しました。

一気に店舗を増やせたもう一つの理由は、当社独自の「投資型フランチャイズ」モデルにあります。一般的なフランチャイズは、物件探しから契約、内装業者の手配、オープン後の運営までフランチャイズオーナー様が行いますが、当社の場合は、本部がそれらを全て一任しますので、オーナー様はフランチャイズ契約を交わし、ご入金いただくのみです。

この仕組みはご自身で運営されたい方には向きませんが、オーナー様が時間を使わないので投資目的が強い方には向いており、そういう方からの資金調達で出店ペースを加速させることができました。

迅速な意思決定を重視

仕事におけるこだわりを教えてください

意思決定をする際には、まず理由を明確にすること。そして、判断を保留する時間を極力少なくし、最短で行うように心がけています。

ベンチャー企業にとっては、PDCAサイクルを回すスピード感が重要です。意思決定のスピードは訓練すれば確実に鍛えられるもので、回数を重ねるほど早く、的確な判断ができるようになります。

この考え方は、前職での経験が大きく影響しています。論理的に考える思考プロセスは、M&Aの仕事に携わる中で磨かれました。学生時代はロジカルシンキングは苦手でしたが、経験する中で鍛えられたと思います。

こうした考え方は社員にも共有し、日々の業務の中で社員自身が自然とその思考を持てるよう促しています。例えば、何か提案があれば「なぜそう思うのか」「他の選択肢は検討したのか」と問いかける事があります。

人は一緒に働く相手、特に身近な上司に似てくるので、こうした文化を組織の中に自然に根付かせたいと思います。

起業から今までの最大の壁を教えてください

正直、今の事業において「壁」を感じたことはありません。1カ月で16店舗を出店した事があり資金繰りが厳しくなったタイミングもありましたが、なんとか乗り越えました。

ただ、前職の時代に壁を経験したかもしれません。論理的に物事を考えても、それをうまく言語化できない時期が1年ほど続き、悶々としていました。頭では分かっているのに話せない状況はつらかったですが、それを乗り越えたからこそ、今の自分があると感じています。

もちろん、課題はあります。条件にあった物件探しは大変な業務の一つで、今は5人体制で毎日2-3,000件の物件情報を確認していますが、それでも出店できるのは月に平均5店舗ほど。内見に進んでも条件が合わないこともあります。

「SMART GOLF」を国内ナンバーワンに

進み続けるモチベーションは何でしょうか？

事業のフェーズによって、モチベーションが少しずつ変化してきました。今はとにかく会社を成長させて「インドアゴルフといえばSMART GOLF」だと世の中に認知される世界をつくりたい思いが一番大きいです。

会社が大きくなれば経営も安定しますし、処遇が良くなったり、自慢できる会社になれば、社員のみんなにも「この会社に入ってよかった」と思ってもらえるはずです。

それに加えて、日々の学びが多いことがとても楽しいです。YouTubeで起業家のピッチを見る事がありますが「ここ突っ込みたい」と思うポイントが、一流の経営者が突っ込む部分と一致すると、自分の視点が磨かれてきたのだと実感します。さまざまな事業のビジネスモデルを学ぶことで、それが自分の事業にも活きています。

1年前の自分より確実に成長している実感もあります。周りの優秀な経営者の方の話に共感出来たり色々な議論ができる事が何よりも楽しく嬉しいです。こうした継続的な学びと成長が大きな原動力になっています。