【#572】 オンライン診療が切り拓く新しい支援のかたち。健康が企業と地域を支える土台に|代表取締役 古橋 智史(アンドエル株式会社)

アンドエル株式会社 代表取締役 古橋 智史
企業向けにオンライン診療やストレスチェックを提供する健康支援サービス「アンドエルワーク」を運営するアンドエル株式会社。オンライン診療、チャット相談、カウンセリングを組み合わせ、従業員が利用しやすい健康支援の仕組みを整えています。今回は代表取締役の古橋智史氏に、事業を始めた背景や今後の展望についてお聞きしました。
従業員の健康を支えるワンストップ支援
事業の内容をお聞かせください
法人向けの健康支援サービス「アンドエルワーク」を主軸に事業を展開しています。従業員がいつでも利用できるオンライン診療やチャット相談、カウンセリングに加え、法令で求められるストレスチェックを一つにまとめ、健康支援を総合的に提供しています。
オンライン診療から処方箋の発行、薬の受け取りまで対応しており、産業保健に関わる領域をワンパッケージで支援できる点が強みです。※提携医療機関が診察・処方を行います。
オンライン診療はまだ認知が広がりきっていませんが、待ち時間や移動時間が不要で、利用するメリットは明確にあります。現状は理解や認知が十分に進んでいないこともあるため、まずは法人の福利厚生として導入いただく形で、利用機会を増やしています。
従業員の健康を重視されている企業に、福利厚生の一環として導入していただくことが多いです。健康状態が整っていなければ仕事や生活のパフォーマンスが上がりにくいので、従業員の健康を企業の課題として捉えることが重要だと考えています。その点に共感いただき、導入につながる場面が増えています。
利用方法はシンプルで、専用のQRコードを読み取り、LINEから予約をするだけです。予約時間になると外部システムが起動し、オンラインで診療を受けられます。薬の処方がある場合は、近隣の薬局を選ぶか、郵送を選択できます。基本的な流れはすべてLINEで完結します。
従業員が利用する際はシステム利用料や薬の送料などは企業負担となり、個人負担は一切発生しません。企業にとっては福利厚生の一つとして健康への取り組みを示せますし、従業員にとっては通院より手間が少なく、費用負担も増えにくい点が魅力です。
診療に関する情報は個人情報として扱い、企業側には利用件数や利用状況の全体数のみ共有されるため、利用者のプライバシーは確実に守られます。
また、法人向けサービスを中心にしながら、ご要望に応じて人間ドックの紹介も行っています。加えて、人事や採用の課題を抱える企業が多いため、人材支援サービス「アンドエルキャリア」も展開しています。健康の支援も広い意味ではHR領域の一部と捉え、企業の人材に関する課題にも向き合っています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は新卒で銀行に入社しましたが、より実践的な環境でスピード感のある挑戦を経験したいと考え、自分に合った働き方を模索する中でベンチャー企業へ転職しました。そこで営業を経験し、多くの学びを得たことが、最初の創業につながりました。
その後、立ち上げた事業を売却し、直近の数年間は投資の仕事に携わることで、起業家と投資家の両方の立場を約10年にわたり経験してきました。
多くの企業を見ていく中で、成長する企業には共通点があるのではないかと考えるようになり、最終的に辿り着いたのが、社長や社員が健康である会社は強い組織をつくりやすいという点です。社員の健康が損なわれていては、戦略や施策があっても前に進みません。企業にとって健康は「土台」であり、「インフラ」に近い存在だと捉えるようになりました。
こうした気づきが、現在のサービスを立ち上げる原点となりました。
最前線で挑戦を続ける起業家たちを近くで見てきたこともあり、私自身も挑戦したいという思いが強くなったことが再び起業を決断した理由の一つです。
また、投資家としての視点をさらに磨くためにも、実践の場で引き出しを増やす必要があると感じていました。
将来的に再び投資の領域に戻るかどうかは未定ですが、まずは起業家として新しい価値を生み出し、事業として確かな成果を残すことが重要だと考えています。現在の事業で結果を示すことが、次のステップにつながると確信しています。

軸を整え、挑戦に安堵を灯す
仕事におけるこだわりを教えてください。
仁義を通す姿勢を大切にしています。これまでの10年間で、成果につながった経験もあれば、思うように進まなかった経験もありました。その中で、筋を通して行動し続ければ、時間がかかっても報われる瞬間が訪れると感じました。
仁義を大切にし続けるというのは決して簡単なことではありませんが、迷った時に立ち返る軸としてこの価値観を重視しています。
現在の会社のミッションは「あらゆる挑戦に安堵を」です。健康は挑戦の土台であり、心身が整っているからこそ前に進むことができると考えています。安堵を細かく捉えると、身体や心が整った状態とも言えます。
挑戦に踏み出すための環境を整えることを、事業の中でも会社づくりの中でも意識しています。
社内でも働く環境を整える取り組みを続けています。空気環境の管理や定期的な清掃を全員で行うなど、オフィスで心地よく過ごせる状態を保つ工夫をしています。また、トレーナーの資格を持つメンバーがストレッチを共有する機会もあり、日々の健康づくりにも取り組んでいます。
インフルエンザワクチンの接種や健康診断の受診も徹底し、挑戦し続けるための土台づくりを大切にしています。社内の健康の追求には、他のどの会社よりも力を入れて取り組んでいる自信があります。
起業から今までの最大の壁を教えてください
壁は毎日のようにあります。オンライン診療への理解がまだ広がりきっていなかったり、従業員の健康を優先している企業ばかりではなかったりと、乗り越えるべき壁は数多くあります。
その中で、一つひとつの問題と向き合って、どのように価値を届けるかを考えながら、商品やプランのつくり方を試行錯誤しています。
難題は多々ありますが、最終的にはやり切るしかないため、「難しい」の一言で片付けないようにしています。課題と向き合い続ける姿勢を大切にしています。
健康を軸に、地域の医療を支える未来へ
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
一社目の創業時から変わらず大切にしているのは、仲間の存在です。社員数は多くありませんが、共に働く仲間の存在が私にとって大きな支えになっています。
社長として日々メンバーと向き合う中で、彼らがこの会社で働くという選択に責任を持って向き合う必要があると感じています。「この会社を選んでよかった」と思える環境をつくることが、私の原動力になっています。
もう一つの原動力は、事業として扱っているテーマです。当社が扱っている健康は、生涯向き合うテーマであり、健康を損ねたいと考える人はほとんどいません。健康は誰にとっても欠かせないものであり、一人でも多くの人がより良い状態で過ごせる未来に貢献したい思いがあります。
体調が整っていなければ、どれだけ前向きな気持ちがあっても力を発揮しづらくなります。心の状態は目に見えませんが、体の状態は目に見えるものです。まずは整えられる部分をきちんと整え、そこに挑戦する力やモチベーションを掛け合わせられるようにしたいと考えています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください
サービスを広げていくことが今後の大きな目標です。
現在、アンドエルワークは経営者個人や企業全体の従業員に向けたものになっていますが、今後は地域の健康にも軸足を広げていきたいと考えています。法人向けの福利厚生は首都圏が中心ですが、オンライン診療は医療機関へのアクセスに時間がかかりがちな地方でこそ、力を発揮できると感じています。
例えば東北地方などの豪雪地域では、80代の方が90代の方を連れて通院するケースがあると言います。こうした状況を少しでも改善できる可能性がオンライン診療にはあります。ただ、首都圏でも十分に浸透していない現状を踏まえると、地方で広がるまでには時間がかかるでしょう。まずは着実に全国展開を進めていくことが目標です。
また、医療機関との提携にも力を入れています。地方の医療機関には、事業承継など、利用者のアクセス以外にも幅広い運営課題があります。私たちがこれまで蓄積してきたデジタルの知見を、院内の運営に役立つ仕組みとして届けることで、地方の医療支援に取り組みたいと考えています。この活動を地域への社会貢献にも繋げたいです。
内発的な思いが起業の力をつくる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
実現させたいことへの思いが心の内側から湧き上がってくるのであれば、思い切って挑戦してほしいと考えています。大切なのは、その原動力がどこから生まれているのかです。私の場合、若さもそうですが、銀行を短期間で離れたことで別の企業に勤める道が自然となくなり、挑戦する以外の選択肢が無かったことが原動力になっていたと思います。
人によってきっかけは異なります。若さでも、お金でも、どんな動機でも構いません。自分にとって退路を断つほど強い気持ちにさせ、内側から湧き出る意志があるのであれば、挑戦する価値はあると思います。
サービス導入を検討している企業に向けてメッセージをお願いします
当社は、法人向けの健康支援サービスを提供しています。これからの社会では、従業員の健康が企業運営における重要な要素になっていくと考えています。従業員一人ひとりの健康を守ることは、企業が発信するメッセージとしても大きな意味を持つはずです。
ご関心をお持ちいただける企業がありましたら、ぜひ導入をご検討いただければと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:古橋 智史 氏
1988年東京都生まれ。立教大学を卒業後、みずほ銀行に入社。その後株式会社Speeeを経て起業。2014年スマートキャンプ株式会社を設立し、2019年に株式会社マネーフォワードへ売却。2020年にベンチャーキャピタル「HIRAC FUND」を立ち上げる。2023年にアンドエル株式会社を設立。
企業情報
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法人名 |
アンドエル株式会社 |
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HP |
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設立 |
2023年10月17日 |
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事業内容 |
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