
株式会社Nobest 代表者 石井 宏一良
株式会社Nobestは、AIを活用してインフラの監視・管理を行う企業です。AIが自動で異常を検知・原因を特定することで、インフラを支える現場の負担を大幅に軽減。災害大国日本から世界へ、安心安全な未来のインフラを支えるソリューションを提供しています。代表者の石井 宏一良氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
AIで現場の負担を減らすインフラ監視事業
事業の内容をお聞かせください
AIを活用したインフラを監視する事業を行っています。現在、地場産業と呼ばれる方々が、地方でも都会でも、老朽化が進むインフラや商店街を支えています。
彼らは日々監視を行い、故障があれば駆けつけ修理することでインフラを支えていますが、我々はその管理、監視、メンテナンスを支援するソリューションを提供しています。
当初は防災の観点から開発を始め、最初に採用されたのは工場でしたがその後に、太陽光発電所での採用が広がりました。
太陽光発電所もインフラの1つですが、近年急速に増えたことで管理や監視、メンテナンスが大変になり、事故も増加しています。そのため、太陽光事業者からのニーズが高まっています。
当社のサービスでは、問題がありそうな発電所だけをフィルターにかけ、AIが異常を判定し、原因を特定できます。
さらに、当社の「CAEOS」というシステムが原因を探ります。例えばブレーカーが落ちた場合、元気象庁所管の会社から購入したデータも活用し、近くで落雷があったか、地震があったかなどのデータから原因を推測できます。
現在、当社のサービスは太陽光発電だけでなく、水力発電、地熱発電、防災分野などにも導入・検討が進んでおり、インフラ全体を支えるサービスへと広がっています。
競合はたくさんありますが、あらゆる機器と連携できるオープンプラットフォームであることが、最大の差別化ポイントです。
従来では、別々のソフトが乱立していました。そのため管理が非常に煩雑で、1社のシステムに絞らざるを得ない企業が多かったのです。ですが、当社のシステムは既存機器と連携できるため、新たな機器を設置せずとも利用が可能です。
この統合監視により、防災分野でも水位センサーや土砂崩れ検知など、様々なセンサーを一つの画面の災害マップで確認でき、問題があれば通知されます。AIが自動検知してプッシュ通知するため、常時人手による監視も不要です。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
東日本大震災で被災した時にインフラの重要性を痛感したことが大きなきっかけとなりました。
電気やインフラが使えない苦労を身をもって感じました。同時に、市役所の方々も日々大変な状況に直面していました。この苦労を何とか和らげたいと思い、ソリューションを開発することに決めました。
当社が取り組む分野はニッチですが、日本だけでなく世界のインフラを実際に支えているのは地場産業やサービス業の方々です。水漏れやドアの故障、太陽光パネルの問題、災害時の対応など、現場に駆けつけて助けてくれるのは彼らです。
災害時にこそ、彼らの助けが必要になります。この人たちの苦労を解消し、もっと輝ける世界にしたいと思いました。そこで、これまで大手企業向けが中心だったプロダクトを、サービス業の方々のために提供するため会社を立ち上げ、支援を始めました。

複雑な状況下の中でも、最適な解決策を模索する
仕事におけるこだわりを教えてください。
「環境が1番」や「人間が1番」というように、1つだけを最優先する考え方を持たないことです。そして、根本原因をしっかり把握することを大切にしています。
環境問題を最優先すれば過激な活動になってしまいますし、経済を優先することで公害の発生に繋がることもあります。一方で、防災の観点や人の命の尊さも当然あります。
様々な側面から最適な答えを見つけることは、考慮すべき要素が増えるほど難しくなります。
それでも、複雑な状況下での最適な課題解決を探し続けることを心がけています。例えば社内で問題が起きた時も、誰かを責めたり、局所的に原因を決めつけたりしません。
様々な問題が複雑に絡み合って起きたものとして捉え、全体を見渡した上で最善の解決策を探すようにしています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
常に壁はありますが、特に苦労したのは、いいねと思ってもらえても、それがお金にならないというジレンマです。私自身、技術者として歩んできたため、「グッド」と「エクセレント」の違いが理解できませんでした。
例えば、「このパンを買うと10%が親のいない子どもに寄付されます」と聞けば、多くの人が共感してくれます。しかし、そのパンが1個10万円だったら、理念に共感しても購入してもらえません。
エクセレントと評価されるには何が必要なのか、グッドと言ってくれるのに、なぜ購入してもらえないのか、価値とお金の等価交換という経済の仕組みと、環境問題やSDGs関連の取り組みとの間にあるギャップに苦しみました。
この壁を乗り越えるために、相手と深く対話することを心がけました。いいねという表面的な反応だけでなく、本当に困っていることは何なのか、どのような悲しみや痛みを抱えているのかなどの本質的なニーズをしっかり引き出すことに重点を置くようになりました。

インフラ事故がゼロのスマートシティを実現する
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
幼いころから、環境に対して課題感を感じており、それからはその解決に人生を捧げていくと決めたので、その使命感が原動力になっています。
組織としても、メンバーのモチベーション管理は大切にしています。環境や自然に触れる機会として、キャンプなどのイベントを開催するほか、月1回の勉強会を実施しています。
クリーンエネルギーについて学んだり、発電所や廃棄物処理工場を見学したりすることで、現場の課題や働く方々の思いを直接知るきっかけになります。
同時に「私たちが守りたいものは何なのか」を考えることも大切にしています。人や自然と触れ合うことを通じて、答えを見つけていく機会を意識的に作るようにしています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
私たちが目指しているのは、防災やインフラを監視・制御の面から支えるソリューションの提供です。現状では、インフラ管理において常時監視が必要な状況があり、こうした負担をなくしたいと考えています。
例えばですが、地震が発生した際、どこが壊れていて、どこは無事なのか、どこに避難すべきかが自動的に判断される仕組みを提供したいと考えています。
津波対応も同様で、こうした災害対応を自動化することで、台風時に市役所の職員が徹夜で働いたり、地震発生時にあちこちでサイレンが鳴り響いたり、太陽光パネルの火災など、未然に防げるはずのインフラ事故をゼロにするスマートシティを実現したいと思っています。
災害大国である日本だからこそ、世界に提供できる大きな価値だと考えています。日本に住んでいてよかったと言ってもらえる、または「Nobest-IoT」があったから、災害は昔ほど大変ではなくなったと言われるようにしていきたいです。
また海外で太陽光発電やクリーンエネルギーが盛んな地域でも、事業展開を予定しています。来年末には多言語対応を実現し、世界展開を進めていく予定です。

人から「ノー」と言われることさえも楽しむ
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
正直に言えば、「起業はやめておいた方がいい」と伝えたいです。それほど辛く、大変な道だからです。ただ、起業したことに対して、まったく後悔はありません。確実に世の中のためになり、お客様に喜んでいただけている実感があります。
先日も、ある経営者の方とお会いした際、これはすごいと言っていただき、背中を押してもらえました。
私たちは、インフラを支える人々を助けるソリューションを提供しており、社会や自然環境に貢献できているという実感があります。
もし、未来を創造するチャレンジに人生を賭けたいと思うなら、起業は非常にやりがいのある選択です。人から「ノー」と言われることや、矛盾に直面することも含めて楽しみながら、社会に価値を提供できる喜びを感じてほしいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:石井 宏一良 氏
岩手県立一関工業高校 東北工業大学 卒
企業情報
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法人名 |
株式会社Nobest |
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HP |
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設立 |
2022年4月22日 |
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事業内容 |
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