【#576】製造業特化のカスタムAIで、日本の生産現場を革新する。世界最高峰のAIエンジニア企業の挑戦|代表 角田 徳明(CyberX JP株式会社)

CyberX JP株式会社 代表 角田 徳明
CyberX JP株式会社は、製造業に特化したAI開発企業です。顧客のビジネスに最適なAIモデルやアルゴリズムをゼロから開発し、汎用モデルでは実現できない高精度のカスタマイズを強みとしています。代表の角田 徳明氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
ゼロから作る製造業特化のAIソリューション
事業の内容をお聞かせください
当社は「カスタムAIソリューション」という事業を展開しています。
特徴は2つあります。1つ目は、ゼロからお客様の製造現場などに合わせたモデルを開発することです。2つ目は、汎用モデルを最適化し、お客様のビジネスにぴったり合う形にカスタマイズすることです。弊社のカスタムAIソリューションはトップダウン(R&DやAI推進室)・ボトムアップ(現場)に対応しています。
それぞれ注力しているのは、ボトムアップでは現場のQuick win体験をとにかく広げることです。トップダウンでは、将来的に品質・セキュリティ・ガバナンスを考慮した最適化されスケールが可能なAIを提供することを目指しており、全社的にスケールできるAIを目指しています。
当社が目指しているのは、産業におけるAIの作り方と使い方でイノベーションを起こすことです。具体的には、産業現場でAIを作り、使うというPDCAサイクルを回しながら、AIのイノベーションを実現するプロダクト化を進めています。
主なお客様は、大手自動車企業、大手部品メーカーそして精密機器企業などの日系大手企業です。
お客様が抱える課題は様々です。データ資産を活用できていない、AIを導入したが成果が出ない、精度が足りないといった課題に対し、当社はカスタムAIで解決を支援しています。
特に、データはあるがどう活用すればいいかわからないというお客様に対して、仮説立案からサポートしています。
製造現場や安全性が求められる領域では、汎用モデルではAIの判断理由が説明できないという課題があります。カスタムAIならAIの判断根拠を説明でき、責任の所在も明確にできます。
また、1%、0.1%の誤差が大きなコストに直結する現場において、当社ではこの精度の追求をすることを強みとしています。
さらに、現場への導入の際にはモデルの小型化や計算効率に対応する必要があります。当社では、計算速度を指数関数的に高めるだけでなく、高性能で小型化を実現できます。
また、弊社はAIモデルやアルゴリズムそのものを分解し、再構築できる技術力があります。
一般的なベンダーは、既存のAIモデルやアルゴリズムを使いこなすことに留まります。しかし当社は、モデルやアルゴリズム自体を最初から分解し、再構築できます。
このような技術力を支えているのが、世界トップレベルの人材です。当社には、Googleが主催する機械学習コンペティション「Kaggle」で最高位を獲得したメンバーが多数在籍しています。
カスタムAI開発には、高い精度の追求やデータを批判的に見る力が必要なため、技術力の高い人材が在籍しているのは当社の強みです。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
元々起業したいと考えていましたが、タイミングや事業内容については仕事をしながら模索していました。
大学卒業後、外資系企業でITコンサルタントとして製造業へのクラウド導入支援を担当しました。その後もキャリアを変えながら、官公庁向けの刷新プロジェクトで上流工程を経験したり、エンジニアとして働いたりしました。
起業を決意したのは、マイクロソフトで働いていた時代です。日本でのCopilot導入アンバサダーに任命され、グローバルチームと協力しながらビジョン推進に携わっていました。そこで汎用系AIモデルの限界に気付きました。
汎用モデルでは、効率化できる領域とできない領域が明確に分かれていることがわかりました。汎用モデルで対応できる部分、最適化すべき部分、そしてカスタム開発でしか解決できない部分が存在することに気付きました。
この学びが結果的に起業するきっかけとなりました。

止まらずに進み続けることが成功に繋がる
仕事におけるこだわりを教えてください。
行動力と動き続ける力です。断られても次のアクションを起こし、止まらずに進み続けることを大切にしています。
AI導入においても、この考え方が反映されています。お客様が明確な課題とデータを持っていて、検証後すぐに本番導入できるケースは確かにやりやすい形です。
しかし、まずAIで何ができるのかを理解することから始めるべきだと考えています。
事業や製造プロセスをどれだけ効率化できるのか、ビジネスKPIやROIでどれだけ成果を出せるのかを明確にすることが重要です。この部分が固まってはじめて、AI導入の目的について合意が取れ、質の高いデータ収集とAI導入が可能になります。
起業から今までの最大の壁を教えてください
顧客基盤を築くことです。
VCの方からは、事業の再現性について問われることが多くありますが、現在はそこも再現性の仕組み化しつつありますが、初期はそれ以上に「行動量」と「粘り強さ」が重要だと考えています。
再現性のあるモデルであっても、実行する人や組織の行動が伴わなければ、必ずしも成果につながるとは限らないからです。
当社は幸いにも、創業1期目から大手自動車企業との取引が実現し、それをきっかけに事業の幅を大きく広げることができました。
1期目は、大手企業を中心に数多くの企業へアプローチを行いましたが、すぐに成果が出たわけではなく、断られることの方が圧倒的に多い状況でした。
徐々に手応えを感じ始めたのは、2期目に入ってからです。継続的なアプローチと改善を繰り返しながら信頼関係が少しずつ構築され、紹介や再提案につながるケースが増えていきました。
顧客基盤の構築は現在もなお続く重要なテーマですが、創業初期においては特に高い壁だったと思います。

1%の成功体験を追求し続ける
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
1%の成功体験です。事業の現場では、実感として99%が苦労や試行錯誤の連続です。思い通りにいかないことの方が圧倒的に多いです。
しかし、ほんの一瞬訪れる「うまくいった」という成功体験の気持ち良さは圧倒的で、その感覚を一度味わうと、不思議とそれまでの苦労さえも意味のあるものに感じられるようになります。その瞬間のためなら、どんな困難も前向きに受け止められるようになるのです。
この感覚は、スポーツや登山によく似ていると感じています。登っている時間の大半、たとえば8時間の行程は、体力的にも精神的にも決して楽ではありません。それでも登り続け、ようやく辿り着いた頂上にいられるのは、わずか1時間にも満たない時間です。
しかし、頂上からこれまで歩いてきた道のりを見下ろし、「ここまで自分の足で登ってきたのだ」と実感した瞬間に得られる達成感は、何物にも代えがたいものがあります。
事業においても同様に、1%の成功体験を追い求め続けること自体が原動力になっています。そのわずかな成功の積み重ねが、次の挑戦へのエネルギーとなっていると思います。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
個人的には、宇宙や防衛分野に強い関心を持っていて、現在の製造業から宇宙や防衛分野にソリューションを拡大していきたいと考えています。特に組み込みAI分野にて、今後はチャレンジしていきたいです。
当社の技術は空力解析やモーターの熱解析、力学計算、シミュレーションなどに応用ができ、パートナー企業との実験や検証を通じて宇宙分野にも進出していきたいです。また、AI技術を活用して日本の防衛に貢献できないかとも考えています。
プロダクト面では、AIを産業に導入するツールの開発を進めています。AIの動作モニタリングや設備の異常監視など、現場やマネジメント層が使いやすいツールを開発しています。現在、ある部品メーカー様と協議しながら検証を始める予定です。
現在のカスタム開発は事業の一部ですが、将来的にはコアとなるプロダクトを中心に、カスタム開発をその周辺サービスとして継続する形を目指しています。
プロダクトで汎用的に解決できる部分と、カスタマイズが必要な部分の両方に対応し、お客様に最適化された特化型のソリューションを提供していきたいと考えています。

起業するベストタイミングはない
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業のベストなタイミングは、存在しません。やりたいことがあるなら、思い切った行動力と決断力が何より重要です。
ただし、IT系の業界では、ある程度の知見や経験を積んでから起業することをお勧めします。全く経験がない状態では、リスクが高くなるでしょう。
起業には、覚悟も必要です。顧客を開拓する力、行動し続ける力、時には断る力が求められます。創業当初は困難なことも多いですが、止まらず動き続けることが何より重要です。
そして最も大切なのは、共に歩んでくれるメンバーを見つけることです。自分のビジョンを理解し、支えてくれる仲間を集めることを重視してください。
採用を強化されているそうですね。どのような人材が理想でしょうか?
第一に、日本の産業、特にものづくりに興味がある方を求めています。日本のものづくりをさらに進化させたい、そのためにAIやエマージングテクノロジーを活用したいという意欲のある方は、当社にマッチングすると考えています。
また当社では、活動力や体力も重視しています。生産工場を訪問してお客様と対話したり、現場を見て回ることも多いため、動き続けられる体力があると、より楽しく仕事ができると思います。
スキル面では、AIや機械学習、ITコンサルティングといった分野での経験がある方を歓迎します。
▼詳しい採用情報はこちら
https://www.cyberxjp.com/about-4
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:角田 徳明 氏
モスクワ国立大学に留学中はコンピュータサイエンスを専攻。 慶應義塾大学を卒業。Infosys、AccentureにてITコンサルタント。Microsoftにてエンジニア及びCopilot導入アンバサダーを経験しCyberX JP株式会社を創業。
企業情報
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法人名 |
CyberX JP株式会社 |
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HP |
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設立 |
2024/04 |
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事業内容 |
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