株式会社 クロスメディスン 代表取締役・CEO 中井 洸我

株式会社クロスメディスンは、産後うつの課題を解決を目指すヘルスケア企業です。乳幼児の泣き声をAIに学習・分析させ、一人一人の赤ちゃんに合った子育て方法を提案するアプリ「あわベビ」を提供しています。代表取締役・CEOの中井 洸我氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

赤ちゃんの泣き声から対処法をAIで予測する「産後ケアアプリ」

事業の内容をお聞かせください

当社は、赤ちゃんの泣き声をAIで分析し、原因と適切な対処法を示すことができる産後ケア支援アプリを提供しています。

 

乳幼児の泣き声約14万件以上をAIに学習させ、どのような感情で泣いているのか、何をしたら泣き止んだのかというデータを収集しています。従来、子育ての方法は人や地域によって異なっていましたが、膨大なデータをAIに学習させることで、一人ひとりの乳幼児に合った子育て方法を提案しています。

 

 

当社の強みは、医学とAIの両方のバックグラウンドを持つチーム体制です。私自身が医学部出身で、チームのほとんどがAIエンジニアで構成されています。また、特許も2つ取得しており、個別化学習の仕組みや、感情ごとにキャラクターで表現する技術も当社独自のものです。

 

私たちは、乳幼児の発達過程や感情の分化を分析する際に、言語学的な特徴も考慮しています。たとえば、日本とアメリカでは乳幼児の泣き方が異なるため、こうした言語ごとの特徴もAIに学習させています。

 

医学的な感情分類と、音声データから得られるAI分析の整合性を取りながら、プロダクトを開発しています。音声分析では、声の周波数、音圧の変化、一呼吸ごとの時間や周波数変化など、30以上のパラメーターを分析しています。

 

アプリの操作方法は非常に簡単です。乳幼児の泣き声を5秒間録音すると、11種類の感情から該当するものが推定され、その感情と対処法が表示されます。

 

2万人以上が利用し、口コミで広がっています。SNSなどで様々な反響をいただいており、本サービスをご利用いただいた方からは、このアプリがなければ育児を乗り切れなかったという嬉しい声も寄せられていて、パートナーにお子さまを預ける際にアプリを共有し、これを見ながらお世話してねと伝える活用も増えています。

 

また、法人向けには産後うつ予防のサービスを展開しています。育児介護休業法により、従業員300人以上の企業は男性育休の取得率を公表する義務がありますが、男性の子育て支援が十分でないという課題があります。この課題解決のためにも現在、企業の福利厚生として有料プランを提供しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

もともとは医学部に入学し、医師になるつもりでした。そこで、日本には精神疾患の患者が、がん患者より多い約603万人もいることや15〜55歳までの働く世代で最も多い疾患が精神疾患だということを知り、何とかしたいと考えるようになりました。

 

精神疾患はネガティブかつ深刻なイメージを持たれがちですが、産後うつも含めて誰もがなりうるものです。

 

最近よく眠れないなどの症状は、単に夜遅くまでスマホを見ていたのではと軽く扱われがちですが、現実逃避の一つである可能性もあります。初期症状への気づきや対処がうまくできていないのです。

 

また、精神科医は患者数に対して圧倒的に少ない状況です。この状況を打開すべきだと思い起業することを決めました。

 

子育てに特化した理由は、私の身内で育児ストレスで悩んでいた人がいた経験があるからです。メンタルヘルスの分野でも特に産後うつに取り組みたいと考えました。

 

産後の問題は日本だけでなく世界共通の課題です。少子化で国内市場は小さいと言われますが、乳幼児の泣き声は世界共通言語であり、グローバルに展開できる事業だと考えています。

 

海外展開については、英語版はすでに完成しており、中国語、スペイン語、韓国語版も年内ににリリース予定です。

 

 

ユーザーファーストで社会課題を解決できるサービスを提供し続ける

仕事におけるこだわりを教えてください。

社会のためになることを突き詰める点は譲れません。

 

社会課題の解決は収益化が難しいとよく言われます。少子化が進む中、子育て中の方々向けのアプリに本当にお金を払ってもらえるのかと指摘されることも多いです。

 

事業を継続していればキャッシュフローは徐々に安定し、人材も自然と集まってきます。一見すると収益性が低く見える領域であっても、社会課題を確実に解決できるプロダクトであれば、必ず成功の道は開けると考えています。

 

私たちが重視しているのは、目先の収益ではなく、常にユーザーを中心に据えることです。ユーザーが抱える課題に本当に応えられているか、その結果として誰が、どのように幸せになるのか、という視点を大切にしながらサービス開発に取り組んでいます。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

社内全体で、学生を終えた後に、就職か起業か医師かの進路選択は、大きな壁の一つだったと思います。

 

当時は学生の間にM&Aの話も進んでいましたが、その時期にスタンフォードへ留学したことで、一度日本を離れ、自分が本当に何を成し遂げたいのかを深く見つめ直す時間を得ることができました。

 

それぞれに人生や選択があり、自分の時間を全て会社に注ぎ込むことが必ずしも正解でない時もあると思います。しかし、私には創業社長として会社に120%投資して成長させ、社会課題を解決する責任があります。しかし、1人ひとりの人生を考えると、実際には、就職をしたり、転職をしたりした方が良い人生が待っている可能性もあります。

 

そのように、人が流動的に回っていきながら、今いるメンバーで最大限のパフォーマンスを発揮し、一つひとつの課題を乗り越えていく連続こそが、事業を前に進めるということだと感じています。

 

 

様々な企業・団体と連携し産後課題を解決する

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

社会課題が解決できていないこと、そしてそれを自分が解決していきたいという思いです。

 

資本主義は経済合理性を追求してきた結果、取り残された課題があり、そのギャップをNPOが担ってきました。しかし、まだ正解は見つかっていません。

 

ヘルスケア分野はこの課題と相性が良いです。医療は必ず人のためになり、現在の医療費は60〜70兆円にも上ります。病気になる前の予防が重要ですが、人は病気にならないと行動を起こしません。

 

その部分をテクノロジーで解決する課題は、AppleやGoogleも取り組んでいる領域です。多くの人がこの最適解を探している中で、私はその答えを示したいと考えています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

まずは、産後うつの解決に取り組んでいきます。この問題は当社だけでは解決できないため、ベビーシッター派遣、オンライン診療など、様々なサービスと連携を進めています。

 

当社の社名「クロスメディスン」のクロスには、医療を中心に様々な課題を解決するため、みんなを繋げるといった意味を込めています。私たちは繋ぎ役として、産後の問題解決に貢献していきたいと考えています。

 

将来的には、医療データ活用の課題にも取り組む予定です。マイナンバーデータの活用不足や、電子カルテが統一されていないため情報共有ができないなどの問題があります。現在こうした案件は大手企業が受託していますが、当社も優秀なチームを作り、そのレベルまで成長したいと考えています。

 

組織としては、一人ひとりが社長になれる体制を目指しています。ホールディングス形式で新規事業を次々と立ち上げ、社内にノウハウを蓄積しながら、それぞれが自分の取り組みたい社会課題を解決していく。学生でも社長になれる企業を実現したいと思っています。

 

採用を強化されているそうですね。募集されているポジションを詳しく教えてください 

将来的には様々な人材を受け入れられる組織を作りたいと考えていますが、現在は世界中で使われているプロダクトを作った経験のあるエンジニアやマーケターを求めています。

 

一度大きな成功を収めたプロダクトに携わった経験がある方でないと、実際のスピード感やユーザーの見方、ベンチマークすべき基準などがわからない部分があります。チームの中心人物である必要はありませんが、そうしたチームにいた経験のある方に来ていただきたいです。

 

 

起業する目的を明確に

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業を考えているなら、なぜ起業したいのかを明確にしておくことが大切です。目的が曖昧なままだと、困難にぶつかったときに挫折します。

 

目的を実現するために起業が最適な手段なら、挑戦してください。ただし、本気で取り組む覚悟は必要です。起業する際には手放さなければならないものがいくつもあります。

 

そこまでの覚悟があって、やりたいことがあるなら、早めに始めた方がよいでしょう。逆に、そこまでの覚悟がないなら、焦って起業する必要はありません。

 

ただ、これは社会的に難しい課題に挑む場合の話です。目的によって起業の仕方は変わってきます。比較的取り組みやすいビジネスであれば、しっかりやれば会社の資金も増やせるはずです。

 

貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします

育児支援や福利厚生の充実でお困りでしたら、ご相談ください。お力になれることがあると思います。

 

また、当社はAI技術にも力を入れています。当社のメンバーには、アメリカ人工知能学会から最年少で表彰された者や、コロンビア大学でコンピューターサイエンスを学び、現在アメリカでAI研究を行っている者もいます。

 

AI開発を新たに始めたい、社会課題の解決に活かしたいとお考えでしたら、プロダクトの設計から実装まで幅広くサポートできます。お気軽にお声がけください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:中井 洸我

徳島大学医学部在学中に大学発ベンチャーとしてクロスメディスンを立ち上げる。スタンフォード大学医学部留学後、乳幼児の泣き声から感情を推定して対処策を教えてくれるアプリ「あわベビ」をリリース。

 

企業情報

法人名

株式会社 クロスメディスン

HP

https://awababy.tech/company/

設立

2022年9月21日

事業内容

  • AIを活用したシステム開発及び企画
  • 各種アプリケーションソフトの企画、開発、制作、配信、管理、運営及び販売 
  • 福利厚生事業
  • ヘルスケア事業
  • 前各号に付帯関連する一切の業務
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