【#585】訪日観光客の買い物をストレスフリーに。免税手続きの煩雑さを解消し、インバウンド経済の可能性を最大化|代表取締役 星野 遼(株式会社Ocean)

株式会社Ocean 代表取締役 星野 遼
株式会社Oceanは、免税手続きのデジタル化と訪日客の送客で、インバウンド市場に貢献する企業です。キャッシュレスで本国通貨での返金を実現するなど、旅行者にも日本の店舗にもストレスのない仕組みを提供しています。代表取締役の星野 遼氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
訪日外国人と日本の事業者、双方の利便性を高める免税返金サービス
事業の内容をお聞かせください
訪日外国人向けのタックスリファンド事業と、インバウンドマーケティング事業を行っています。
タックスリファンドとは、訪日外国人への税金返金の仕組みで、現在海外の方は日本で買い物をする際に免税価格で購入できます。
しかし一部で不正や転売が発生したため、2026年11月からは、日本人と同様に税込で支払をし、空港で出国確認後に返金を受ける制度に変わります。そのため、日本の小売店は訪日客への返金方法を変更する必要があります。
そこで私たちは、海外の方向けにキャッシュレスで返金できる仕組みを提供しており、各国の方が普段使い慣れた各種決済手
特に、中国大陸や台湾、香港、
国によって言語や文化、習慣が大きく異なるため、それぞれに合わせてカスタマイズしていくことが重要だと考えており、特に力を入れています。
また、日本の事業者への導入はコストを無料にし、店舗側の手続きをできるだけシンプルにしています。そのため導入に対するハードルは非常に低くなっています。
もう1つはインバウンドマーケティング事業で、海外の主要な旅行OTAサイトなどと提携し、提携先が持つ膨大な訪日客のトラフィックを、提携している店舗へ送客しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
新卒で総合商社に入社し、7年間ほど海外案件やクロスボーダーの業務に携わってきました。その後、中国のテック企業に転職し、WeChat Payの日本ディレクターとして日本市場における事業拡大やパートナー連携を担当しました。
新卒の頃から一貫して、日本と海外をつなぐ仕事、特にインバウンドや越境領域に深く関わってきました。そうした経験を重ねる中で、いつかは自分自身の手で、日本と海外の双方にインパクトを与えられる事業を創りたいという思いを持つようになりました。
その過程で、免税制度改正の話を知りました。制度変更によって、多くの日本の事業者が短期間での対応を迫られることになり、とりわけ海外の利用者行動や決済習慣に詳しくない事業者にとっては、大きな負担や課題になると感じました。また、訪日客にとっても、免税の仕組みが複雑化することで、現場での混乱は避けられないと考えました。
制度改正は避けられない一方で、日本の事業者と訪日客の双方に新たなペインを生み出します。同時に、それはこれまで私が培ってきた、クロスボーダー決済やインバウンド領域の知見を最も活かせるテーマでもありました。
「制度対応を負担にするのではなく、価値に変えたい。」 そう考え、日本と海外をつなぐこの領域で起業することを決めました。

イノベーションが起こるフラットな環境を作る
仕事におけるこだわりを教えてください。
2つあります。1つは、フラットで自由に意見を言い合える環境を作ることです。フラットかつ、忖度なく意見を言い合える環境を作ることを心がけています。
私は突飛なアイデアを出すタイプで、意見や思いが新しいイノベーションに繋がると考えています。頻繁に意見を交わすことが大事だと思うので、環境づくりには力を入れています。
もう1つは、日本人にもっと海外に目を向けてほしいという思いです。最近、日本人が海外に出る機会が減っていると強く感じています。
特に、資金調達や商談の際、タックスリファンドや海外の文化と習慣について説明しても理解してもらえないことがありました。海外では通じる話が日本では通じません。円安が進んで海外からの訪日客が増えていく一方、日本人の海外離れもどんどん進み、海外の実情に触れる機会が少なくなっていることが原因だと感じ、残念に思いました。
世界で通用する企業になるためには、まず私たち自身が世界を知らなければならないと考えています。そのため、会社の福利厚生として10万円の海外旅行補助を導入しました。金額としては決して大きくはありませんが、この制度をきっかけに実際に海外へ足を運び、現地での体験や気づきを持ち帰ってほしいと考えています。
海外を知ることは、視野を広げるだけでなく、私たちの事業そのものを深く理解することにもつながります。そうした経験が、より良いプロダクトやサービスを生むと信じています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
資金調達が一番苦労しました。
法改正によって市場ニーズが明確だったこともあり、営業面では比較的順調に進み、ありがたいことに早い段階から大手企業にも導入いただくことができました。現場からの反応も良く、事業としての手応えは強く感じていました。
一方で、事業をより速く成長させていくためには、外部からの資金調達が不可欠でした。しかし、タックスリファンドという領域自体が日本ではまだ新しく、私自身も含め、事業の価値や将来性を投資家の方々に十分伝えきれていなかったと感じています。
前例が少ないビジネスであるがゆえに、どこをどう説明すべきか、どの視点で語れば理解してもらえるのか、試行錯誤を重ねる必要がありました。
約50社ほどのベンチャーキャピタルにアプローチすることになりましたが、その過程で事業の整理や言語化を何度も見直し、自分たち自身の理解も深まっていきました。最終的には多くの投資家に出資いただけました。
転機となったのは、リード投資家の方が私たちの取り組みや思想を深く理解し、出資を決断してくださったことでした。その決断をきっかけに、他の投資家の方々からの信頼も一気に高まり、あらゆるプロセスが驚くほどスムーズに進むようになりました。

誰かの「困りごと」を解決する喜び
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
誰かの困りごとを解決することそのものに、大きな価値を感じています。税制改正によって訪日客もお店も困っている状況に対して、具体的なソリューションを提供し、目の前の課題が解消されていく。そのプロセス自体が、純粋に楽しいと感じます。
もう1つは、ゼロから新しいものを生み出す過程を経験できることです。ユーザーインタビューを重ねながら、プロダクトが少しずつ理想の形に近づいていく。その積み重ねは私にとって非常にやりがいのある時間であり、同時に、異なる文化や価値観を持つ方々と向き合い、大きな学びを得られる貴重な体験でもあります。
加えて、同じ志を持つ仲間たちと一緒に事業に取り組めることもモチベーションに繋がっています。チームで一丸となってアイデアを出し合い、それがプロダクトとして形になった瞬間や、一緒に磨き上げた提案が採用され、契約につながった瞬間。その喜びを仲間と分かち合えることに、この仕事をしていて良かったと心から感じます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まずは日本で確かな実績を積み、その上で海外に展開していきたいと考えています。
日本のインターネット・テック業界を見渡すと、最初から海外展開を見据えている会社は決して多くありません。世界を代表するプラットフォームの多くはアメリカや中国などから生まれており、日本発の旅行関連サービスも、いまだに国内市場にとどまっているケースが多いのが現状です。
当社は、最初は訪日旅行者向けのサービスとして日本で事業基盤を築きますが、そこで完結するつもりはありません。日本で培ったプロダクトやノウハウを活かし、視野を海外へと広げていく計画です。
中長期的な展望として、日本発で世界を代表するプラットフォームとなり、海外旅行をする時に必ず使われるサービスにしたいと考えています。
「日本で生まれ、世界で使われる。」そんな存在になることが、私たちの目標です。

志を持って挑戦すれば必ず助けてくれる人がいる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業は正直に言えば大変なことの連続です。
不確実性も多く、思い通りにいかないことの方が圧倒的に多い。それでも、それ以上に楽しいと感じる瞬間があります。
ですが、誰もが起業に向いているとは言えません。大切なのは「起業すべきかどうか」ではなく、どのような人生を歩みたいのかを自分自身に問い続けることだと思っています。
大きな船に乗り、安定した航路を進む人生もあれば、自ら舵を握り、荒波の中へ踏み出す人生もある。どちらが正しいということはなく、選択の問題です。
日本は、様々な仕組みが整備された成熟した社会です。その分、社会を良くしたい、変えたいと考える方にとって、起業はリスクが高いと感じるかもしれません。
それでも、志を持って考え、行動し続けていれば、その想いに共感し、手を差し伸べてくれる人は必ず現れます。私自身、何度も壁にぶつかりましたが、そのたびに支えてくれる人の存在に救われてきました。
アイデアがあるなら、ぜひ実行に移してとことん突き進んでください。完璧な準備を待つ必要はありません。考えながら走り、試し、失敗し、また前に進む。その積み重ねが、気づけば道になっていきます。
採用についてどのような人材が理想でしょうか?
バックグラウンドや学歴ではなく、情熱を持って新しいチャレンジができる方を求めています。職種は全般的に募集していますが、特にセールスと広報・マーケティングの人材を求めています。
大切なのは、どれだけ本気でやりたいのか、どれだけ情熱をかけられるかです。それによって成長の可能性が変わります。
世の中を少しでも変えていきたい、新しいものを作り上げていきたい方は、ぜひ当社を検討していただければと思います。
最近、資金調達を行い、本格的に事業を進めていくフェーズに入ります。スタートアップの最も大変な時期ではありますが、新しい未来を一緒に作り上げていく仲間を多く迎え入れたいと考えています。
▼採用情報の詳細はこちら
https://ocean.inc/careers
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:星野 遼 氏
三井物産にて会計・ファイナンス業務、スタートアップ投資、訪日インバウンド領域での新規事業開発に約7年間従事。その後、テンセントにてビジネスディレクターとして、WeChat Pay日本の事業開発およびパートナーシップ推進を主導。PayPay、au PAY、d払い、メルペイとの提携をリードし、1年以内に4ブランドすべてとの接続・リリースを実現。リテール、空港、外食、テーマパークなど多様な業界のインバウンド事業者との連携や共同キャンペーンを推進するとともに、多数の日本企業のWeChatミニプログラム構築を支援。
企業情報
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法人名 |
株式会社Ocean |
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HP |
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設立 |
2024年5月 |
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事業内容 |
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