
アセンド株式会社 代表取締役社長 日下瑞貴
アセンド株式会社は、物流業界の構造的課題を解決する企業です。運送業界に特化したクラウド型ERPシステムとコンサルティングを通じて、現場業務の効率化とデータ経営による経営管理の高度化を同時に実現します。代表取締役社長の日下瑞貴氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
運送業界のデジタル化と経営改革を支援
事業の内容をお聞かせください
現在、大きく5つの事業領域を展開しています。
1つ目は運送業界に特化したクラウド型ERPシステム「ロジックス」の開発・提供です。サービスの正式リリース後、3年で全国約150社、中小から上場企業までさまざまな運送会社に導入いただいています。
2つ目は、コンサルティング事業です。運送会社のDX戦略から運賃交渉の実行支援や人事制度の構築まで広く対応しています。国会議員や行政、業界団体とも連携した、調査・研究、政策提言といったルールメイキング活動も実施しています。
物流のステークホルダーは、運送会社だけではありません。メーカー、卸、小売、消費者と多岐にわたります。そこで新たに、以下の3つの事業を展開しています。
3PL事業では、荷主企業の物流部門を支援し、人材・BPO事業では業務代行を通じて運送会社を支えます。さらに、M&Aによるロールアップ戦略を事業の柱に据え、知見やネットワークを持つ企業のグループインを通じて成長を図っています。
物流はあらゆる場所に存在するサービスであり、今後5年から10年で物流供給が大きく不足することはほぼ確実です。一時的な課題への対処ではなく、本質的かつ構造的な課題を捉えたアプローチが必要です。
弊社のシステムを導入することで、現場業務の効率化と、データ経営による経営管理の高度化を同時に実現できます。
特に運送業のようなレガシーで収益性の低い業界では、システムを使い分けることは、コスト面でもシステムリテラシーの面でも非常に難しいです。
そこで弊社は、受注から配車、請求、労務管理、車両管理まで、全ての業務を統合的に管理できるオールインワンのフルパッケージとして提供することで、現場業務の効率化を実現しています。
もう一つの効果は、経営管理の高度化です。運送会社は従来、経営管理の仕組みがほとんどありませんでした。本来見るべき情報が、データの不足により見えていませんでした。
システムで取得したデータを分析の基礎データとして活用することで、車両別の収支の見える化や荷主別の収益性分析が可能になります。現場業務の効率化から始まり、経営管理の高度化まで提供できることが、当社のシステムの強みです。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
起業するまでは、物流業界に対して政策提言や戦略策定などの上流からのアプローチを続けてきました。しかし、大きな組織には独自の論理や歴史があり、本質的なイノベーションや社会変革を実現することの難しさを感じていました。
私は、起業そのものに憧れがあったわけではなく、運送業のデジタル化が遅れている現状に対し、物流改革を推進したいとの思いが、創業の原点となっています。
また、多くの企業は、発注者である荷主からアプローチを始め、一部の投資家も荷主を優先すべきだと助言します。
確かに荷主の方がバイイングパワーを持っていますが、長期的に見ればトラック側のサプライサイドのデータの方が貴重になると考えました。トラックは今後さらに不足していくことが明らかであると判断しました。
荷主企業は確かに力を持っていますが、最終的な末端物流を担っているのは小さな地場の運送会社です。彼らがどう運んでいるのか、どこに困っているのかを解決しなければ本質的な物流改善はありません。
だからこそ、当社はトラック・運送会社からスタートを切りました。

仕事を単なるタスクではなく、成長の場として捉える
仕事におけるこだわりを教えてください。
楽しく仕事をしたいという思いに尽きます。
会社として重視しているのは、個人のミッションと会社のミッションが重なり合うポイントを見つけ、育てていくことです。
入社したメンバーに対しても、業務の話をするよりも先に、どういう人物なのかを知ることを大切にしています。一人ひとりがどんな夢を持っているのか、どんな志向性があるのかを理解した上で、当社の仕事と本質的に重なる部分を見出していきます。
また、当社は「前向きに公私混同」を掲げており、公と私を分けません。プライベートで情熱を感じることや面白いと思うことは、仕事でも同じはずです。
そのため仕事を単なる収入源やタスクとして捉えるのではなく、もっと意味のあるものにしたいと考えています。
仕事は人生の大事な一部です。だからこそ、楽しんで成長できる仕事をしたいです。自分自身もですが、貴重な時間を投資してくれているメンバーにこそ、そうあってほしいと思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
これまでに数えきれないほどの壁はありましたが、正直なところ、あまり細かくは覚えていません。
それ以上に、お客様に喜んでいただけた瞬間や、心強い仲間が増えていく過程のほうが印象に残っていて、自然と楽しい記憶に塗り替えられてきました。
振り返ってみると困難は確かにありましたが、今の実感としては、大変さよりも楽しさのほうが多かったと感じています。

現場の人のためになるサービスを提供し続ける
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
現場の方々の役に立っていると実感できることです。
先日、ある企業でシステム導入の説明会を開催しました。その中で、担当者のシステム導入に込める想いが印象的でした。
彼自身も、業界特有の非効率な作業を経験していました。そうした苦い経験をメンバーにさせないような会社にしたいと話をしてくれました。
効率化できれば、単に言われた配車をするだけでなく、より良いルートを考えたり工夫する時間が生まれるはずだとも語ってくれました。
それを聞いて現場の人たちのために役立つサービスを提供できると実感できることがモチベーションに繋がっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
ゴールは創業当初から変わっていません。
現在は「物流の真価を開き、あらゆる産業を支える」をミッションとして掲げています。長い時間軸で産業構造を捉え、確信を持ったことに対して強度の高い組織でやり続けるということが私の経営信条です。
フィジカルインターネットの構築やバーティカルコングロマリット戦略など、様々な言葉で表現していますが、根本は一貫しています。
物流という基幹産業が本質的に持つ可能性を十分に発揮するために、必要なサービスを揃えていくことです。それが現在の事業すべてに繋がっています。
物流業界は今後5年間で、どこまで変われるかが問われています。必要不可欠なこの産業が日本全体にとって、より高い付加価値を発揮できる状態にしたいと考えています。
そのために、当社が物流業界全体のOSになっていきたいと思っていますし、この目標を変わらず目指し続けます。

課題を解決する意味を考え続ける
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業を目的にせず、解決したい課題を軸に置いてください。
起業への関心が高まっているのは良いことだと感じています。ただ、起業そのものが目標になってしまうと、周囲の共感は得にくいです。自分の成功だけにフォーカスした動機では、人の心を動かすのは難しいと思います。
重要なのは、心から解決したい課題があること、そしてミッションへの誠実さです。どうすれば儲かるか、どのように起業するかなどの問いは、実践の中で学べることです。
それよりも、どの課題を解決すべきなのか、解決することにどのような意味があるのかについて、真剣に向き合い続けることが、結果的に近道となり、大きな課題の解決に繋がると思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:日下瑞貴氏
1990年北海道江別市生まれ、早稲田大学政治学研究科修了。PwCコンサルティング合同会社にてサプライチェーンマネジメントSCM改革、野村総合研究所にて物流業界に関する政策提言・戦略策定プロジェクトに従事した後、2020年「物流業界の価値最大化」を掲げアセンド株式会社を創業。
企業情報
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法人名 |
アセンド株式会社 |
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HP |
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設立 |
2020年3月 |
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事業内容 |
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