オフィスの間取りやレイアウトを検討する際は、オフィスのコンセプトや業務の導線などさまざまな物事を考慮する必要があります。一見手間にも見えますが、社員にとって働きやすいオフィスを実現できれば、業務効率が上がり企業の生産性向上にもつなげることが可能です。
本記事では、快適なオフィス作りをするために必要な計画や、参考となるレイアウトを紹介します。また、レイアウトを決める際のポイントも解説しているので、オフィス作りの参考にしてください。
オフィスの間取りは働きやすさに影響する!
オフィスの間取りやレイアウトは、社員の働きやすさに大きく影響します。
例えば、業務の導線が意識された間取りになっていない場合は、社員の業務効率が落ちてしまう可能性があります。また、プライベートな空間がない場合は、オンオフが付けられず社員がストレス溜めてしまうことも考えられます。
業務効率を下げたり、社員に精神的な負荷をかけてしまったりすると、結果的に企業全体の生産性を下げることにつながりかねません。オフィスの間取りは社員の働きやすさだけではなく、企業の成長にも直結することを理解しておく必要があります。
以降の章では、働きやすいと感じるオフィス作りについて計画方法やポイントを詳しく解説しています。
快適なオフィスの間取りを実現する4つの計画
快適なオフィスの間取りを実現するためには、以下の4つの計画を立てる必要があります。
- コンセプト計画
- ゾーニング計画
- 動線計画
- 寸法計画
どの計画も快適さに直結する重要な内容となるため、読み進めながら計画内容を把握しましょう。
1. コンセプト計画
具体的に間取りやレイアウトを決める前に、オフィスの基本コンセプトを明確にしましょう。コンセプト計画とは「快適なオフィス作りを実現する目的」のようなもので、その後の間取りやオフィス家具の配置などに大きく関わってきます。
例えば、コンセプトに「コミュニケーションの活性化でアイデアを生み出せる職場」と設定した場合、休憩スペースの設置や固定席を設けないフリーアドレスの採用などが効果的です。
以上のように、コンセプトを決めることでオフィス作りの方向性が定まるため、最初のステップで計画することをおすすめします。
2. ゾーニング計画
ゾーニング計画とは、執務スペースや応接室、会議室など必要なスペースを大まかに位置取りしていく作業です。業界や業種によって必要となるスペースは異なるため、まずはオフィスに必要なスペースをピックアップするところから始めるとよいでしょう。
ゾーニング計画で重要となるのが、以下の2点です。
- 業務の関連性を考慮すること
- セキュリティ面を考慮すること
例えば、業務の関連性が高い部署を隣同士に設置したり、クライアント対応が多い部署を応接室の近くに配置したりすることで、業務が円滑に進みやすくなります。
また、セキュリティ面は、外部と内部の両面で対策が必要です。部外者の侵入を防ぐなど外部対策はもちろん、社員が不正に情報を持ち出すことない内部対策にも目を向けた配置がポイントです。
3. 動線計画
動線計画とは、社員が業務を進めやすい、働きやすいと感じるための経路を設計することです。
具体的には、複合機やシュレッダーなど社員全員が使うものは、全員がアクセスしやすい場所且つ、迷わないような経路で設置するなどがあります。また、デスクワークが多い企業では、座り過ぎを防ぐためにあえて、オフィスないを回遊できる間取りにするケースもあります。
動線を設計する際は、「動きやすい」「設備が使いやすい」ことはもちろん「安全である」ことも重要です。社員が不安を抱えず業務に遂行できるオフィスも、効率を上げることにつながります。
4. 寸法計画
寸法計画とは、通路の幅やデスクとデスクの間隔など、快適性を考慮しながらオフィスの寸法を決めることです。
一般的に快適と感じる、寸法の例は以下の通りです。
通路の寸法 |
※人の寸歩を450mmとおいた場合 |
デスク間の寸法 |
※着席時の寸法を450mmとおいた場合 |
社員の移動が多い場合はぶつかることがないように通路幅を広くしたり、デスクを広く使う必要がある業種の場合は圧迫感を感じないようにデスク間の幅を広げるなど、業務形態に合わせて工夫するとよいでしょう。
オフィスレイアウトの基本となるデスク配置方法7選
オフィス作りの基本的な計画と合わせて、社員が働く執務スペースをどのようにレイアウトするかも併せて検討する必要があります。
オフィスレイアウトの基本となるデスク配置方法には、主に以下の7つがあります。
デスク配置方法 |
具体的な配置方法 |
対向型レイアウト |
デスクを向かい合わせに配置するレイアウト |
背面式レイアウト |
デスクを背中合わせに配置するレイアウト |
同向型レイアウト |
全てのデスクを同じ方向に配置するレイアウト |
ブース型レイアウト |
パネルやパーティションでデスクを区切り、ブース型の空間を作るレイアウト |
クロス型レイアウト |
デスクを縦横クロスして配置するレイアウト |
ブーメラン型レイアウト |
120度の角度がついたデスクを亀甲状に配置するレイアウト |
フリーアドレス型レイアウト |
固定席を作らず座席を自由に選択できるレイアウト |
以下の章で、それぞれのレイアウトの特徴とメリット・デメリットを解説します。自社にどのようなレイアウトが適しているのか、判断材料にしてください。
1. 対向型レイアウト
対向型レイアウトとは、部門やチームごとにデスクを向かい合わせに配置するレイアウト方法です。「島型レイアウト」とも呼ばれ汎用性が高く、多くの企業で取り入れられています。
対向型レイアウトは、お互いが顔を合わせて業務をするためコミュニケーションが円滑に進みやすいのがメリットです。ただし、常に視線を感じる、プライバシーが損なわれるなど、社員によっては精神的ストレスを抱える場合があります。
2. 背面式レイアウト
背面式レイアウトとは、部署やチームのメンバーで背中合わせにデスクを配置するレイアウト方法です。
デスクの前をパーティションで区切ることで、前の人と顔を合わせなくてもよいため、作業に集中しやすいのが特徴です。前の人と顔を合わせる必要はありませんが、横や後ろを向くとメンバーがいるためコミュニケーションへの弊害も少ないでしょう。
ただし、全体を見渡さなければならない管理者も背中合わせになるため、状況を把握しづらくなることも考えられます。
3. 同向型レイアウト
同向型レイアウトとは、学校のように全てのデスクを同じ方向に向けて配置するレイアウトのことです。来客が多い職場や店舗型ビジネスの場合、顧客に背を向けることがなく作業に集中できるのが特徴です。
同向型レイアウトは、上司やメンバーの視線を感じにくく、プライバシーも守られているため精神的なストレスが少なく個人の作業に取り組めます。
デスクとデスクとの間を確保することで、開放感のあるオフィスを実現できますが、その分執務スペースを広く使ってしまうのがデメリットとなります。
4. ブース型レイアウト
ブース型レイアウトとは、パネルやパーティションでデスクを覆いブース空間を作ったデスクを配置するレイアウト方法です。
ブースで覆われたデスクは、半個室となっているため、ブログラマーやエンジニアなど個人作業が多い業種に適しています。隣に人がいないため、デュアルディスプレイ環境にも適しています。
半個室はメリットがある反面、コミュニケーションが取りづらいなどのデメリットもあります。また、他のレイアウトよりも床面積を広く取る必要があります。
5. クロス型レイアウト
クロス型レイアウトとは、デスクを縦横に交差して配置するレイアウト方法です。対向型レイアウトで作った島を、縦と横に配置してクロスさせるイメージです。
クロス型レイアウトは、通路が多くなり圧迫感が少ないのがメリットです。また、通路が直線的なため、導線の固定化を防ぎオフィス内のコミュニケーション活性化にもつながります。ただし、人の行き来が活発になる反面、集中力が削がれる社員も出てくる可能性があります。
6. ブーメラン型レイアウト
ブーメラン型レイアウトとは、120度の角度がついたデスクを3個向かい合わせて、亀甲状に配置するレイアウト方法です。
一つのデスクの面積が広いため、デュアルディスプレイなど作業スペースを多く使う業種に適しています。社員同士の距離感もちょうどよく、集中力の維持とコミュニケーションのしやすさを両立できます。
ただし、業務スペースが広い分オフィスのスペースも必要となるのが大きなデメリットです。
7. フリーアドレス型レイアウト
フリーアドレス型レイアウトとは、社員の固定席を設けず、座る席を自由に選択できるレイアウト方法です。デスクは、対向型レイアウトで配置するのが一般的です。
フリーアドレス型レイアウトは、テレワークの普及と共に導入する企業が増えています。出社する社員分の席があればよいため、オフィスの省スペース化が可能です。また、自由に席を選べることで、部署の垣根を超えたコミュニケーションの活性化も実現できます。
ただし、フリーアドレス型レイアウトを採用する場合は、業務の進捗管理や社員の体調管理などをどうするか、マネジメント方法に工夫が必要となります。
オフィスのレイアウトを決める際のポイント
オフィスのレイアウトを決める際は、たくさんあるデスクの配置方法の中から、自社に適したものを選ぶことが重要です。
オフィスのレイアウトは、以下3つのポイントを考慮し検討することをおすすめします。
- 社員一人に必要なスペースを把握する
- 社員のプライバシーを考慮する
- 並行してオフィス家具も検討する
社員一人に必要なスペースを把握する
執務スペースのレイアウトを決める前に、まずは社員一人ひとりに必要なスペースを把握する必要があります。もし、必要なスペースを把握していないと、オフィスのスペースが足りなかった、個人のスペースが狭かったなど、後々改善しづらい問題点が出てくる可能性があります。
また、必要なスペースは社員の職種ごとに異なります。例えば、営業職のように外出が多い場合は一般的な広さで、エンジニアなど作業スペースが多い場合は広めにスペースを取ることが必要です。
社員のプライバシーを考慮する
オフィスが小規模の場合、机が密接しがちになり社員同士の距離が近くなることが考えられます。社員同士の距離が近すぎると、プライバシーが守られず、社員に精神的なストレスを与えてしまうリスクがあります。
小規模オフィスの場合でも、パーティションや棚を使いレイアウトを工夫することで、プライバシーを守ることが可能です。プライバシーを守ることで、社員の健康管理にもつながります。
並行してオフィス家具も検討する
家具によってサイズや仕様が異なるため、レイアウトと同時に家具の検討も並行してする必要があります。どれだけ良いレイアウトが出来ても、デスクやチェアなどの家具のサイズを把握していないと、家具が置けないなどのリスクが発生します。
既存の家具を新しいオフィスに配置する場合は、特に、家具のサイズや仕様を把握した上でレイアウトを設定するのがおすすめです。オフィス家具を新調する場合は、レイアウトに合わせて家具を選ぶのもよいでしょう。
オフィスの間取りは「快適さ」を意識しよう!
オフィスの間取りを決める際は、社員の「快適さ」を重視して決めることがおすすめです。業務の動線や働きやすさを考慮して作られたオフィスは、社員の満足度を上げることや企業の生産性を上げることにつながります。
「快適さ」を追求するためには、自社の業種や社員の職種ごとに適したレイアウトを採用する必要があります。まずは、現状におけるオフィスの課題や、一人ひとりに必要なスペースなどを把握し、オフィス作りを進めていきましょう。