セブンセンス税理士法人 ディレクター 大野 修平
経営・会計コンサルを手掛けるセブンセンス税理士法人に所属し、公認会計士・税理士としてご活躍中の大野 修平氏。
東京都が手掛ける「NEXs Tokyo」など、各種アクセラレーションプログラムのメンターでもあり、ベンチャー企業や起業家のサポートにも力を入れています。
セブンセンス税理士法人のディレクターである大野氏に、業務内容や起業家サポートのやりがい、そして起業家へのアドバイスをお伺いしました。
公認会計士・税理士として資金調達に携わる
主な業務内容を教えていただけますか。
私の所属しているセブンセンス税理士法人には全国11の拠点があり、従業員は約240名、色んな経歴や専門領域を持った人間が所属しています。税理士法人ですので、中小企業やスタートアップ企業の記帳、決算、申告といった税務顧問業が主な事業内容です。
また、最近では事業承継や相続のご相談なども多くなってきています。
外国人スタッフも多数在籍していて、特に赤坂オフィスは場所がら外国法人が多いので海外税務にも力を入れています。
一方私は、企業の事業計画書や資金繰り表の作成、それをもとにした資金調達の支援、補助金申請支援、株価算定やM&A支援など、税務とは少し違ったコンサルティング業務をメインにしています。
私は元々、監査法人トーマツで公認会計士としてのキャリアをスタートしました。多くの公認会計士がそうであるように、私も監査法人から独立する時に税理士登録をしました。
しかしながら、既に何万人という税理士の先輩がご活躍なさっている中で、「税金関係が得意です」というのは差別化が図れないし、そもそも説得力がないと思いました。
そこで、税務は仲間に任せ、資金調達を自分の強みとしてアピールすることにしました。トーマツ時代に金融機関の監査に携わっていたので、金融機関のことは少しだけわかっていたからです。
それから今日まで10年ほど経っていますが、その間で色々な試行錯誤をしてきました。
業界では「資金調達といえば大野」と思ってもらえるようになってきたのかなと思っています。
資金調達のお客様は、飲食店や製造業、建設業といった一般的な中小企業だけでなく、いわゆるスタートアップと呼ばれる成長志向の会社さんも多くいらっしゃいます。
私自身、監査法人時代からスタートアップ(当時は「ベンチャー」と呼んでいましたが)に強い興味があり、多くの起業家に会いに行き、交流を深めてきました。
そういった活動から色々なご縁があり、今では東京都が主催する「NEXs Tokyo」など、様々なアクセラレーションプログラムで資金調達メンターを務めさせていただいています。
一口に資金調達といっても、スタートアップはエクイティでのファイナンスを志向しますし、中小企業においてはデット・ファイナンスが実現可能性の高い資金調達となります。
もちろん、その両方を志向する企業さんもありますので、最適な資金調達戦略を策定するために、日頃の研鑽は欠かせません。
今のお仕事に至った経緯を教えてください。
大学進学とともに上京したのですが、東京が刺激的すぎて大学時代はほとんど勉強しませんでした。
それどころか気がつけば就職もせずフリーターになっていました。
そんな中、飲食店の開業を手伝わせていただく機会に恵まれました。
店舗立ち上げやアルバイト採用、メニュー開発、集客をして、日々の店舗運営にも携わらせてもらいました。
「これは面白いな」と思いました。経営というものに初めて興味をもったのがこの時期です。
そこから「経営コンサルタントになりたい」と思うようになりましたが、そもそも経営コンサルタントになる方法が分かりません。
今となっては笑い話ですが、「なにか資格のようなものがあるんだろう」と思い、水道橋の専門学校をいくつも回りました。
その中の一つの学校で「だったら、公認会計士がおすすめです」と言われ、公認会計士が何なのかもわからないまま講座に申し込みました。
その学校の職員さんに「ところで大野さん、簿記はできますか?」と聞かれ、「簿記ってなんですか?」と答えると、簿記講座の申込書も渡されました(笑)
兎にも角にもそこから公認会計士の勉強が始まりました。
働きながら勉強する予定だったんですが、勉強を初めて見ると「これは手強いぞ…」と。
仕事をやめて勉強に専念して、最初の1年は簿記講座で精一杯。その後2年かけてようやく公認会計士試験に合格して、幸い当時は売り手市場だったこともあり、前述の監査法人トーマツに入所しました。
その頃には「公認会計士になりたい」という思いが強くて、コンサルタントに対する気持ちは忘れていましたね。
改めて振り返ると私自身のキャリアに「戦略」はなく、目の前の仕事に取り組んだことで色んな巡り合わせがあり、今に繋がっているなと感じます。
独立するときも、トーマツのパートナーの方に心配していただき、大きなお仕事を紹介してくださったりしました。
独立後の仕事では、専門家だからといって上から目線でモノをいうのではなく、「寄り添える専門家でありたい」と考えています。そのためには、相手の立場にたって考えることが大切です。
例えば、スタートアップ企業では「出資の持ち分を何パーセントにするか」というのはとても大切な問題です。教科書的には、「こうあるべき」というパーセンテージが存在します。けれども起業家さんからみると、教科書通りの答えではビジネスが進まなかったり、そもそも始めることすらできないことも多いのです。
その時に何がなんでも王道の数値を押し付けるのではなく、理想と現状の妥協点を一緒に探っていくのが専門家なのかなと思います。そうすることで、「この人に相談して良かった」と思って貰えるし、なにより自分自身の成長にも繋がります。
常に「目の前のお客様にとって、何がベストか」を模索していると、新たなインプットや新たな思考が必要になります。それは仕事をする上で大切なポイントだと考えています。
最近ではAGIと呼ばれる汎用人工知能に注目が集まっていますが、これらのAIが普及していけばいくほど、人間の寄り添う力がますます重要になってくると思います。
独占業務を担う使命感が原動力
進み続けるモチベーションの源は何でしょうか。
モチベーションとは少し違うかもしれませんが、「使命感」らしきものはあります。
公認会計士も税理士も国家資格で、「独占業務」と呼ばれる、資格所有者しかできない業務があります。
例えば、他人の税務申告は税理士しかできませんし、企業の監査は公認会計士のみに許されている業務です。その中で仕事をしている私たちは、ある種守られているともいえますし、その裏返しとして期待される役割も大きいと考えています。
社会制度として守られているのであれば、その分社会にしっかりと貢献しないといけないと思っています。そうでなければ、業務を独占させている意味がないですし、これまで先輩方が築き発展させてきた資格制度の存在価値が失われてしまうと思います。だから、モチベーションというよりは後ろ向きかもしれませんが使命感。「独占業務をやらせて貰っているからにはしっかりとやらないと」というのが原動力です。
モチベーション的なものをあえて挙げるとしたら、やはり人との出会いでしょうか。
仕事柄いろいろな業種の方にお会いします。皆さんいろんな知識、経験をお持ちで、そういった方のお話を聞くのはとても楽しいです。
先日も「養殖のフグには毒がない」ということを、フグ養殖をされている方からお聞きして驚きました。
また、最近ではAI界隈が賑やかですので、AIエンジニアの方にお話を聞くのがとても楽しいです。
お仕事やプライベートで今後やりたいことはありますか。
セブンセンス税理士法人に目を向けると、優秀で色んなタレントを持ったスタッフが沢山いるので、彼らが活躍できる場を作りたいと常に思っています。会社の雰囲気や制度を整えて、自分の魅力を最大限に発揮できる職場にしたいですね。そして、色んな所でセブンセンス税理士法人の名前を聞く機会があったり、仕事のクオリティが高いと感じていただけたりするようになりたいです。そうすることで法人としてもより成長できるんじゃないかなと思っています。
あ、絶賛採用強化中ですので、成長法人に入って、一緒に成長したい方はぜひご連絡ください!
僕の持論なんですが、キャリアって投資と似ていると思うんです。
投資の鉄則は「安く買って、高く売る」ですよね。キャリアに当てはめると「成長企業に入って、一緒に成長する」ってことだと思うんです。
「たしかにな」と思った方で、会計や税務、資金調達などに興味がある方はセブンセンスがピッタリだと思います。
プライベートに目を向けると、現在小学生と幼稚園の子供がいるのですが、彼らの成長をしっかり見届けたいなと思っています。
目を離すと彼らは凄く成長してしまうので、ワークライフバランスを意識して、少しずつですが彼らと過ごす時間を増やして行きたいと思っています。
起業は怖いものではない
起業家や創業者との関わりで得たものはありますか?
多くのスタートアップの経営者の方々とお話させていただき、彼らと本当にフィーリングが合うなと感じています。
彼らの持っている勢いや無鉄砲さ、アニマルスピリッツが好きですし、前例のない所に飛び込んでいく勇気も好きです。それに、スタートアップの経営者の方は凄く賢いので、メンターをしながらも私自身が学ぶことも沢山あります。
経営というのは、オーソドックスな打ち手がありながらも、戦術レベルでは個別具体的なものです。そういった発想力がスタートアップの経営者は豊かだと思います。
彼らから多くの刺激を受けています。
起業を考えている方にアドバイスをお願いします。
起業を志している方の中には沢山の不安を抱えている方もいらっしゃると思いますが、実はその不安はあまり現実になりません。昨今は国の制度も充実していて、人生を棒に振るような失敗をしないような仕組みもあります。それに、起業家を取り巻く環境がかつてとは大きく変わり、投資家の方々もスマートなかたばかりです。
例えば、創業時にお金を借りる際、これまでは多くの場合で経営者の連帯保証が必要でした。それが、2023年3月から「スタートアップ創出促進保証」がはじまり、創業者が保証協会付の融資を受ける場合、保証率を0.2%上乗せなどの措置をとることで、経営者保証を外せる可能性があります。*
また、日本政策金融公庫では以前から創業者向けの経営者保証を必要としない融資制度を設置しています。**
経営者保証を外していれば、万が一事業が失敗しても、法人の借入れを経営者個人が肩代わりする必要はありません。
また昨今、政府はスタートアップに対して積極的に予算を投下していて、融資制度だけでなく、補助金や税制などにも優遇措置がたくさんあります。
こうした、スタートアップを取り巻く環境の変化によって、実は現在、起業は怖いものではなくなってきているのです。
*参考:中小企業庁「経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します。」
**参考:日本政策金融公庫「新創業融資制度」
起業家として成功するために、何をすべきでしょうか?
難しい質問ですね。
ただ、多くの起業家と接してきて感じることは、成功した起業家は間違いなく「寝食を忘れるほどに一生懸命」だということです。
こちらが心配になるくらい熱中しています。
出資をしてくださった方たちにリターンを与えるとか、従業員の働く環境を整えるというのも経営者として重要なことですが、何より自分が楽しむ、熱中するということを忘れないようにしたいですよね。
そして、ビジネスをしているといろんな方たちと関わり合いを持つようになります。
その方々に誠実に接することで味方をどんどん増やしていってほしいと思います。
絶対に失敗しない方法というのはありませんが、先ほど触れたような制度によって、人生を棒に振るような失敗はしにくくなりました。
であれば、万が一失敗したとしても再チャレンジの可能性があるということです。
そして、再チャレンジに必要なのは、周囲の方々の信頼だと思います。そのためにも、常日毎から真面目に、誠実にビジネスをしていくことが重要なんだと思います。
必ずしも最初の起業で成功しなければいけないわけではないと思えば、少し気が楽になりませんか?
起業をお考えの方は、是非勇気を出して1歩を踏み出してみてください。
本日は貴重なお話、ありがとうございました!
企業情報
法人名 |
セブンセンス税理士法人 |
HP |
|
設立 |
2019年11月 |
事業内容 |
税務・会計サービス 資金調達支援サービス 人事・労務サービス 経営コンサルティング 事業承継・M&A・相続 IT/DX支援 |
沿革
|
1970年 飯田昭夫税理士事務所開業(7月1日) 1980年 株式会社東京税経センター設立(6月) 1984年 有限会社アイ経営指研設立(現:株式会社アイクス)設立(1月5日)) 1987年 マネージメントクリエイター設立(1月)、事務所を新築・移転(7月) 2003年 アイクス税理士法人設立(1月6日) 2005年 東京税経総合会計事務所設立(6月)、アイクス税理士法人Tax House静岡中央店開設(10月) 2006年 アイクス税理士法人静岡マイホームセンター店開設(4月)、アイクス社労保険労務士法人設立(12月12日) 2008年 株式会社千葉税経センター設立(4月)、東京税経アセンダント税理士法人設立(5月) 2009年 東京税経アセンダント税理士法人を税理士法人東京税経センターへ改称(9月)、東京税経行政書士事務所設立(9月) 2011年 株式会社アイ経営指研を株式会社アイクスへ商号変更(9月1日)、山陰支店設立(12月) 2014年 アイクス税理士法人石垣島支店設立(11月) 2015年 株式会社東京ビジネスセンター設立(3月)、アイクス行政書士法人設立(11月13日) 2017年 税理士法人東京税経センター赤坂オフィス開設(10月) 2018年 社会保険労務士法人東京税経センター設立(1月) 2019年 セブンセンスグループ発足(11月1日)、アイクス税理士法人・税理士法人東京税経センターからセブンセンス税理士法人へ商号変更、アイクス社会保険労務士法人・社会保険労務士法人東京税経センターからセブンセンス社会保険労務士法人へ商号変更、アイクス行政書士法人・東京税経行政書士事務所からセブンセンス行政書士事務所に商号変更 2020年 開業50周年を迎える |
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