株式会社中小企業のチカラ 代表取締役 山下佳介

中小企業が自社ブランディングに有名タレントの肖像を使いがたいのは使用料が高額なため。しかし日本の会社の99.7%を占める中小企業が元気になってこそ日本は元気になると考え、生まれたのが「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」です。そこで今回は、田村淳さん、前田敦子さんといったタレントの肖像を使用できる仕組みを考案した株式会社中小企業の山下社長に、創業のルーツと未来について伺いました。

 

 

タレントの“すごい力”で中小企業を盛り上げたかった

事業の内容をお聞かせください

中小企業をトータルに支援する事業を営んでおります。ウェブマーケティング、組織コンサルティングなどの事業を展開しているなか、中核となるのは「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」です。

 

ブランディング、アワード、ビジネスマッチング、SDGs支援という4つの柱で展開しているプロジェクトなのですが、最も特徴的なのはブランディングによる支援。有名タレントの肖像を自社のブランディング戦略に活用できるためです。

 

これまでタレントの肖像をビジネスで活用するためには、慣例として多くの費用が必要でした。それは1つのブランドや企業とタレントが独占契約することに要因があります。

 

しかし弊社の場合は“中小企業を元気にして日本を盛り上げる”という目的のもとにプロジェクトを起こし、主旨に賛同いただいた企業やタレントに参加していただく形をとったことで、従来よりもリーズナブルな設定を実現できました。

 

タレント参加の形態は、プロジェクトに対するアンバサダーとして。その肖像を、参加企業は自社のプロモーション活動に活用できる仕組みです。そうして企業の知名度向上を図り、業績向上を実現するなど“元気になる”ことを私たちは期待しています。

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

タレントの力が“すごい”と感じたことがきっかけでした。中小ベンチャー企業に特化した人材紹介会社の「リアステージ」にいたときのことです。

 

当時、認知度がそれほど高くはないタレントさんをイメージキャラクターに起用していたのですが、それでも集客コストが半分くらいに減りました。加えて自社サービスのブランディングがしっかりできていたことから、良い人材の確保もできて対前年比150%という業績を達成したんです。

 

当時はコロナ禍。同業でけっこうなダメージを受けていたところも多かったのですが、それでも良い結果を残せた大きな要因はタレントの力。ならば、「もっと有名なタレントを起用したら業績が伸びるはずだ」と思い相場を調べました。すると、とても手がでない金額になっていて…。だから有名タレントは大手企業しか起用できないのかと。

 

そこで「中小ベンチャーでも有名タレントを起用できる方法はないか?」と考え始めました。ヒントになったのは、プロサッカー選手で実業家の本田圭佑さんと、プロ人材と企業とのマッチングサービスを展開する「キャリーミー」さんによるプロジェクト。本田さんが出資し、さらにアンバサダーとなって自身の肖像を使用しながら事業を後押しする試みを行いだして、私も何かそのような新しい形はできないかと模索していったのです。

 

一方で、コロナ禍という社会情勢から、1000社ほどあった紹介先が200社ほどに減ってしまう事態が起きました。長らく新卒採用を継続してきたけれども、ストップせざるを得ない。そのように疲弊してしまう会社も現れて……。

 

それまでお世話になってきた恩返しではないですけれど、何か力になりたい。タレントの力を借りて中小企業を元気にしたい。そういった思いが強まり、1人のタレントを複数のベンチャーでシェアすればコストを抑えられるのではないかという、現在の礎になる考えに行きつきました。

 

ただ、事業を始めた当初はタレントの所属事務所からは想像以上のハレーションが起きましたね。「なぜ大事なタレントを安売りしなければならなんいんだ」「価値を下げるようなことをするわけがないだろう」といった反応がほとんどでした。

 

最初の頃はテレアポで売り込みをしていて、そのたびに断られていたんです。そのような日々を送る中で考えついたのは、下がると思われている価値が上がるスキームを作ればいい、というもの。いわば事務所さんにとって大義名分の創出で、「日本の会社の99.7%を占める中小企業を元気にして日本を盛り上げていく旗振り役になってほしい」と伝えるようにしました。

 

「アンバサダー役を担っていただければ、タレントさんには社会貢献度の高いイメージが備わります。そのイメージを伴って、複数のベンチャー企業が展開するプロモーションで露出されたら、価値は下がるどころか上がります。単独スポンサー契約の可能性も高まりますし、契約を獲得できたら、タレントさんや事務所さん、中小企業さん、弊社、みんなにとって良い話ではないですか」

 

そのように丁寧に説明をさせていただいた結果、賛同される事務所は増えていきました。

 

 

さらに、知人を介して田村淳さんに出会えたことは大きな転機となりました。同様の話をしたら、二つ返事で「やりましょう」と言ってくださって。文字通りの突破口となって、以降、1年半で11名のアンバサダー契約を得ることができました。

 

 

お客様の成功に人生を賭け、ビジネスに昇華する

 

仕事におけるこだわりを教えてください

「リアステージ」は「フルベットグループ」の傘下企業なのですが、同グループの経営ビジョンは、“for You〜人生を賭けるビジネスを〜”。お客様の成功に人生を賭けることがビジネスになるというものです。

 

今も同様の気持ちを抱いています。同時に、自分たち本位になった瞬間、すべてが崩れるという危機感も持っています。そう感じた実体験が「リアステージ」時代にはありました。

 

当時は新卒紹介日本一を獲得するという目標を掲げ、採用も入社1〜2年目で年収1000万に達するといった触れ込みで行い、事業を一気に成長させたんです。しかし、あるタイミングで成長スピードが失速。理由は、自分本位の思考を持つメンバーが増えていったことにありました。

 

お客様ファーストではなく、目下の関心事は自分たちの成長や年収。そのような顔ぶれが増えていくなか、メンバーを引き抜いて独立するような人も出てきた。この状況は違うな、と。そこで思案し、“for You〜人生をかけてビジネスを〜”という経営ビジョンを掲げたんです。

 

 起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は今ですね。2021年6月の創業後、1期目は年商14億に達し、コマーシャルも展開したので大きな注目を浴びました。2期目もそれ以上の成長スピードでいけるなと思っていたのですが、実際にはそう上手くいくことはありませんでした。

 

1期目はサービスの目新しさに興味を抱いていただいたり、ファーストペンギンとしての存在感に共感する方などから多くの発注を頂戴しました。けれど2期目に入ると初年度ならではの特需はなくなり、競合も多く生まれました。有名タレントを抱えている会社に発注が流れる、タレント勝負のような様相にもなったのです。

 

そこで3期目を迎えるにあたり、改めて足元を見つめ直しました。弊社のミッションは“中小企業を元気にして日本を盛り上げる”こと。そのために事業のさらなる強化の必要性を感じ、現在第二フェイズに向かおうとしているところです。

 

 

事業に成功した企業から「あのプロジェクトに参加したから今がある」という声を多く聞きたい

 

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

 

究極的には“日本を元気にすること”です。そのために、弊社のプロジェクトに参加し、元気になって卒業していく会社を継続的に増やしていきたいと思っています。

 

弊社との出会いによって活力を獲得し、そこからIPOを実現させる企業が登場したり、「あのプロジェクトがあったから、当時の自分たちだけでは難しかったタレント起用によるブランディングができ、グンっとステージを上げることができた」といった声が将来的に多く聞かれるようになると、嬉しいですよね。

 

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

 

コミュニティの運営です。現在の参加企業は業界・業種ともさまざまで、事業形態もBtoBもあればBtoCもあるという状況です。このような中小ベンチャー企業を多く囲っているコミュニティはなかなかなく、一緒に事業展開をしたいと連絡を頂戴する大手企業も少なくありません。

 

将来的には、優良な中小企業をビジネスパートナーとして求めている大手企業に紹介するプラットフォームを構築できれば、より多くのお客様のためになるのではないか。ひいては、いっそう日本を元気にしていけるのではないか。そのように考えています。

 

 

常に挑戦する心を抱き、天国と地獄の両方を味わってほしい

 

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

“天国と地獄を行き交う経験が自分の器の大きさを変える”と常に考えています。盛り上がるときがあれば、めちゃくちゃどん底まで落ちることもある。その振れ幅の大きさが、自分の器の大きさなのではないかと思うのです。

 

地獄に落ちないと、この差を大きくすることはできません。そして地獄に落ちるためには挑戦するしかない。起業自体が楽ではないし、さらに挑戦して、地獄に落ちて、という経験を積み重ねていくと、否応なしに人間の器というものは広がりをみせていく。

 

私はたまたま事業を成功させて社長となりました。しかし今の状況に甘んじることなく、今後もっともっと挑戦した方が良いのだろうなと、自分では思っています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

 

起業家データ:山下佳介 氏

1986年生まれ。茨城県出身。中学卒業後陸上自衛隊に入隊。パルスレーダー整備士として5年間勤務。20歳の時に退職し受験勉強を経て大学入学。大学卒業後エン・ジャパン株式会社に入社し、中小ベンチャー企業に特化した新卒採用コンサルティングに従事し、新人賞・MVPを受賞。2014年株式会社リアステージ立ち上げに参画。新卒紹介サービス「ジョブコミット」を立ち上げ7年で年間入社決定2000名超えの業界TOPクラスの事業へ成長させる。新型コロナウイルスの感染拡大により大きな打撃を受けている中小企業を支援する為に2021年1月「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」を立ち上げる。同年6月より全方位的に中小企業を支援すべくプロジェクトを分社化し株式会社中小企業のチカラの代表に就任。趣味はBBQ。

 

企業情報

法人名

株式会社中小企業のチカラ

HP

https://smes-chikara.co.jp/

設立

2021年6月

事業内容

中小企業からニッポンを元気にプロジェクト

WEBマーケティング支援事業

組織コンサルティング事業

沿革

 

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